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文=霜田奈緒(ダズ)

低燃費タイヤで燃料節約!? スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの違いとは?

誰でもわかるタイヤの技術 選ぶ前に知っておきたいタイヤの種類とその進化【後編】

スポーツ走行をするならスポーツタイヤ、乗り心地を重視するならコンフォートタイヤなど、何を求めるかによって変わってくるタイヤの選び方。前編の「コンフォートタイヤとスポーツタイヤに使われる技術の違いって何?」に続き、後編では、低燃費タイヤとスタッドレスタイヤ、そして近年注目度が高まっているオールシーズンタイヤといった、さらに奥深きタイヤの世界について解説します。

目次

購入時の目安となる「低燃費タイヤ等ラベリング制度」とは?

後編では、最初に低燃費タイヤを紹介する。前編ではスポーツタイヤ、コンフォートタイヤを紹介してきたが、これらはある意味タイヤメーカーがスポーツタイヤだと言えばスポーツタイヤの部類に入るという、明確な基準がないもの。しかし、低燃費タイヤの場合はそうはいかない。JATMA(一般社団法人 日本自動車タイヤ協会)が決めたグレーディングシステム(等級制度)で、低燃費性(転がり抵抗性能)とウェットグリップ性能が一定の基準に達していないと、明確に低燃費タイヤだと言えないのだ。

低燃費タイヤを示すラベリング制度の例

この低燃費タイヤは、転がり抵抗性能が AAグレード、ウェットグリップ性能がcグレードであることを示している。

この二つの性能をわかりやすく表示しているのが低燃費タイヤ等ラベリング制度というもので、上のようなラベルで性能が表示される。現在、この低燃費タイヤ等のラベリング制度に参画しているのは国産メーカー含め14社。低燃費タイヤ購入時のひとつの指標になるものだ。

低燃費タイヤの転がり抵抗とウェットグリップ性能

低燃費タイヤが重視するのは、もちろん燃費向上。転がり抵抗、つまり路面とタイヤとの摩擦を少なくすれば、パワーロスは減り燃費は向上する。これが低燃費タイヤ等ラベリング制度が示す転がり抵抗性能の部分だ。ただしタイヤの基本性能である、走る・曲がる・止まるにおいて重要なグリップ力は路面との摩擦が必要で、それを示しているのがウェットグリップ性能。転がり抵抗を減らすことばかりを重視してしまうと、タイヤとして機能しなくなるため、この相反する要素をバランスよく仕上げたものが低燃費タイヤと呼ばれるのだ。

Q3:ダンロップが世界で初めて石油外天然資源100%を実現したタイヤ「エナセーブ100」で、バイオマス主原料に採用されていた食べ物は次のどれ?

エナセーブ100のバイオマス原料となる食物の例

①トウモロコシ。松の木油や菜種油とともに、劣化防止やゴム弾性発揮などの素材として活用していた。

車の燃料消費を削減する“エナジーセーブ”と、自然環境保護を実践する“ネイチャーセーブ”の思いを込めたダンロップの低燃費タイヤブランド、エナセーブ。2006年、それまで原材料の約56%が石油由来だったものを、天然ゴム、シリカ、植物油脂等の割合を70%とし、石油資源への依存度を引き下げた「エナセーブES801」を発売。その後、2008年に97%石油外天然資源タイヤ「エナセーブ97」、2013年には100%石油外天然資源を実現した「エナセーブ100」を発売する。合成ゴムは天然ゴムに、カーボンブラックはシリカに、鉱物油は植物油に、合成繊維は植物性繊維に置き換え、さらにバイオマス技術を導入し、トウモロコシや松の木油、菜種油なども原材料として量産化を実現した。

エナセーブ NEXTⅢ

ラベリング制度で最高ランクを達成した「エナセーブ NEXTⅢ」。

低燃費性能を追い求めた「エナセーブ NEXTⅢ」は1サイズのみだが、低燃費タイヤ等ラベリング制度では転がり抵抗性能がAAA、ウェットグリップ性能がaという最高ランクを達成。バイオマス技術においては、木材などの植物繊維の主成分であるセルロースを使ったセルロースナノファイバーを世界初採用し、回転方向の剛性を高めながらも、上下方向は柔らかくという剛性コントロールを実現している。
燃料価格の高騰が続くなか、燃費性能は車本体のみならずタイヤに求める人も多い。タイヤは低燃費を重視して選びたいという人は、メーカー問わず同一基準で燃費性能を比較できる低燃費タイヤ等ラベリング制度を気にしながら選んでみるとわかりやすい。

雪道に強いスタッドレスタイヤの特徴

雪上・凍結路走行のイメージ

雪上や凍結路を安全に走行するために開発されたスタッドレスタイヤ。夏タイヤでは到底走れないシチュエーションでも走行できる性能を持つ。

スタッドレスタイヤは、雪や氷の上でも高いグリップ力を発揮できるよう設計されている冬用タイヤ。路面の摩擦係数で比較すると、乾燥路に比べて圧雪路は3.2倍、凍結路は5.4倍滑りやすいと言われている(JATMA調べ)。そんな過酷な状況でも安心して走れるように、スタッドレスタイヤは夏タイヤに比べると、凍結路での密着性を高めるためにゴムは柔らかく、溝は雪をつかむために太く深い。また、排水性と氷を引っかく力を生み出すために、サイプと呼ばれる細かな切り込みも多くデザインされる。

Q4:2つのタイヤのうち、スタッドレスタイヤはどちらでしょう?

スタッドレスタイヤはどちらでしょう?

正解は左。トレッド内に細かなギザギザのサイプが刻まれているのがスタッドレスタイヤの証し。写真左はスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」。右はコンフォートタイヤ「レグノGR-XⅡ」。

スタッドレスタイヤであることはタイヤのサイドウォールにある表記で確認できる。日本においては「STUDLESS」マークで示される。また、公的な試験でシビアなスノー条件をクリアしたことを証明する、通称「スノーフレーク」マーク、マッド&スノーを意味する「M+S」マークもあり、それらすべてが冬用タイヤとして使える。ただし、「M+S」マークに関しては、「STUDLESS」や「スノーフレーク」マークが併記されていない場合、スタッドレスタイヤに比べて雪道性能が劣ると考えたほうがよく、場合によってはチェーン規制時にチェーンの装着を求められることもあるようなので注意が必要だ。

スタッドレスタイヤを示す「STUDLESS」表記

スタッドレスタイヤであることが確認できるサイドウォールの「STUDLESS」表記。

M+S表記とスリーピークマウンテンスノーフレークマークの例

左がマッド&スノーを意味する「M+S表記」、右が国際標準化・規格設定機関ASTMの試験によりシビアなスノー状況でも性能を十分に発揮できるタイヤという証しの「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク」。

スタッドレスタイヤはサブスクでも使える!?

スパイクタイヤによって生じる粉塵(ふんじん)問題とその規制きっかけに普及し始めたスタッドレスタイヤ。ブリヂストンでは1988年、現在まで続くスタッドレスタイヤブランド「ブリザック」を登場させた。デビューモデルは「PM-10」と「PM-20」。当初からコンパウンドの中にミクロの気泡を分散させた発泡ゴムを採用し、路面の水膜を除去、氷雪路でのグリップを高めることに成功していた。この技術はモデルが替わるごとに、アクティブ発泡ゴム(2013年)、アクティブ発泡ゴム2(2017年)と進化を続け、現モデルの「VRX3」では、水路の断面形状を楕円形とし吸水力、グリップ力を高めたフレキシブル発泡ゴムを用いている。

北海道・東北・北陸はもちろん、九州に至るまで雪が降る可能性があり、日本におけるスタッドレスタイヤの重要度は高い。最近ではスタッドレスタイヤのサブスク(毎月定額利用)サービスもあるようなので、ぜひ検討してみては。

ブリザックの最新モデルVRX3

ブリヂストン・ブリザックの最新モデル「VRX3」。

オールシーズンタイヤは年中通して履いても安心?

ここまでスポーツタイヤ、コンフォートタイヤ、低燃費タイヤ、スタッドレスタイヤと、現在一般的なタイヤの紹介をしてきたが、ここからはもっと細分化された種類のタイヤを紹介しよう。

オールシーズンタイヤ走行のイメージ

ドライ、ウェット、雪道での走行をこなせるオールシーズンタイヤは、日常的には雪が積もらない地域で特に人気。

オールシーズンタイヤは、通常のドライやウェット路面に加え、雪道走行も考慮した性能を持ち、その名の通り、四季を通じて走れる全天候型のタイヤだ。従来はM+S表記のみのタイヤが多かったが、近年はスノーフレークマークが付いたモデルが急激に市場を拡大している。実際の雪道性能はというと、雪上・凍結路性能においてはスタッドレスタイヤに劣ると言われるが、あまり雪が降らない地域での軽い降雪程度ならば、十分に選択肢に入る性能を持つタイヤだ。世界で初めてオールシーズンタイヤを発売したのはグッドイヤーで、1977年とその歴史は古い。日本では欧州で高い評価を得ていた「ベクターフォーシーズンズ」が2008年に投入され、今では第3世代へと進化。商用車用もラインアップするなど、まさに国内での火付け役だ。雪道走行のみならず、マッド(泥濘〈でいねい〉)路での走破性が夏タイヤ以上に高いことも評価され、アウトドアシーンでの人気も高い。

ベクターのフォーシーズンズ ジェンスリー

「ベクターフォーシーズンズ ジェンスリー」。

アウトドアブームで人気の「A/Tタイヤ」

オフロードタイヤの走行イメージ

オフロード向けタイヤはドライのみならずウェット時の走破性も兼ね備えている。

昨今のアウトドアブームにより、車のカスタムもオフロード仕様に人気が集まっている。そのカスタムに欠かせないのが、ゴツゴツとした無骨なトレッドを持つオールテレーン(A/T)やマッドテレーン(M/T)と呼ばれるオフロードタイヤだ。基本的にはM+Sタイヤだが、一部モデルはスノーフレークマークの要件を満たすものも登場し、オールシーズンで履くことができる。トーヨータイヤの「オープンカントリー」は、そんなオフロードタイヤを専門とするブランド。ダカールラリーやBAJA1000などの国際レースへの参戦経験で得られた知見をフィードバックし、本格的なオフロードレースでの使用を想定して開発されたモデルもある。人気が高いのは、街乗り時の快適性と悪路走破性を兼ね備えたA/Tタイヤ。最近ではSUVのみならず、ミニバンや軽トラックなどにもオフロードカスタムが広がっていて、ますます需要が増えそうなタイヤだ。

オープンカントリーのA/Tタイヤ「A/TⅢ」

オープンカントリーのA/Tタイヤ「A/TⅢ」。2020年に北米で発売され高い支持を得ていたモデルが日本国内にも投入された。

タイヤ選びは用途と性能をしっかりチェック

今回の特集記事では、用途によってどんな性能を重視すべきか? という観点に基づいて、タイヤを種類別に紹介した。ここで紹介した以外にも、パンクをしてもしばらくは走行できる「ランフラットタイヤ」、パンクをすると内面に塗られたシーラントが自動的に穴を塞いでエア漏れを食い止める「シーリングタイヤ」、今後実用化が期待されている「エアレスタイヤ」など車用だけをみてもさまざまなタイヤがあるので、ぜひ今後のタイヤ選びの際に注目してほしい。

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