ハコスカ・セドグロ・アコード・ギャラン… ステーションワゴンの誕生から最盛期を振り返る
セダンから派生した、名車のワゴンたち…追憶の昭和・平成ステーションワゴン【前編】昭和、平成初期の時代、ステーションワゴンがファミリーカーやレジャーのためのクルマの代表的な車種のひとつだった。当時多くのセダンにはワゴンやバンモデルも設定があり、またステーションワゴンブームの頃には、ワゴン専用ボディーのクルマも登場した。ミニバンの台頭によりその座は奪われていったが、ワゴン黎明期からブーム全盛の頃を、懐かしのモデル紹介とともに振り返る。
昭和のワゴンは、セダンの派生モデルが多かった
2ドアクーペや4ドアハードトップがカッコいいとされていた昭和の時代、商用車と同じボディーのワゴンは地味な存在だったが、使い勝手の良さから愛用者は多かった
ステーションワゴンとは、セダンの車体をベースに、ルーフとリアオーバーハングを車両後端まで延長し、広い荷室を備えたボディータイプのこと。セダンをベースに設計するので横展開がしやすい、といったメーカー側の事情もあって、1970年代には、新型セダンの発表と同時に、ステーションワゴンタイプも発表されるのが常だった。そんなステーションワゴンが一気に注目を集めるようになったのが、平成初期に起こった、怒濤のステーションワゴンブームだ。
その火付け役は、スバルの初代レガシィツーリングワゴン(1989年デビュー)。ブーム以前のワゴンは、商用車のイメージが強くマイナーな存在だったが、バングレードを設定せず、スタイリッシュでハイパワーなレガシィツーリングワゴンの登場により、「荷物を運ぶクルマ」から「レジャー用途に長けたお洒落なクルマ」へとイメージが変化した。海やキャンプ、スキーなどレジャーを楽しむ若者たちが、この進化に敏感に反応。ステーションワゴンは一大ブームとなったのだ。
1989年に登場したスバルの初代レガシィツーリングワゴン。ハイパワーなターボエンジンと優れた4WD、バン仕様を持たないスタイリッシュな外観により、ワゴンブームの火付け役となった
1990年代から2000年頃にかけて、このレガシィツーリングワゴンを中心に、トヨタ、日産、ホンダ、三菱、マツダなどの国産メーカーから、ステーションワゴンが続々と登場した。
王者レガシィが市場を席捲したタイミングを見計らったかのように、他の国産メーカーも新型ワゴンを開発し、矢継ぎ早に市場投入。RVブームに寄り添ったアウトドア系ワゴンや、280馬力のエンジンを積んだハイパワー系ワゴンなど、実用性やデザイン、パフォーマンスに優れたクルマが多く登場し、誰もがステーションワゴンを欲しがる黄金期が続いた。
今回は、そんな国産ステーションワゴンの中でも、昭和中期から平成初期にかけて登場した懐かしのモデルをピックアップしてご紹介しよう。
名車「ハコスカ」にもワゴンモデルがあった
日産スカイライン エステート
ハコスカの愛称でおなじみ3代目スカイラインのエステート。プリンスが日産に吸収合併された後、新規発売された一台だ
4ドアセダンの4灯式テールランプとは異なり、エステートには縦型テールランプがボディーコーナーに装着されていた
3代目C10型スカイライン(1968年デビュー)といえば「ハコスカ」の愛称で知られるが、その4ドアセダンや2ドアハードトップと同じ顔をしたワゴンタイプがスカイラインエステート(ワゴン)だ。4ドアセダンのルーフを車両後端まで延長し、Dピラーを追加。リアに大型ハッチゲートを装着したステーションワゴンボディーのエステートは、いま見ても通用するほどにスタイリッシュ。アウタードアハンドルのキャラクターラインと、リアドア下側にあるサーフィンラインは、どちらもリアエンドまでつながっており、簡素になりがちなワゴンを流麗に見せることに成功している。エンジンは当初1.5Lだったが、1969年には1.8Lも設定された。
直線的なシルエットが渋かった硬派な一台
日産セドリック/グロリアワゴン
水平基調のシンプルなボディーラインが特徴だった6代目グロリアワゴン(1979年デビュー)。ワゴンには角型、バンには丸型の4灯式ヘッドライトが採用されていた
キャッチコピーはセドリックが「快適ローデシベル空間」、グロリアが「サイレント・グロリア」。各部の剛性をアップ、吸遮音材を投入し、車室内の静粛性を高める改良が施されていた
セドリックとグロリアは、ここで紹介する430系の2型前(230系)から姉妹車となり、「セドグロ」と呼ばれ人気を博した日産の高級車。豪華だがゴテゴテとしていたデザインの4代目セドリック/5代目グロリア(330系)に対し、430系は直線的なラインと平面を強調した未来的なエクステリアへと進化。アメ車のデザインの影響を強く受けたモデルでもあり、若者たちのカスタムベース車としても人気が高かった。4ドアハードトップと4ドアセダン、ステーションワゴンおよびバンをライン。ワゴンは、荷室部のルーフを一段高くし積載性を高めたキャップルーフを採用した。荷室には後ろ向きかつ折りたたみ式サードシートも備え、3列8人乗りというミニバン顔負けの多人数乗車設定もあった。
レガシィに対抗して作られたミディアムワゴン
トヨタ・カルディナ
トヨタの初代カルディナ(1992年デビュー)。レガシィツーリングワゴンの大ヒットに対抗し、コロナをベースに開発されたステーションワゴン
若者が好みそうな流麗なデザインの初代カルディナだったが、当時の週末スキーヤーに愛されていたのはレガシィのほうだった
1990年代初頭のレガシィツーリングワゴンの大ヒットを受け、自動車メーカー各社はここぞとばかりにステーションワゴンを投入した。その中でトヨタが用意したのが初代カルディナだ。コロナをベースにつくられたカルディナは、流線的なラインを生かしたスポーティーなデザインが魅力的だった。FFモデルのほか、2Lガソリン車には4WDも設定。のちに最高出力175PSのスポーツツインカムエンジンを搭載したスポーティーモデルや、バンパーガードやアンダーガードを備えたRVモデルも投入し、幅広いユーザーに好まれていた。
ランエボ譲りの装備も備えたアグレッシブな一台
三菱レグナム
対レガシィとして三菱自動車が用意したレグナムは、逆スラントノーズのマスクや、スタイリッシュなリアデザインが好評だった
1998年には、「VR-4 type-S」をベースに、専用エアロ、ラリーアート製スポーツマフラー、RECARO製フルバケットシートなどを備えたド迫力な特別仕様車「スーパーVR-4」も登場
8代目ギャラン/アスパイアをベースとしたステーションワゴンであるレグナム(1996年デビュー)は、ギャランに対してリアオーバーハングを延長。4輪すべてにマルチリンクサスペンションを装着するなど、直進性やコーナリング性能に優れたモデルであった。最高出力206㎾(280PS)の2.5Lツインターボエンジンを積んだ最上位グレード「VR-4」には、当時のランエボシリーズに搭載されていたアクティブヨーコントロールシステム(AYC)も採用。5速マニュアルミッションの設定もあり、ファミリーカーでもスポーティーな走りを楽しみたい、クルマ好きお父さん垂涎(すいぜん)のハイパワーワゴンだった。
最先端の機能が満載だった大ヒットモデル
ホンダ・アコードワゴン
国内生産となった3代目アコードワゴンは、セダンが5ナンバーに回帰したのに対し、ワイドフェンダー化により3ナンバー登録であった
特徴的なリアゲートまわりのガラスウインドーを持つアコードワゴン。当時のステーションワゴンの中でもスタイリッシュさが際立った
ホンダが1997年に投入したステーションワゴンである3代目アコードワゴン(アコード全体としては6代目)。アコードワゴンは、先代まではアメリカで開発・生産され、アメ車のようなおおらかな雰囲気を持っていたが、このモデルより国内生産へと切り替わり、シャープでスタイリッシュな印象が強まった。アコードシリーズは先進性と高機能がウリで、4輪ダブルウィッシュボーン式サスや、電動モーターの駆動力でハンドリングをアシストする電動パワステ、世界初のふらつき運転検知機能、HIDヘッドライトなどを備えていた。1999年には、最高出力200PSの2.3L VTECエンジンを搭載する「SiR」がワゴンに追加。スポーツワゴンとしても人気だった。
商用バンだけど趣味グルマとして人気!
トヨタ・プロボックス
オフロードタイヤを装着したり、ルーフラックを加えて積載量を増やすことで、アウトドアシーンでの使い勝手を高めるカスタムが人気
トヨタ・プロボックスは、カローラバンの後継モデルとして2002年に登場したトヨタの代表的な商用バン(2013年までは乗用ワゴンもあった)。近年、適度な大きさのボディーサイズと、使い勝手の良い荷室が注目され、レジャー用の趣味グルマとしての需要が高まっている。商用車ゆえに内装はシンプルでチープだが、プロボックス専用パーツも豊富にあり、自分好みにカスタムすることも可能。とくにキャンプ愛好家からは注目度が高い。
トヨタの「働くバン」であるプロボックス。頑丈な車体と広い荷室、そしてリーズナブルな価格など、商用車に求められる要件を追求してつくられたモデルだ
ステーションワゴンの記事はこちら
吉川賢一
よしかわ・けんいち 日産自動車で操縦安定性・乗り心地の性能開発を専門に、スカイラインなどの開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリー、つくり手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味はカーメンテナンス、模型収集、タミヤRCカーグランプリ参戦。最近はゴルフとサウナにもハマり中。
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