特集

災害時の避難にも役立つ車中泊ノウハウ

車中泊の始め方4

2022.05.04

構成=ダズ

2022.05.04

構成=ダズ

車中泊の魅力と基本を、全4回にわたってご紹介しているこの企画。最終回となる今回は「車中泊避難」についてご紹介します。大地震や大雨など自然災害が発生した際、避難所を利用するのではなく、車を「避難場所」として使うのが車中泊避難です。2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震をきっかけに、注目されるようになりました。災害時に役に立つ車中泊ノウハウについて、雑誌『ライトキャンパースタイル』編集長 の霜田奈緒さんにしてアドバイスいただきました。

車中泊避難の良いところ・悪いところ

車中泊避難

どんな状況においても車中泊避難がベストというわけではないので、災害状況や家族の事情に応じて判断しよう。

「車中泊避難とはその名の通り、避難生活を車内で行うことです。これにはメリットもデメリットもあります。災害時には心や体にさまざまな負担がかかりますので、デメリットも事前に理解しておき、状況的に車中泊避難が適しているかを判断できるようにしておきましょう」

車中泊避難のメリット

  • 自宅や避難所での二次災害の不安がない
  • ペットとの同伴避難ができる
  • プライバシーが守れる
  • 車を移動手段としても使える

ペットとの車中泊避難

ペットがいる家庭では、避難所での集団生活がしづらい場合もあるので、車中泊避難の可能性を考えて準備を。

車中泊避難はプライバシーが守れる

大勢の人と寝泊まりをする避難所に比べれば、車中泊避難はプライバシーを確保しやすい。

「自宅や指定の避難所に倒壊や二次災害の危険がある場合、車中泊避難は有効な避難方法のひとつです。ただし、車中泊する場所が安全な場所であるかどうか、救助活動などの妨げにならないかは十分に確認しましょう。

また、プライバシーが確保できるのもメリットです。大勢の人が集まる避難所では、なかなかプライバシーの確保は難しいですし、周囲に気を使うことも多いものです。家族の状況によっては車中泊をベースとした避難生活のほうが、ストレスがかかりにくい場合もあります。

さらに、避難所はペットと同じ空間で生活できない場合もあるので、ペットと同じ空間で避難生活を送りたい、という場合にも車中泊が活用できます。災害時においてもペットの安全確保や飼養は飼い主の責任です。環境省が発行した『人とペットの災害対策ガイドライン』や、居住区域の災害対策等を事前に確認しておきましょう」

車中泊避難のデメリット

  • 自治体などの支援物資や情報を得にくい
  • エコノミークラス症候群などの健康リスクがある
  • 家族全員の就寝スペースを取りにくい
  • トイレを自ら確保し、衛生管理をしなければならない

避難時の支援物資

避難所は車中泊避難に比べ、支援物資や災害状況などの情報を得やすい。車中泊避難の場合は、情報不足で孤立しないよう情報収集は必須。

エコノミークラス症候群

狭い車内で同じ姿勢でいるのはエコノミークラス症候群の危険性がある。車外に出て適度に体を動かしたり、水分補給、マッサージなどを心がけよう。

「では、デメリットは何か。ひとつ大きなことは健康リスクです。避難所生活でもウイルス感染などのリスクはありますが、車中泊避難で起きやすいのが、エコノミークラス症候群です。エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢をとることで起きる疾患で、長時間体を動かさずにいると血流が悪くなって、血栓が生じ、呼吸困難や動悸(どうき)を起こす危険性もあります。たとえば運転席や助手席のシートを倒して寝ると、どうしても長時間同じ姿勢でいることになるので発症リスクが高まります。今回の特集で紹介したような寝返りができる就寝スペースを作るとよいでしょう。ときどき車外に出て適度な運動をする、車内で寝る際は、足を下げて寝ない、水分を定期的に摂取する、ふくらはぎのマッサージをするなどの予防対策をとりましょう。

また、車内の広いミニバンであっても、ストレスなく眠れるのはせいぜい大人二人、子供一人程度です。家族全員の就寝スペースが取れない場合は、場所が許されるならばテントを併用するなどの対策が必要です。

なお自主的な車中泊避難では、自治体が指定する避難所とは違い、支援情報などがタイムリーに届かない可能性もあります。避難所での情報収集も行いながら、孤立しないようにする注意が必要です」

災害時にも使える車中泊アイテム

車中泊グッズを車のラゲッジに積載

車中泊避難を考えている場合は、防災グッズと車中泊グッズをまとめて車内に入れるとどれくらいのスペースを使うかも把握しておくといい。

「第3回の記事で紹介した車中泊のマストアイテムなど、レジャーで使う車中泊アイテムは、そのまま車中泊避難にも使えます。これらのアイテムを活用して、少しでも快適な環境を作ることはストレス軽減にもつながります。

車中泊避難を選ぶ可能性がある場合、水や食料品など一般的な防災グッズに加えて、車中泊グッズもまとめて管理しておくと災害時に有効活用ができます。さらに、毛布やタオル、アイマスク、使い捨てカイロ、冷却シートなども用意しておくと便利です。

また、災害時はガソリンスタンドが閉まっていたり、給油所が大混雑するような事態もあり得ます。いざというときに余裕を持って行動できるよう、日頃から燃料は満タンにすることを習慣にしておくと良いでしょう」

トイレの準備は忘れずに

避難時に必要な簡易トイレ

ビニールパック型の携帯トイレや、簡易トイレは車中泊避難に限らず、災害時の備えとして持っておくと安心。

「車中泊避難で、困ることのひとつがトイレです。避難所でもトイレに関しては、数の不足や衛生管理などで問題になりがちですが、車中泊避難の場合、トイレがない場合もあります。トイレがないからといって、水分や栄養補給を我慢することは体調を崩す原因になるので絶対にNGです。そのためにも携帯用トイレや、災害時に使える簡易トイレなどを用意しておきましょう」

ポータブル電源はソーラー充電ができるものを

あると便利なポータブル電源

災害用としても非常に便利なポータブル電源。いざ使うときに困らないよう、日頃からバッテリー容量は気にしておくこと。

長期避難に備えてソーラーパネルがあると便利

長期の避難生活にも対応できるよう、ソーラーパネルの充電キットを併せて持っておくと便利。

ポータブル電源があれば温冷庫なども使える

大容量のポータブル電源であれば、温冷庫や電気毛布、電気ケトルなど消費電力の大きいアイテムにも使えるため、避難生活のストレスも軽減できる。

「災害時の備えとしても注目されているポータブル電源。停電時でも、情報源として重要なスマートフォンの充電ができるため、それだけでも安心感が違います。また、ポータブル電源の容量にもよりますが、たとえば1000Whのポータブル電源があると、冷温庫や電子レンジ、電気ケトル、電気毛布などを使うことも可能です。

注意すべきは、使用する電化製品の消費電力がポータブル電源の定格出力を超えないこと。どの電子機器をどのくらいの時間使うかを考えて、ポータブル電源の容量を決めましょう。1000Wh以上の容量を持ったモデルがあると安心です。ポータブル電源への充電は車の電源ソケットでも可能なものが多いですが、車のエンジンをかける必要があるので、オプションなどで用意されている充電用のソーラーパネルがあれば併せて持っておくと、容量不足の不安も解消できます。

災害など非常時に、車中泊の経験がなくいきなり実践しようとしても、過酷な状況や精神状態を考慮すると、快適な車中泊避難の実現は難しいと思います。普段からアウトドアレジャーの一環として車中泊を体験しておくと、楽しみながらノウハウやアイテムが蓄積され、大いに役立つと思います」

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