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車両窃盗のイメージ
取材・文=武田智志/撮影=大槻圭介

“3つ以上の対策”で愛車を守る! 元刑事・佐々木成三氏が教える「複合防犯」という考え方

「カメラ数台でも防げない」元刑事が目撃した衝撃の現場。犯人が最も嫌がる“面倒な車”の作り方
佐々木 成三

防犯カメラがあったのに、愛車が盗まれてしまった——。
こうした被害は決して珍しいものではなく、日々ニュースなどで報じられています。防犯カメラやハンドルロックなど、それぞれの対策は決して無意味ではありません。

しかし、「これがあるから大丈夫」と1つの対策に頼るだけでは、進化し続ける手口に対抗し切れないのが現実です。対策が広まれば、それを突破する手口が生まれる——いわば“イタチごっこ”の状態です。

では、こうした時代にどうやって愛車を守ればいいのでしょうか。元刑事の佐々木成三氏が強調するのが、「複合防犯」という考え方です。

全三話でお伝えする「自動車防犯最前線」。最新自動車盗難犯罪の実態についてお伝えした第一話と、その対策についてお伝えした第二話に続き、第三話となる本稿では、1つではなく複数の対策を組み合わせ、“盗みにくい車”をつくる。その目安となる「3つ以上の対策」について、実際にあった事例をもとに、具体的な防犯の考え方を探ります。

目次

その駐車環境、大丈夫ですか?
“狙われやすい場所”の共通点

元埼玉県警刑事の佐々木成三氏。「3つ以上の対策」を組み合わせる複合防犯の重要性を語る。

元埼玉県警刑事・犯罪コメンテーターの佐々木成三氏

──駐車環境の面からみて、盗まれやすい場所というのはありますか?

警察の統計を見ると盗難被害にあった車のうち、4割以上が一般住宅の駐車場から盗まれています。塀やガレージなどは一見安全に見えますが、実は死角を生み、犯人にとって“作業しやすい環境”になってしまうおそれがあります。

そして下見がしやすいことも、被害が多い理由の一つでしょう。今はストリートビューなどで駐車場の状況がわかってしまいます。「調査」という闇バイトもあり、アルファードがある家、レクサスがある駐車場といった情報を集めてターゲットを選定しています。ナンバーは隠されていても車種はわかるので、どこにどんな車が停めてあるかを把握できるわけです。

車種を特定させないためのボディカバー。ストリートビューや下見によるターゲット選定を防ぐ有効な対策。

ボディカバーで車種を特定させないことも防犯につながる

──月極駐車場なら防犯カメラなどもあると思うのですが、それでも狙われますか?

地方になるほど街灯が少なく、駐車場自体が暗いケースが多いです。また、車と車の間に入り込めば死角ができるため、防犯カメラがあっても見えにくくなる。結果として犯行がやりやすい環境になります。

──ではゲートがあるようなマンションなら安心ですか?

いえ安心はできません。マンションの場合、外から見て「いいマンションだな」「いい車が並んでいるな」と判断され、ターゲットになることもあります。夜間は人通りも少なく、犯行に及びやすい条件が揃うこともあります。

ゲート付きのマンション駐車場もありますが、そのゲート用のリモコンキーを車内に置きっ放しにしていることも多いです。そうすると車が盗まれた時点で、ゲートも開けられてしまいます。

結局のところ防犯のポイントは、犯人に「手間をかけさせること」です。その手間が簡単には突破できない状況を作り出し、効果的な防犯につながります。

防犯していても盗まれるワケ
対策を見越した手口の実態

──では、その効果的な自動車防犯について教えてください。

車のセキュリティが進化すれば、それを突破する手口も進化していきます。つまり“イタチごっこ”です。そのため、セキュリティは常にアップデートしていく必要があります。

つまり防犯には「これで完璧」という状態はありません。対策すれば、またその上を行く手口が出てきます。だからこそ重要なのが、1つの対策に頼らず多層的に車を防御する「複合防犯」という考え方です。

物理的に動かせない、音や光で威嚇する、手間や時間がかかる、といった複数の壁を用意することで、被害を防げる可能性が高まります。

──車を簡単に出せないような駐車環境など物理的な対策だけでは不十分ですか?

私もいろんな現場を見させてもらいましたが、こんなケースがありました。被害にあったのは自動車販売店だったのですが、その店舗ではターゲットになりやすい人気車種の前に、軽自動車を置いて車を動かせないようにガードしていました。しかし、それでも盗まれてしまいました。

防犯カメラを見ると、ターゲットの車と軽自動車の間にマットをおいて、そのまま軽自動車を押し出していました。車のフロント部分は損傷しますが、多少壊れていても海外で売れるということを犯罪組織は知っています。だから事前にマットを用意して、そのような大胆な手口を使ったのだと思います。

「面倒くさい」が防犯になる
3つ以上で守る“複合防犯”

──具体的にどんな対策の組み合わせが効果的ですか?

さきほどストリートビューの例を挙げましたが、まず車種がわからないように車にボディカバーをかけるというのも有効です。あとはタイヤロックやハンドルロックといった物理的な対策です。これも乗るたびに外すのが面倒なので、やらない人が多いと思いますが、盗む側にとっても手間が増えるわけですから効果的だと思います。

ハンドルロックとタイヤロックを装着した車。物理的な防犯対策を複数組み合わせることで窃盗犯に手間を感じさせる。

ハンドルロックやタイヤロックといった物理的な対策は有効だが、ほかの対策と組み合わせることが重要だという

また車のカギを2つ持つことになりますが、後付けのイモビライザーを付けることを警察では推奨しています。私もこれは効果的だと思っていて、実際に所有する車に取り付けています。これならスマートキーを攻略されても、もう1つのキーがなければエンジンをかけることができません。

このように車に乗るたびに着脱が必要になる物理的なロック、そして後付けのイモビライザーのような2つ目のカギ、こういった「面倒くさい」ことの積み重ねが愛車を守ることにつながります。

──なるほど「面倒くさい」はキーワードですね。ほかに心がけることはありますか?

犯人の手口を知るということも大事です。先日、ある番組が「CANインベーダー」(※)の手口を実演する形で紹介したところ、SNSで炎上したことがありましたが、私は今の時代はああいった情報公開は必要だと思っています。

たとえば車の左側から侵入されるのなら、隙間に人が入れないように壁に寄せて駐車するなど、手口がわかれば具体的な対策を取れるようになるからです。もちろん模倣されるリスクはゼロではありませんが、それ以上にドライバー側が知ることのメリットのほうが大きいと考えています。

  • CANインベーダーとは?
    特殊な機器を使って車の通信ネットワーク(CAN:Controller Area Network)に外部から不正に接続し、数分で解錠やエンジン始動を行う車両盗難の手口。

──ニュースなどで防犯カメラの映像をよく見かけますが、それでも自動車盗難を防げないのはなぜですか?

窃盗犯は人気車種であればあるほど、リスクを冒してでも狙ってきます。そしてカメラの存在を前提に、顔を隠すなどして犯行に及んでいます。防犯カメラは記録として犯罪の証拠にはなりますが、顔がわからなければ人物の特定にはつながりにくく、夜間であればなおさらです。

過去に防犯カメラが複数台設置されていた自動車販売店が自動車盗難に遭う事件がありました。店内に侵入され、保管庫にあったカギを使って複数台まとめて盗まれてしまいました。

突破された理由は、防犯カメラが威嚇になっていなかったことです。ただカメラを取り付けても、犯人に意識させられなければ抑止になりません。録画しているだけでは不十分です。だからこそ警告音を出したり、ライトを点灯させたり、またはセンサーで追尾するといった抑止力として機能するカメラが効果的です。

──狙われたが盗まれなかったという事例もありますか?

ドアを開けられ車内に侵入されたのですが、後付けのイモビライザーによってエンジンがかからず持ち去られずに済んだケースや、警告音が鳴ったことで犯行を断念したケースが確認されています。

もちろんハンドルロックのような物理的なロックも効果はあります。ただし、電動カッターのような専門的な工具があれば切断されるおそれもあるため、それ単体では不十分です。見た目の抑止力としては有効ですが、そこに後付けのイモビライザーなど複合的に対策を組み合わせることで、犯人に「無理だ」と思わせることが必要です。

防犯対策には「これをやっておけば絶対に大丈夫」というものはありません。だからこそ複合的な対策を講じて、隙を見せない環境作りが必要です。

電動工具により切断されたハンドルロックの被害例。物理ロック単体では突破されるリスクがあることを示す。

電動工具で切断されたハンドルロック(写真=自動車盗難防止協会提供)

──自動車防犯で一番大切な考え方は?

窃盗犯から「狙われにくくする」ということです。年間で6,000台以上の車が盗まれています。犯人はそれだけ多くの車を見ているということです。その中で「この車は面倒そうだ」と思わせられれば、自分の車をターゲットから外すことできます。

盗むのに時間がかかる、人の目に触れる、音や光で威嚇される、こうした要素が揃うと、犯人はリスクを感じます。最低でも「3つ以上の対策」を組み合わせることが複合防犯として望ましいのです。

自動車防犯は費用対効果が見えにくいものです。知らないうちに狙われていたとしても、対策によって盗難を防げているケースは少なくありません。具体的に何が決め手だったのかはわからなくても、「盗まれていない」という結果こそが、防犯対策の成果です。

自動車窃盗の手口は日々進化しています。だからこそ守る側も、どうすれば狙われにくくなるのか、この車は面倒だと思わせることができるのか、情報収集をして対策をアップデートしていくことが重要なのです。

「最低でも3つ以上」の防犯対策を推奨する佐々木成三氏。犯人に「面倒な車」と思わせることが最大の防御。

「最低でも3つ以上」の防犯対策を複合的に組み合わせる必要があると強調する佐々木氏


自動車盗難を防ぐうえで、絶対に破られない“完璧な防犯”は存在しません。手口は日々更新され、1つの対策が有効であっても、それだけに頼ればいずれ突破される可能性があります。だからこそ重要なのが、佐々木成三さんが繰り返し強調する「複合防犯」という考え方です。

全三話でお届けした「自動車防犯最前線」。あなたの愛車を守るヒントが、日々の備えにつながることを願っています。

佐々木 成三

ささき なるみ 1976年生まれ。岩手県出身。元埼玉県警察本部刑事部捜査第一課の警部補。2017年に退職するまで埼玉県警に20年以上勤務する。主に刑事として勤務し、うち10年間を埼玉県警察本部刑事部捜査第一課で勤める。捜査一課においては、デジタル証拠を収集・解析するデジタル捜査班長、スマートフォン等の解析を経験し、サイバー犯罪捜査においても知識を有している。
警察を退職後は「犯罪を生まない環境作り」を目指し、コメンテーターとして多数の番組に出演するほか、講演活動やドラマ監修など幅広く活動。YouTubeチャンネル「佐々木成三の攻める防犯チャンネル」を開設。2026年4月からは一般社団法人自動車盗難防止協会の防犯アドバイザーに就任した。

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