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あまりにもマニアックだった派生車たち【後編】のKV
構成=ダズ/文=吉川賢一

マーチBOX、bBオープンデッキ、ミラジーノ1000、マイクラC+C…軽自動車やコンパクトカーはレア派生車の宝庫

あまりにもマニアックだった派生車たち【後編】

ベース車に個性や魅力をプラスする派生車。昭和・平成初期はセダンからの派生車が多い傾向でしたが、その後は軽自動車やコンパクトカーが派生元となるモデルが増えてきました。後編では平成中期以降に登場したコンパクトカーや軽自動車のマニアック車種を紹介します。

目次

日産マーチBOX(1999年登場)

おしゃれで人気だったコンパクトカーの
荷室を伸ばしてワゴン化

日産マーチBOXのフロント

広い荷室を追加したコンパクトステーションワゴンのマーチBOX。ホイールベースはそのままで、リアオーバーハングを延長した

ヨーロッパで大ヒットを記録したK11マーチをベースに、後期型モデルのリアオーバーハングを延長してステーションワゴン風に仕立てたのが、マーチBOXだ。フロントからリアドアまでベース車と共通パーツで、リアオーバーハングを伸ばしてラゲッジ長を240mm延長したことでより多くの荷物を載せることができるようになったほか、全高も25mmほど高められたことで頭上空間にも余裕が生まれた。

生産期間は1年半ほどと短く、販売台数も少なくヒットとは言いがたいが、おしゃれなデザインは好評だった。

派生元はマーチ

日産マーチのフロント

マーチBOXのベース車は、1992年に登場した2代目マーチ(K11)。3ドアと5ドアのハッチバックで、BOX、さらにはカブリオレといった派生車も設定された

スズキ・エブリイプラス(1999年登場)

660㏄の軽バンを1300㏄に!
3列7人乗りのコンパクトミニバンへ

スズキ・エブリイプラスのフロント

軽ワゴンのエブリイをベースに、ボンネット延長や1300㏄エンジン化、3列目シートを追加し、7人乗り小型ワゴンとなったエブリイプラス

セミキャブオーバーの軽ワゴンであるスズキ・エブリイをベースに、1BOXの小型車(登録車)へ改良したのがエブリイプラスだ。国内の安全基準と新欧州安全基準に基づいた衝撃吸収ボディーを採用したことでフロントエンドを拡張、エンジンも軽用の660㏄から余力のある1300ccへと排気量を増加させている。

登録車としたことで、軽規格では不可能だった3列シートの7人乗りを実現した。なお2001年のマイナーチェンジで車名をエブリイランディへと改めた。

派生元はエブリイ

スズキ・エブリイのフロント

エブリイプラスのベース車は、商用軽バン規格のエブリイ(1999年登場)。他にも乗用車規格のエブリイワゴンもあった

トヨタ・bBオープンデッキ(2001年登場)

若者に人気だったコンパクトカーを
大胆にピックアップ化した超個性派モデル

トヨタ・bBオープンデッキのフロント

当時人気のコンパクトカーであったトヨタ・bBをベースに、ピックアップトラック的な荷台に換装した派生車のbBオープンデッキ

角ばったデザインや高い全高、リーズナブルな価格で若者を中心に人気のあったトールボックスコンパクトカーのトヨタ・bB。このbBをベースにした派生車が、2001年に登場したbBオープンデッキだ。Cピラー以降のルーフ部分をカットし、リアオーバーハングを50mmほど延長、ピックアップトラックのような荷台が追加されている。助手席側には観音開きのドアを採用しており、前後ドアを開くと広い開口部を得ることもできた。

荷台は狭く、大きな荷物の移動には適していなかったが、アイデアは面白いものだった。

派生元はbB

トヨタ・bBのフロント

bBオープンデッキのベースとなったのが初代bB(2000年登場)。2代目も2005年に登場したが、オープンデッキは設定されなかった

ダイハツ・ミラジーノ1000(2002年登場)

外装の違いがほぼわからない
見分けが付かない派生車

ダイハツ・ミラジーノ1000のフロント

軽自動車ダイハツ・ミラジーノをベースに、排気量1000ccのエンジンを搭載して小型自動車(登録車)としたミラジーノ1000

ダイハツの人気軽自動車であるミラジーノをベースに、排気量1000ccのエンジンを搭載した派生車がミラジーノ1000だ(2002年登場)。ボディー自体は軽のミラジーノとまったく同じコンポーネンツを使っているが、フェンダーアーチモールとバンパーオーバーライダー(バンパーにかぶせる樹脂製のカバー)を装着したことで、わずかに軽自動車のサイズ規格を超えていた。

インテリアは、タコメーターとスピードメーターの目盛りが異なる程度で、あとはミラジーノとまったく同じ。乗車定員も4名のままであった。

派生元はミラジーノ

ダイハツ・ミラジーノのフロント

ミラジーノ1000のベース車は、1999年に登場の初代ミラジーノ。実は、ミラジーノのターボ車のほうがミラジーノ1000よりもエンジントルクは大きかった

日産マイクラC+C(2007年登場)

欧州からの逆輸入だった
コンパクトなオープンカー

日産マイクラC+Cのフロント

K12マーチがベースのクーペカブリオレモデルである日産マイクラC+C。国内向けは英国日産で製造した車両の逆輸入車だった

欧州向けのマイクラ(K12マーチ)の3ドア車をベースに、ワンタッチ完全電動オープン機構のスタイリッシュガラスルーフを備えた派生車が日産マイクラC+Cだ(2007年登場)。英国日産で生産した2007イヤーモデルを日本向けに改良し、輸入計画台数1,500台の限定で、欧州名の「マイクラ」として販売された。

パワートレインは1600ccのHR16DEエンジンに4速ATもしくは5速MTで、室内空間はオープン走行時の開放感はもとより、ガラスルーフを閉じたときにも自然の光により明るい空間となっていた。

派生元はマーチ

日産マーチのフロント

マイクラC+Cのベース車は、2007イヤーモデルの欧州生産車「マイクラ」。C+Cは「シープラスシー」と読み、クーペ+コンバーチブルを意味する

ホンダ・N-BOXスラッシュ(2014年登場)

純正チョップドルーフ!?
遊びゴコロたっぷりなハイトワゴン

ホンダ・N-BOXスラッシュのフロント

初代N-BOXをベースに、ルーフ高を下げて独特なデザインを採用したホンダ・N-BOXスラッシュ。インテリアにも相当なこだわりが盛り込まれていた

2011年に登場して以降、一気に人気モデルへ成長した初代N-BOXをベースにした派生車が2014年に登場したホンダ・N-BOXスラッシュだ。カスタムの手法であるチョップドルーフ化(※)したかのようにルーフ全体を下げ、ルーフラインをなだらかに後方へ傾斜させており、全高もN-BOXよりも110mmほど下げたほか、リアドアはスライドドアではなくヒンジ式とし、ドアハンドルもガラス側に配置してブラックアウトしてピラーに潜り込ませていた。

インテリアも、こだわり抜かれたデザインが盛り込まれており、カーインテリア専門のショップが手を入れたカスタムカーのような出来のよさであった。

※チョップドルーフとはピラーの一部を切り取って屋根全体を低くする、かつて北米ではやったカスタム手法のひとつ

派生元はN-BOX

ホンダ・N-BOXのフロント

N-BOXスラッシュのベース車は、2011年に登場した初代N-BOX。N-BOXがフルモデルチェンジしてからも、N-BOXスラッシュは販売が続けられていた

北米仕様にもマニアックな派生車があった

スバル・ブラットのフロント

1977年に登場した輸出専用車種の超小型ピックアップトラック、スバル・ブラット。初代レオーネの後期型2ドア車がベースだ

1977年に登場したスバルの小型ピックアップトラック「ブラット」も、特徴的な派生車のひとつだ。ベースは1977年にマイナーチェンジをした初代レオーネの後期型2ドア車で、Bピラーより前にあるパーツのほとんどはベース車と共通だが、外板は半数以上が専用パーツに置き換えられている。

海外輸出専用車種のため、日本国内では販売されることはなかったブラットだが、特徴のあるエクステリアデザインがとても印象的だった。

スバル・バハのフロント

2代目のアウトバック(日本ではレガシィ ランカスター)をベースに、車両後方をピックアップ風に変更したスバル・バハ

日産ムラーノ クロスカブリオレのフロント

2代目ムラーノ(2008年登場)をベースとした2ドア4人乗りのオープンSUVである日産ムラーノ クロスカブリオレ(2011年登場)。北米市場専用車だったが、一部のファンに注目され並行輸入もされていた


ベース車にひと味追加された派生車に、どこかワクワクさせられるのは、筆者だけではないだろう。昨今は、かつてと比べ奇抜な派生車がめっきり減ってきており、寂しい限りだが、またいつか個性的な派生車が登場してくれることを、非常に楽しみにしている。

吉川賢一

よしかわ・けんいち 日産自動車にて11年間、操縦安定性・乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さも伝えるため執筆中。趣味はタミヤRCカーグランプリ等のレース参戦、サウナ、筋トレ、ゴルフなど

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