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燃料費に苦労するクルマの様子

それ、逆効果かも? ドライバーが誤解しがちな「低燃費運転テクニック」をプロが大検証!

道路交通法違反や大事故に繋がるリスクも……本当に効果のある節約術をガチ判定
菰田 潔(モータージャーナリスト)

物価高が続く昨今。「少しでも燃料代を抑えたい……!」というのは全ドライバー共通の切実な願いなのではないでしょうか。JAF Mate Onlineでもこれまで、燃費改善につながるさまざまな情報をご紹介してきましたが、JAF会員から寄せられたアンケート回答の中には、「それって、本当に大丈夫?」と心配になってしまう独自の“低燃費作戦(⁉)”の数々が。

今回は、そんな気になる低燃費走行テクニックをピックアップ。モータージャーナリストの菰田潔さんに「燃費」と「安全」の面から、ガチ判定していただきました。

目次

1.下り坂のニュートラル走行→判定「×」

重大な事故を引き起こす危険性! ATで頻繁なニュートラル(N)レンジへのチェンジは故障につながることも

  • 「走行中に信号等で停止する状況であれば、後続車に支障のない範囲で、かなり手前からNレンジで走行する」(北海道・70歳代)
  • 「危険なので本当はやってはならないのだが、下り坂に差し掛かったらギアをNにして惰性で走行することで距離を延ばしている」(広島県・50歳代)

菰田さんの回答:ATでの走行中、頻繁にNレンジに入れると、オイルの潤滑が悪くなりATが故障するケースもあるので、おすすめできません。Dレンジでアクセルオフにすれば燃料カットが働くので、Nレンジにするよりも燃費が改善します。最新モデルでは自動的に駆動もエンジンブレーキもかからない惰性走行のコースティング状態になるクルマも増えています。

MT なら、信号停止に向けて手前からNレンジにするのはOK。市街地で平たんに見える道路なら、MTであればNにして長い惰性走行ができれば燃費を稼げます。下り坂でNにするのは重大な危険を招くおそれがあり、絶対にNGです! エンジンブレーキ使用中は一滴の燃料も使いません。

坂道や下り坂でNレンジに入れると、エンジンブレーキが利かず、速度をフットブレーキだけで調整することになります。さらに、いざ加速が必要な場面で駆動力をすぐに使えなかったり、Dレンジへの戻し忘れ・誤操作につながったりするおそれもあります。わずかな燃料節約を狙うより、安全に減速・制御できる状態を保つことが何より大切です。

2.ノーズリフト、ノーズダイブをなくす→判定「△」

→昨今のクルマはそこまでノーズに変化なし

  • 「加速開始時減速終了時のノーズリフト、加速終了時減速開始時のノーズダイブが起きないようにする運転を心がけている。停止からの発進時、ノーズリフトが起きないように加速度の変化に注意。減速時も減速開始時にノーズダイブが起きないように減速加速を増やしていき、エンジンブレーキを併用し速度が十分遅くなったらギアをNに。停止前に減速度を減らし(ブレーキを徐々に緩める)、最後の停止する瞬間に減速加速が0になるようにフットブレーキを調整する(フットブレーキを離す)。以上を理想的に行えるようにしている」(岩手県・70歳代)

菰田さんの回答:急発進や急ブレーキを避け、滑らかな操作を意識すること自体は、安全面でも燃費面でも意味がありスムースに走ろうという努力は素晴らしいです。

しかし、ここ数十年のクルマはダンパーやサスペンションの工夫により、ノーズダイブ、ノーズリフト(スクォート)が起きないように作られていますから、普通の運転ではなかなか起きることではありません。むしろ、ATセレクターでNレンジとDレンジを頻繁に行き来するのは誤操作のリスクが高まるため、おすすめできません。

クルマの加減速時に発生する、車体の姿勢変化と燃費の関係。ノーズリフト、ノーズダイブそのものよりも、急発進、急ブレーキをせず、クルマにも負担の少ない運転が大切です。

3.大型車の後ろで風よけ走行→判定「×」

→燃費よりもまずは安全! 車間距離をしっかりと保って

  • 「大型車の後ろを風よけとして使っている。70mくらい車間距離をとる」(熊本県・50歳代)
  • 「高速道路を走行するときは、空気抵抗を減らすため大型車の後ろを走行している」(石川県・60歳代)

菰田さんの回答: 風よけ効果は多少なりともあるかもしれませんが、前方に大型車がいるとその先の様子が見えないので、安全上の見地からおすすめできません。

高速道路も一般道も、先行車との車間距離は2秒間空けますが、ドライバーは4秒から5秒先を見てほしいです。道路に落下物があるとか、先の方で渋滞が始まっているとか、正しい情報をたくさん得るためには先を見ることが大事だからです。

空気抵抗を減らすという発想自体は理屈としてわからなくもありません。しかし、一般ドライバーが安全な車間距離を保ちながら得られる効果は限定的。それ以上に、前方の情報が得にくくなるリスクのほうが大きいため、燃費向上テクニックとして実践するのはおすすめできません。

4.ヘッドライト消し節約術→判定「××」

道路交通法に抵触し、事故に直結する危険性大!

  • 「夜間、ちょっと長くなりそうな信号待ちでは、ヘッドライトをスモールにするか完全に消灯します。少しでも電気負荷を減らせば、ガソリンの節約になると思っています」(兵庫県・70歳代)

菰田さんの回答:燃料の節約より大事なのは安全です。ヘッドライトは自分の前を照らして障害物があるかを確認するだけでなく、自分の存在を周囲に示す目的もあります。またヘッドライトを消すと点けるのを忘れて走り出す可能性も出てきます。道路交通法第52条では夜間道路にあるときは前照灯をつけなければならない規定になっています。つまり信号待ちで消すと違反になります。

道路交通法第52条では、夜間、道路にある車両等は前照灯、車幅灯、尾灯などを点けることが定められています。少なくとも夜間の道路上では、自車の存在を周囲に知らせるためにもライト点灯が原則です。最近のクルマはLEDのヘッドライトを採用することで、電力消費を削減しています。わずかな電気負荷を気にして消灯するより、被視認性を確保することを優先しましょう。

5.車間距離を広めにとる→判定「〇」

→安定走行につながるため、安全、燃費向上にもヨシ

  • 「車間距離を取り、一定のスピードで走る」(愛知県・20歳代)
  • 「車間距離を取ってゆったりと走るように心がければ、赤信号などでの停車時に急減速したりすることなく減速してゆけばエンジン回転が抑えられ、低燃費走行につながるし、タイミングが良ければ止まりきらないうちに信号が変わって緩やかな加速につながる」(兵庫県・60歳代)

菰田さんの回答:車間距離を長めに取ってゆったりと走ることは、燃費のためにも良いです。自分のペースを守って一定スピードで走ることができ、エコドライブとセーフティードライブの両立ができます。

ただし混んだ道でたくさん車間距離を取っていると、渋滞を作る原因にもなります。自分だけでなく他のクルマの燃費が悪くならないように、車間距離は2秒間がおすすめです

車間距離にゆとりを持つことは、急ブレーキを避けるだけでなく、前方の信号や交通の流れを早めに読む余裕にもつながります。また先読み運転をして、信号が黄色に変わることが予測できたら早めにアクセルを全部戻すと、エンジンは車の惰性で回され、その間燃料も使わずに走れるため燃費は良くなります。

6.する?しない?アイドリングストップ→判定「△」

→頻繁なアイドリングストップは逆効果なことも

  • 「長い信号待ちや踏切での列車通過待ちの間はアイドリングストップを行っている」(奈良県・60歳代)
  • 「アイドリングストップを実施していたがあまり効果がないという情報もあるので、最近はバッテリー劣化を最小限にするためアイドリングストップスイッチを切っている」(石川県・60歳代)

菰田さんの回答:4気筒2Lガソリンエンジンの場合、アイドリング時には1分間に15ccから20ccくらいガソリンを消費します。アイドリングストップから再始動したときには4秒から5秒分のガソリンを使います。電気も使いますからバッテリーのことも考えるとそう頻繁にアイドリングストップと始動を繰り返すのはおすすめできません。

駐車時はなるべく早くエンジンを止め、出発時は全員がシートベルトを装着してからエンジンスタートできるとよいですね。

エンジンを止めているためその間の燃料は節約できそうですが、短時間の停止で手動のアイドリングストップを繰り返すと、再始動時の燃料消費やバッテリーへの負担、安全面のリスクが上回ることも。長めの停車が見込まれる場面を除き、むやみにエンジンを止めることは避けましょう。

7.穏やか発進、早めの減速 →判定「△」

「ゆっくり」の意味を間違えないで!

  • 「ハイブリッド車に乗っていますが、発進時にはなるべく急にアクセルを踏み込まず、何段階にも分けて踏んで加速すること。ブレーキを使うときは急ブレーキをせずに、早めにブレーキを踏んでゆっくりと減速しながら回生ブレーキの特性を利用して航続距離を増やすことを意識しています」(愛知県・60歳代)

菰田さんの回答:航続距離を延ばす、という目的は良いです。ただしハイブリッド車の場合、加速時はある程度までアクセルペダルを踏み込んだ方が燃費が良くなります。エコメーターが付いているクルマの場合は、針が『パワー』まで行かず『エコ』の上のほうまで使う感じです。スピードが遅い状態は低いギヤを使っているので燃費は悪くなります。

「急」のつく操作(急発進・急加速・急ブレーキ)を避けることは、燃費向上テクニックの基本。しかしなかには、「ゆっくり」の意味を間違えて低速を長く続けたり、ブレーキを遅く踏むという解釈をする方も。しっかりと一定の速度まで加速し、一定の速度を保ちましょう。エコドライブで大切なのは、遅く走ることではなく、急な操作を避けながら交通の流れに合わせてスムースに走ることです。

8.エネルギー活用のためブレーキは踏まない?→判定「×」

→“ルール”にするのは絶対NG!

  • 「高速道路では一定の速度で走り、エンジンブレーキを使い、フットブレーキはまず使わない」(愛知県・40歳代)
  • 「ブレーキが無駄。とにかくブレーキを踏まなくて済むように車間距離を空けて先読みをして運転する」(滋賀県・50歳代)

菰田さんの回答:車間距離を取って先読み運転するのは良いことですが、周囲のクルマの流れを乱したり、他のドライバーがいら立つような運転はしないように。フットブレーキを使わずエンジンブレーキを使うというのは、わざわざギアを入れ替えているのでしょうか?

その場合、ブレーキランプが点灯せずに減速するので後続車が思いの外近づいてしまいます。流れに沿って走るのにブレーキも必要な場合もありますから、臨機応変に考えましょう。

ブレーキ使用を減らすこと自体が目的になってしまうと、周囲の交通状況に合わせた減速や、後続車への意思表示が遅れるおそれがあります。ブレーキは“無駄”ではなく、安全に速度を調整し、後続車に減速を知らせるための重要な操作です。


燃費を良くしたいと思うあまり、思い切った方法が頭をよぎることもあるかと思います。しかし、低燃費運転の基本は、特別な裏ワザではなく、急な操作を避けること、車間距離にゆとりを持つこと、早めに前方の状況を読むこと。そして何より、安全を犠牲にしないことです。
JAF Mate Onlineでは、低燃費運転の基本をよりわかりやすく解説した記事「ガソリン代を節約したい! 低燃費運転の重要ポイント7選」も公開しています。まずは安全で確実なエコドライブの基本をチェックしてみてください。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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