車中泊旅カーではポータブル電源とサブバッテリー、どちらを選ぶ?
車中泊の電源選び積極的にポータブル電源を用いた車中泊カーが増えています。9月に開催された「横浜キャンピングカーショー2024」でもその勢いは増しているよう。はたしてポータブル電源とサブバッテリー、どちらを選べばいいのでしょうか? 車中泊やアウトドアに詳しいライター・大森弘恵さんが、会場で見かけた電源最新事情をお届けします。
年々進化するポータブル電源
かつて車内で家電を使おうと思ったら、メインバッテリーとは別にサブバッテリーと走行充電システム、インバーターをまとめて搭載するのが正解だとされていました。
ところが2010年代後半より、大容量で定格出力1000W以上でありながらコンパクトなポータブル電源が続々登場。配線の知識不要で家電が使え、クルマを買い替えても問題なし。最近は大容量でも短時間で充電できるものが増え、外出の準備をしている間に充電完了するものだってあります。
そんな風に進化を続けるポータブル電源を活用し、車内にソケットを備えて車内の家電を使えるようにした車両も珍しくなくなりました。
ただし、大容量であっても電気を使い切ったらお手上げ。
2024年にポータブル電源を急速に走行充電できるオルタネーターチャージャーが発売されましたが、対応するポータブル電源はごくわずかです。
結局、キャンプ場のAC電源サイトを利用できないときは、ソーラーパネルやアクセサリーソケットを用いて充電するしかありません。
一方、サブバッテリーは走りながら発電されて余った電気を溜めています。そのスピードは条件によりますが、アクセサリーソケットからの充電よりも速い。ポータブル電源同様、ソーラーにも対応しています。
配線は複雑で、DIYやトラブル対応では知識が必要ですが、好きなパーツを選べるのも根強い人気の理由です。
車内の設備を考慮し、贅沢なダブル使い
ニワドー「インディアナ 300L VIP ハイブリッドⅡ」
キャンピングトレーラー「インディアナ 300L VIP ハイブリッドⅡ」を扱うインディアナ・RVでは、AC(交流)電源で稼働する家電はポータブル電源、FFヒーターなどDC(直流)電源で動くものはサブバッテリー(DC)と用途にあわせてふたつの電源を装備しています。
DC-ACの変換ロスを抑え、互いに助け合う最強の布陣ですが、場所をとるのでトレーラーくらいのゆとりがないと難しいのかもしれません。
走行充電器やソーラーパネル、外部充電を備え、電気対策は万全。ポータブル電源はパススルー機能付きで、AC電源を取り入れながら家電を使ったり、サブバッテリーに充電したりなんてことも可能です
オプションではありますがウインドウエアコンやテレビを取り付けられます。写真には写っていませんが60Lの車載用冷蔵庫も標準装備
コンパクトなDCエアコンと相性のいいサブバッテリー
A's Workers「コレーガ イズム」
スズキ・エブリィベースの軽キャン「コレーガ イズム」にはコンパクトな12V専用エアコンが装備されています。この電気をまかなっているのは200Ahのサブバッテリーです。
クルマの余剰電力を溜めるサブバッテリーは、インバーターでDC12VをAC100Vに変換して家電を使えるようにします。ところがこのとき、1〜2割の変換ロスが生じるそう。
ポータブル電源でも12V専用のエアコンや冷蔵庫を動かせますが、サブバッテリーであれば変換の必要はなく大切な電気を有効に使えます。
車内にはエアコンとテレビ、電子レンジまで! 限られた空間にうまく配置されていて窮屈な感じはしません
12V専用エアコンはコンパクトなものが多く、軽キャンと相性よし。走行距離や搭載しているシステムなど条件によって充電時間は異なりますが、目的地に到着するまでにある程度充電されるのは心強い!
充電システムは床下に格納されていました。トラブル対応には知識が不可欠ですが、アクセスしやすい場所にあるのは安心
普段使いがメインで、エアコンなしなら手軽な90Ah
ロッキー2「フリード クロスター MV」
8年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたホンダ・フリードに、オリジナルシートを換装して大人ふたりがゴロリ横になれる車中泊カーが早くも登場。
コンパクトなミニバンなので内装はシンプル。テーブルと後部キャビネットを備えていますがDCクーラーはありません。
そのためでしょうか、サブバッテリーはちょっと控えめな90Ah。
床下の走行充電システムと外部充電を備えていて、ガッツリ旅に出るというよりは、通勤や買い物メインでときおり気ままに遊びに行く……といった使い方によさそう。
クーラーがないのは物足りなく感じますが、取り付けるとなればバッテリーを増やさなくてはならないしクーラー本体も場所をとるのでコレが最適解かも。
サブバッテリーではなくポータブル電源で対応してもよさそうですが、ポータブル電源は暑さ・寒さに弱く、車内に置きっぱなしにできません。サブバッテリーは車外で使えないのがデメリットとされていますが、いちいち取り出さなくていいのはモノグサな人にはメリットとも言えます。
オプションでFFヒーターや天井断熱加工を選べるので寒さ対策は十分。夏は写真のようなバグネットと扇風機がマスト
後部にモニターをつなげば、停車中でもナビを使えます
手持ちのポータブル電源を有効活用
ケイワークス「トレイルワークス460ミニ」
「トレイルワークス460ミニ」はトイレこそありませんがベッドやキッチンなど暮らしに必要な装備と外部電源システムをあわせて750kg以下に抑えたトレーラーで、普通免許で牽引できます。
家電はリチウムイオンのサブバッテリーと外部電源で。サブバッテリーだけでも冷暖房を4〜5時間動かせるそうです。
また、標準装備でポータブル電源用の充電パック(in:専用ソケット、out:100Vと12V各1)も用意。手持ちのポータブル電源を有効活用できます。
冷蔵庫と電子レンジ、エアコンなど家電が並ぶゆとりの室内。「トレイルワークス460ミニ」には断熱材が入っているのでエアコンの効きも良好です
ポータブル電源の勢いはやみそうにありませんが、変換ロスや長旅での充電をどうするかなど課題もあります。限られた車内での置き場所にも配慮が必要です。
ポータブル電源とサブバッテリー、それぞれの特徴を知り、装備や使い方の相性がいいものを選びましょう。
「横浜キャンピングカーショー2024」の特集はこちら
大森弘恵
おおもり・ひろえ フリーランスのライター、編集者。主なテーマはアウトドアと旅で、ときどきキャンピングカーと料理の記事も。身軽なソロキャンプ歴は約40年、愛車はヤマハ・WR250R