奈良交通のサッカーサポーターツアーに参加した蟹めんま
漫画=蟹めんま / 文=藤谷千明

推し活バス旅ガイド 実はこんなに楽しいサッカー応援バスツアー(前編)

蟹めんまが「奈良クラブの応援バスツアー」に行ってみた
漫画=蟹めんま

「推し活✕遠征」をテーマにした漫画とコラムをお届けする本連載。第3回は、漫画担当の蟹めんまさんが推すJリーグのチーム(クラブ)「奈良クラブ」の応援バスツアー乗車記です。単に試合会場に連れて行ってくれるだけでなく、サポーター同士のサッカー談議を楽しめるのはもちろん、ここでしかできない体験も盛りだくさん。また、スタジアムを盛り上げるサポーターたちがどのような活動をしているのかも垣間見えます。

今こそ見直されるべき高速バスの使い道。この記事を読めば、あなたの“次の遠征”がちょっと楽しく、ちょっと快適になるかもしれません。

目次

連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧

【前回までのお話】V系バンド推し、V系俳優推し、アイドル推しで推し活バス遠征について話していたところ……| 蟹めんま(V系バンドとJリーグをかけもちで追っかけ中)「お~い サッカーかいわいのネタも聞いてくれ~い!」 藤谷千明「めんまさん!」| 藤谷「Jリーグのかいわいもバス遠征ってありますか?」 蟹めんま「ございますとも~」| 蟹めんま「地域のバス会社がバスツアーを組んでくれたりします!」 藤谷「さすが規模がでっかい」| 蟹めんま「私は地元奈良のJリーグチームのサポーターをしていまして」(J3リーグ3年目「奈良クラブ」)

蟹めんま「この前初めて観戦バスツアーが開催されたので、岐阜遠征してきたんです!」 奈良クラブ&奈良交通コラボバスツアー「FC岐阜vs奈良クラブ応援ツアー 岐阜メモリアルセンター長良川競技場」| 蟹めんま「奈良交通っていうのは地元のバス会社で」 鹿のマークが目じるし!| 13時10分…JR奈良駅集合、14時30分…サービスエリア休憩、17時…スタジアム到着、19時…試合開始、21時…試合終了、21時30分…奈良へ出発、24時…JR奈良駅到着・解散 蟹めんま「タイムテーブルはこんな感じでした!」| 藤谷「奈良から岐阜って、ナイター観戦後でも日帰りできるんですね」 蟹めんま「試合だけ見て帰ってくるなら余裕」|

13時奈良市内 JR奈良駅前ロータリー| 蟹めんま「乗る前に買い出ししとくか」乗車舐めに近くのコンビニに行くと| 顔馴染みのおじさんらが、調達した酒を水筒に移し替えている現場に出くわす ※アルコールを水筒に入れるのを禁止にしているメーカーもあります| おじさん「こうすると到着まではキンキンやから…」 蟹めんま「だそうです」(中学の運動部みたいなデカさの水筒…)| 受付して、いざ出発

蟹めんま「ちなみに、Jリーグサポーターの主な交通手段はこのへん。電車、飛行機、フェリー、クルマ、高速バス。他ジャンルと変わらないですが…」| 蟹めんま「他に比べると、クルマで遠征する人が多いかいわいである」| 蟹めんま「各地のスタジアムは、わりかしどこも駅から離れているので、クルマ移動がラクなのだ」(徒歩40分とかがザラにある)| 蟹めんま「ちなみにバスツアーで遠征するメリットは、運転しなくてよい、新幹線移動より低価格、友達作りの場になる、日帰りしやすい、とこんな感じだが…」| おじさん「道中で宴会できるなんて最高やなぁ」 蟹めんま「やはり一番はこれだろうか」

蟹めんま「また、こういったバスツアーには、ツアー参加者限定プレゼントなどいろいろな特典があることも」| 蟹めんま「オリジナルグッズプレゼント、遠征先のご当地グルメプレゼント、選手や地元の名物タレントがツアーバスに同情、こういったものが主流だが…」| 蟹めんま「この日の奈良クラブ&奈良交通のバスツアーの特典は、まさかのチームの社長(奈良クラブ代表取締役社長 濱田満さん)!!」濱田社長と行く!!岐阜戦バスツアー| 濱田社長「チームのことで効きたいお琴あったら質問してくださーい。話せることはなんでも話しますよ」 参加者「うそやろ!? 正気か!?」| 蟹めんま「新スタジアム建設の構想、今日の予想スタメン、クラブの今後の戦略などここぞとばかりに聞きまくったのでした。ディープなファンにはたまらん……うれしいけど大丈夫かな」|

蟹めんま「ちなみに我々がバスツアーでキャピキャピと岐阜に向かっている頃」| 蟹めんま「ひと足先に自家用車で岐阜に到着したのが、鳴りもの隊ご一行」| 蟹めんま「奈良クラブは特定の応援団はないのだが、有志による鳴りもの隊や大旗隊がおり」| 蟹めんま「地元戦・遠征線問わず、横断幕・拡声器・脚立・旗・たいこ類など応援に使う備品一式を運んでいる」※応援団の有無・構成・備品管理の方針はチームにより大きく異なります| 蟹めんま「そして、そんな彼らの奮闘にこたえるように、バスツアーの車内にも動きが…」 参加者「これ前の席にまわしてって~」|

参加者「え~みなさん、この紙は行きわたってますか~?」| 参加者「選手入場時のチャントの声量を増やしたいと、鳴り物隊から話がありましたんで、練習したいと思います。歌詞カードで~す」| 蟹めんま「車内のカラオケ機能で、応援歌の練習開始」| 蟹めんま「そうこう言っている間に、スタジアム(岐阜メモリアルセンター長良川競技場)に到着」| 蟹めんま「他の交通手段で来たサポーターとも合流し、応援の準備をしたら…」|

蟹めんま「その後は、試合開始まで約1時間、スタジアム内の屋台などを散策」| 読者「岐阜まで行ったのにスタジアムだけで日帰り? 観光できないじゃん、もったいない…」 蟹めんま「こう思う読者さんもいそうだが…」| 蟹めんま「サッカーのスタジアムは、地域の見どころがぎゅっと集約されているので、観光気分も味わえる。飛騨牛串、ひだコロッケ、カラービール、ミナモ・とみぱんといったゆるキャラ、SKE48のパフォーマンスも見れちゃう」| 蟹めんま「そしていよいよ19時、試合開始!!!」| 蟹めんま「果たして奈良クラブとサポーター一行は、ふるさとに勝利を持ち帰ることができるのか!?」後半へ続く

ここでしかできない体験ができる「バスツアー」

今回、蟹めんまさんが堪能した「バスツアー」とは、旅行会社がバスを借り上げ、参加者を募集して催行する旅行商品のことを指します。

タレントやアイドルグループ、インフルエンサーなどの公式ファンクラブが企画する旅行イベントも、このバスツアーの形態で行われることが多く、まさに定番といえるでしょう。

こうした旅行は温泉地や観光地などが目的地になり、日帰りから宿泊込みまでスタイルはさまざま。ファンとアイドルが同じ時間を過ごすことができる「特別な体験」を売りにしており、内容は撮影会や食事会、トークショー、ゲーム大会、ツアー参加特典のお渡し会など多岐にわたります。普段のライブやイベントとは違う楽しみが生まれる催しです。

ここで重要な役割を果たすのが、移動手段であるバスなのです。集合場所から目的地までの移動に観光バスが利用されることが多く、同じ推しを応援するファン同士が同じ車内で過ごすことで、自然と交流が生まれることも。グループの規模によっては「メンバーごとのバス」が用意され、「○○ちゃんバス」のように自分の推しに合わせて乗車できることもあります。さらに、車内では特別な映像が流れたり、推し本人が各バスを順番に訪れて挨拶や点呼をしてくれたりすることもあり、移動そのものがイベントの一部となるのです。

ここで最近友人から聞いておもしろかったバスツアーの話をひとつ。昨年人気タレントのバスツアーに参加した友人いわく、移動途中にバスが大量のバイクに囲まれてしまうというハプニングが発生。トークスキルの高さで知られるタレントだったため、その一部始終をファンに向けて実況し笑いをかっさらったそうです。トラブルをエンタメに変えるサービス精神に胸を打たれたのだとか。推しの知られざる一面を目にできるのもバス旅行ならでは(?)。

ライブハウスで鍛えた跳躍力がスタジアムでも役に立つ

さて、目下地元奈良県のサッカーチーム、奈良クラブの応援に大ハマリしている蟹めんまさん。これまで育ってきたヴィジュアル系のファンカルチャーとのギャップに驚きつつもエンジョイしているご様子でなによりです。

闇のイメージがあるヴィジュアル系バンドと、光(太陽)の下で活動するサッカー選手……はたから見ると意外に感じますが、「ファンの熱心さや応援団の運動量と白熱具合は、ヴィジュアル系の文化と共通する部分も多々ある」(※めんまさん調べ)とのこと。そういえば、往年のヴィジュアル系バンドやファンの一部は体育会系ノリだったりしますしね。意外と共通点もあるのかしら? オールスタンディングのライブハウスで鍛えた跳躍力が、サッカーの応援で発揮される日が来るとは、人生何が起こるかわからないものですね。

余談ですが、柏レイソルの応援歌「to me, to you」は、ヴィジュアル系黎明(れいめい)期の人気バンドメンバーで結成されたCRAZEが、1996年にリリースした同名シングル曲が元になっています。藤谷は高校時代、CRAZEのファンクラブに入っていました。名曲。

話がそれてしまいました。サッカーにも当然ながら応援バスツアーがあるとのことで、今回はツアーに参加した一部始終をマンガにしています。

さきほど「バスツアーは推しが車内に来てくれることもある」と申し上げましたが、めんまさんが参加したツアーには、なんとクラブの濵田満社長が登場! そんなことってあるんだ。

めんまさんいわく、「濵田社長は、サポーターとの距離がとても近いことで有名です。試合会場でもサポーターに紛れてキッチンカーのご飯を食べている場面をよく目撃します。また、サポーターのSNSもよくチェックしているようで、『こんなグッズがほしいな~』とつぶやくと数分後に『検討します』的なリプライが飛んできて、ひっくりかえることも一度や二度じゃありません。もちろんサポーター心理を理解するための距離感だとは思いますが、サポーターとわちゃわちゃするのがお好きなんじゃないかと思います。多分」

もしかしたら、アイドルの旅行でも運営会社の社長がノリノリでバスに乗車することもあるのでしょうか。世の中にはいろんなバスツアーがある……世界は広い……。

後編は、めんまさんのサッカー応援バスツアーの模様をさらに深掘りします! 果たして奈良クラブは勝利を飾ることができるのか、試合後のバス車内はどんな空気になっているのか、お楽しみに!

蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール

蟹めんま自画像

蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen

藤谷千明自画像

藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c

連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧

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