重機女子Kaoriさんも大興奮! 災害現場に突如現れる“真紅の怪物”、それがレッドサラマンダー
【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な車両たち
建設作業現場や災害現場、そして輸送の現場など人知れず第一線で活躍する特殊な乗り物たち。特別な作業のために開発されているだけに、その機能や形状は、どれも見たことのないものばかり。今回の車両は、総務省消防庁が岡崎市消防本部に配備した関節連結式の大型水陸両用車「レッドサラマンダー」。不整地や瓦礫、水没地でも自走できる圧倒的な走破性を備えた走るレスキューベースだ。
なぜ「レッドサラマンダー」が必要なのか?
車体中央の屈折構造が起伏の激しい地形でも安定した接地性を確保。前後が独立して動くことで溝や段差も難なくクリアし、一般的な車両では進めない過酷な環境でも優れた機動力を発揮する
地震、台風、豪雨、噴火……。世界有数の“災害大国”、日本。なかでも、救急車やトラックでは近づけない「孤立地帯」への対応は、常に課題だった。このニーズに応えるべく、2013年に運用を開始したのが、無限軌道型の災害対応車「レッドサラマンダー」だ。災害の被害を受けにくく、全国各地へのアクセスにも優れるという理由から、配備先は愛知県岡崎市消防本部に決定された。
全長8720×全幅2260×全高2660mmという圧倒的なボディサイズ
定員は最大10名。総重量は12.1t超という巨体ながら最高速度は50km/h
心臓部には排気量7240ccのディーゼルエンジンを搭載されている
後部ユニットには6名が乗車可能。主に物資や被災者の搬送を行う
水や瓦礫をものともしない驚異の走破性能!
ディーゼルエンジンの出力を油圧に変換し、前後別系統の油圧モーターを駆動することにより、快適で静かな走行を実現。接地圧も抑えられている。これらの特徴が、瓦礫やぬかるみ、坂路など過酷な現場での救助活動で威力を発揮する
幅広のゴム製クローラーにより、瓦礫、不整地、ぬかるみ、砂地といった悪路も力強く進む。接地面圧を抑えて沈み込みを防ぎ高い走破性を実現。水深1.2mまではそのまま走行可能で、完全密閉構造により1.2m以上の水深でも3〜4km/hで“浮かんで”移動できる。60cmの段差や幅2mの溝をクリアし、27度の傾斜も登坂可能。最高時速は50km/hに達する。
最大の特徴は、上下左右に屈折する関節で連結された「ダブルボディ構造」。これによって地形追従性が向上し、高い運搬性能も兼ね備える。前方には4人、後方には6人が乗車可能で、後方ユニットが主に物資や被災者の搬送を担当する。
2024年の能登半島地震ほか、過去5回緊急出動!
2017年7月、九州北部豪雨で出動した際の活動風景。瓦礫で寸断された道路もレッドサラマンダーは難なく走破し、復旧活動を力強く支えた
これまでに全国で5回の出動実績を持つ。初出動は2017年7月、九州北部豪雨に見舞われた大分県。翌2018年には西日本豪雨で岡山県へ。2023年には台風2号の直撃を受けた岡崎市内で、冠水地域から計6名を救出。直近の出動は2024年1月の能登半島地震で、被災者救助に活躍した。
運転は難しい? クローラー式車両の操縦法
運転姿勢は一般的な乗用車と変わらないが、乗車時はクローラー部分に足を掛けてよじ登るイメージだ。車高が高いため視界は高く見下ろすような感覚。なお、水中走行中はドアを開けることができないため、運転席上部のハッチからの出入りが可能となっている
運転には大型特殊免許が必要だが、AT車のためシフト操作は不要。円形のステアリングホイールを採用しており、運転姿勢は一般的な乗用車とほとんど変わらない。ただし、進行方向の変更は、連結器にある左右のシリンダーが伸縮することによって車両を操舵する。これによりリヤボディが方向転換し、フロントにその動きを伝える仕組みだ。慣れるまではハンドル操作に戸惑うこともあるという。
現地までどうやって運ぶの?
大型水陸両用車は専用の搬送車によって遠方の災害現場へと移送される。積載時には搬送車の前方を持ち上げて後方の床面を低くし、スロープ状にして全地形対応車両を積み込む仕組み
ゴムクローラーを採用しているためアスファルトを傷めず、被災地ではそのまま運用可能。ただし長距離移動には適さないため、専用の大型トラックで搬送される。積載時には荷台と地面に金属板を渡し、トラック前部を持ち上げて傾斜をつけ、自走で荷台へ登る仕組みだ。固定後、東名高速・岡崎ICから全国各地へと出動する。
重機女子オペレーター Kaoriさんが語る
レッドサラマンダーの魅力
- “赤い英雄”レッドサラマンダーと、私と、息子の物語
レッドサラマンダーの「サラマンダー」とは、サンショウウオの意味。その名の通り、凸凹道でも水たまりでもスイスイと進む、真っ赤な緊急車両だ。日本には岡崎と大阪に1台ずつしかなく、その希少さもサンショウウオ由来なのかもしれない(笑)。
私は普段、工事現場でショベルカーを操る二児の母。一見レッドサラマンダーとは縁がなさそうに思えるかもしれないけど、実は少し特別な思いがある。もうすぐ18歳になる長男が幼い頃、ハマっていたのがトミカのハイパーレスキューシリーズ。なかでもこのレッドサラマンダーは手に入りにくく、苦労して入手した記憶があります。息子の手からはみ出すほど大きかったっけ。当時専業主婦だった私も今では重機が仕事に。レッドサラマンダーと重機に魅せられた私。まるで息子と私の15年越しの物語。
レッドサラマンダーの特徴はここ!
フロントマスクは「侍」をイメージしたデザイン。エンジンは前部ユニットの後方に搭載され、機材や人員の移送は後部ユニットが担当する
細身のステアリングは機能を最優先した3本スポークデザイン。フォークリフトなどと同じように素早い操作を行うためのノブも装着されている
フロントシートは意外にも乗用車のような印象を受ける形状。乗り心地についてはクローラー方式の影響もあり、決して快適とは言えない
ドアはハッチ構造で閉じれば車内をほぼ密閉状態にできる。ウインドーガラスも固定式で、冠水走行や水上航行時でも水の浸入を防ぐ造りだ
後部ユニット内部には6人分の対面式シートを装備。すべての座面は跳ね上げ式で機材の積み込みに対応。天井には脱出用のスライドドアも備わる
最大の特徴でもある連結ユニット。頑丈なシリンダーによって上下左右に稼働するため、複雑な地形に合わせて這(は)うように進むことができる
エンジンユニットは上部に大型ファンを備えた密閉構造で、排気量7.2Lのディーゼルエンジンが収まっている。マイナス35℃という極寒環境でも作動
水上などでドアが開閉できない場合には、天井に設けられたハッチからアクセス可能。後部ユニットも同様で、あらゆる状況を想定した設計となっている
●レッドサラマンダーのスペック
【全長×全幅×全高】 8720×2260×2660mm
【車両総重量】 12130kg
【乗車定員】 10人
【駆動方式】 連結ゴム製クローラ方式
【エンジン】 4サイクルディーゼル
【総排気量】 7240cc
【最高速度】 50km/h
【最大登坂能力】 50%(約27度)
【最大乗越え段差】 600mm
【最大溝乗越え幅】 2000mm
【最小回転半径】 8m
重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)
親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、毎日現場で作業しながらもテレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。
Instagram:@kao.ksk
公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs
特集の記事一覧

「赤いファミリア」が生んだ若者文化から真夏の車中泊快眠テクまで──注目記事まとめ
2025.07.14
自動車整備技術で日本一に挑む! 自動車整備技能競技大会の舞台裏
2025.07.10
国産車初のハードトップデザインを採用した トヨペット・コロナ ハードトップにゾッコン!
2025.07.09
第1回日本カー・オブ・ザ・イヤー全ノミネート車の魅力を再検証!
2025.07.07
赤いファミリアが生んだ「陸サーファー」現象とは?
2025.07.01
重機女子Kaoriさんもびっくりの超巨大建機!
2025.06.29
ごみ清掃車のドアは特注品⁉ ベテラン運転手が明かす“こだわり装備”とは
2025.06.24