WILLER EXPRESS広報の人と蟹めんまさん、藤谷さん
漫画=蟹めんま / 文=藤谷千明

推し活遠征ならウィラー! ファンの声を形にした快適バス旅の秘密

「中の人」が語る、コロナ禍を支えてくれた遠征民への感謝とサービス開発の裏側
漫画=蟹めんま

ピンク色の車体でおなじみの高速バス会社、WILLER EXPRESS。「2024年のゴールデンウィーク期間の予約動向で推し活利用者が半数を超えている」といったプレスリリースを発表していたり、TikTokアカウント「推し活遠征女子」を運営していたりと、推し活関連のプロモーションを積極的に展開しており、「推し活✕高速バス」をテーマにする当連載でもずっと気になっている存在でした。連載第6回では同社の「中の人」へのインタビュー企画が実現! ぶっちゃけ、推し活民をどう思っているのか、裏側を語っていただきました。

目次

ひとつ前の第5話にて わたし遠征バスはウィラーと決めてます!! ライブ遠征民 はづさん カノピーは顔がすっぽり隠れて爆睡できますし、クーポンがたくさんもらえるので値引きでめちゃくちゃ安く移動できますよ!! 高速バス・ウィラーの良さを力説されたので ウィラー企画部のお二人に会いにきました〜! 商品本部 販売企画チーム 篠原さん 高速バス予約サイト ウィラートラベル 運営・マーケティング 藤光さん あの…便乗告白なんですが 実は私もウィラーが好きで…

好きすぎて7年前のハロウィンにウィラー座席の仮装をしたんです ※意味がわからなさすぎると思うので詳細はコラムへ! この時期V系バンドのライブのためによく遠征してたんですよ カノピーのおかげでよく寝られましたし 【大切なお知らせ】ギター◯◯脱退 ◯月◯日を持ちまして、△△△を脱退することになりました。 追っかけていたのが活動休止とかメンバー脱退とか目まぐるしいバンドでして 何度カノピーの中で泣いたことか…!! 選んだバスがウィラーでよかったです!!

そんなカノピーが最近大きくなってて感動しました そうなんです!大きくなったカノピー内ではスマホも触れます!! これまでの夜行バスではできなかった、夜中のSNSに遠征の感想をぶちまける会ができます! みなさんずっとやりたがってましたよね!! 推し活界隈の需要をよく知っていらっしゃる…!! 推し活民はウィラーさんにとってどういう存在なんでしょう? まず客層的に全体の何%くらいなんですか? 全体の30%ですね 30%!? 思ったより多い!!

うちのお客様はこの3タイプが多いと思ってるんですが 円グラフ:推し活 30% / 旅行 帰省など 30% / テーマパーク好き 30% / その他 コロナの時、全部ゼロになったんです ひえ〜 おそろしい で、2022年くらいから少しずつ元に戻っていくんですが あ〜 ちょっとだけ予約入った!! いちばん最初に戻ってきてくれたのが推し活移動の方々だったんです

あの熱量のおかげでウィラーはコロナ禍を乗り切れたと言っても大げさではないですよ! コロナ前も推し活民の皆さんの恩恵は感じていましたが、あらためて積極的に関わっていきたいとなりました ちなみに なぜ戻ってきたのが推し活界隈だとわかったんですか? すごく目立つんですよ!ライブが発表されたタイミングどんぴしゃでアクセスが集中したり チケットの当落が出た瞬間にどっと予約が入りますし びっくりするほどキャンセルされません…!! オタクの特徴:行くと決めたら絶対に行く ※「行けたら行く」もだいたい行く

ターミナルでわかることもあります みんな同じTシャツだ あれ!? 突然〇〇便が満席になった?! あ!! それ おそらくアイドルのライブです!! 2号便だしたほうがいいかも!! こんな感じで社員が気づくパターンもあります 社内に推し活民がいるってことですか? いますよ!ジャニオタさん、バンギャルさん、ドルオタさんなどなど… 自分で売って自分で乗ってる社員がちょいちょいいます オタクはいろんなもの自給自足しますが バス便もあるんだ… そうなんですよ〜

じゃあ最近の推し活向けPRのアイデアは社内のオタクさんたちから出てくるんですか? そのへんが主になりますかね あとはアイデア出し合宿です 合宿があんの!? じゃあ、最後に これから企画される推し活民の向けのサービスはありますか? ずっとコンサート系の推し活民さん向けにプロモーションしてきたんですが 今気になっているのはサッカーや野球などのスポーツファンの方たちです 確かにむちゃくちゃ遠征する人種です 試合の半分はアウェイ遠征 ※蟹めんまはJリーグサポーター やはりそうですよね。ターミナルでもユニホーム姿の人は多くて…

とはいえまだしばらくは様子見なんですけどね 様子見? すぐにはやらない理由があるんですか? はやっているからというだけで飛びつくのは失礼かなと… そういうプロモーションはすぐバレますからね!! 知らないのにアプローチするのは違うかなと思って もう少しスポーツの界隈への解像度を高めてからですかねぇ… ライブに行くか迷ってるときのオタクみたいなこと言わなくていいんですよ!! そうだよ!!もっと軽率にやってください!! いや!!ちゃんと勉強してからです!! ウィラーさんには硬派なオタクメンタルが宿っていたのでした!!

新型コロナ禍からの復活期を支えてくれた推し活民

今回登場するのは、前回登場したはづさんもよく乗る高速バス会社、ピンクの車体でおなじみ、ウィラーの「中の人」。WILLER EXPRESS株式会社 、商品本部 販売企画チームの篠原玄さん、WILLER MARKETING株式会社、マーケティング戦略グループの藤光昭洋さんにお話をうかがいました。

蟹めんまさんもウィラーをリスペクトしており、7年前のハロウィーンでは「ウィラーの座席」のコスプレをしたほどです……。これだけですと、意味がわかりませんね。解説します。めんまさんは、一時期ハロウィーンの季節になると「バンギャルが好きなもの」をテーマに仮装することをライフワークにしていました。「ウィラーの座席」のほかにも、過去に「Famiポート」「チェキフィルム」「ツイキャスお茶爆アイコン」などの仮装もなさってました。とはいえ、その格好で街に繰り出すわけではないのですが。なお、マンガ内の写真はめんまさんに頼まれてわたしが撮影したものです。

篠原さんはその話を聞いて即座に「あの仮装の方でしたか!」と反応されていました。めんまさんは中の人から「認知」をもらっていた! さすが我々遠征民の味方・ウィラー、SNSの動きもチェック済みだったとは……。

さて、「バス遠征=ウィラー」といっても差し支えないくらい、我々の遠征ライフと深い関係(?)にあるウィラー。マンガでも描かれていたように、近年は推し活利用者向けのプロモーションを積極的に展開しており、遠方のドームやアリーナへの行き方や、バス+宿泊プランを紹介する特設サイト、推し活の「あるある」や豆知識を紹介するInstagram・TikTokアカウントもあります。また他社とのコラボも増えており、2023年にはタワーレコード梅田NU茶屋町店との「大阪もっと! 推し活プロジェクト 」、2024年にはアパレルブランドのVISとの「遠征民応援キャンペーン 」を実施。

「SNSでは車内設備や料金プランを推すというよりは、“高速バスのある推し活の日常”をベースにしています。現在フォロワーは1万5000人くらいで、中には100万再生を超えている動画もあり、推し活ユーザーさんに認知していただいている実感があります」(藤光さん)

かねてより遠征民の足として愛されてきたウィラーですが、企業として推し活民を推し始めた(←変な日本語!)のは、ここ数年とのこと。そのきっかけは新型コロナ禍だったそうです。

「当社のお客様は、大きく分けると“推し活の遠征”、“テーマパーク”、“帰省”という3つの層がメインでした。コロナ禍でそれらの需要が激減したなかで、真っ先に戻ってきたのがライブ目的のお客様でした。空席ばかりの、いわば“空気輸送”状態が続くなか、ある一日だけ予約が爆発したことがあって。調べてみると、人気配信者ユニットのライブの日だったんです。急きょ、1便では足りずに2号車、3号車を増便して対応した……なんてこともありました」(篠原さん)

めんまさんも「ライブ遠征は一人でも行動しやすいですし、他のレジャーに比べれば比較的動き出しやすかったのかもしれませんね」と、当時を振り返ります。

絶妙な「かゆい所に手が届く」サービスはどう生まれる?

ところで、ウィラーといえば、「エアコンが暑い(寒い)」、「急に具合が悪くなったので休憩所に立ち寄ってほしい」など、バス乗車中の困りごとをメールフォーム経由で伝えると対応してくれる「おたすけDM」のような、かゆい所に手が届く独自サービスが印象的です。ああいう発想は、どうやって生まれているのでしょう?

「『おたすけDM』も含め、当社のサービスの多くはお客様の声から生まれています。高速バスは、夜間の真っ暗な車内でドライバーとの間もカーテンで仕切られているため、何かあっても乗務員に直接声をかけに行くのは、ものすごく抵抗感があると思うんです。 以前からメールで連絡できる仕組みはありましたが、それを2021年秋頃にフォーム化し、より利便性を高めたのが現在の“おたすけDM”です」(藤光さん)

また、近年増えたのが「ワイヤレスイヤホンを座席の隙間に落としてしまった」という声だそうです。そこで最新のウィラーの3列シート『DOME(ドーム)』の隙間には、すべり台のように傾斜がついており、小さいものを落としてしまっても自然と手の届く位置に戻ってきやすい構造になっているそうです。ユーザーの声をきちんと生かしてくれている! 「運営」として有能すぎるのでは。

さて、推し活が市民権を獲得する時期と前後して、「オタクが経済を回している」という言葉も耳にするようになりました。まあ、たいていの場合おもしろ半分のノリで口にしていると思うのだけど、「さすがにそれはおこがましいのでは」と感じるときもあります。ただ、高速バスに関して我々は無視できない存在であることは間違いなさそうです。

「だいぶ(経済を)回していただいています。他社様でも推し活をターゲットにした動画広告を出しているところもありますし、業界全体として熱い視線を注いでいると言えるんじゃないでしょうか」(篠原さん)

昨今の推し活ブームに乗じて、「“推し活”と銘打てば何でもいいだろう」と言わんばかりのビジネスも(悲しいことに)ゼロではありません。だからこそ、今回のお二人のようにユーザーの声に真摯(しんし)に耳を傾け、需要を的確にくみ取ろうとしてくれる企業のビジネスであれば大歓迎です。一方で、それだけ存在を認識されているからこそ、それを裏切らないようにマナーを守って利用しようと改めて思うのでした。

蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール

蟹めんま自画像

蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen

藤谷千明自画像

藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。著書に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c

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