車中泊仕様ハイラックスのキービジュアル
写真=大塚七恵 / 文=大森弘恵

計算された車中泊での居心地の良さ。車内を広く見せるキャンピングカー作りのポイントとは?

「バンタメフェス2024」で出会ったクルマを、アナタの車中泊カーの参考に!

那須塩原ニワトコRVパークで行われたバンライファーの祭典「バンタメフェス2024」(2024年11月9-10日開催)に、キャンピングカーデザイン事務所を運営する宮本芽依さんが参加。宮本さんのアイデアが詰まった“動くお城”は、ワンボックス車とは思えないほど開放的です。計算されたインテリアのポイントを教えてもらいました。

目次

視線を隠しつつ光が巡る車内

DIY経験のない宮本さんが初めて作ったキャラバンE25系がベースのキャンピングカー

DIY経験のない宮本さんが初めて作ったキャラバンE25系がベースのキャンピングカー

自分の空間を持ちながら旅をしたい……そう考えた宮本さんが初めて自らの手で作った旅するクルマは、日産キャラバン。福祉車両をベースにしていて、内装を剥がし、イチからDIYを学びながら作り上げたと言います。
キャラバンをベースとしたキャンピングカーはビルダーからも販売されていますが、その多くはワンルーム。運転席の直後から荷室まで奥行きいっぱいを寝室にして、キッチンは申し訳程度のものが大半です。

ところが宮本さんのキャラバンは、常時立って調理できるキッチンと寝室をパーテーションで区切った1K。車内を分割するとどうしても狭く見えるのですが、圧迫感を克服するステキなアイデアがちりばめられていました。

アイデアのひとつが格子戸風のパーテーション。 適度な隙間があるので目隠ししつつ車内全体に柔らかな光が巡り、閉塞感がありません。
バックドアを開放してくつろいでいるときに料理の材料などが散らかりがちなキッチン周りを隠せる一方、スライドドア側からは寝室兼リビングが見えないのは安心。

車内のキッチン。IKEAのシステムキッチンを利用。水道とシンク、IHクッキングヒーターを搭載し一通りの調理が可能

IKEAのシステムキッチンを利用。水道とシンク、IHクッキングヒーターを搭載し一通りの調理が可能

リビング。天井に貼られた板のラインとパーテーションの縦線が続いて見えるためキャラバンとは思えない奥行きと高さを感じます

天井に貼られた板のラインとパーテーションの縦線が続いて見えるため、キャラバンとは思えない奥行きと高さを感じます

空間を広げてくれるテーブルと映画のように景色を切り取る窓

映画の比率を意識したシネマティックウインドウ

映画の比率を意識したシネマティックウインドウ

インテリアのテーマは日本と北欧の美意識を融合した「ジャパンディ」で、天井や壁はあたたかみのある木材、ベンチ兼ベッドは和をイメージする畳です。余白を生かしているのも和の証。

「畳はい草そのままの色ではなくヌケ感のあるグレーにしました。以前は色つきのテーブルを使っていましたが、どうしても狭く感じてしまうので透明の天板に。これもヌケ感がでるんですよ」と宮本さん。

リビング兼寝室の壁は片側にホワイトボード、反対側には窓。天井直下には横長の小窓が並んでいます。なんてことのない設計なのに心地いい。ここにも宮本さんのアイデアが詰まっていました。

「窓は映画の画面比率と同じにしたシネマティックウインドウ。ここから見える風景は映画のように切り取られるんです。夜は寝転んで星を見るのも好き」(宮本さん)

宮本さんは大学で中国語を学んでいて、在学中に起業してからはダブルスクールで空間デザインも学んだそう。
車内にいながら自然を感じられる窓にこの比率を採用することで、お気に入りの景色の美しさがいっそう際立ちます。

テーブルの天板は透明でフレームは鏡面仕上げ。収納庫でもあるベンチの側面には鏡が貼られていて広さを演出

テーブルの天板は透明でフレームは鏡面仕上げ。収納庫でもあるベンチの側面には鏡が貼られていて広さを演出

人生を豊かにするバンライフ

車両後部。ソーラーパネル、サブバッテリーを搭載していて旅先でも仕事ができます

ソーラーパネル、サブバッテリーを搭載していて旅先でも仕事ができます

宮本さんのクルマにはサブバッテリーを搭載していますが冷暖房や冷蔵庫はありません。それはなぜでしょう?

「暑さ寒さは場所で調整しています。夏は北海道、冬は沖縄へという感じです」(宮本さん)

設備に投資するのではなく、身を置く環境を時々に応じて変えていく……場所にとらわれず、仕事と旅を両立するバンライフの醍醐味です。

そもそも宮本さんがバンライフの世界に飛び込んだのは学生時代、コロナ禍でのこと。
「いつかバンライフをやってみたいと思っていたので、自宅にこもって同じ壁を見て鬱々とするよりは……と軽バンを借りて旅に出ました。コロナ禍なのでそれほど人との交流は多くなかったんですが、地方に出てもオンライン授業を受けて学べる。毎日こうやって旅をしながら暮らせたらいいなと思ったのがキャンピングカーデザイン事務所を起業したきっかけ。旅が終わってからもクルマに住みながら大学へ通学していたんですよ」と笑います。

自分の経験、そしてかつて引きこもり生活を経験した人がバンライフと出会って社会に出ているのを目の当たりにし、バンライフによって豊かになると確信したとも。

「バンライフを通して人生が豊かになることを、もっと多くの女性に届けたいですね」(宮本さん)

大森弘恵

おおもり・ひろえ フリーランスのライター、編集者。主なテーマはアウトドアと旅で、ときどきキャンピングカーと料理の記事も。身軽なソロキャンプ歴は約40年、愛車はヤマハ・WR250R

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