いざというときに大活躍! クルマを防災ギアにするならどんな機能・装備が必要?
安全な車中泊避難を目指そう防災月間である9月はあらためて『備え』を意識することが多い時期。車中泊カーは防災に役立つとされていますが、どんな機能・装備があると安心なのでしょうか? 9月に開催された「横浜キャンピングカーショー2024」で、アウトドア、車中泊に詳しいライター・大森弘恵さんが防災向きの車両を探してきました。
収納とベッド、電気の確保が第一歩
台風や大雨による洪水や土砂崩れ、大雪による孤立や停電、そして予期せぬ地震や噴火など、自然災害の発生件数は増加傾向にあります。
それとともに広まっているのが、日常的に備える「フェーズフリー」。いつも使っているモノを災害時に役立てようという考え方で、キャンピングカーや車中泊ギアもそんな身近な備えのひとつ。
では、楽しく備えるにはどんな装備が必要なのでしょうか?
ヒントは「ばすだしで」。
これは防災・危機管理に詳しい香川大学の磯打千雅子特命准教授が自身の体験をもとに考案した、安全な車中泊をまとめた合い言葉。
ば=安全な場所に避難
す=身体を水平に保ってエコノミー症候群防止
だ=断熱性能を高めて少しでも過ごしやすい環境を作る
し=収納場所を決めて整理整頓
で=電気を確保
荷物を積んだまま車内で寝ることを想定しているキャンピングカーや車中泊カーは「す」と「し」はクリアずみ。
避難場所の情報を得るにも、調理や気温の調整にも不可欠な「で」を中心に「ばすだしで」仕様の車両を探してみました。
長期にわたって冷蔵庫を動かせる「太陽光発電システム」
RVビッグフット「ACシステム リトルノ オクタービアM」
乗用車でもエンジンをかけていればカーエアコンをきかせ、スマホの充電くらいはできますが、長時間のアイドリングは排ガスや騒音が問題になってしまいます。
ハイエースベースのキャンピングカー「ACシステム リトルノ オクタービアM」はサブバッテリー、走行充電システムに加えソーラーパネル(合計400W)を装備していて電気確保の悩みを解消。
車内には家電が並び、さながらワンルームマンションのよう。調理家電を使えるので火災や一酸化炭素中毒の危険も減らせます。
大型冷凍庫を備えた家庭用冷蔵庫。傷みやすい野菜も冷凍してたっぷり保存できるので長期の旅に重宝します
IHクッキングヒーターとオーブンレンジ、ミニシンクを備えたダイネット。換気扇やエアコンもあり、安全で快適な空間を確保
下段に大型収納スペースを備えた常設ベッド(2名就寝)を備え、すぐに横になれます。仕切り用カーテンを利用し、必要なときだけカセットトイレを取りだしてトイレルームにできるのもアイデア
10L以上の給水タンクで「水を確保+無駄遣い防止」
カーショップスリーセブン「アレグロ」
狭い道でも運転しやすい日産NV200バネットがベースの「アレグロ」は最大出力2000Wのポータブル電源とDCクーラーを搭載。さらに8ナンバー登録車だけあって給排水タンクは10Lあります。
ポリタンクに水を保管し、鍋などに直接注いでもいいのですが、蛇口から水が出ると作業がスムーズ。それに水をこぼさずにすむので水の無駄遣いを減らせます。
最大出力2000Wのポータブル電源を搭載しているので電気ケトルなど調理家電を使用可能。給排水タンクとミニシンクも装備されていてライフラインを確保できます
リビングと寝室を分けられるポップアップルーフモデル。5ナンバーサイズでも家族4人で眠れます
しっかりした断熱とFFヒーターで、寒い時期も快適
フロットモビール「シュピーレン」
タウンエースベースの車中泊カー「シュピーレン」。派手さはないけれど、断熱材とサブバッテリー+走行充電システムを標準装備。長野のビルダーだけあり寒さ対策はお手の物です。それに加えてオプションでFFヒーターやクーラー、換気扇、網戸などを用意していて自分好みに「(ばすだしで、の)だ=断熱性能」を補完できます。
FFヒーターはタンク内のガソリンを燃焼させるヒーターで、エンジンを切っても使えます。おまけに車外の空気を取り入れ、車外に排気するので車内の空気はクリーン。ウインタースポーツ旅などに欠かせない装備で、積雪地域で立ち往生したときにも役立ちます。
FFヒーターであれば一晩でもガソリン消費量は1〜2L。消費電力も30W程度なので寒い時期の旅に不可欠。断熱性が高められた「シュピーレン」では素早く車内をあたためられます
酷暑対策のクーラーもほしいところ。「シュピーレン」に搭載された国産クーラーは、吹きだし口(写真上部)の向きを変えられるので効率よく冷やせます
部屋を丸ごと移動するもよし、据え置きもよし
トリガノ「エメロード406 VIP ハイブリッドⅡ」
「エメロード406 VIP ハイブリッドⅡ」は冷蔵庫、混合水栓シンク、トイレなど暮らしに必要な装備を搭載しながら車両重量を750kg以下に抑えることで普通免許で牽引できるトレーラーです。
部屋を丸ごと引っ張っていき、目的地に到着したらヘッド車を切り離しで身軽に移動できることも大きな利点。
北欧断熱と呼ばれる寒冷地対応の断熱材を採用しているのでエアコン(オプション)の効きもよく、自宅庭に置けば『離れ』になります
『VIPハイブリッド』はエメロードを扱うインディアナ・RVのパッケージ装備で、ポータブル電源で家電を、鉛バッテリーでFFヒーターや給水ポンプをまかなうという二段構え
ハンドルやエンジンなどがなく、居住のための設備のみで構成されているので広々。シャワーやトイレまで付いています
コンロはカセットガス仕様。プロパンガスのほうが大容量で便利に思えますが、フェリーに乗船できないことが多いし、講習を受けることで30分ルール(=いざという時にLPガス販売事業者が駆けつけて措置を行なえる30分以内の場所に販売)が免除されるとはいえ、プロパンガスの販売店を見つけるのが大変。カセットガスならスーパーやコンビニでも入手できます
「ばすだしで」仕様に整えた愛車やキャンピングカーも、手にしただけでは備えとしては不十分。
車中泊旅やキャンプ経験を重ねてこそ、いざというときにも慌てずにすみますよ。
大森弘恵
おおもり・ひろえ フリーランスのライター、編集者。主なテーマはアウトドアと旅で、ときどきキャンピングカーと料理の記事も。身軽なソロキャンプ歴は約40年、愛車はヤマハ・WR250R