1989年は名車ラッシュ! 第10回日本カー・オブ・ザ・イヤー【後編】ノミネート車を総覧
R32型スカイライン、ロードスター、インテグラ、レガシィ、インフィニティQ45──バブル期を彩った名車たち
1989年、日本カー・オブ・ザ・イヤーは“ヴィンテージイヤー”と呼ばれるほど名車が誕生した年。後編では、R32型スカイラインやロードスター、レガシィ、インフィニティQ45など、今なお語り継がれるノミネート車を、時代背景とともにモータージャーナリストの高橋アキラさんが振り返ります。
- 今なお人気の「サンニー」、名車「R32 GT-R」が誕生した
日産スカイライン - 世界で最も売れている2人乗り小型オープンスポーツカー
マツダ・ユーノス ロードスター - ハイパワーワゴンの先駆け的存在
スバル・レガシィ - 上質さにこだわったミッドサイズのFFセダン
ホンダ・アコード インスパイア/ビガー - 北米の高級車市場を狙ったインフィニティの旗艦車
日産インフィニティQ45 - 90年代をリードする新世代の本格スポーツカー
日産フェアレディZ - 1989年(昭和64年/平成元年)はどんな年だった?
- 軽スポーツ全盛期に生まれた7代目の名車
三菱ミニカ - NAエンジンでリッターあたり100馬力
ホンダ・インテグラ - エレガントなミッドシップ2シーター
トヨタ・MR2
高級セダン・スポーツカー・軽自動車
名車揃いのノミネート車
B.S.P.I./Corbis Documentary:ゲッティイメージズ提供
バブル景気に沸く日本経済は、庶民の生活をも豊かにしていたと思うが、マイカー購入の際、ユーザーは自動車メディアやジャーナリストの記事も参考していると思う。その専門家たちが主催している日本カー・オブ・ザ・イヤーにもバブル景気の影響と思われるモデルたちがラインアップしていた。
1989-1990の日本カー・オブ・ザ・イヤー10ベストカーを振り返ってみると、前編で触れたように今もなお後継モデルがある名車たちがずらりとデビューした、いわばクルマのヴィンテージイヤーだったことがわかるのだ。
日産スカイラインも新型がデビュー。8代目R32型のスカイラインは5ナンバーサイズで2ドアクーペと4ドアセダンタイプを発売するが、クルママニアの間では89年8月にデビューするGT-Rに話題が集中し、雑誌はこぞって特集を組んだ。言わずもがな、R32型GT-Rはモータースポーツをはじめ、アフターパーツ業界も活性化させた名車中の名車だ。
そして90年にレースデビューしたGT-Rはレース界を席巻し、日本のチューニング文化を醸成していくきっかけになったモデルだった。
初代マツダ・ロードスターも誕生している。ご存じのように現在もロードスターは4代目として後継モデルが販売されており、36年続く続く長寿モデルになっている。一貫して2シーターのオープンカースタイルを基本とし、モータースポーツのベース車両にも使われている。最近では限定車の「12R」が200台限定で発売され、760万円するロードスターの商談予約抽選に9500件の応募が殺到する人気ぶりを見せていた。
さらにスバルからは、スポーツセダン、スポーツワゴンとして、たくさんのファンを生み出した初代スバル・レガシィがデビューした。レガシィは、連続19日間、447時間44分を走り続け、平均車速が223km/hという、10万km世界速度記録を達成し、華々しいデビューを飾っていた。
日産にはNISMO、トヨタにはTRD、三菱にはラリーアート、マツダにはマツダスピードと、モータースポーツと関連した会社があり、富士重工にはSTIだ、ということでスバルもSTI(スバルテクニカインターナショナル)を1988年に設立している。この10万km世界速度記録のイベントは、STIの初代社長、久世(くぜ)氏が企画し、モータースポーツがイメージしやすくなるよう挑戦したFIA公認の世界記録だった。
ちなみに初代レガシィは、ハンドルをロックするまで切ってから切り返すとエンストすることを思い出した。まぁ、ちょっとしたコツが必要だったなぁ、なんてこともありましたね。
一方で、世界に誇れる高級車としてトヨタのセルシオと日産のインフィニティQ45もデビューしており、ワンランク上のラグジュアリーな価値を持ったモデルが生まれてくる時代だったのだ。
今なお人気の「サンニー」、名車「R32 GT-R」が誕生した
日産スカイライン
写真のGTS-t TypeMは、2Lターボエンジン(215PS)でデビュー当時の価格が234万円(2ドアクーペの場合)。比較的リーズナブルに走りを楽しめる2ドアクーペや4ドアセダンとして若者に人気となった
前型までも人気が高かったスカイラインだが、1989年に登場したR32型は、「GT-R」が4世代ぶりに復活したこともあり、「アールサンニー」「サンニー」と呼ばれ、爆発的な人気を得た。1990年からは当時人気だった国内の箱車レース、全日本ツーリングカー選手権(グループA)に参戦し、全6戦ポールポジション・優勝という完全制覇の快挙を遂げるなどモータースポーツでも活躍した。GT-Rのみならず、スタンダードな2ドアクーペや4ドアセダンにもターボモデルが設定されるなど、幅広いラインアップも魅力だった。
日産スカイライン
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:4530×1695×1325㎜
ホイールベース:2615㎜
車両重量:1260kg
駆動方式:FR
※上記は2ドアクーペGTS-t typeMのスペックです
車両価格(発売当時・東京):141万4000円〜445万円
販売期間:1989年~1993年
世界で最も売れている2人乗り小型オープンスポーツカー
マツダ・ユーノス ロードスター
940kgの車重に50:50の重量配分、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションなど本格的なライトウェイトスポーツを追求したロードスター。運転する楽しさを感じさせるクルマとしてアイコン的存在になった
ライトウェイトスポーツカーとして今なお人気のロードスターも1989年デビュー。初代は1トンを切る車重に、最高出力120PS、最大トルク14kgmを発生する新開発1.6Lエンジンを採用。170万円というリーズナブルな車両価格で、オープンエアと軽快な走りを楽しめるクルマとして人気を得た。現在も4代目が販売されており、「最も売れている2人乗り小型オープンスポーツカー」のギネス記録をはじめ、これまで世界各国で200を超える賞を受賞している。
マツダ・ユーノス ロードスター
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:3970×1675×1235㎜
ホイールベース:2265㎜
車両重量:940kg
駆動方式:FR
車両価格(発売当時):170万円
販売期間:1989年~1998年
ハイパワーワゴンの先駆け的存在
スバル・レガシィ
写真はレガシィ ツーリングワゴンの「GT」グレード。当初はセダンの販売比率が高かったが、RVブームやハイパワーな2Lターボの「GT」の追加などにより、90年度にはセダン約2万1000台に対し、ツーリングワゴンは約3万6000台も売れた
レオーネに代わり、水平対向エンジン、四輪駆動を設定したスポーツセダン/ワゴンとして1989年1月に発表されたレガシィ。10万km世界速度記録を達成したセダンも話題となったが、スキーやサーフィンなどアウトドアレジャーの人気に伴い、4WDワゴンの需要が増え、ツーリングワゴンブームの先駆けとなった。デビュー当初、ツーリングワゴンにターボモデルはなかったが、同年9月に2Lターボエンジンを搭載し、最高出力200PSの「GT」グレードが追加され、当時のハイパワーワゴンブームを牽引した。
スバル・レガシィ
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:4600×1690×1490㎜
ホイールベース:2580㎜
車両重量:1330kg
駆動方式:4WD
※上記はツーリングワゴンVZエアサス(5MT)のスペックです
車両価格(発売当時・東京):127.7万円〜271.2万
上質さにこだわったミッドサイズのFFセダン
ホンダ・アコード インスパイア/ビガー
アコードとレジェンドの間に位置付けられたアコード インスパイア。FFミッドシップは走りの良さだけではなく広々とした居住空間を実現。天然木や本革、エクセーヌなどの素材を多用し、内装も高級感にあふれていた
初代インスパイアは1989年10月に登場。アコードの上級車種という位置付けであったため、正式な車名は「アコード インスパイア」だった。販売チャネルはホンダクリオ店。ホンダベルノ店では、インスパイアの姉妹車となった3代目ビガーが売られていた。ホンダが理想とする上級小型車を具体化するとした2台は、2L直列5気筒エンジンを採用。世界初のエンジンレイアウト「FFミッドシップ・縦置き5気筒」により、FFとしての理想的な前後重量配分を達成。気持ちいい走りと上質な乗り味を実現していた。
インスパイアの姉妹車に位置付けられた3代目ビガー。インスパイアとはフェイス周りのデザインやシート表皮などに違いがあった。ビガーの当時の車両価格(東京)は187万9000円から280万6000円
ホンダ アコード インスパイア
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:4690×1695×1355㎜
ホイールベース:2805㎜
車両重量:1330kg
駆動方式:FF
上記はAX-iのスペックです
車両価格(発売当時・東京):192万7000円〜273万9000円
販売期間:1989年~1995年
北米の高級車市場を狙ったインフィニティの旗艦車
日産インフィニティQ45
トヨタ・セルシオの発売から約1か月後、日米同時発売されたインフィニティQ45。スカイラインやフェアレディZで評価を得ていた4輪マルチリンクサスペンションや市販車世界初の油圧式アクティブサスの採用など、走りにも力を入れていた
1989年11月、北米では高級車ブランド「インフィニティ」のQ45として、日本国内では日産ブランドのインフィニティQ45として発売がスタート。コンセプトは「ジャパン・オリジナル」。新開発のV型8気筒4.5Lエンジンで最高出力は280PS。全長5m超えのボディに、賛否あったグリルレスのフェイス、七宝焼きのフロントオーナメント、漆塗りのインパネなど、個性的なデザインが特徴。市販車としては世界初の油圧式アクティブサスペンションも画期的だった。
日産インフィニティQ45
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:5090×1825×1435㎜
ホイールベース:2880㎜
車両重量:1780kg
駆動方式:FR
※上記はLパッケージのスペックです
車両価格(発売当時・東京):520万円〜630万円
販売期間:1989年〜1997年
90年代をリードする新世代の本格スポーツカー
日産フェアレディZ
3Lツインターボ、スーパーHICAS、4輪マルチリンクサスなど、高性能をウリにした4代目フェアレディZ。独特で美しいスタイリングも相まって、ターゲットとしていた北米での人気も高かった
数々の名車を生んできたフェアレディZの4代目(Z32型)が1989年7月に登場。狙いは「90年代をリードする新世代の本格スポーツカー」とし、 前型Z31型よりも全長は短く、ホイールベースを長く、全幅を広げ、全高を下げることで、際立ったワイド&ローフォルムを実現。エンジンはV6 3L(230PS)とV6 3Lターボ(280PS)。4輪マルチリンクサスペンション、電子制御式4WS「スーパーHICAS」、アルミキャリパー対向4ピストンブレーキなど、当時最先端の走りの技術を惜しみなく投入し、ハイパワーな本格的スポーツカーとして多くのファンに支持された。バブル崩壊後、日産の業績不振もあり新型の開発が進まず、2000年まで続くロングセラーモデルとなった。
日産フェアレディZ
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:4525×1800×1255㎜
ホイールベース:2570㎜
車両重量:1570kg
駆動方式:FR
上記は300ZX ツインターボ 2by2 Tバールーフのスペックです
車両価格(発売当時・東京):330万円〜440万円
販売期間:1989年~2000年
1989年(昭和64年/平成元年)はどんな年だった?
1989年に開催された第28回東京モーターショーは、晴海から幕張へと会場を移した。入場者数は前回を60万人以上も上回り、約192万人と大盛況だった
1989年前後は、そう、バブル経済絶好調期だ。1990年に入ると経済は次第に右肩下がりの傾向を見せたのだが、1989年は日経平均株価が史上最高値を記録している。当時3万8915円87銭だったようで、日本中が好景気に沸いていた時代だ。また3%の消費税もこの年からスタートしている。
そして昭和天皇の崩御があり、昭和から平成へと元号が変わった時でもある。1989年1月7日までが昭和で、8日からが平成となった。
世界を見渡すと、アメリカのジョージ・パパ・ブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長によるマルタ会談が行なわれ、40年に及ぶ東西冷戦時代が終結。その後ソビエト連邦の解体が進んでいった時代だ。
さらに中国の歴史にはない、とされている天安門事件も1989年だ。中国の民主化を訴えたデモ隊が北京の天安門広場に集結し、平和的抗議活動を行っていたが、政府は戒厳令を宣言し中国人民解放軍による軍事制圧を行い多数の死傷者を出した。
政治も経済もアップダウンが激しくヒートアップしていた時代だったわけだ。
1989年に発売された任天堂・ゲームボーイはROM交換式の携帯型ゲーム機。4階調のモノクロ画面だったが、爆発的に売れ、子供たちが外に持ち出すゲーム機の先駆けとなった
軽スポーツ全盛期に生まれた7代目の名車
三菱ミニカ
スズキ・アルトワークスやダイハツ・ミラTR-XXなどの軽スポーツに対抗すべく設定されたミニカ ダンガンZZ。デビュー当初は550ccだったが、モデル期間中に軽自動車の規格変更があり、後に660ccへと変更された
初代登場は1962年。ミニカは1989年の時点ですでに7代目となるロングセラーの名車だった。軽自動車市場の6割以上を占める女性ユーザーを意識し、女子社員を中心に延べ350名の評価会を経て、丸味のあるキュートでモダンなスタイルで誕生。ホットモデルの「ダンガンZZ」は、市販4輪車世界初のDOHC5バルブ+インタークーラーターボエンジン(64PS)を搭載。小型車に劣らないホットハッチぶりが話題だった。フルタイム4WDや電動パワステ、メモリー付きの運転席パワーシート、パワーウインドーなど軽自動車らしからぬ上級装備も話題となったクルマだ。
三菱ミニカ
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:3195×1395×1465㎜
ホイールベース:2260㎜
車両重量:620kg
駆動方式:FF
※上記はダンガンZZのスペックです
車両価格(発売当時):50万3000円〜99万8000円
販売期間:1989年~1993年
NAエンジンでリッターあたり100馬力
ホンダ・インテグラ
ホンダの名機として名高いVTECのB16Aエンジンを初めて搭載したのがインテグラ。146万5000円(3ドアクーペ)と価格が手頃なスポーツカーとして、走り好きの若者たちのチューニングベースとしても人気だった
マイケル・J・フォックス氏が出演した「カッコインテグラ」のCMが話題となったホンダのスポーツクーペ&セダン。1989年に登場したのは2代目で、インテグラの名前を一躍有名にした人気モデルだった。3ドアクーペ「RSi」「XSi」、4ドアハードトップ「XSi」に搭載された1.6Lエンジンは、市販車用エンジンとして世界で初めて可変バルブタイミング・リフト機構、すなわちVTECを採用。自然吸気(NA)エンジンで160PS、リッターあたり100PSに達し、全速度域で爽快な走りを実現した。
ホンダ・インテグラ
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:4390×1695×1325㎜
ホイールベース:2550㎜
車両重量:1100kg
駆動方式:FF
※上記は3ドアクーペ XSi 5MT車のスペックです
車両価格(発売当時・東京):119万5000円〜175万8000円
販売期間:1989年~1993年
エレガントなミッドシップ2シーター
トヨタ・MR2
手頃な価格のミッドシップスポーツカー、MR2の2代目は、初代で言われていたピーキーさが改良され、安定感のある走りを楽しめるモデルとなった。車名は「ミッドシップ・ランナバウト・2シーター」の略
日本初のミッドシップスポーツカー、トヨタ・MR2。1989年に登場したのは、その2代目だ。初代よりもサイズアップしたボディに、排気量も2Lとアップ。すべてを新設計した4輪ストラット式サスペンションなど走りの性能を大いに上げてきた。一方でエクセーヌと本革を使用したスポーツシートや7スピーカーのスーパーライブサウンドシステム、Tバールーフを設定するなどエレガントなイメージも強まった。
トヨタ・MR2
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:4170×1695×1240㎜
ホイールベース:2400㎜
車両重量:1240kg
駆動方式:ミッドシップ
※上記はGTのスペックです
車両価格(発売当時・東京):182万円〜277万8000円
販売期間:1989年~1999年
クルマのヴィンテージ・イヤーと言われたこの時代は、バブル景気を背景に実用車の量販モデルばかりが注目されていたが、スポーツカーや高級車といった特別な価値を持つモデルに注目が集まるという変化も起きていた。各社から新しい価値が創造され提供されていくなかで、ユーザーもクルマを楽しみ、ドライビングを楽しむ、ライフスタイルの底上げといった、従来の価値を変えていくきっかけが作られた時だったと言ってもいいだろう。

高橋アキラ
たかはし・あきら モータージャーナリスト、公益社団法人自動車技術会 モータースポーツ部門委員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、日本モータースポーツ記者会会員。やんちゃなチューニング全盛期の自動車専門誌編集者時代を経て、技術解説、試乗レポートなどに長けた真面目なジャーナリストに。Y30グロリアワゴン、マスタングなど愛車遍歴にはマニアックな車も多い。
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