車中泊仕様ハイエースの車内でくつろぐ男性
文・構成=大森弘恵 / 撮影=中里慎一郎 / 編集=後藤ちり

夏の車中泊、暑い夜でも快眠! 車中泊歴15年の達人が伝授する涼眠のコツ6選

暑い夏の車中泊、寝苦しい夜にサヨナラ! 車中泊&キャンプの達人が伝授する快眠テク

自宅ではエアコンなしだと暑すぎて眠れないのに、我が家の車中泊カーには後付けエアコンやポータブルクーラーがない……と不安に思う車中泊初心者のために、夏の車中泊で快眠するためのテクニックを紹介。教えてくれるのは、アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店のスタッフで、車中泊歴約15年の中濱恭平さん。車中泊の達人が実践しているエアコンなしでもぐっすり眠るためのコツを伝授。

目次

夏の車中泊、暑すぎて寝られない…そんな経験ありませんか?

ハイエースの車内で寝ている男性

夏の車中泊、最大の敵は暑さ!

夏休みを利用してクルマで各地を巡る計画を立てている人は多いでしょう。渋滞を避けて深夜に出発しても、SAやPAなどでぐっすり仮眠できるなど、スケジューリングの自由度が高いのが車中泊の魅力ですが、夏に無計画な車中泊旅に出てしまうと暑くて眠れないことも。

そこで、車中泊歴15年以上のベテランが実践している、ミニバンや軽自動車などの一般乗用車で快適に眠る工夫を教えてもらいました。

ラゲッジを開けた車中泊車の前に立つ男性

車中泊もキャンプも経験豊富な中濱さん

中濱恭平さん プロフィール


車中泊歴15年以上、アウトドアショップ・アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店キャンプフロア担当という“外寝”の達人。学生時代に購入したスズキ・ワゴンRでアウトドアフィールドを巡る際、車内で横になれることを知り、車中泊をスタート。次の愛車ホンダ・オデッセイではシェードを取り付け、そしてベッドキット装着のトヨタ・ハイエース、居住性の高いハイエース スーパーロング ハイルーフの車中泊カーへとステップアップ。現在の愛車は、ベッドしかない中古ハイエースの車中泊カーを入手し、自分で塗装し、棚を取り付けたもの。

車中泊の達人が実践! 夏の快眠テクニック

サンドカラーと一部ブラックで自家塗装したハイエース全景

中濱さんがコツコツと改良している車中泊カー

アウトドアショップ勤務の中濱さんは、少しずつ改良を重ねている自作車中泊カーで奥さまと2人の車中泊旅を楽しんでいます。普段は1泊ですが、長期の休みが取れると1週間の旅になることも。

1年を通して車中泊を楽しんでいるので、さぞ凝った設備なのかと思いきや、収納類のほかにはベッド、ポータブル電源、外部電源取り入れ口、ポータブル冷蔵庫というシンプル設備。カーサイドタープを広げて車外で過ごすことも多く、車内=寝室に特化しています。

ラゲッジ側から見た車中泊仕様の車内の様子

ハイルーフを生かし、天井には長いモノまで難なく入る棚が。荷物がベッドの上に散らばらずのびのび寝られる

この車両には後付けのエアコンやポータブルクーラーがありませんが、暑い夏でも快適に眠れるものなのでしょうか?

「寒さは寝袋など工夫次第でなんとかなりますが、暑さはどうにもしようがありません。暑い場所ではどうやっても暑いので、一番の対策は“寝苦しくならない地域”に行くこと。だから夏は長野や東北のRVパーク、キャンプ場を巡っています」(中濱さん)

中濱流、夏の車中泊・快眠テクは6つ。

宿泊地の標高を上げるのは、夏車中泊の基本中の基本

標高の高さイメージ写真

標高が100m上がると気温は0.6℃下がります。

東京の8月の平均気温は最高気温33.6℃・最低気温25.7℃。もちろんこれを超える日は珍しくなく、エアコンなしで眠るのはかなり厳しい環境です。ところが、同じ場所でも地上から800mであれば4.8℃、1,000mになると6℃も低くなり、夜は20℃前後にまで下がる計算。

たとえば東京からクルマで3時間圏内の群馬県。桐生(きりゅう)市(観測地の標高117m)は猛暑日記録を更新する日本有数の暑い都市ですが、標高1,000〜1,400mに位置する北軽井沢(長野原町)の8月の平均気温は最高気温でも24℃ほど。最低気温は18℃で、夜はエアコン不要どころか、肌寒く感じるほど下がります。

あれこれ工夫するのも大事ですが、何はともあれ目的地は標高の高い場所!

RVパーク ウイングヒルズ 満天の湯の風景

アルペンアウトドアーズしろとりフィールド内にある「RVパーク ウイングヒルズ 満天の湯」

中濱さんに夏におすすめの車中泊スポットを聞いてみると……

「たくさんあるので迷いますが、関東から行きやすいエリアだと岐阜県の『RVパーク ウイングヒルズ 満天の湯』。標高1,000mにあるので涼しいのはもちろん、温泉と星空が最高! ソフトクリームも神レベルのおいしさです。このRVパークは『アルペンアウトドアーズしろとりフィールド』内にあるんですよ。

標高1,200mの長野県『戸隠キャンプ場』もよく利用しますね。絶景と開放感が抜群だし、周辺ではパワースポット巡りや日本三大そばの戸隠そばも楽しめます。QOLが爆上がり!」(中濱さん)

夏車中泊が快適かどうかは、目的地選びが最大のポイントなのです。もっとも、そういうエリアは夏場の人気が高いので、RVパークやキャンプ場の予約はお早めに。

日の当たらない場所に駐車して、車内の温度上昇を防ぐ

日陰の駐車場イメージ

環境省の資料によると、とある街路樹のある交差点で温度を測ってみたところ、気温は日なたも木陰も30℃と同じ。ところが、路面温度は木陰が32℃に対して日なたは約50℃と20℃ほどの差が生まれ、木陰では体感温度が約6℃下がるそう。

これは木陰によって日射の約8割、赤外放射の約6割が減少した結果だと言います。

クルマも同じ。ダイレクトに日差しを受けるとボディの表面温度がグングン上昇し、車内はオーブンのように熱せられます。そして一度こもった熱はなかなか放散されません。

ハイエースの窓2枚にシェードを装着

すべての窓にシェードを装着するのもお約束

シェードを付けたところで車内の気温はグングン上昇します。ただ、そうは言っても直射日光を遮ることで気温上昇をわずかに抑えますし、なんといってもプライバシー確保に役立ちます。

「少し厚手であればノーブランドのシェードでも効果はあります。ただ、安いものは吸盤が弱くて、気づいたら剥がれていることも。いずれカーテンをつけたいんですよね」(中濱さん)

ちなみにJAFの実験では、車内の熱い空気はエアコンをかけて走行すれば短時間で涼しくなりました。 けれどハイエースのようにエンジンが運転席・助手席の下にあるクルマではそもそもシートが熱くなるので、車内を冷やそうと運転すること自体が暑くてツラい……。

結局、木陰に駐車して車内の温度を上げないのがベストなのです。

汗でべたつかない吸汗速乾ウェアとひんやりシーツで快眠

車内ラゲッジスペースにマットとブランケット、夏用寝袋を置いた風景

夏用寝袋を広げて肌掛けに。ブランケットで代用することも

標高1,000mの場所で気温20℃であっても、車内に2人でいると蒸し暑く感じることもあるでしょう。就寝時の工夫とは?

車中泊用マットに接触冷感シーツを装着している

接触冷感生地のシーツ。使わないときはコンパクトに収納できる中濱さんのお気に入り

「車中泊に限らず、寝ているときは汗をかくので吸汗速乾生地のウェアを着て、肌に触れるマットは接触冷感生地のシーツを使用します。薄い夏用の寝袋ではなく、ブランケットをかけるだけにすることもありますよ」(中濱さん)

サーキュレーターで車内に風の通り道を作る

斜め後方からハイエース窓に装着した網戸を眺める

スライドドアの窓が網戸になっている

ハイエースのスライドドアの網戸を車内から眺めた画像

スライドドアの小窓から涼しい夜風を取り入れる

「本当はすべての窓を網戸にしたいのですが、うまく合う網戸が見つからなくて。今のところスライドドア1枚分だけ網戸が入っています」と中濱さん。

いくらRVパークやキャンプ場でも防犯上ドアや窓を全開にはできず、中濱さんは2台のコードレスのサーキュレーターを使っています。

車中泊仕様ハイエースの車内に2台のサーキュレーターを設置

2台のサーキュレーターをフル活用

シート背もたれに置いたサーキュレーター

前方のサーキュレーターは、首振りができるもの。畳んだシートの上に載せれば網戸の高さとほぼ同じ

ハイエース車内の棚に取り付けたサーキュレーター

後部のサーキュレーターは棚に吊して上から前方に風を送る

1台は網戸から入る涼しい空気を首振りモードで後部に送り、もう一台は後部に吊り下げて前のほうへ。これで車内全体に風が通り抜けるというわけ。サーキュレーターの風量を抑えれば扇風機のように肌に当てても心地よし。

暑い季節の車中泊を全力で楽しむための「暑熱順化」

車中泊仕様ハイエースの車内でサーキュレーターを操作する男性

普段からエアコンの効いた部屋に閉じこもらないことも大切

夏の車中泊旅を楽しむために、中濱さんは自宅寝室のエアコンをちょっと高めの温度に設定していると言います。

「体を慣れさせておくことは重要です。そこまでする!? と思われるかもしれませんが、仕事がシフト制だと2日連続の休みは貴重。土日休みが当たり前であればチャンスは1か月4回ですが、私はそうじゃない。だからせっかくの休日を全力で楽しむために普段から体調を整えるんです。幸いにも妻は寒がりなので、エアコンを少し高めにしてもツラくないそうです」(中濱さん)

確かに熱中症が急増するのは梅雨時から7月上旬。体が暑さに慣れていないところに気温と湿度が高まると体が悲鳴を上げるわけですから、体を暑さに慣らす“暑熱順化”をしておけば元気に過ごせそう。

車内に入り込んだ虫を光でおびきよせる

車中泊仕様ハイエースの車内天井に吊るしたモスキートランタン

薬剤がなくても虫を仕留めるモスキートランタン

どんなに気を付けていても完全に虫をシャットアウトすることはできません。夏の車中泊旅は暑さだけでなく虫対策も不可欠。

虫よけの代表は蚊取り線香ですが、これを狭い車内で使うのは現実的ではありません。

「蚊取り線香は車外に置いて、車内では紫外線で虫を集めて撃退するモスキートランタンを使っています。バチッという音はなく静かに仕留めてくれていて、朝になると殺虫器にいっぱいたまっている。思っている以上に効果がありますよ」(中濱さん)

+αの夏車中泊テク
飲み物や食品の保管はどうしてる?

車中泊仕様ハイエースの運転席裏に設置したポータブル冷蔵庫とポータブル電源

ノーブランドのポータブル冷蔵庫は容量30L。大きさの割に容量は小さいが、2人旅には十分

熱中症対策は常温の水が効果的と言われていますが、汗をかいたときや熱中症が疑われるときは冷たい水が欲しいもの。それに一度口を付けた飲み物を放置すると30〜50℃の環境で雑菌が繁殖するとも。

「保冷ボトルに氷と飲み物を入れて手元に置いています。ポータブル冷蔵庫があれば氷を保管できるし、長距離ドライブのときはご褒美アイスで体を冷やすことだってできます。旅先で買った冷凍食品を持ち帰れるのも便利」(中濱さん)

RVパークではAC電源を使えますが、キャンプ場ではAC電源がない施設もあるので2台のポータブル電源(1,000Whと500Wh)とソーラーパネルを積み込んで備えています。

車内に設置したポータブル冷蔵庫の上蓋をオープン

冷蔵・冷凍の2気室にできないモデルなので夏場は冷凍一択

車内でポータブル電源とポータブル冷蔵庫を使うと音や排熱が気になるのでは?

「排熱はほとんど気になりませんが、ときおりブーンという音がします。うるさいと感じるほどではありませんが、気になる人はいるかも。また、ポータブル電源を日差しの当たる車内に置きっぱなしにするのはNG。温度が高いとバッテリーがダメージを受けるので、その点は注意が必要です」(中濱さん)

ベテランの経験を参考に夏の車中泊旅に出発!

清々しい初夏の高原の道路を走る車

熱帯夜の車中泊は、家庭用エアコンなどハイパワーのエアコンでないと太刀打ちできません。窓やボディの断熱対策が低めの車中泊カーはなおさらです。

中濱流快眠術では、できるだけ涼しい場所を目指すとともに、日々の生活を見直して備えるなど事前準備が最大のポイント。2泊、3泊できる貴重な夏休みを楽しい思い出にするために、全力で計画を立てましょう。

【店舗紹介】アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店

アルペンアウトドアーズフラッグシップストア柏店の外観

売り場面積は約2,300坪、取り扱いブランドは約450、商品点数10万点以上が並ぶ、世界最大級のアウトドアショップ。3階建てで1階はキャンプ用品、2階はウェアやトラベルギア、3階はスキー・スノーボード、登山などの山関連アイテムのフロアとなっている。展示商品はすべて体験・試着OK。

住所:千葉県柏市風早1-6-1
電話:04-7192-3671(店舗代表)
営業時間:10:00~21:00
アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店ウェブサイト

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