長距離バスにのった蟹めんまと藤谷千明
漫画=蟹めんま / 文=藤谷千明

推し活バス旅ガイド 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テクまとめ

バス移動を極めし者たち
漫画=蟹めんま

「推し活✕遠征」をテーマにした漫画とコラムをお届けする本連載。第2回は、ライブや舞台公演のために毎月高速バスを利用するヘビーユーザーの方々に取材を敢行。新幹線・飛行機ではなく高速バスを使うメリット、あると便利なおすすめグッズ、車内を快適に過ごすためのコツ、そしてこれまで経験した「バス遠征珍事件」までをあれこれ伺いました。

今こそ見直されるべき高速バスの使い道。この記事を読めば、あなたの“次の遠征”がちょっと楽しく、ちょっと快適になるかもしれません。

目次

連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧

第1回 推し活における「遠征」とは何か?
第2回 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テク

藤谷「バス遠征の旅を語っていこうということで、夜行バスヘビーユーザーの皆さんに集まってもらいました~」 Aさん(10代後半)推しジャンル:V系バンド、バス遠征頻度:月3回程度、定番コース:広島-東京 Bさん(60代前半)推しジャンル:V系バンド・俳優、バス遠征頻度:月1回程度、定番コース:決まっていません Cさん(30代前半)推しジャンル:アイドル、バス遠征頻度:月2回程度、定番コース:東京-名阪

藤谷「皆さんいろんな推し活でバスに乗られていますが、あえてバスを選んでる理由ってありますか?」 Aさん「私は節約が一番の目的ですけど、ライブ自体は夜でもグッズ販売やインストアイベントは早い時間からあったりするので、夜のうちに動けるヤコバ移動が便利なんです。あとヤコバだと、友達と夜遅くまで打ち上げして、じっくりライブの余韻に浸れるのもいいです! なじみの便ができたら慣れるので寝やすいし快適ですね~!」 Bさん「私は夜勤のある仕事をしているので、朝方帰ってきて夜出勤できる夜行バスが合ってるんです。バス乗る前に打ち上げもできますしね~」 Cさん「私は単純に金欠なんです…。数年前に夜行バスを卒業してたんですが…。昨今の値上がり無双で出戻りました…」 藤谷「今そういう人増えましたよね~」

藤谷「最初はこれ聞きたいです。『バス遠征珍事件』」 Cさん「ベタなところだと、サービスエリアでバスから一瞬降りたあと、自分が乗ってきたバスがわからなくなって大慌てしたりとか…。なので乗る前に車体とナンバーを絶対写真に撮るようにしています」 Aさん「私、服装がボーイッシュなんですよ~。そのうえ身長もわりと高めなので、女性専用車だったらちょっと申し訳くなります。わざと声出して女子をアピっています!」

Bさん「やぽぱりバスは道路状況に影響されるので、渋滞にはまることがあるんですよ。特に昼運航のバス! 大きい催しの日だと乗客の行き先も同じなので、車内が戦々恐々することがあります」 藤谷「そういうとき、どうするんですか?」 Bさん「人生で得た全ての知見を駆使して、ありとあらゆるルートをシミュレーションし、途中で降りて新幹線に乗りました。超割高!!! なのでバスに慣れないうちは時間に余裕がある便で行くのがいいかと。夜行はそういうヒヤヒヤがないからいいですよ~」

藤谷「最後のテーマは『バス内での快眠のコツ~持ち物や心がまえ』です。バス遠征のとき、どんな装備で行きますか?」 Aさん&Bさん&Cさん「聞かれる気がしたので、持ってきました。バス用の持ちものはこんな感じですかねぇ…脱ぎ着できる上着、楽な服装&履きもの、バス会社の緊急連絡先を控えた紙(アナログで見られる方が◎)、酔い止めなど薬類、クッション・ネックピロー(空気を入れるタイプ)、耳栓・イヤホン類、マスク(乾燥防止に特化したもの)、アイマスク、飲み物、軽食」 Cさん「私はこれらをチャックがビッチリ閉まるトートバックにいれておきます」 藤谷「盗難防止ですか?」 Cさん「それもありますけど…」

Cさん「寝ちゃうと体からずり落ちちゃうことがあって、中身を全部ぶちまけたことがあるからです! 家のカギからクレジットカードまで。あの気まずさと危機感ったらすさまじいですよ。盗難より自分のうっかりがおそろしい…」 Aさん「わかります! 同じ理由でバス用イヤホンは有線のやつ使ってます! 消灯後に落としたら終わりです」 藤谷「快眠系グッズいろいろ持ってるんですね」 Aさん「はい! まぁでも、自分で敵にはグッズは気休めで~…快眠のコツは『限界まで疲れ切っておく』これに尽きます!」 藤谷「思ったよりストロングスタイルやな…」

Aさん「ボロボロになっておけば、どんなバスでもすぐ寝られます。V系のライブは激しいんで、ヤコバと相性いいと思いますね」 Cさん「私の快眠のコツは、イベント後夜行バスに乗るまでに、その日見たものの感想を吐き出しておくことです。友達とのご飯会でも、SNS垂れ流しでもなんでもいいので。終演後ってしゃべりたいことがたまって頭がギンギンなので、溜めたままバスに乗ると寝られません!」 Aさん「わかりすぎます! あと絶対寝たい日は、スマホの通知を完璧に切った方がいいですね!」 藤谷「そ、それはなぜに…?」 Aさん「イベント後って、推しからの自撮り投下や、ライブお疲れ配信が始まったりするので…!」

藤谷「Bさんはどうですか?」 Bさん「慣れがいちばんじゃないですか? もう40年乗ってますけど、練習あるのみって感じかな♪ 中学生の娘と初めて親子遠征をしたときは、東京→九州のライブを見に行ったんですが(計20時間)…」 藤谷「初回にしてはハードな距離!」 Bさん最初の超長距離に耐えておけば、大阪とか名古屋なんで楽勝よ♪というつもりだったんです」 藤谷「スパルタすぎるだろ!」 Bさん「あの過酷さを乗り越えて、今の私があると思います」 娘さんは新幹線派になったそうです!

乗車してから気づく「これ準備が必要なやつだ」

約20年前、初めて夜行バスに乗ったときに気づきました。「これは準備が必要な乗り物だな」と。高速バスは低価格が売りです。そのぶん設備は簡素というか、人が快適に横になるために設計されているものではありません。東京〜大阪間でも9時間程度かかるわけで、丸腰で乗ると寝ているだけでも体力を浪費してしまいます。なので、こちらの装備を充実させて疲労を軽減させる必要を感じました。

昨今は180度フルフラットのシートだったり、ほぼ個室のような豪華深夜バスも登場していますが、大抵は「バスの席」の域を出ないものです。それを差し引いても大きなメリットがあるからこそ、いろいろ工夫を重ねてありがたく利用するわけですけど。

高速バスを快適に過ごすための便利グッズたち

蟹めんまさんのマンガに登場する高速バスユーザーの方々も、やはり快適に過ごすためのアイテムを準備しているようです。

たとえば、車内は空気が乾燥していることが多いため、せっかくのイベント参加なのに喉を痛めてしまわないように、マスクがあると安心です(濡れマスクなど、乾燥防止に特化したものがあるとベター)。

マスクといえば、アイマスクもあるといいですね。わたしは使い捨ての蒸気アイマスクを使うと、疲れも取れて安眠できる気がするので夜行バスに乗る際は毎回持って行きます。

まわりの音が気になって入眠が妨げられると次の日の体調に関わるので、耳栓を使う人も多いですね。ノイズキャンセリング機能のついたイヤフォンを耳栓の代わりにすることもありますが、充電の問題もあるのでこれはケースバイケースですね。無線イヤフォンだとマンガのCさん(30代前半女性)のように床に落としたときに拾うのが大変ですし……!

車内の温度も自分にとって適温であるとは限りません。サッと羽織れる上着があると便利でしょう。冬場のSAのトイレに行くときにも寒い思いをせずに済みそうですし。荷物に余裕があれば、バスの中で過ごしやすい服に着替えたり、靴を履き替える人もいます。

"自分の寝床は自分自身で整える"。これが高速バスの心構えと呼べるでしょう。腰を守るための空気を入れてふくらませるタイプのクッションや、首を守るためにネックピロー(旅行用枕)を持っていくこともあります。また、長い時間同じ姿勢をとることになるので、着圧式ソックスやレギンスの利用を選択肢に入れていいかもしれません。これを使うと本当に翌日の足の具合が違います!

なんだか商品宣伝のようになってしまいましたが、身体の疲れでせっかくのイベントが100%楽しめなくなってしまっては、元も子もないですから。反対に、マンガに登場するAさん(10代後半女性)は「帰宅時に夜行バスを利用する場合、快眠のために限界までボロボロに疲れきった状態で乗車することもあります」とも話しており、それもひとつの手段かもしれません。Aさん、全体的にアグレッシブですね……。

見落としがちな「発着場所の確認」

また、各々の特性によっても持ち物が変わってくることも。私は乗り物酔いがひどいので酔い止めが手放せません。忘れてしまって集合場所近辺のドラッグストアに飛び込んだことがあります(都会は遅くまでお店が開いていて助かる……)。私の知人男性は上記のほかに、口呼吸防止のテープや睡眠サポートサプリを持参するようです。

最後に、万が一なんらかのトラブルに遭ったり、バスの時間に間に合わなくなったときなどに、あわてて連絡先を探す必要がないよう利用するバス会社の緊急連絡先を控えておくのも大事です。ちなみに私は駅から離れたバス発着場所を探して道に迷い、発車時刻に間に合わなくなりそうになったことがあります。発着場所の事前確認も大事ですね。バス会社によっては、思いのほか駅から発着場所が遠くて10分近く歩くこともあるから……。

自分のウッカリで体力や気力を必要以上に消耗してしまうと、なんだかすごく損した気持ちになるので、楽しいバス旅、イベント参加のためにも、事前準備は大事だと思います。

蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール

蟹めんま自画像

蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen

藤谷千明自画像

藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c

連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧

第1回 推し活における「遠征」とは何か?
第2回 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テク

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