奈良交通のサッカーサポーターツアーに参加した蟹めんまとサポーターたち
漫画=蟹めんま / 文=藤谷千明

奈良クラブ応援バスツアー体験記(後編)。熱狂と一体感を生む「地域一体」の移動手段

蟹めんまが体験「奈良クラブ応援バスツアー」往復観戦記
漫画=蟹めんま

「推し活×遠征」をテーマにした本連載。第4回は、漫画家・蟹めんまさんによるJリーグ「奈良クラブ」応援バスツアー乗車記(後編)です。

ついにキックオフを迎えたアウェー戦。果たして試合結果は? そして最も気になる「勝敗によって一変する帰りのバス車内の雰囲気」とは……? 単なる移動手段にとどまらない、地域一体となって戦うバス遠征の醍醐味と、行きも帰りも満喫できる高速バスの活用法に迫ります。サポーターの結束が生む熱狂を知れば、あなたの“次の遠征”はもっと楽しく、快適になるはずです。

目次

連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧

Jリーグ試合観戦のため、公式ツアー(奈良クラブ&奈良交通コラボバスツアー)で遠征してみたところ―― 結果ッハ、奈良クラブ1-FC岐阜1で引き分け!! この日は日帰りコースだったため、試合後、即バスへ戻るのだが 気になるのが、車内の雰囲気!! 勝てた場合は、満場一致でこうなるが

引き分けや負けの場合、「また勝てへんかった! 最悪や!腹立つのぉ~」「大丈夫や!まだ先は長いんやで!次は勝とうな!」「今日の結果は次につながるはず…!」「とりあえず飲もうや…」と、反応や解釈が人によってけっこう違うのだ 藤谷「そうか、スポーツを推すってことは、廃線のくやしさをかみ締めるときもあるんですね…楽しいばっかりじゃないのか…」 蟹めんま「そうなんですよ。バンドの追っかけではなかった概念…」 ちなみに往路で一緒だったチームの社長は帰りは別々なのだが、出発前にあいさつにきてこう言ってくれた 奈良クラブ代表取締役社長 濱田満「帰りも一緒にすればよかった~! みんなと話したかった~! みなさん気を付けて帰ってね~ 言いたいこといっぱいある~」 蟹めんま「バスの中はどんな雰囲気になるかなぁ」と身構えていざ乗車すると――

奈良サポーター爆睡…!! 突かれたのか引き分けゆえのフテ寝か、はたまたその両方かは定かではないが、 昔から「奈良の寝倒れ」という言葉があるくらいなので(※奈良県民は飲み食いや商売より睡眠を優先するという意味) 奈良県民なりの気持ちの切り替え方かもしれません(つらいことは寝て忘れる県民性) 蟹めんま「でもこうやって寝られるのもツアーバスのいいところか」 参加者「そうそう自家用車だとこうはいかん」

ちなみに全サポーターの中でも帰り道が過酷なのは、前編にも登場した鳴り物・旗隊の一行である 彼らはまず「みなさんお疲れ様です! 次戦もみんなで一丸となって応援しましょう! ありがとうございました!」と応援をシメると 大量の横断幕の折り畳み、たいこ・足場などの片づけ、旗の片づけ、など撤収した物品を物品を取りまとめて積み込み作業をしおたあと 自分たちで運転して奈良まで帰ってくるのだ ちなみに岐阜戦は、天気は晴れ、負けはいない・あくまでも引き分けという辺りがまだよかったが

試合が大雨→敗戦、こんな試合だと鳴り物隊の帰り道の過酷さがレベルアップする(※順位が下位だったりするとさらに過酷度が増します) まず雨試合は全サポーターにとっての苦行だが 中でも水を吸って激重になる大旗隊の消耗が激しく 試合後はすべての備品がべちょべちょなので 失意の中遠征先でコインランドリーに行き、乾燥する作業が待っているのである

だがしかし! 勝てた場合は!! 雨による疲労も、撤収の大変さも、乾燥の作業も、長時間の運転も 試合後の全作業が、お祭りの一環に!! おらが村が勝った~!!と勝利はすべてを凌駕するのだ

で話をバスツアーの帰り道に戻しますが バスが奈良に近づくにつれて爆睡組もちらほら目を覚まし(一部は飲みなおし)「勝ちたかったなぁ。今年はアウェーが難儀やな~」「去年は先制されたらそのまま負けてたし、大進歩や」「若手が決めてくれたんも、よかったなぁ」「負けんくてよかったなぁ」など試合の感想も聞こえてくる そしてこの時間になると添乗員さんともうちとけてくるので、「僕自身もサポーターなんですよ。会場で見かけたら声かけてください」などと話をしてくれたり 添乗員「バスツアーって最低人数の応募がないと中止になっちゃうんですよねぇ。今日はやれて本当によかったです」とバスツアーの内情なんかを話してくれる

奈良はまだJリーグに入りたてのチームなので「今年はあと1回は出せるかな。がんばって会社にかけあってみます。その時は皆さんぜひまた参加してください」とのことだが サッカーが根付いた地域だと、全国津々浦々、遠征の試合全部にバスツアーが出ているらしい 蟹めんま「バスツアーがあればクルマ運転しない人も遠征しやすいですよね。おじいちゃん、おばあちゃんとか」 参加者「地域の人の交流の場にもあるし」 次はこのバスツアーで祝勝会できますうに!! こんな感じで、我が町奈良のJリーグチームの初の公式バスツアーが無事終わったのでした

勝つときも負けるときも一心同体なバス車内

何かを応援したりエンタメを楽しんでいたりするときに使われる「一体感」という言葉。たとえば音楽ライブのレポート記事を読むとよく目にします。サビを観客全員で熱唱したり、おなじみの振り付けでみんなで踊ったり、はたまた目に見えるものではない演者側の熱気に思わず腕が上がってしまう……なんてことありますよね。あるいは野外フェスやライブで大雨や大雪のような悪天候のときなんかには、そろそろ体力的にしんどい……でもせっかくチケット代を払って来たからには楽しみたい…といった気持ちがないまぜになった、逆境ならではの「一体感」が生まれることがあります。

そういった「一体感」は自然発生的に生まれるものですが、ここ15年ほどの間で運営・公式が企画して、ファンが競うようなコンテンツが増えています。推し活の競技化といえばいいのかしら? たとえば「総選挙」と称した人気投票だったり、観客のアプリ投票によって物語内での勝敗が決まる映画だったり、あるいは一丸となって新曲がチャート上位にランクインするようにSNSで情報発信して協力しあったり……。こういった企画は、みんなで盛り上がることができるし「自分もファンの一員として頑張っている」というモチベーションが得られるところにテンションが上がります。入れ込みすぎると疲れるけど。

蟹めんまさんが今回参加したのは、地元サッカーチーム「奈良クラブ」の応援バスツアーです。サッカーの試合には比喩ではなく明確な「勝敗」があるじゃないですか。なにを当たり前の話をしてるんだと思われるかもしれませんが、これはわたしがスポーツチームを応援したことがないので想像でしかありませんが、それって、かなり緊張感があるのではないでしょうか……。野球の話になるんですけども、阪神タイガース優勝の際にファンが大阪・道頓堀川に飛び込む風景は風物詩とされており、今年9月にも29人が飛び込んだそうです。過去に事故も起きている危険行為ですが、勢い余って川に飛び込むテンションに至るのも今となってはわかるような……?

さて、今回蟹めんまさんが観戦した試合結果は引き分けで終わったそうですけども、負けたときのダメージは相当大きいとのことで、そういう場合の帰りのバス車内は、無言で気まずい空気が漂うこともあるんだとか……。想像するだけでちょっと緊張します。反対に勝った日は、そのままバスの中で酒盛りが始まるほど盛り上がるそうで、それは想像するだけで楽しそうです。公共交通機関を利用する場合、人目を気にして大人数で騒げませんし、これはバスツアーだからこそできる宴(うたげ)かもしれませんね。団体戦の喜びと苦しさがここまでハッキリと分かれる光景は、これまでわたしが経験してきたジャンルではあまり見かけない現象なので、なんだかとても新鮮に感じました。

バス車体そのものでも伝わる応援の圧倒感

また、蟹めんまさんはツアーバスで相手チームのホームに行くこと自体が、地域一体となって応援していることが目に見えるため、チームの一体感につながっているのではと話してくれました。

「地元戦だと地元企業の協賛もあり、チームの応援のためにさまざまな施策が行われます。遠征試合の場合は、そういった部分がどうしても手薄になります(目に見えないかたちのサポートはたくさんあるんだと思いますけど)。でも、バスは移動ができるので帯同できる応援ツール(?)としてわかりやすいように思います」

今回の遠征試合とは反対に、蟹めんまさんの地元である奈良に、J3最多の観客動員数を誇るチーム、松本山雅FC(長野県)が遠征してきたときのこと。奈良のホームスタジアムに大きなツアーバスが何台も入ってきて、その地域一体で応援している感に圧倒されたのだそうです。そこで蟹めんまさんは「Jリーグはチームとチームの対戦だけじゃなく、“おらが村の戦い”なんだ」と実感したのだとか。松本山雅FCのように、サッカーの盛んな地域では、遠征試合ごとにバスツアーが組まれることも珍しくないのだそうです。

「奈良クラブはまだツアーバスも1台ですが、今回のツアーに参加したことで“アウェーの試合も地域一体で後押しするんだ”という気持ちが生まれました。その日だけでなく『あのバスに私も乗ってたよ〜』という人に会って盛り上がることもあります。私はぜんぜん体育会系と親和性のある性格ではないのですが、『同じ釜の飯を食う』じゃないですけど、みんなで一緒に行くという体験はやっぱり結束力を生むな、と思うようになりつつあります」

蟹めんまさんのお話を聞いて、ツアーバスの中は、ただの移動手段を超えた「ファンの一体感」をまるごと乗せて運ぶ場所なのだと感じました。これもまた、ひとつのバス遠征の醍醐味なのかもしれません。

蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール

蟹めんま自画像

蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen

藤谷千明自画像

藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c

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