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斜面を歩く重機「スパイダー」Menzi Muck M545X。四輪多関節の実力|特集
構成=グランマガジン社/協力=日本スパイダー協会/コメンテーター=Kaori(重機女子オペレーター)

垂直5mも登破! 斜面を“歩く”特殊重機「メンツィムック」とは? 4本脚スパイダーの実力

【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち
コメンテーター=重機女子オペレーター Kaoriさん

急峻(きゅうしゅん)な地形、水辺、そして災害現場。従来の建機では踏み込めなかった“限界”を超える一台が、日本の現場で存在感を高めている。スイス発の「Menzi Muck(メンツィムック)M545X」(通称=スパイダー)は、四輪多関節と高度な姿勢制御によって、斜面を登るというよりも“適応する”という新たな作業概念を提示した。日本スパイダー協会の設立を契機に、その導入は土木、水インフラ、林業、さらには災害復旧へと広がりつつある。今回はそんな唯一無二の特殊車両を紹介しよう。

目次

スパイダーの開発コンセプトと「脚」の必然性

4本の脚を自在に操ることでさまざまな傾斜にも対応

見る者を圧倒するこの姿勢は、決して伊達ではない。Menzi Muck独自の「両面多関節機構」が、クローラー機では不可能な不整地を掌握し、三次元的に攻略している証しだ

油圧で駆動する2か所の関節を備えた角度調整自在な4本脚によって、全長・全幅・全高を変化させ、作業場所の地形に合わせた姿勢を確保。各輪に動力を伝える4WDと、前後2輪それぞれが操舵(そうだ)する4WSも相まって、ほぼ足場がないような過酷な状況下での掘削や整地、積載などさまざまな作業を可能にした。防水仕様のキャビンは状況に合わせて360度回転し、水深2mまでなら水中での作業も可能。開発はメンツィムック社(スイス)。

最大傾斜角度はなんと45度!? ウインチ併用なら50度超えも!

斜面も軽々と登るスパイダーの写真

自力で斜面を切り開き、障害物を乗り越えて目的地へ直行する。災害時の道路啓開や、重機の進入が困難な急斜面での林業において、この「軽やかな登坂」がもたらす時間短縮と安全性は、計り知れない価値を生み出している

過酷な環境への対応力もすごくキャビンの防水性能は水深2mも!

水場で作業を行うスパイダー

水深約2mまで進入可能な防水設計は、水インフラ整備において唯一無二の武器となる。クローラー機であれば水没のリスクにさらされる現場も、このスパイダーにとっては「通常の作業場」に過ぎない

脚を閉じることで最低地上高は2mを超え、歩行すら困難な土砂崩れ現場やガレ場での作業を可能にしている。タイヤのグリップ次第ではあるが、大半の障害物はこの状態で乗り越えが可能だ。

スパイダーを操作するにはどんな免許が必要?

日本国内で「運転」および「操作」するためには、法律で定められた公的資格に加え、機体の特殊性を踏まえた専門の技能講習が必要不可欠。メーカー公認の日本スパイダー協会が実施している講習の受講が運用の条件となっている。

スパイダーを操作するオペレーター

左右のジョイスティックに配置された多機能ボタン。オペレーターはこれらを駆使し、アームの伸縮と4本のレッグ(脚)の角度をミリ単位で同期させる。日本スパイダー協会の技能講習を修了することで、スパイダー特有の機動力を引き出す「認定オペレーター」となる

【見るからに特殊なスパイダーのディメンション】

スパイダーの外観写真

スパイダーの外観写真

スパイダーの外観写真

スパイダーの外観写真

スパイダーの外観写真

運搬時には全長6080mm×全幅2340mm×全高2550mmというコンパクトな姿を見せる。機体質量13500kgの鋼鉄体でありながら、Menzi Muck独自のパラレルサポートシステム「P-Vation」と600/50-22.5タイヤが、斜面や悪路において無比の安定性を担保する

【スパイダーの細部を全部見せます!】

スパイダーの脚の写真

スパイダーの核心ともいえる脚部。4本脚それぞれ2か所の関節によって前後左右の角度調整が行え、なおかつ1本ごとに独立して制御できるため、複雑な地形や障害物にも柔軟に対応。最大高低差は前側1710mm/後側2330mmに達する4WD機構と相まって、グリップさえ確保できれば、45度もの急斜面を難なく踏破する

スパイダーのタイヤの写真

ノキアン社製22.5インチを装着。基本的に公道走行は想定しておらず、不整地でのグリップを最優先したトレッドパターンを持つ。内部にはスチールインレイを配して強化し、岩場や藪(やぶ)など過酷な環境に対応。また、空気圧調整によって接地面積や面圧を変化させることで、あらゆる路面状況に対応可能だ

ウインチの写真

前方には、頑丈なワイヤーで巻き取る強力なエンジン駆動式ウインチを装備。倒木の除去といった作業に活用できるほか、フックを固定物に装着して自車を引き上げれば、車両限界を超える50度もの傾斜地すら踏破可能だ。なお、ワイヤーはシャシー後部に収納されている

エンジンの写真

1864年に創業した世界最古のエンジンメーカー、ドイツ社製のディーゼルターボエンジンを搭載。115kW(156HP)を2000rpmという低回転域で発揮する、重機に適した出力特性を持ち、13.5tに達する巨体を自在に操る。平地での最高速度は約14km/h

運転席の写真

操作は完全なワンマン仕様。移動から実作業までのすべてをオペレーター1人が担当する。そのため、コックピットには各種レバーやボタン、数多くの計器類が集約されており、操作するには2025年4月に発足した「日本スパイダー協会」が主催する運転技能講習の受講が必要不可欠だ

アタッチメント付け替えの写真

アーム先端にはバケットやグラップルをはじめ、ハーベスタ、ドリル、ハンマー、シンクロウインチ、マルチャー、チルトローテーターなど、用途に合わせた各種アタッチメントを換装可能。他の重機では進入困難な場所にも入り込める機動力と相まって、文字通り一台で何役もこなす万能マシンに仕上がっている

丸太をつかんでいる写真

アーム先端のアタッチメント下部に備わった「グリップ」も大きな特徴だ。アタッチメント本体とは独立して作動するため、掘削作業中に倒木などの障害物に遭遇しても、バケットを換装することなく直接つかんで撤去することが可能。この「二段構え」の構造が、現場での作業効率を飛躍的に向上させている

アームを伸ばしている写真

アームの延伸長は最大8670mm。これにより、目いっぱい伸ばした状態での作業はアタッチメントにもよるが、バケット装着時の最大到達高は車体最低位置時で7750mm、最高位置時では9840mmと、ほぼ10mもの高さにまで達する。逆に下方向の掘削深は、それぞれ4810mm、5780mmまで対応可能だ

スパイダーの核心ともいえる脚部。4本脚それぞれ2か所の関節によって前後左右の角度調整が行え、なおかつ1本ごとに独立して制御できるため、複雑な地形や障害物にも柔軟に対応。最大高低差は前側1710mm/後側2330mmに達する。4WD機構と相まって、グリップさえ確保できれば、45度もの急斜面を難なく踏破する

ノキアン社製22.5インチを装着。基本的に公道走行は想定しておらず、不整地でのグリップを最優先したトレッドパターンを持つ。内部にはスチールインレイを配して強化し、岩場や藪(やぶ)など過酷な環境に対応。また、空気圧調整によって接地面積や面圧を変化させることで、あらゆる路面状況に対応可能だ

前方には、頑丈なワイヤーで巻き取る強力なエンジン駆動式ウインチを装備。倒木の除去といった作業に活用できるほか、フックを固定物に装着して自車を引き上げれば、車両限界を超える50度もの傾斜地すら踏破可能だ。なお、ワイヤーはシャシー後部に収納されている

1864年に創業した世界最古のエンジンメーカー、ドイツ社製のディーゼルターボエンジンを搭載。115kW(156HP)を2000rpmという低回転域で発揮する、重機に適した出力特性を持ち、13.5tに達する巨体を自在に操る。平地での最高速度は約14km/h

操作は完全なワンマン仕様。移動から実作業までのすべてをオペレーター1人が担当する。そのため、コックピットには各種レバーやボタン、数多くの計器類が集約されており、操作するには2025年4月に発足した「日本スパイダー協会」が主催する運転技能講習の受講が必要不可欠だ

アーム先端にはバケットやグラップルをはじめ、ハーベスタ、ドリル、ハンマー、シンクロウインチ、マルチャー、チルトローテーターなど、用途に合わせた各種アタッチメントを換装可能。他の重機では進入困難な場所にも入り込める機動力と相まって、文字通り一台で何役もこなす万能マシンに仕上がっている

アーム先端のアタッチメント下部に備わった「グリップ」も大きな特徴だ。アタッチメント本体とは独立して作動するため、掘削作業中に倒木などの障害物に遭遇しても、バケットを換装することなく直接つかんで撤去することが可能。この「二段構え」の構造が、現場での作業効率を飛躍的に向上させている

アームの延伸長は最大1800mm。これにより、目いっぱい伸ばした状態での作業はアタッチメントにもよるが、バケット装着時の最大到達高は車体最低位置時で7750mm、最高位置時では9840mmと、ほぼ10mもの高さにまで達する。逆に下方向の掘削深は、それぞれ4810mm、5780mmまで対応可能だ

【Menzi Muck M545x(スパイダー)】のスペック
●全長×全幅×全高(運搬時寸法):6080mm×2340mm×2550mm ●重量:13500kg ●最大作業半径:8670mm ●アーム伸縮幅:1800mm ●水深作業能力:2200mm ●駆動方式:Menzi Muck独自 無段変速 Vx-Drive(最高速度 14km/h) ●支持システム:Menzi/Muck独自 P-Vation パラレルサポート ●ホイール:4輪同径(最大幅800mm) ●タイヤ:600/50-22.5 ●エンジン:4気筒ターボディーゼルエンジン ●総排気量:4038cc ●最高出力:115kW(156HP) ●電気系統:24V ●油圧システム:Bosch Rexroth製ソーシャル・ロードセンシング ●旋回速度:最大10回転/分

重機女子オペレーター Kaoriさんが語るMenzi Muck M545xの魅力

Kaoriさんの写真

操作には技術だけじゃなく、度胸も必要!? 4本脚による脅威の機動力!

Menzi Muck M545x、通称スパイダー。ご存じの方はどれくらいいるでしょうか? 私も展示会で見たことがある程度で、海外で活躍する特殊な重機という認識にとどまっていました。しかし知れば知るほど奥が深く、今ではこの機械のオペレーターの方々に深い敬意を抱かずにはいられません。急斜面や河川内など、通常の重機では進入すら困難な現場で、「ここに立てるか」を瞬時に判断し、4本の脚で足場を構築しながら作業を行う。その操作には高度な複合技術と緻密な重心管理が求められ、一般的なバックホーとはまさに別次元の領域にあります。

人間の手足は4本、脳は1つしかないのにそんな操作ができるの!?と疑うレベルです(笑)。度胸と技術、そのどちらが欠けても成立しない。まさに“重機界のフリークライミング”と呼ぶにふさわしい、極限の世界に感動です。

重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)

Kaoriさんの顔写真

親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、テレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。

●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs

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