ガンダムの世界が現実に! 掴む・挟む・切るを自在にこなすアスタコが切り開く二刀流建機の新境地
【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な車両たち
建設現場や災害現場、輸送の最前線で、人知れず活躍する特殊車両たち。特別な作業のために開発されただけに、その機能もフォルムも唯一無二だ。今回の「特車図鑑」では、ショベルカーに2本の腕を備えた日立建機の双腕仕様機「アスタコ」シリーズを紹介。掴む・挟む・切るを自在にこなす姿は、まさに現場の二刀流。初代アスタコから進化した「アスタコNEO」まで、その唯一無二の機能とフォルムに迫る。
掴み、切断し、自在に操る…圧倒的な作業力とSFのような存在感
油圧ショベルをベースにしながら、まったく異なる存在感を放つのが双腕仕様機だ。最大の特徴は腕が2本あること。よりロボットに近いこの機械は、「アスタコ」と「アスタコNEO」の2機種がある。そのフォルムは、巨大ロボットの上半身を思わせる。クローラ式の下半身と相まって、とにかく“強そう”な雰囲気。もしクローラを脚に換えたら、人型ロボットそのものだろう。もちろん、これはSFではなく、実際にがれき処理や解体現場などで圧倒的な力を発揮する。たとえば鉄骨を片腕で掴み、もう片腕でブツンと切断。まるで人が紙を切るような自然な動きで解体をこなす。アスタコとアスタコNEOは、サイズや腕の長さ、操作方法、ベース機の違いなどを持ちながら、同じコンセプトのもとに進化した“二刀流建機”なのだ。
【アスタコ】
2005年のデビューと同時に業界を震撼(しんかん)させたアスタコ。「掴む」「挟む」「切る」をワンオペでこなし、従来は人手と手間がかかった作業を劇的に効率化したのだ。さらに、この双腕の迫力ある姿は、巨大ロボットが現実に動き出したかのような衝撃を与えた。近い将来、本当にロボットが現場を闊歩(かっぽ)するのでは? そう思わせるほどワクワクする登場だった
【アスタコNEO】
初代アスタコ登場から6年後の2011年、改良機「アスタコNEO」がデビューした。初代をさらにブラッシュアップし、7t級から13t級へと大幅にサイズアップしたモデルだ。NEOは単なる大型化ではない。まず操作性が進化した。初代は独自操作で習熟に時間を要したが、NEOは油圧ショベルに近い感覚で操れるようになり、現場での扱いやすさが飛躍的に向上。設計思想も進化し、左右対称だった初代に対し、NEOは右腕を大型、左腕を小型に設計。役割分担を前提としたこの構造により、アタッチメントの性能を最大限に引き出せる機体となった
【アスタコシリーズの特徴はここ!】
【グラップル(右腕)】グラップルは、物を「掴む」「掴んで移動させる」「支える」といった作業を得意とするアタッチメント。解体現場で出た木材やコンクリートガラなどを掴み、種類ごとに分ける作業や左腕で切断する鉄骨を、グラップル(右腕)でしっかりと支えることで、安全かつ効率的な作業を実現
【ペンチ・カッタ(左腕)】ペンチ・カッタは、その名の通り「切る」作業に特化したアタッチメント。強力な切断力を誇り、さまざまな資材をカットすることができる。解体作業において、建物の鉄骨を切断する際に使用される。廃棄物を運搬しやすいサイズに細かく切断する作業や災害現場などでは、絡み合ったワイヤーやケーブルを切断する作業にも活躍する
【運転席】左右2本の操作レバーで1本の腕を動かす一般的な油圧ショベルの方式とは異なり、双腕仕様機は2本の操作レバーで2本の腕を動かす。主腕と本体の旋回操作はレバーで行い、副腕はレバー上部のスティックでそれぞれ操作する。アタッチメントはペダル操作でコントロールされる
重機女子オペレーター Kaoriさんが語るアスタコの魅力
双腕仕様機アスタコ、ガンダムのように動く夢のショベルカー
重機の世界では知る人ぞ知る、2本の腕を持つショベルカー「アスタコ」。日立建機が開発した双腕仕様機で、名前の由来はスペイン語で「ザリガニ」。その名の通り、腕の先には鋏(はさみ)のようなアタッチメントを備え、「掴んで切る」「押さえて引きはがす」といった動きを一台でこなします。昨年の日立建機土浦工場(茨城県土浦市)で開催された日立建機フェスティバルでは、このアスタコのデモを間近で見学。2本の腕が生き物のように軽やかで繊細に動く姿は、まるでガンダムでした。アスタコ開発者の小俣さんに開発秘話を聞いたうえ、特別に操縦席に座らせてもらいました。前方から乗り込む構造や、目の前に2本の腕が見える光景に、思わずモビルスーツのパイロット気分に浸りました。最先端のように見えて、実は2005年の登場からもう20年近い歴史を持つアスタコ。もっと街中で見たり体験できる機会が増えれば、ガンダム好きや重機好きもきっと増えるはず。ちなみに我が家にも2台あります。トミカですけどね(笑)。
油圧アタッチメントを交換しさまざまな用途に対応
アスタコは、先端の油圧アタッチメントを交換することで多彩な作業に対応する。アーム先端には用途に合わせた“手”を装着でき、油圧ショベル用アタッチメントも共通で使用可能だ。「コンクリートを握りつぶし破砕する油圧圧砕機」「資材をつかんで運ぶグラップル」「鋼材を切るペンチ・カッタ」「岩やコンクリートを砕くブレーカ」など、現場に応じて使い分けることで、アスタコは一台で幅広いミッションをこなす(写真=日本建設機械工業会)
アスタコは繊細な作業から力仕事までなんでもこなせる
アスタコの力の源は油圧だ。腕の動きも走行も、原理は注射器と同じで、専用オイルをポンプで送り圧力で動かす。建機といえば豪快なパワーが目立つが、アスタコは違う。巨大ロボットのような躯体(くたい)と極太アームを持ちながら、超精密な作業もこなす。アタッチメントを駆使すれば、空き缶を積む、お習字を書く、グラスにワインをそっと注ぐ。そんな繊細な動きも可能にするのが、アスタコの油圧制御の凄みだ。
クルマを真っ二つに引き裂くことも可能。一見すると、ただの破壊的行為に映るこの作業も、2本の腕を持つアスタコだからこそ可能なオペレーションだ。片腕でがっちりと車体をつかみ、もう片腕でねじ切る。必要なのは圧倒的なパワー、そして2本の腕の連携。これは、まさにアスタコにしかできない芸当だ。
アームで空き缶を縦に積み重ねるなど繊細な操作も可能
一方でクルマを真っ二つに引き裂くなどの力作業もお手の物
さらにロボット化した次世代コンセプトモデルも!
四脚クローラを採用し、より未来的に進化したアスタコのコンセプトモデル
アスタコシリーズといえば、油圧ショベルと同じクローラが定番だ。荒地を縦横無尽に走破できる性能は折り紙付きだが、そのさらに上を行く次世代コンセプト機が“四脚クローラ”採用の未来型アスタコだ。4つのクローラを独立して制御できる「四脚クローラ方式」は、従来の常識を覆す画期的なシステムだ。それぞれが振り子のように柔軟に動き、地面の凹凸に追従。瓦礫(がれき)の山や不安定な足場でも、機体は常に水平をキープしながら安定走行を実現する。油圧ショベルの弱点だった悪路での作業性を大幅に改善し、従来は困難だった精密なオペレーションも可能に。各クローラを個別に昇降させることで、機体の高さや姿勢も自在に調整できる。この先進の足回りが、重機の可能性をさらに押し広げている。
東日本大震災で大活躍したアスタコNEO
東日本大震災の被災地で作業をおこなうアスタコNEO
初代アスタコの性能は知られていたが、より大型でパワー・汎用性・操作性を高めたNEOの登場は、絶好のタイミングだったといえる。実際、アスタコNEOは被災地で倒壊建物の解体やがれき撤去に活躍し、車両や人員輸送のための道路確保にも貢献。狭い路地にも入り込め、従来2台で行う作業を1台でこなす場面も多かった。災害で注目を集めたのは残念だが、これを機に防災意識は高まり、アスタコシリーズは消防や自衛隊にも導入されることになった。
●アスタコNEOのスペック
【全長×全幅×全高】 7,400×2,640×2,740mm
【運転質量(アタッチメントを除く)】 15,900kg
【エンジン】 いすゞ製AJ-4JJ1X
【定格出力】 94 PS /2,000 rpm
【走行速度/高速】 5.5km/h
【走行速度/低速】 3.3 km/h
【燃料タンク容量】 220L
重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)
親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、毎日現場で作業しながらもテレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。
●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs
●Kaoriさんの今後の予定
10月23日・24日(木・金) 兵庫県神戸市オクムラ祭りICTについて登壇
11月2日(日) 石川県小松市ワイワイ祭り重機習字
11月15日(土) 湘南平塚建設フェスタ2025重機習字
12月5日(金) 全国建設青年会全国大会審査員
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