愛車で車中泊を楽しむための基本テクニック
アウトドアを手軽に満喫! 車中泊の始め方2最近ますます注目を集める「車中泊」の楽しみ方を全4回にわたってご紹介しているこの企画。2回目となる今回は、車中泊の基本テクニックをご紹介します。車中泊ができる車としてイメージされやすいのは、寝具を車内に備えたキャンピングカーですが、じつは車中泊を楽しんでいる人の多くは、日常でも使用できる普通の車に乗っています。車種によって異なりますが、工夫をすれば普通の車でも車中泊を存分に楽しめるんです。手軽に車中泊を楽しむための雑誌『ライトキャンパースタイル』編集長の霜田奈緒さんに、誰でもすぐに実践できる車中泊の基本テクニックを教えてもらいます。
まずは動画をチェック!あなたの愛車が滞在型の快適空間に早変わり!
【就寝スペースの作り方】 STEP1
フラットスペースを確保する
「車中泊をするにあたって、最も大切なことは、快適な就寝スペースの確保です。車中泊では仮眠ではなく、しっかりとした睡眠を取ることが重要です。レジャーや観光を前に寝不足や体が痛い状態では楽しめませんよね。ポイントは、いかにして自分の体格より広いフラットなスペースを作るか、です。最近の車はシートアレンジが多彩で、フルフラットと呼ばれる真っ平らな状態が作りやすい車が多いのですが、そんな車でも実際に寝てみると、シートの座面と背もたれに段差があったり、硬い樹脂パーツの凹凸があったりと、そのままでは快適な睡眠がとりづらい車もあるのです。フルフラット=そのまま快眠が得られる、と思わないほうがいいですね」
まずは最もフラットな状態を作り出す。シートのリクライニングや前倒し、スライドを駆使して長くフラットなスペースを見つけよう。
「具体的にどうするかというと、まずは細かい段差などを無視して、フルフラットの状態を作ってください。そこで自分が寝られるスペースがあれば車中泊は可能です。自分は普段から膝を曲げて寝ているから、身長ほどの長さはいらないという人もいるかと思いますが、十分なスペースの中で膝を曲げて寝るのと、そもそも伸ばせないから曲げて寝るのでは、快眠具合が大きく違います」
【就寝スペースの作り方】 STEP2
試しに寝てみて凹凸を確認
写真のようにラゲッジを就寝スペースとして使う場合は比較的フラットだが、それでも傾斜や凹凸はある。
就寝スペースの長さを確保するためにフラットにしたシートをスライドすると、このような大きな隙間もできるが、解決は可能。
「次は、実際にフラットスペースに横になってみて、どの位置で寝るのがいいのかを探します。寝てみるとわかりますが、フラットスペースとはいえ、完全なフラットではなく、傾斜や段差、隙間があり、場合によっては硬い樹脂パーツが突き出している場合もあります。体のどの部分に傾斜や段差、隙間があり、硬い樹脂パーツが当たるかを把握します。車の前方を頭にしたり、後方を頭にしたり、フラットスペースが長い場合は、頭の位置を前後にずらしてみることも重要です。どの位置で寝るのが心地良いか、そして体のどの部分が不快かを確認しましょう」
【就寝スペースの作り方】 STEP3
不快な場所をマットやクッションで解消
大きな隙間は、クッションや折り畳み式のキャンプマットを折り畳んだまま埋めるとフラットになる。
大きめの隙間や段差を解消したら、最後にエアマットを敷くと細かな凹凸は気にならなくなる。
ミニバンなど、座面と背もたれの段差が大きい場合は、折り畳み式マットを使って段差解消!
「最後は不快な部分の解消です。不快の原因がシートの段差であれば、クッションや折り畳み式キャンプマットなどを使って段差をフラットにしましょう。硬い樹脂パーツが体に当たるようであれば、厚みのあるエアマットやキャンプマット、クッションを敷き詰めるという方法がおすすめです。コストパフォーマンスを重視するなら、段ボールを使ってフラットにするという手もあります。ここまでクリアできれば、いったん車中泊の準備は完了ですが、実際に車中泊旅に出かける前に、試しに自宅の駐車場で一晩寝てみることもおすすめです。準備段階では気づかなかった不快な部分が事前に発見できるかもしれません」
忘れずチェック! プライバシーを守る目隠しの方法
フロントガラスは、カー用品店などで販売されている汎用品のサンシェードでも十分。車種専用品ならなお良し。
運転席、助手席のサイドウインドウはガラスがクリアなので、シェードを用意しておくとプライバシーが守れる。
後席はプライバシーガラスなら外からは見えにくい。最近は純正装備でメッシュ状のシェードが付いている車もある。
「車の周囲で人の行き来があるような場所では、落ち着いて眠れませんよね。また朝方の日差しがまぶしくて目が覚めてしまうこともあります。そこで、就寝時のプライバシーを守るためにおすすめなのが、窓の目隠しです。フロントガラスはよくある折り畳み式のサンシェードで十分です。サイドウインドウは、手持ちのタオルをロープなどに引っ掛けるだけでもいいですが、ワンタッチで開く吸盤タイプのサンシェードが市販品として売っているのでそれを活用するのも手です。リアガラスは多くの車でプライバシーガラスが採用されているので、そのままでも外から見えることはないですが、気になる方は同様の方法で目隠しが可能です。
『もっと本格的に』ということであれば、車種ごとに開発された車中泊専用サンシェードというのもあります。窓の形状にぴったりとフィットするので、少しの光も入りませんし、遮熱効果や保温効果を備えている製品が多く、暑さ・寒さ対策にも効果的です。それと、万が一のことも考えて、就寝時はキーロックしておくことも大切ですよ」
油断大敵! 暑さ・寒さ対策も万全の準備を
メッシュ化できるシェードは、虫の侵入を防ぎつつ、車内の風通しを良くするのに便利。
モバイルバッテリーやポータブル電源が必要だが、扇風機を用意しておくと、涼しさはかなり変わる。
「車中泊は雨風に強いですが、暑さ・寒さに関してはテント泊同様、もしくはそれ以上に気を使う必要があります。まずは暑さに関して。暑い時期は、日が落ちてからもなかなか気温が下がりません。車内は密閉した空間なので、暑くなった空気はなかなか冷めず、夜間であっても熱中症の危険性は十分にあります。
エンジンをかけながらの車中泊は御法度(車中泊の始め方3で解説)なので、窓を少し開けておくなど車内の換気やこまめな水分補給は絶対必要です。さらにモバイルバッテリーなどで駆動する扇風機や遮熱効果のあるシェードも有効です。発汗が抑えられる冷却シートなども用意しておくといいと思います」
EVやPHEV、もしくは大容量のポータブル電源を持っているならば、電気毛布はかなり快適。
足先や腰など冷えやすい部分には使い捨てカイロも効果的。低温やけどに注意しましょう。
昔ながらの湯たんぽも実は便利。寝る前に寝袋の中に入れておくと、就寝直後からポカポカです。
「次に寒さ対策。冬場の車内は暖かいと思われがちですが、実は風の影響を受けないだけで、車内の気温は外と同じく低いのです。また、車のボディは鉄板でできているため、外気の影響を受けやすく、実際に寒い時期の車中泊で、ラゲッジのドアに足が触れていたり、サイドのドアに腰が触れていたりすると、冷たさが伝わってくるのがわかります。
対策としては、まず季節に合った寝袋を用意すること。寝袋には使用温度帯という目安があり、夏場に使うものと冬場に使うものは別モノです。車中泊スポットの気温を事前に調べ、見合った寝袋を持っていきましょう。
朝方に向かって気温が下がっていくので、就寝開始時よりも車内温度を下げないよう、ウインドーを保温効果のあるシェードで覆うことも効果的です。アナログな手法ですが、私がおすすめしたいのは湯たんぽ。暖房器具などに比べ安全ですし、足先やおなか周りなど、冷えやすい部分に当てておくとだいぶ温かさが増します。大容量のポータブル電源を持っている人は電気毛布もおすすめです。なおガスを使うようなヒーター類は、一酸化炭素中毒となる危険性がありますので使用はNGです」
覚えておこう! 車中泊が得意な車はこのタイプ!
荷物をたくさん載せるなら「ワンボックスカー」
箱型のワンボックスカーは、車内が広く、フラットで使いやすいのが特徴。積載物が多いレジャーを伴うなら最適な車。
積載スペースは広いがシートアレンジの選択肢が少ないので、フロアに寝るか、写真のようにベッドキットを備えた車が便利。
ファミリーなら普段使いが便利な「ミニバン」
ミニバンはファミリーカーの定番。スライドドアで使いやすく、車内が広いので普段使いに便利な車。
2〜3列目をフルフラットにして車中泊するのが基本。座り心地を重視したシートは凹凸が多く、マットなどでの段差解消は必須。
車種によっては快適に寝られる「SUV」
アウトドアブームに伴い、人気が高いSUV。ただ車中泊をするとなると、フラットスペースの長さが足りない車も多い。
基本は2列目シートを前倒しして、フラット化。長さが足りるなら凹凸は少なく寝やすい。
意外と寝やすい「ステーションワゴン」
室内高が低いため車内でくつろぐのは難しいが、横になった際に長さが足りるなら快適に眠ることができる。
2列目シートを前倒しして就寝スペースを作ります。フラットなラゲッジを使うので、実は寝心地は快適。
侮れないのが「軽自動車」
最近の軽SUVや軽バンは車内が広い車が多く、就寝スペースが取りやすい。実は車中泊に向いている。
1列目からラゲッジまでを使うと、2m近いフラットスペースを確保できる車もある。一人で寝るなら十分快適。
寝具を備えた車中泊車「キャンピングカー」
キャンピングカーは、寝具やキャンプをするための装備を備えた車。トラックベースの「キャブコン(キャブコンバージョン)」やワンボックスベースの「バンコン」(写真)、バスベースの「バスコン」など、ベース車によって大きさや装備の充実度が異なる。最近では軽バンをベースにした「軽キャンパー」も人気。
キャンピングカーはそのまま寝られる完全にフラットな就寝スペースを備えているため、寝心地も快適。家にいるように眠りたいという人は、キャンピングカーがおすすめ。
快適に車中泊が楽しめるテクニックと車中泊に適した車のご紹介、いかがだったでしょうか? 次回は就寝時以外のマストアイテムと、意外と知らない車中泊のマナーについてお送りします。
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