車内を快適空間にすれば快眠にたどり着く、車中泊に「必要なモノ」と「あると便利なモノ」
車中泊の基本から応用テク、マナー・ルールまで、最小限の準備で始める手軽なクルマ旅をレクチャーコロナ禍ではさまざまな行動が制限され、休息時間の使い方も大きく変化しました。そのひとつが「車中泊」。目的地に向かって車を走らせ、夜は車内で寝る。宿泊場所はホテルなどの宿泊施設ではなく、車内で寝泊まりができるよう整備されたRVパークや車中泊OKの道の駅、キャンプ場など。できる限り人との接触を避けた上で、旅行を楽しむ新しい旅の形と言えます。今回から始まる車中泊連載では、ムック本『ライトキャンパースタイル』編集長、霜田奈緒が、基本テクニックから、応用テクニック、ルール、マナーなどあらゆる情報をお届けします。まず第1回は、これさえあれば車中泊が快適になる「必要なモノ」と、車内を快適な空間にして、車中泊をより楽しく過ごすために「あると便利なモノ」を紹介します。
快眠のために「必要なモノ」…基本は3アイテム
車内で寝るために、最も重要なことは寝るためにできる限り凹凸がないフラットなスペースを作ることです。
単純にシートを倒せばいいのでは? と思うかもしれませんが、実際にリクライニングなどを駆使してフルフラットにして寝てみると、シートにはさまざまな段差や、シートベルト部分の凹凸、硬い樹脂パーツなどあり、寝づらいなと感じると思います。
まずはこの寝づらさを解消し、快眠を得るために、最低限必要なアイテムを紹介しましょう。
車にもよりますが、シートの座面と背もたれにはかなりの段差があります。足を伸ばせる長さを取れたとしてもこれでは寝づらいのです
一見フラットに見えますが、走行時に身体の揺れを抑えるサイドサポートに厚みがあり、これも寝る際には気になります
「必要なモノ」その1…マット
まず1つめの「必要なモノ」は、段差や凹凸を解消するためのクッションやマット。重要なのは自分の車に合わせたマットを選ぶことです。
そのために購入前の愛車チェックを必ずしましょう。実際に自分の車で、最も長さが取れるシートアレンジにします。そこに寝てみて、どの部分の段差が気になるか、どのくらいの厚みや長さのクッションやマットがあれば、それらが解消できるかを把握しましょう。
マットは、テントの中で使うキャンプマットがおすすめですが、絶対にこれじゃないとダメというわけではなく、車種によって、段差の度合いや凹凸の大きさが違うので、試行錯誤しながらベストなアイテムを見つけていくのがいいと思います。
個人的に使い勝手がいいのは折りたたみ式のキャンプマットです。折りたたみ式マットは、ある程度の厚みがあり、折りたたむことでサイズを変えられるので、使いやすいのがポイントです。価格もお手頃で2,000円くらいからあるので2、3個そろえておくといいでしょう。
写真はトヨタ・ヴォクシー。最も長さが取れる2、3列目でフルフラットにします。このままでは段差が多く快適ではないですよね
これは私なりに見つけた最適解です。キャンプマットを2つ使って、3列目座面の段差、2列目座面の段差を解消します
エアマットがあるとさらに快適に
キャンプマットだけでも快適に寝られると思いますが、その上からエアマット(空気を入れて膨らませるマット)を敷くと、さらに快適度がアップします。エアマットは、硬い樹脂パーツなどがある場合に、その硬さを解消できるだけでなく、ある程度の段差をキャンプマットで解消した上に、エアマットを敷くとまるでベッドのような寝心地になるので、1枚持っておくと便利です。価格はシングルサイズで5,000円くらいからあります
「必要なモノ」その2…寝袋(シュラフ)
必要なモノ2つめは、寝袋です。車内は、風の影響は受けませんが、金属で覆われた空間は、車外同様に冷えます。夏場はまだしも春秋、冬に車中泊を楽しみたい人は必ず用意しましょう。寝袋を使うことで、座面の凹凸をある程度解消するといったメリットもあります。
寝袋を選ぶ際には、注意点がひとつあります。寝袋には、使用温度や快適温度が記されていて、これを基準に選ぶことが重要となります。使用する場所と季節の最低気温を調べた上で、それよりも使用温度や快適温度が5℃くらい低いものを選ぶのが良いとされています。メーカーによって限界温度、下限温度という表記がされていることもありますが、これは寒さを感じるが使えるという意味合いになるので、注意が必要です。
表記の仕方や呼び名はメーカーによって異なる場合があるので、購入時にしっかりと調べましょう。時期に合わせて数種類持っていると便利ですね。また、寝袋には、頭まですっぽりと覆うマミー型と、長方形の形をした封筒型の2種類があります。マミー型は、温度帯が低いものが多く、高価な場合が多いです。あまり寒い時期の車中泊はしないという人は、寝袋内が広く、また広げると掛け布団にもできる封筒型がおすすめです。
封筒のような形をしているので封筒型と呼ばれるタイプ。ファスナーを開けて2個連結できるものもある
こちらがマミー型と呼ばれるタイプ。頭まですっぽりとかぶるように使うため、寒さに強いが、身動きが取りづらい
「必要なモノ」その3…枕
快適な寝床を作って快眠を実現するには、枕も必要。車によっては、頭の位置が身体よりも下がってしまう場合があるので、そんな時は、枕を使って頭の位置を高めれば、快適さがアップします。
家庭用の枕では大きすぎるので、おすすめはやはりキャンプ用枕。空気を入れて膨らませるタイプやクッションタイプがあるが、どちらも使い勝手にあまり違いはありません。枕の厚みや肌触りの違いで好みのものを使いましょう。頭の位置に樹脂パーツなど硬い素材が当たる場合は、硬さを和らげるクッション性が高いものがあると快適です。
個人的におすすめなのは、クッションタイプ。肌触りがよく、家で使う枕と遜色ない心地よさが得られる。また滑りにくいのもポイント
これもあればさらに快眠!「あると便利なモノ」…7アイテム
ここまで紹介してきたマット・寝袋・枕は、車内で寝るために最低限必要なモノだが、ここから先は、睡眠時を含め、車内で過ごす際に「あると便利なモノ」を紹介しましょう。
たとえば、車外から入ってくる日差しを遮るサンシェード、外からの視線を気にすることなく過ごせるカーテン、エンジンをかけずに明るさを確保できるLEDランタンなどなど。車中泊をする場所によっては、車の外にアウトドアギアを出してくつろぐことができず、寝るまでの間も、車内で過ごす場合もあります。その際に持っておくと、より快適な休息時間を過ごせる便利アイテムです。
「あると便利なモノ」その1…サンシェード
フロントガラスからの日差しをしっかりガード。写真のサンシェードは車種専用設計でフィッティング抜群
カー用品店で売っているサンシェードは、駐車時に車内の温度上昇を抑えるためのものだが、車中泊時は日差しよけとしてはもちろん、車外からの他人の視線を遮る上でも重宝する。汎用品(はんようひん)でもいいが、車種別に設計されたものなら、さらに効果的。
「あると便利なモノ」その2…サイド用サンシェード
こちらは厚めのキルト生地で遮熱性を高めた汎用タイプ。取り付けは付属の吸盤で留めるだけ
こちらはマグネットで簡単に装着できる。遮熱効果はなさそうだが、外からの日差しと視線はしっかりとブロックできる
フロントガラスだけをカバーしても、サイドから丸見えでは意味がない。サイドガラス用は、主に汎用品で、サイズや厚み、機能性の違いでさまざまなものが販売されている。まずは自分の車のガラス面のサイズを測り、ベストな大きさのものを見つけよう。取り付け方は吸盤式かマグネット式。
「あると便利なモノ」その3…ポータブル電源
家電など、消費電力の大きなものを使いたい場合は、ポータブル電源がおすすめ。サイズが大きいので置き場所も考えておこう
スマホの充電程度なので、ポータブル電源まではいらないという人は、モバイルバッテリーを持っておけばOK
車中泊の際、周囲に迷惑がかかるので、車のエンジンをかけっぱなしにしたり、エンジンタイプの発電機の使用はNG。そこで便利なのが、AC100Vのコンセントが使えるポータブル電源です。容量によって値段と大きさ、重量が変わってくるので、使用する機器の消費電力と使用時間を考えて選びましょう。最近ではコンパクトなモバイルバッテリーでもコンセントが使えるモデルが登場しています。
「あると便利なモノ」その4…LEDランタン
アシストグリップなどに引っ掛けておけば、車内全体を明るく照らせるし、転がる心配もなし
車内で過ごす際、エンジンをかけないまま車のルームランプを使うと、バッテリーが上がってしまう危険性があるので、車中泊時は車のルームランプをオフにしておきましょう。その代わりに、電池やバッテリー駆動のLEDランタンを用意しておけば車内で快適に過ごせます。ランタンはスポット的に明るいものではなく、全体に明かりが広がるもので、光量調整ができると便利です。
「あると便利なモノ」その5…ミニテーブル
車内でくつろぐ時間は、お皿やコップ、スマホなどを置けるテーブルがあると便利
車内で食事をしたいときなどに重宝する、小さめのテーブル。車内には意外とフラットな面がないので、お皿などを安心して置ける場所が少ないのです。あまり大きいと限られたスペースを占領してしまうので、コンパクトで就寝時にはサッとしまえるよう、簡単な折りたたみ式テーブルがおすすめです。
「あると便利なモノ」その6…小物入れ
写真はスマホなどを入れるポケットに加えて、ティッシュボックスも収納できる多機能な収納ケース
就寝時に困るのが、スマホや車のキーなど小物の置き場です。置き場所を決めずに適当に置いておくと、朝起きたときにどこだっけ? と捜すはめになるのは車中泊あるある。シートの隙間からフロアに落ちて捜すのにひと苦労なんてこともあります。写真のような小物入れを用意しておき、まとめて収納しておきましょう。
「あると便利なモノ」その7…シューズトレイ
シューズトレイに入れておけば雨天時などでもフロアが濡れたり汚れたりせず、靴を脱いだ状態でフロアに足を置けるので便利
車内で過ごす際は、靴を脱いでリラックスしたいですよね。その際に靴をフロアに置いたままだと、いざ履くときに左右そろっていないことが多い……というのも車中泊あるあるのひとつ。フラットにした寝床から、フロアに手を伸ばして靴をそろえるのは、結構面倒なのです。ちょっとしたことですが、シューズトレイを用意しておくとこの問題は一発解決です。
純正装備も使いこなせば、なお便利
純正で備わっている装備が車中泊に役立つ場合もあります。たとえばミニバンの2列目以降に備わっているサンシェード。そもそもプライバシーガラスの車が多いので、メッシュ地でも十分に日差しや視線を防ぐことができます。また就寝時には後席のドリンクホルダーに、ドリンクはもちろん、小型のLEDランタンを置くことができたりと、意外と役に立ちます。便利グッズを買いそろえる前に、一度愛車の装備が車中泊に使えるかどうかを考えてみましょう。
ヴォクシーに標準装備されているスライドドア部のサンシェード。トリム内から引き出すだけなので使い方も簡単
ミニバンの2列目や3列目などに装備されているドリンクホルダーは、車中泊時には便利な小物入れとして使える
今回からスタートした、連載企画「簡単・快適! 車中泊マニュアル」。第1回は、まず寝るために「必要なモノ」と、持っているとさらに快適な車内空間が実現できる「あると便利なモノ」を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。車や使用環境によってベストなアイテムは違うので、自分の車中泊を想像しながら、ベストなモノをそろえてみてください。次回は、快適な寝床作りを深掘りしていきます。お楽しみに!
霜田奈緒
しもだ・なお 2001年から、月刊誌を中心に、300冊以上の編集に携わってきた自動車専門誌の編集者。子供の頃から車好きで、親が乗っていたボルボ240の音を聞き分け、親の帰宅を察知し勉強を始めていた。好物はジャンル・時代問わずの車のカスタム・チューニング。近年はキャンプにハマり、愛車もアウトドア仕様。ギャラン、レグナム、GTO、アストロ、ボルボC70、トゥーラン、XC70と、とりとめのない愛車遍歴。