プリメーラ・アルテッツァ・マークⅡ・アテンザ… 高級感を押し出した平成のワゴン5選
追憶の昭和・平成ステーションワゴン 【後編】ミニバンがファミリーカーの主役となる前、ステーションワゴンがファミリーやレジャーのためのクルマだった。後編では、ミニバンにその座を奪われつつあるなか、プリメーラ、アルテッツァ、アテンザなど、高級感を重視したデザインで生き残りをかけた印象的なステーションワゴンをピックアップする。
平成のワゴンは、高級感を重視したモデルが揃う
ステーションワゴンは、走りのよさに加えて高級感を演出するモデルが多いが、なかでもマツダ・アテンザワゴンは、MAZDA6ワゴンと車名が変わる以前から高級感にあふれるインテリアだった
1980年代末から始まったステーションワゴンブームであったが、2000年を過ぎた頃から、6名以上が乗車できるミニバンや、スタイリッシュなSUVへとトレンドが移行したことで、それまでの「ステーションワゴンであれば売れる」といった時代は終焉に向かっていく。「人を運ぶ」という目的に対して、ステーションワゴンよりも優れるミニバンの勢いはすさまじく、ステップワゴン、セレナ、ノア/ヴォクシーといったミドルクラスミニバンが勢いを増していったのだ。
この時期にステーションワゴン開発から撤退し、ミニバンやSUVへ主力モデルを変更していった国産メーカーは多く、カルディナ、ステージア、セドグロワゴンといった名門国産ワゴンたちも消滅。2010年にはステーションワゴンの車種数は全盛期に比べ、半分以下となった。とはいえ、2000年代にも、生き残りをかけたステーションワゴンには、当時のミニバンには少なかった「高級感」「プレミアム」といったハイクラスなイメージ付けをしたモデルが多かったように思う。ワゴンならではのスタイリッシュなデザインなど、ミニバンに負けない魅力が最大限盛り込まれていて、いま振り返っても輝いているモデルが多かった。
ワゴン冬の時代を生き延びた、2000年代の国産ステーションワゴンたちを振り返ろう。
美しさと機能性を併せ持つ新しいワゴン
トヨタ・アルテッツァ ジータ
FRスポーツセダンのアルテッツァをベースとした5ドアハッチバックであるアルテッツァ ジータ(2001年デビュー)。上級グレードは3L直列6気筒エンジンを採用していた
特徴的なリアのバックドアは軽量化のためアルミ製。ちなみにジータとはイタリア語で「小旅行」を意味する
1998年に登場した後輪駆動スポーツセダン、トヨタ・アルテッツァ。その車体をベースに5ドアハッチバック化したのがアルテッツァ ジータだ。エクステリアは、広い荷室のあるステーションワゴンというよりも、トランクルームを拡張したシューティングブレークタイプであったが、絞り込みが強く流麗で上品なリアデザインが好評だった。上位グレード「AS300」に搭載されたエンジンは、アリストやソアラなどトヨタの高級カテゴリーに採用されていた3L直列6気筒の2JZ-GEエンジン。海外市場では、当時まだ国外のみ展開していた高級ブランドだったレクサスのISスポーツクロスとして販売されていた。
未来感あふれる超個性的デザイン
日産プリメーラワゴン
先代モデルから全長・全幅を拡大し、3ナンバーサイズとなった3代目プリメーラワゴン。前年に販売終了となったセフィーロワゴンの実質的な後継車でもあった
個性的なデザインのP12型プリメーラは、経済産業省グッドデザイン賞の金賞を獲得したほか、海外でもデザイン賞を獲得するなど、デザインが高く評価された
日産の901運動(1990年代までに技術世界一を目指す)によって誕生した初代プリメーラ(1990年デビュー)は、「欧州車並みのハンドリングを実現」したとして、日本および欧州で大人気となったモデルだ。3代目にあたるP12型プリメーラワゴン(2001年デビュー)は、それまでのシンプルな装いから一新し、「一歩先行く大人のインテリジェントセダン&ワゴン」をコンセプトに登場。バックドアを傾斜させた、エレガントなシルエットは当時かなり個性的な存在だった。エンジンフードからバックドアまで丸味を帯びたワンモーションのフォルムは今見ても美しい。
マークⅡの名に恥じない高級FRワゴン
トヨタ・マークⅡ ブリット
FRベースの高級ステーションワゴンであるマークⅡ ブリット。セダンとは異なる、独立4灯ヘッドライトを採用していた
リアサスペンションには、走行中や荷物積載時に一定の車高をキープする「セルフレベリング機能」を備えたダンパーを装着していた(一部グレード除く)
マークⅡ クオリスの後継車として2002年に誕生した、マークⅡ ブリット。先代のクオリスは、マークⅡと言いながらカムリグラシアベースのFF車だったのに対し、ブリットは、110系マークⅡのプラットフォームを用いたFR車として登場し話題となった。重厚な顔付きに比べ、ややシンプルなリアまわりなど、デザインに賛否はあったが、専用チューニングを施したダブルウィッシュボーンサスを採用し、ワゴンボディー特有の捻じれを解消するためにボディー剛性も強化。さらにセダンと同じ最高出力280PSを発揮する2.5Lターボを設定するなど、プレミアムな乗り心地と余裕のある走りを兼ねた高級スポーツワゴンとして2007年まで販売された。
ラギッドなレガシィは北米で大人気に
スバル・レガシィ アウトバック
4代目となるBR系レガシィ アウトバックは2009年に登場。高い車高と大きなタイヤが特徴で、米国市場では特に根強い人気がある
主マーケットの米国市場に合わせるかたちで、先代アウトバックの全幅1770mmから、全幅1820mmにまでワイドになった
レガシィシリーズのクロスオーバーモデルであるアウトバック。初代登場は1995年のBG系レガシィ時代。アウトバックは海外仕様のネーミングで、国内ではレガシィ グランドワゴンとして販売されていた。その後レガシィ ランカスターを経て、3代目(BP系)から国内でもアウトバックのネーミングが使われるようになった。2009年に登場した4代目のBR系アウトバックには、2.5Lの他に、セダン、ワゴンには設定がない3.6Lの水平対向6気筒エンジンも用意。2010年には当時最新のアイサイトVer.2も追加されるなど、上級志向のクロスオーバーワゴンとして北米市場を中心に大ヒットした。国内でも注目はされていたが、実績はイマイチ。ツーリングワゴンにはない幅広のオーバーフェンダーによって1820㎜まで広がった車幅は、当時の日本国内市場ではちょっと大きすぎた。
美しさがあふれ出ていた流麗なシルエット
マツダ・アテンザワゴン
マツダのフラッグシップワゴンとして登場したアテンザワゴン
マツダのフラッグシップワゴンとして2012年に登場したアテンザワゴンは、新世代のSKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジーを取り入れた次世代モデルとして誕生。新デザインテーマ「魂動(こどう)」を取り入れた、スタイリッシュなステーションワゴンだ。上質な内外装や質感の高い走り、クリーンディーゼルエンジンの採用や、マニュアルトランスミッションの設定などが話題となり、日本だけでなくグローバルでトップセールスを記録した名車である。2019年の一部改良とともに、グローバルで共通のMAZDA6ワゴンへと名称変更したが、残念ながら2024年4月に販売を終了した。
国産ワゴンの数は激減
令和のいま新車で買えるステーションワゴン
最盛期に比べれば選択肢が激減してしまったが、走りの良さと広い荷室の使い勝手を併せ持つステーションワゴンを愛用するファンは、いまも少なくない。ファンにとっては、待望ともいえるトヨタ・クラウンのエステートモデルもデビューしたばかりだ。昨今は、ステーションワゴンとSUVとの区分があいまいになり、全高が低く乗用車と同じ感覚で運転できるクロスオーバータイプのSUVもステーションワゴンと同じカテゴリー内で比較されるようになってきた。2025年現在、新車購入できるステーションワゴンをいくつかご紹介しよう。
トヨタ・カローラ フィールダー。小回りが利くサイズ感や、燃費の良さ、経済性に優れ、リアシートを倒さなくてもゴルフバッグが4個搭載できる積載性も魅力。2025年10月末にて生産終了
トヨタ・カローラツーリングは、現行カローラシリーズのワゴンモデルとして2019年にデビュー。シリーズ共通のシャープなフェイスで、スポーティなスタイルが魅力的
全高1620mmほどのトヨタ・カローラクロスは、代表的な背の低いクロスオーバーSUVだ。アイポイントが低めなので、乗用車のように運転がしやすい。全長はカローラツーリングよりも5mm短い4490mmとコンパクト
スバルの2代目レヴォーグ。走行性能、安全性、先進性などが高水準にまとめ上げられている、国産ステーションワゴンの第一人者。最高出力275PSの2.4Lターボエンジンもラインアップする
2代目レヴォーグをベースに、最低地上高を200mmまでリフトアップしたレイバック。シンメトリカルAWDの効果もあり悪路でも高い走破性を誇る。エンジンは1.8L水平対向のみ
2016年に誕生したミツオカ・リューギ ワゴンは、縦型の大型グリルや丸型ヘッドランプなど、ミツオカらしい個性が魅力のクラシカルワゴン。ベース車はトヨタ・カローラ フィールダー。写真はアースカラーの専用ボディ色、トレッキングシューズをイメージした専用シートなどを備えた限定20台の特別仕様車「リューギ ワゴン アドベンチャー」
クロスオーバー、スポーツ、セダンに続き、遂に発売となったクラウンのエステートモデル。クラウンが持つ品格と機能性を併せ持つ「大人のアクティブキャビン」として登場。エンジンは2.5LのハイブリッドとPHEVの2タイプ。後席を折りたたむと長さ2mの完全フルフラットなスペースを生み出す。車中泊ファンも注目のクルマ
欧州車メーカーは、現在も日本市場にステーションワゴンを用意しており、国産車でのラインアップは少ないながら、日本でも一定程度の需要はある。きっかけさえあれば、再び日本でもステーションワゴン人気が高まる可能性はあるはずだ。先日発売になった新型クラウン(エステート)がそのきっかけとなってくれるか、今後の国産ステーションワゴンの動向に注目したい。
ステーションワゴンの記事はこちら
吉川賢一
よしかわ・けんいち 日産自動車で操縦安定性・乗り心地の性能開発を専門に、スカイラインなどの開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリー、つくり手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味はカーメンテナンス、模型収集、タミヤRCカーグランプリ参戦。最近はゴルフとサウナにもハマり中。
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