車中泊のベストシーズンとなる秋・冬の『寒さ対策』
車中泊の基本から応用テク、マナー・ルールまで、最小限の準備で始める手軽なクルマ旅をレクチャー昼間の暑い日差しを感じなくなり、ますます秋の深まり、冬の訪れを感じる今日この頃。車中泊やキャンプには最高の季節がやってきました。
真夏の車中泊は十分な暑さ対策が必要ですが、気温が下がる季節に入ると車中泊には最高の季節となります。しかし、秋も深まり、真冬になると宿泊地の深夜・早朝の気温が氷点下なんてことも……。山あいや標高が高いキャンプ場や車中泊スポットはなおさらですが、そんなシーズンは夜の寒さが車中泊において大きな問題となります。今回は秋冬の車中泊を楽しむための「寒さ対策」をご紹介します。指南役は車中泊の専門家であるライトキャンパースタイル編集長の霜田奈緒さんです。
寒さも吹き飛ぶ秋冬車中泊の魅力
気候が涼しくなる秋や、寒い冬場でも出かけたくなるのは、車中泊やキャンプにどっぷりハマってきた人が必ず通る“あるある”です。秋冬は蚊などの虫が少なくなり、虫よけスプレーなど虫対策を用意する必要がありません。また、昼間は涼しく、汗をあまりかかないので、肌がベトベトすることがなく、夜も快適に過ごせるのです。
そして温かい食事がおいしいのも魅力です。車中泊やキャンプでの食事はどうしても火を通すものが多くなるので、秋冬シーズンは気温が低い中、温かい食事のありがたみを特に感じながらいただけるのではないでしょうか。
さらに言えば、秋や冬は空気中の水蒸気やちりが少なく、夏に比べて空気が澄んでいるため星空がとてもきれいに見えるんです。街中の明かりが届かない山あいの車中泊スポットやキャンプ場で見る星空は格別です。星ってこんなにもたくさんあるんだと再認識させてくれます。ただ、寒さが厳しくなるシーズンに車中泊を楽しむには、ひとつやっておかないといけないことがあります。それが寒さ対策です。
秋冬の車中泊を楽しむためには、必要なギアがいくつかあります。寒いからといってエンジンをONにしてエアコンをつけるわけにはいかないし、かといって寒いままでは快眠は望めません。無理をすれば体調を崩すこともありますので、秋冬には専用のギアが必要だと思ってください。
車外から入る冷気を徹底的にシャットアウト
まずは就寝スペースにおいて、必要なものです。重要なポイントは車内に寒さを伝えないこと。車内は窓を開けていなければ風は入ってこないですが、冷気は伝わってきます。それをいかにして寝る場所に届かないようにするかです。まずは床(またはフロア部分)からの冷えを防ぐため、キャンプマットなどを敷いてしっかりとブロックしましょう。就寝スペースの凹凸をなくすためにもキャンプマットは使いますが、その上にもう1枚重ねます。冷え対策には寝る場所と床との間に空気の層があると効果的なので、エアマットも欲しいところ。いちばん下に段ボールを敷き詰めるというのも手軽ながら効果があります。
もうひとつ、冷気の侵入を防ぐべき場所はウインドーです。目隠しという意味ではカーテンでもよいですが、防寒となるとカーテンなどの薄手の生地では意味がありません。できる限り生地が分厚く、断熱効果を備えているシェードが効果的で、ウインドーを隙間なく覆ってくれる車種専用品がベストです。すべてのウインドーを覆うのが理想的ですが、すべてをカバーするグッズがなければ、銀マットを各ウインドーのサイズにカットしても代用できます。
もし就寝スペースが広々としているならば、できる限り車体中央で寝るというのもポイントです。寝袋に入っていても、足先などがボディーに触れているとそこから冷気が伝わってきます。ちょっとしたことですが、実際に寝てみるとかなり違いがあります。
就寝スペースの凹凸をなくすためのキャンプマット以外にもう1枚敷き詰めると断熱効果が高まります
エアマットは体と床との間に空気の層を作ってくれるので冷気が伝わるのを防いでくれます。厚みがあるエアマットのほうがより効果は高い
このようにすべてのウインドーをシェードで覆うと冷気の伝わりを抑え、車内の温度低下を防いでくれます
写真のようにウインドーの隙間なくぴったりと装着でき、かつキルティングなどを使った生地が分厚いものが理想です
スペースの使い方としてはとても贅沢ですが、できる限りウインドーやボディーサイドから離れることも体に冷気を伝えないひとつの方法です
身体を温める暖かい就寝スペース作り
次の防寒対策は、身体を温めるためのグッズです。車外からの冷気を防ぐことも大切ですが、それでも秋冬は車内の温度も下がるので、身体を保温し、温めるグッズを併用することも重要です。
まずは衣服。当然ですがTシャツ短パンで寝るのは論外。気温によっては首・足先なども露出しないよう、ネックウォーマーや厚手の靴下を使用すると寒さをしのげます。
衣服同様、寝袋も大事です。使用する場所や季節に合った温度帯の寝袋を用意することが重要なポイント。使用温度帯が低いものは高価な場合が多いですが、ここを妥協すると寝袋としての機能を十分に果たさないので、しっかりと用途にあったアイテムを選ぶ必要があります。
そして身体を温めるためのグッズの定番といえば使い捨てカイロ。どこでも手に入り、リーズナブルなので便利ですが、長時間同じ場所を温めるなど使い方を誤ると低温ヤケドを起こす可能性もあるので、使用する場所には注意が必要です。
個人的なおすすめが湯たんぽです。2個用意して寝袋の足先とおなか辺りに入れておくとかなり温まります。表面積が大きいので広範囲に温められますし、温かさが朝まで持続するのがメリットです。
寝袋の選択は非常に重要です。寝袋の良し悪しでかなり防寒に差が出ると思ってください。使用環境に合った温度帯のものを使いましょう
冬場ならコンビニでも購入できる使い捨てカイロはぜひ持っておくべき防寒グッズですが、肌に直接当てるような使い方はヤケドの可能性もあるので避けましょう
私が冬場愛用しているのは湯たんぽです。適度に温かく、朝まで持続するので車中泊にはぴったりなグッズです。できれば足先用とおなか用で2つ用意したいですね
普通のクルマは真冬の車中泊には不向き!?
車内で寝泊まりすることも目的のひとつであるキャンピングカーは、屋根や外壁に断熱材を入れるなど寒さ・暑さ対策が施されているクルマが多く、またエンジンをかけなくても使えるFFヒーター(※)などの暖房装備もあるので、冬場でも比較的快適に過ごせるように作られています。
※タンク内のガソリンを使用して燃焼させるヒーター
一般的な乗用車は、そこまでの断熱処理がなされていないため、キャンピングカー以上に車内温度の変化が大きくなります。さらに車中泊で利用するクルマが商用車ベースの場合は鉄板むき出しの部分もあり、外気温の影響を車内に大きく受けてしまいます。だからこそしっかりとした防寒対策が必要となるのです。
クルマの断熱性能を上げたいとなれば、ドアやルーフの内張りと鉄板の間や、フロアのカーペット下に新たに断熱材を施工するという方法もあります。興味がある方は調べてみてください。
最後に、寒いからといって、エンジンをかけエアコンを使用しながら寝るのは周囲への迷惑はもちろん、なにより危険なのでNGです。とくに降雪地域ではマフラーに雪が積もると一酸化炭素中毒になる可能性もありますので、絶対にやめましょう。
ポータブル電源で使える暖房器具を活用する
冷気の侵入も身体の保温もばっちり対策したけれど、それでも寒さに弱いから快適に眠れるか不安という方は迷わず冬モノ家電に頼りましょう。家電の暖房器具は暖かさをずっとキープしてくれるというのがポイントです。就寝する際に寒さを感じなくとも、最も冷え込む朝方はキツかったというのはよくある話です。好みの暖かさをキープする家電は、その朝方に効果を発揮してくれるのです。
車中泊時はクルマのエンジンをかけ、エアコンを使用して寝ることは避けるべきなので、家電を使うには、ポータブル電源が必要となります。暖房器具は比較的使用電力が高いので、ポータブル電源の容量も大きめなものが必要です。どんな暖房器具を使うかを決める際、その暖房器具の使用電力(W)×就寝時間(h)=使用する電力量(Wh)を計算し、ポータブル電源の容量(Wh)をオーバーしないかを確認しておきましょう。
防寒対策に使える家電もさまざまあります。電気湯たんぽは充電のみですぐに温まるので、お湯を沸かす環境を用意しないで済むというのが便利です。電気毛布や電気クッションも電源をつなげばすぐに温まるので、お手軽ですね。電気毛布は上から掛けるのも良いですが、シュラフの下に敷くと、底冷えを防ぐことにも利用できます。
アナログな湯たんぽ同様、温かい面積が広く使いやすい電気湯たんぽ。使用前に電気が必要なだけで、使用時はコンセントをつないでおく必要はありません
私も冬場は電気毛布を多用します。温度調節が簡単で、敷き布団代わりに使うと背中や腰周りが冷えるのを防いでくれます
部分的に温めたいということであればクッション型の暖房器具も便利です。USBで使えるものもあり、比較的使用電力も低めです
ポータブル電源も寒さに弱い!?
家電による寒さ対策を紹介してきましたが、実はポータブル電源も極寒には弱いのです。ポータブル電源はリチウムイオン電池を使用していますが、リチウムイオンの特性上、一般的には使用時の温度が低くなるにつれて、放電できる容量が少なくなります。つまりバッテリーの減りが早くなってしまうのです。スマホも冬はバッテリーの減りが早い気がしませんか? それと同じ状況ということです。
対策はやはり「保温」です。ポータブル電源を適度な湯温の湯たんぽなどと一緒に保温バッグに入れる、毛布でくるむなど、できる限り冷やさないようにして使用してください。ポータブル電源の説明書などには、動作温度という数値が記載されていますので、それを参考にしましょう。また、充電可能な温度という数値もあります。車載のコンセントなどで充電する際には、あまりに寒い場合は充電もできなくなりますので、注意しておきましょう。
今回は、気温が大きく下がる秋冬の車中泊を快適に過ごすための寒さ対策をご紹介しました。夏の暑さ対策は限界がありますが、寒さは対策すればするほど効果があり、車中泊の快適さが増していきます。その分荷物が増えるのが悩ましいところではありますが、しっかりと準備しておくに越したことはありません。自分なりの寒さ対策を検討し、秋冬の車中泊を楽しんでみてください。
霜田奈緒
しもだ・なお 2001年から、月刊誌を中心に、300冊以上の編集に携わってきた自動車専門誌の編集者。子供の頃から車好きで、親が乗っていたボルボ240の音を聞き分け、親の帰宅を察知し勉強を始めていた。好物はジャンル・時代問わずの車のカスタム・チューニング。近年はキャンプにハマり、愛車もアウトドア仕様。ギャラン、レグナム、GTO、アストロ、ボルボC70、トゥーラン、XC70と、とりとめのない愛車遍歴。