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【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な車両たち|特集
構成=グランマガジン社/協力=日本信号(株)/コメンテーター=Kaori(重機女子)

まるでトランスフォーマー!? 重機女子Kaoriさんも驚きのロボット工学技術を活用した多機能鉄道重機「ZIZAI」

【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な車両たち
コメンテーター=重機女子オペレーター Kaoriさん

建設作業現場や災害現場、そして輸送の現場など人知れず第一線で活躍する特殊な車両たち。そんな唯一無二の車両を紹介するのが本企画の「特車図鑑」。今回の車両は、日本信号・人機一体・JR西日本・東洋車輌が共同で実用化した人型ロボット×多機能鉄道重機「ZIZAI(ジザイ)」。2024年7月からJR西日本グループによって鉄道メンテナンス用として正式運用が開始。現在の作業内容としては、架線支持物の塗装、支障樹木伐採等に使用されている。

目次

ZIZAIはなぜ開発されたのか?

東西南北隅々にまで線路が張り巡らされた鉄道大国、日本。その維持にはメンテナンスが必須な一方、少子高齢化に伴う労働力不足に悩まされていることもまた事実。とりわけ電気設備は高所に設置されていたり、高圧の電気が通っていることから墜落や感電など危険を伴う重作業ゆえ人員確保は困難になりつつある。ZIZAIはこうした課題に対応すべく、JR西日本、日本信号、人機一体、東洋車輌の4社共同で開発された多機能鉄道重機。人型重機ロボット&工事車両一体化構造で省力化と安全性向上の要望を同時に満たす。

トラックの荷台に人型重機ロボットを搭載する斬新な車両!

トラックの荷台に操縦席(コックピット)と人型重機ロボットを搭載した構造となっており、ブームによってレール中心から半径4m、レール路面から高さ12mの範囲で作業可能。最大の特徴は「力順送型バイラテラル制御」を採用した点で、従来は感じ取れなかったロボット側の動きが操縦桿(そうじゅうかん)にフィードバックされるため、操縦者はリアルタイムにロボットとの一体感を得られ、より精密な制御が可能に。結果、架線に接近する樹木の除去や高所の塗装など、まるで人間が行うかのような作業性を実現した。

トラックの後部にロボットが一体化されているZIZAIの外観

ベースもただのトラックではなく、軌道(レール)と道路の両方を走行可能な軌陸両用車という特殊な車両で機動性に優れる。「車両」と「操縦室」、伸縮可能な「ブーム」、そして2本のアームを持つ「人型ロボット」で構成

ZIZAIのキモとなる「力順送型バイラテラル制御技術」とは?

この技術は、操作者が操縦桿を動かす際に、あたかもロボットと物理的につながっているかのような感覚を生み出す。従来の重機操作は、複数のレバーやボタンを複雑に組み合わせて動きを調整する必要があり、繊細なコントロールが困難であった。しかし、ZIZAIのバイラテラル制御は、操作者の腕や手の動きをダイレクトにロボットに伝達し、ロボットが外部から受ける反力も操作者にフィードバックする。これにより、オペレーターは、まるで自分の手で作業しているかのように、最大40kgの重量物を把持(はじ)しながら、繊細な力加減や精密な位置合わせを直感的に行うことが可能となった。

人型ロボット部分の作業風景写真

人型ロボットは「頭部カメラ」と「左右アーム」で構成。ブームが伸縮して最適位置に到達後、操縦者が操縦桿を操作してアーム上下動やハンド開閉を実施。動きは操縦者にフィードバックされて繊細な作業を可能にする

【人型重機ZIZAIの特徴】

伸縮するブームの写真

ブームは上下・伸縮・旋回を自在に組み合わせ、人型ロボットの作業半径を大きく広げる。最大で12mの高所にまでアプローチでき、40kgの重量物を扱っても安定した姿勢を保つ

アタッチメントを交換している写真

アーム先端に装着されるツールは交換可能。把持力片腕20㎏の「ハンド」のほか、塗装や伐採用チェーンソーなど状況に応じたツールに付け替えることで、あらゆる場面での使用を可能とした

ZIZAIで高圧線の作業を行っている写真

高所作業がもたらす墜落や感電といったリスクから作業する人を完全に隔離することを可能にした。アタッチメントを替えることでさまざまな作業に対応できるため作業効率も向上した

アタッチメントにチェーンソーを装着

チェーンソーのアタッチメントを装着すれば、架線に接近した樹木なども危険を伴うことなく、伐採することができる

操縦席(コクピット)の写真

ロボットとブームの操縦席。操縦者はヘッドマウントディスプレイを装着し、ロボットアームを上下左右に操作する「操縦桿」、ロボットハンドの開閉操作を行う「トリガー」を操って必要な作業を実行

ブームは上下・伸縮・旋回を自在に組み合わせ、人型ロボットの作業半径を大きく広げる。最大で12mの高所にまでアプローチでき、40kgの重量物を扱っても安定した姿勢を保つ

アーム先端に装着されるツールは交換可能。把持力片腕20㎏の「ハンド」のほか、塗装や伐採用チェーンソーなど状況に応じたツールに付け替えることで、あらゆる場面での使用を可能とした

高所作業がもたらす墜落や感電といったリスクから作業する人を完全に隔離することを可能にした。アタッチメントを替えることでさまざまな作業に対応できるため作業効率も向上した

チェーンソーのアタッチメントを装着すれば、架線に接近した樹木なども危険を伴うことなく、伐採することができる

ロボットとブームの操縦席。操縦者はヘッドマウントディスプレイを装着し、ロボットアームを上下左右に操作する「操縦桿」、ロボットハンドの開閉操作を行う「トリガー」を操って必要な作業を実行

重機女子オペレーター Kaoriさんが語るZIZAIの魅力

重機女子オペレーターkaoriさんの顔写真

一見❝畑違い❞のようだけど、現場に必要な技術

ZIZAIをテレビで初めて見たときは、工事現場で土木建築の重機を操る私にとって、トランスフォーマーのような人型ロボットは一見“畑違い”の存在に映った。しかし調べを進めるうちに、それが決して無縁ではなく、むしろ現場に必要な技術だと気づかされました。

ZIZAIは長年の研究と改良を経て、2024年にJR西日本の線路で実際に稼働を開始し、伐採作業などに活用されている。その動きは従来のロボット像とは大きく異なり、繊細かつ滑らか。人だけでも機械だけでもなし得ない所作は、まるで知能や感情が宿っているかのように見える。

危険な高所や人体に有害な現場において、もしこのZIZAIが作業を担ってくれれば、私たちの負担は大きく軽減されるでしょう。人間の知恵とロボットの力が融合したこの重機が普及すれば、現場はもっと安全になり、そして私の“重機愛”もさらに深まるに違いない。

2024年7月からJR西日本で実用化開始

鉄道会社として開発の一端を担ったJR西日本ではすでに2024年7月から現場への投入を実施しており、労働力の省力化および安全性の向上に関して多大な成果を上げている。具体的にはメンテナンスの省力化だけでなく、墜落や感電など労働災害の大幅な減少など着々と成果を上げつつある。作業員の肉体的負荷を伴うことなく安全、かつ効率的に重作業が可能となるメリットは、今後、鉄道のみならず、あらゆるインフラ系業務に波及することは間違いない。

夜間の架線作業の写真

夜間の架線支持物の塗装作業。このように周囲が暗く見渡せないことで危険を伴うような状況でもZIZAIを使えば安全性は格段に向上。またレール面から上方向最大12mまでが範囲とあって高所にある柱などの支持物でも作業可能

●多機能鉄道重機「ZIZAI」のスペック
【ベース機体】零式人機 ver. 2.0
【構成要素】人型重機、ブーム、操縦室、軌陸車
【把持重量】20kg (片腕)
【高所作業能力】12m
【操作方式】遠隔操作、VRゴーグルによるロボット目線

重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)

Kaoriさんの顔写真

親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、毎日現場で作業しながらもテレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。

●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs

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