寝床作りは車中泊の最重要テクニック! 快適な「寝床」とプライベートを守る「目隠し」
車中泊の基本から応用テク、マナー・ルールまで、最小限の準備で始める手軽なクルマ旅をレクチャー車中泊による車旅を楽しむために、必要な基本&応用テクニック、マナー、ルールを紹介する連載企画「簡単・快適! 車中泊マニュアル」。第2回となる今回は、車中泊が快適になるかどうかを左右する、基本であり最も重要な「寝床作り」と、よりプライベートな空間を実現するための「目隠し」のテクニックを、車中泊の専門家であるライトキャンパースタイル編集長・霜田奈緒さんが紹介します。
寝床作りのポイントはできる限りフラットに、凹凸をなくす
車の座席は、運転する際に快適で疲れない姿勢が保てるように作られているため、身体の横揺れを支えるようシートの端が膨らんだサイドサポートが備わっていたり、座面に傾斜がついていたりと、寝るには快適ではありません。
また、ミニバンを中心にフルフラットと呼ぶシートレイアウトもありますが、背もたれと座面の間には段差があったり、シートベルトのバックルが飛び出ていたりと、一晩を快適に過ごすにはちょっと寝づらいのです。
そこで、さまざまなアイテムを駆使して、その車にあったベストな寝床を作っていく必要があります。そのために必要な手順は2つ。以下で確認していきましょう。
寝床作り その1
まずは、最も長さを取れるレイアウトを考える
寝床作りで最初にすることは、段差等を気にせずに、就寝スペースとして最も長さが取れるレイアウトを考えることです。できる限り自分の身長以上のスペースが取れるレイアウトを考えましょう。膝を曲げて寝ればいいやと思っても、伸ばせるスペースがある中で膝を曲げて寝るのと、伸ばせないから曲げて寝るのでは、快眠の度合いが変わってきます。
車種によってベストなレイアウトは異なりますが、ミニバンであれば、1〜2列目もしくは2〜3列目のシートをフルフラットにするのがいいでしょう。SUVやステーションワゴンであれば、2列目シートを前に倒して、ラゲッジのフロアと合わせて寝床を作るのがおすすめです。ミニバンや軽バンであれば、180㎝近いスペースを作ることは比較的簡単ですが、ステーションワゴンやSUVでは難しいことも多いです。そんな時は1列目をできるだけ前にスライドし、1〜2列目の隙間を工夫して埋めることで、就寝スペースを広げることも可能です。いろいろなパターンを試しながら考えてみましょう。
ミニバンの場合は、1〜2列目もしくは2〜3列目をフルフラットにしてスペースを作るのが基本。1列目シートは凹凸が多いので、2〜3列目を使う方がフラットにしやすいです
ステーションワゴンは、2列目シートを前に倒して、フラットなラゲッジを活用します。2列目は完全なフラットにならない車が多いですが、少々の傾斜なら問題ありません
ステーションワゴン同様に、SUVも2列目を前に倒して、ラゲッジと合わせて就寝スペースを作るのが基本です。長さが足りない場合もあるので、1列目との隙間を埋めるなどの工夫が必要です
SUVは就寝スペースの長さが足りないことが多いですが、1列目をリクライニングして枕代わりに使ったり、1〜2列目の隙間を荷物で埋めると就寝スペースを広げられます
軽自動車も車種によってフラットスペースの作り方はさまざまですが、1列目からラゲッジまでがフルフラットになる車種では2m近いスペースも作れます
寝床作り その2
「寝づらいな」と感じるポイントを見つけて解消
十分に寝られる長さを持った就寝スペースを見つけ出したら、次は実際にそこに寝てみましょう。まずはどんな部分に寝づらさを感じるかを実感するのがポイントです。実際に頭の場所を決めて横になってみて、たとえば腰付近の段差が気になるとか、背中に硬い樹脂パーツが当たる、足側が頭よりも高い位置にあるなど、イヤだなぁと思う部分を探し出しましょう。この不満を残したまま寝ると、十分に寝られなかったり、身体を痛めたりします。せっかくの旅だから、快適に過ごしたいですよね。そこで、これらの不満をひとつひとつ解消していきます。
段差や樹脂パーツの硬さを解消するために使うのは、キャンプ用マットやクッションです。私は、折りたたみ式のキャンプマットをよく使用します。折りたたみ式マットは、高さや幅の調整がしやすく、段差の解消にはぴったりです。クッションを置いて、横になってみてを繰り返して、ベストなマットの置き方を見つけ出しましょう。マットやクッションで大きめの段差を解消できたら、最後に、その上からエアマットを敷きます。エアマットがあれば、多少の硬い樹脂パーツはまったく気にならなくなります。また、空気の層があるので、底冷えにも効果的。お手軽に済ますならば、段ボールを敷き詰めるというのもありです。
ミニバンの寝床作りはココがポイント
シートの背もたれと座面の段差は結構大きいです。実際に横になってみるとわかりますが、ちょうど腰のあたりに段差がくると、このままではまったく寝られません
シート本体にシートベルトが備わっている場合は、フルフラットにしてもその樹脂パーツ分の隙間が空きます。またこの樹脂パーツが意外と気になります
ミニバンは2列分のシートをフルフラットにするので、段差が2か所あります。その段差を埋めるようにキャンプマットを配置しましょう
シートベルトの樹脂パーツの硬さとシート間の隙間は、折りたたみ式マットをこんなふうに使うことで、解消できます
ワゴン・SUVの寝床作りはココがポイント
マツダ・6ワゴンの場合、背もたれ裏面の樹脂パーツの硬さを解消するためにキャンプマット1枚を敷くだけで簡単に寝床作りができます
キャンプマットやクッションを使い段差や樹脂パーツの硬さを解消できたら、その上からエアマットを敷けば寝床は完成! あとはこの上にシュラフなどを敷けば快眠間違いなし!
あなたの愛車が滞在型の快適空間に早変わりする、寝床の作り方を動画でお届け
どうにもならない傾斜は車の止め方でクリア
寝床の作り方によっては、どうしても頭を置きたい側が、足先よりも低い位置になってしまうという場合もあるかと思います。そういう時は、車を少し傾斜がある場所に止めるというのも手です。寝床がフラットになるような止め方を探しましょう。愛車の就寝スペースのクセを理解して車中泊を楽しめば、より快適な旅になると思います。ちなみにここまで紹介した寝床作りは、旅に出掛ける前に試しておきましょう。
車外からの視線や日差しは「目隠し」でガード
寝床が完成すれば、車内で寝ることは可能になりますが、より快適かつ安心に過ごすために、もうひとつやっておきたいこと、それは「目隠し」です。車中泊できるスポットは、すぐ隣に他の車中泊客がいるような場合も少なくありません。就寝中に車外から見えるような環境では、落ち着いて寝られないですよね。そんな心配をなくすためにも、目隠しをしておくことが必要です。
目隠しは朝方の日差しよけや、断熱・防寒の効果もあります。ミニバンなどは窓が多く、ちょっと手間はかかりますが、車中泊旅に向かう前に、しっかりと準備して臨みましょう。
目隠しに必要なものは、サンシェードやカーテンです。フロントガラスは、駐車時に使う一般的なサンシェードでOK。できれば断熱効果を持ったものがおすすめです。夏場は日差しが車に当たると急激に車内温度が上がりますので、車内の温度を快適に保つことも気にかけましょう。サイドやリアのガラスは、カーテンもしくはサイドガラス用のサンシェードというのがあるので、それを使うのが便利です。サイドガラスやリアガラスは、純正でプライバシーガラスの車も多いので、カーテンまでは必要ないということであれば、必要な部分だけタオルなどでカバーするというのもお手軽な目隠しの方法ですよ。
トヨタ・ヴォクシーのフロントガラス、サイドガラスに目隠しをした状態。すべてを奇麗にふさぐと、昼間でも車内は暗くなります
フロントガラスの目隠しは駐車時の日差しよけに使うサンシェードで十分です。汎用品(はんようひん)でもいいですが、車種専用設計になっているものがあれば、より隙間なくふさげます
写真は、マグネットで取り付けるサンシェードです。断熱効果はありませんが、お手軽で収納もコンパクトです。購入前に、愛車の窓枠付近にマグネットが付く金属部分があるか確認しましょう
こちらは、吸盤で取り付けるタイプのサンシェードで、車種を選ばず取り付けが可能です。台形状のフロントサイド用、長方形のリアサイド用などがあります
目隠しグッズはどこで買える?
車中泊に便利な目隠しグッズは、カー用品の量販店で、だいたいそろいますので、一度お店に行ってみましょう。多くの商品は車種問わず使える汎用品ですが、S/M/Lなどサイズはありますので、お店に行く前に、窓の寸法を調べておくとスムーズにグッズ選びができると思います。
お手軽に済ませるならば…
写真はトヨタ・ヴォクシーに純正装備されているサンシェード。メッシュ素材ですが、プライバシーガラスと相まって外からは見えにくくなります
車用のカーテンやサンシェードを買わなくても、タオルや紐(ひも)などを駆使すれば、目隠しすることは十分に可能です。写真は、ロープや突っ張り棒、家用のカーテンや、カーテンの裏地に使う遮光素材を使った自作目隠しグッズです
「簡単・快適! 車中泊マニュアル」第2回は、寝床作りと目隠しについてのノウハウとテクニックをお届けしましたが、いかがでしたでしょうか? 第1、2回の内容を押さえておけば、車中泊の基本テクニックとしては問題ないので、次の週末あたりに、まずは近場から車中泊旅に出かけてみるのはどうでしょうか。次回は、夏場の車中泊で必須となる「暑さ対策」をご紹介します。
霜田奈緒
しもだ・なお 2001年から、月刊誌を中心に、300冊以上の編集に携わってきた自動車専門誌の編集者。子供の頃から車好きで、親が乗っていたボルボ240の音を聞き分け、親の帰宅を察知し勉強を始めていた。好物はジャンル・時代問わずの車のカスタム・チューニング。近年はキャンプにハマり、愛車もアウトドア仕様。ギャラン、レグナム、GTO、アストロ、ボルボC70、トゥーラン、XC70と、とりとめのない愛車遍歴。
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