自動車整備技術で日本一に挑む! 自動車整備技能競技大会の舞台裏
安心・安全を支える自動車整備士たち【第4回】彼らはどうやって日本一の自動車整備士となったのか。背景には北海道ならではの特殊事情があった。
整備士は“クルマのお医者さん”とはよく言われてきたことである。愛車が不調をきたしたとき、それを診断して適切に直してくれる整備士は、いざという時に頼りになる存在だ。しかし、そのクルマも電動化の波にさらされ、時代と共に大きく変化してきている。それだけに、整備士としての技術や知識のアップデートは欠かせなくなってきているのは確かだ。
急速に転換が進むパワーユニット。電動化への流れは避けられない
事前に学習してきた電気系の整備技術を携え、競技に臨む廣井晃彦さん(湧別町農業協同組合)
中でも急速に転換が進んでいるのがパワーユニットである。従来の内燃機関から電動モーターを使う時代へと突入し、日本ではすでにエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッド車が新車販売の半数を占めるようにまでなった。さらにはモーターだけを使う電気自動車も着実に認知度を高めており、もはや自動車にとって電動化への流れは避けて通れなくなっているのだ。
今回、レポートしてきた「全日本自動車整備技能競技大会」(主催/一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会)も、そうした時代背景に対応することを想定してか、“第24回”大会では、競技車両としてシリーズ型ハイブリッドである「e-POWER」を採用する日産「ノート」が使われた。
シリーズ型ハイブリッドは、エンジンで発電し、その電力を使ってモーターで走行する。本大会では、将来の本格的な電動化時代を見据えて競技車輛を選定したのではないだろうか。これまでの競技車両は内燃機関のみが使われる車両であっただけに、これまでとは違う出題に戸惑うチームも多かったようだ。
競技大会で接客応対する佐々木昭弘さん(清里町農業協同組合)。この評価も重要なポイントとなる
実際、第24回大会で優勝した北見地方代表の佐々木昭弘さんも、「予想外の出題に、最初はちょっとどうしようかなと戸惑った」と話していたほど。しかし、競技大会では、電気系の故障について事前に勉強していた廣井晃彦さんの助けもあって、優勝につなげることができた。これは来たる本格的な電動化の時代を見据え、そうした時代の変化に合わせた学習も事前にこなしておくことの重要性を示していると言えるのではないだろうか。
困難な極寒地での整備作業。昭和の車両が多く入庫される理由とは
普段の穏やかな表情とは打って変わって作業中は真剣な表情となる廣井晃彦さん
その一方で整備士として、“クルマのお医者さん”としての役割を果たしていかなければならないのも確かだ。それを示しているのが、北海道ならではの特殊事情で、その一つが融雪剤による影響である。北海道で販売される車両は基本的に寒冷地仕様車ではあるが、「道路に散布される融雪剤には塩化カルシウム等が使われているため、それが車両の腐食へとつながるトラブルが北海道ではとても多い」という。そのため、ひどくなるとその腐食でボルトが折れ、その修理に想像以上の手間がかかることもあるそうだ。
さらに、本州に住んでいると想像できないのが、マフラーから出る水滴が凍結してエンジンがかからなくなってしまうこと。加えて、氷点下30度ともなるとバッテリー能力が極端に落ち、これもエンジンの始動に影響が出ることになるのだ。
実直な人柄がそのまま整備作業に現れていると上司からの評価も高い佐々木昭弘さん
そして、地域ならではの特殊事情としてあるのが、昭和の時代に活躍していた車両が今もなお入庫されることだ。中でも圧巻だったのが、佐々木さんが勤務する清里町の整備工場にあった三菱ふそう「Fシリーズ」や、日野「レンジャー」で、いずれも1980年頃に製造された車両である。これらはいずれも現役で活躍しており、農閑期である冬の間に整備を依頼されるのだという。どうしてこれほど年代を経た車両が多いのか。そこには北海道ならではの理由があった。
基本的に輸送範囲がほぼ地元エリア内であるために走行距離が伸びないことも理由の一つだが、何よりもトラックの荷台部分が北見地方特有の特装車となっていることに最大の理由があるという。それらの荷台は仕事に合わせた完全なオリジナルで、時には農業を辞めた人から譲り受けてそのまま使い続けることも少なくない。つまり、新たに特装車を発注するよりも、使い慣れたクルマを使い続けた方が作業面でもコスト面でもメリットが大きいというわけだ。
整備士として期待される結果は出す! その経験が優勝へとつながった
接客時は誰もがこの廣井晃彦さんの穏やかな表情に任せられる安心感を抱くはずだ
それだけに整備する上での苦労も多く、時には手に入らなくなってしまった部品を手作りすることも少なくないそうだ。そこには、「部品が入手できないから」と依頼をお断りしたほうが簡単だが、整備士として期待される以上、結果は出していくべきとの思いがこの二人には共通してある。それによって何世代も続く顧客からの信頼を獲得でき、それをやり遂げることで次の仕事への励みにもつながっていくのだ。
生真面目一直線のような佐々木昭弘さんも、おどけた表情を見せてくれる
これらはクルマのあり方が大きく変わる時代の流れとは逆を行く作業と言えるが、こうした環境の下で整備士としての実力が磨かれていったのは間違いない。そして、こうした経験が競技大会での柔軟な対応力として発揮され、優勝の栄冠を勝ち取ることにつながったのではないだろうか。
佐々木さんが今、力を入れているのが後身の育成。
北見地方チームが「全日本自動車整備技能競技大会」で優勝したのは今回で3回目(第1回・1977年/第18回・2011年/第24回・2024年)。当然、次回大会での優勝にも期待がかかるが、佐々木さんの後輩がすでに「挑戦したい」、と声を上げているという。競技大会への参加にあたっては、仕事が終わってから訓練を重ねることとなり、プライベートな時間がなくなることを嫌う人も少なくない。それだけに、この後輩の声には佐々木さんも将来への頼もしさを感じたそうだ。
廣井さんも「整備業界での労働環境は大幅に改善されている。クルマが好きで身体を動かすことが好きな人にとって整備士はやり甲斐がある仕事」と述べ、後輩が自分たちに続いてくれることへの期待を寄せた。
次回の「全日本自動車整備技能競技大会」は2026年に開催を予定。北見地方の連覇に向け、目標は既に定まっている!
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