シビックカントリーやファミリアNEOも! 今見ても超個性的な昭和・平成の派生車をプレイバック!!
あまりにもマニアックだった派生車たち【前編】ベース車に何らかの手を加えて発売される『派生車』と呼ばれるクルマ。ベース車にはない魅力をプラスしてターゲットを広げたり、その時代のブームに乗るために特化した装備を追加したり、はたまたまったく違うシルエットを持ったりと、そのアレンジはさまざま。個性が強く、マニアックな存在となったクルマたちを振り返ります。
派生車はベース車よりも個性的!?
ベース車の魅力を生かしつつ、ボディー形状を変更して荷室を拡大したり、オープンルーフにしたりと、新たな価値が付け加えられている派生車。写真は、右が日産マーチ、左がマーチBOX
コンパクトカーやセダンのルーフをストレッチしてつくられたワゴンタイプの派生車は昔から多く存在していた。トヨタだとクラウン(セダン)とエステート、日産ならスカイラインとバン(途中からはステージアへ)、スバルならレガシィとツーリングワゴンなど、ワゴンタイプにすることで「多くの荷物を運べる」という価値が加えられていた。その後は派生するジャンルが広がり、ワゴンタイプだけでなく、オープンカー型や、車高を上げたSUV型、ピックアップトラック型など、さまざまなタイプが登場している。
自動車メーカーとしては、派生車の開発には、ベース車とプラットフォームを共通化することで、2つあるいはそれ以上の車種を並列開発できるというメリットがある。たとえばBピラーから前側のパーツを共用すればコスト低減も可能だ。
しかしながら、たとえばFRセダン「マークX」とは縁もゆかりもないFFのワゴン「マークXジオ」のように、場合によっては名称のみ共用化することも。このあたりは自動車メーカーの都合に合わせてつくられているようだ。
派生車に関しては、顧客側にとっても、バリエーションが増えることで、類似のデザインでありながら、目的に応じて「選択」ができ、クルマ選びがしやすくなる、というメリットがある。本稿では、これまで登場した国産の派生車とそのベース車について、ご紹介していこう。
例えば、リアドアから前側をベース車と共用するなど、開発コストと期間の大幅削減となるので、派生車は作り手にとって大いに都合がいい。写真は日産ブルーバード オーズィー
ホンダ・シビックカントリー(1980年登場)
ホンダ初のステーションワゴンは
人気コンパクトの派生モデル
ホンダ初のステーションワゴンであるシビックカントリー。シビックの全長を伸ばし、広いラゲッジスペースを追加した
1980年1月に誕生した2代目シビックの派生車「シビックカントリー」。シビックが持つ動力性能、効率のいいパッケージング、経済性などはそのままに、ルーフを延長して荷室スペースを拡大したことで、多用途に使用できるステーションワゴンとなった。
後方に張り出した大きなリアバンパーが特徴的で、エンジンは1500ccのCVCC水冷直列4気筒エンジンを採用、5速マニュアルミッション仕様とホンダマチック仕様の2つがあった。なお発売記念として、木目調サイドパネルが1,500台に標準装備された。
派生元はシビック
1979年7月に登場した2代目シビック。当初は3ドアハッチバックのみであったが、後にバンやカントリー、4ドアセダンといった派生車が追加された
日産ブルーバード オーズィー(1991年登場)
スタイリッシュなショートワゴンは
オーストラリア生産モデルから派生
豪州生産のブルーバードをベースにした5ドアハッチバック。前端からリアドアまではセダンと共通で、ルーフを後方へ延長した
豪州日産自動車で生産販売していたピンターラ(日本名はU12ブルーバード)をベースに、ルーフを後方へ延長してショートワゴンにした5ドアハッチバックの派生車が、ブルーバード オーズィーだ。
オーズィーとはオーストラリア人を差す愛称。オーストラリアから日本へ輸出する逆輸入車であり、豪州向けのピンターラにはなかったスポーティーなSR20DEエンジンと4速ATの1グレードを設定。内外装には、国内向けブルーバードにはない専用アイテムが投入されており、かなりの贅沢仕様であった。
派生元はブルーバード
オーズィーのベース車は1987年に登場した8代目ブルーバード(U12型)。フルタイム4WDアテーサや4WAS(4輪アンチスキッドブレーキシステム)を搭載したスポーティーモデルのSSSが有名
三菱ギャランスポーツ(1994年登場)
ちょっと出るのが早かった!?
セダンベースのクロスオーバー
5ドアハッチバックセダンのギャランスポーツ。ルーフレールやグリルガード、リアウイングといったさまざまなアイテムが追加されていた
90年代のRVブームにのって、セダンのギャランをベースに、大きなリアハッチゲートを与えた5ドアハッチバックセダンがギャランスポーツだ。キャッチコピーは「GTの走りと、RVの楽しさ」。RV向けのルーフレールやグリルガード、さらにはスポーティーなデザインのリアウイングも標準装備していた。
当時は、奇抜なデザインの珍しいクルマとしてみなされてしまっていたが、昨今はクラウンクロスオーバーのようなセダン派生車が人気となっていることを考えると、ギャランスポーツも時代が違えばヒットしていたかもしれない。
派生元はギャラン
ギャランスポーツのベース車は、1992年に登場した7代目ギャラン。全幅1730mmと前型よりもワイドになり3ナンバーサイズとなった、正統派の4ドア大型セダンだ
マツダ・ファミリアNEO(1994年登場)
日本では需要が少なく短命に終わった
3ドアハッチバック
3ドアハッチバックのファミリアNEO。セダンよりも全長やホイールベースが短く、コンパクトでスポーティ-なデザインが特徴的
マツダの主力小型乗用車であるファミリアをベース車とした、3ドアハッチバックの派生車であるファミリアNEO。全長やホイールベースを短縮し、リアもなだらかに下げたノッチバックスタイルに仕立てられており、流麗なボディーデザインは5ドアハッチバックのランティスにも似ていた。パワートレインは、1.5Lエンジンと1.8Lエンジンに4速ATと5速MTを設定していた。
発売当時、3ドアハッチバック車への需要が低い日本では支持されず、わずか1年半ほどで販売終了となった。
派生元はファミリア
ファミリアNEOのベース車は、1994年に登場した8代目ファミリア。海外市場を強く意識しており、前席に身長180cmの大人がゆったり座れるキャビンスペースを確保していた
スバル・インプレッサ グラベルEX(1995年登場)
スバルが得意とするクロスオーバー化は
このモデルが元祖的存在
5ドアショートワゴンのインプレッサ グラベルEX。ベース車に対し、グリルガードやルーフレール、背面タイヤの追加や車高アップをした派生車だ
90年代のRVブームにのり、初代インプレッサスポーツワゴンをベースに、さまざまなオフロード車風のアイテムを投入してつくられた派生車が、インプレッサ グラベルEXだ。最低地上高は30mm高められ、グリルガードやルーフレール、背面タイヤの追加など、オフロードテイストが与えられていた。エンジンは最高出力220PSの水平対向4気筒ターボでトランスミッションは5速MTまたは4速AT。
そのコンセプトは、後のXVやクロストレックにつながるクロスオーバーSUVだが、当時はまだ珍しい存在で、残念ながらヒットしたとは言えなかった。
派生元はインプレッサ
インプレッサ グラベルEXのベース車は、1992年に登場した初代インプレッサのスポーツワゴンWRX。これ自体もセダンの派生車だった
トヨタ・カローラ系は世代を問わず派生車が多い
1983年に登場した5代目カローラはFFだったが、同時にFRのカローラレビンも用意されているなど、さまざまな派生車が共存していた
昔から派生車が多かったトヨタのカローラ。1983年に登場した5代目カローラでは、4ドアFFセダンと5ドアFFリフトバック、そして3ドアFFハッチバックの他に、FR形式の2ドアと3ドア(カローラレビンと姉妹車スプリンタートレノそれぞれに存在)も登場した。
プラットフォームや駆動方式も異なるモデルが共存していた。現行カローラにも、セダン、ツーリングワゴン、クロス(SUV)、スポーツ(ハッチバック)、そしてGRカローラと、バリエーションが豊富。顧客の需要に合わせて、セダンからGRまでつくり分けるトヨタの技術力と経営手腕が垣間見える。
5代目カローラをベースに、トランク部分を切り詰めてスポーティーな2ボックスハッチバックとした初代カローラFX(1984年登場)
小型車クラスで初の4ドアハードトップとして登場したカローラセレス(1992年登場)。ルーフが低く、スポーティーなプロポーションだった
8代目カローラをベースとする小型ミニバンである初代スパシオ(1997年登場)。2列シート4/5人乗りのほか、3列シート6人乗りもあった
6月15日公開予定の後編ではコンパクトカーや軽自動車に広がった派生モデルを紹介します。ぜひこちらもチェックを!
吉川賢一
よしかわ・けんいち 日産自動車にて11年間、操縦安定性・乗り心地の性能開発を担当。スカイライン等のFR高級車の開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリーや、作り手視点の面白さも伝えるため執筆中。趣味はタミヤRCカーグランプリ等のレース参戦、サウナ、筋トレ、ゴルフなど