奈良クラブ応援バスツアー体験記(後編)。熱狂と一体感を生む「地域一体」の移動手段
蟹めんまが体験「奈良クラブ応援バスツアー」往復観戦記
「推し活×遠征」をテーマにした本連載。第4回は、漫画家・蟹めんまさんによるJリーグ「奈良クラブ」応援バスツアー乗車記(後編)です。
ついにキックオフを迎えたアウェー戦。果たして試合結果は? そして最も気になる「勝敗によって一変する帰りのバス車内の雰囲気」とは……? 単なる移動手段にとどまらない、地域一体となって戦うバス遠征の醍醐味と、行きも帰りも満喫できる高速バスの活用法に迫ります。サポーターの結束が生む熱狂を知れば、あなたの“次の遠征”はもっと楽しく、快適になるはずです。
連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧
第1回 推し活における「遠征」とは何か?
第2回 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テク
第3回 実はこんなに楽しいサッカー応援バスツアー(前編)
第4回 奈良クラブ応援バスツアー体験記(後編)。熱狂と一体感を生む「地域一体」の移動手段
第5回 長野―新宿が300円!? 高速バス遠征を極める達人の節約術
第6回 推し活遠征ならウィラー! ファンの声を形にした快適バス旅の秘密
第7回 11席のプラチナチケットを争奪! 『疲労ゼロ』の極上遠征に挑む
勝つときも負けるときも一心同体なバス車内
何かを応援したりエンタメを楽しんでいたりするときに使われる「一体感」という言葉。たとえば音楽ライブのレポート記事を読むとよく目にします。サビを観客全員で熱唱したり、おなじみの振り付けでみんなで踊ったり、はたまた目に見えるものではない演者側の熱気に思わず腕が上がってしまう……なんてことありますよね。あるいは野外フェスやライブで大雨や大雪のような悪天候のときなんかには、そろそろ体力的にしんどい……でもせっかくチケット代を払って来たからには楽しみたい…といった気持ちがないまぜになった、逆境ならではの「一体感」が生まれることがあります。
そういった「一体感」は自然発生的に生まれるものですが、ここ15年ほどの間で運営・公式が企画して、ファンが競うようなコンテンツが増えています。推し活の競技化といえばいいのかしら? たとえば「総選挙」と称した人気投票だったり、観客のアプリ投票によって物語内での勝敗が決まる映画だったり、あるいは一丸となって新曲がチャート上位にランクインするようにSNSで情報発信して協力しあったり……。こういった企画は、みんなで盛り上がることができるし「自分もファンの一員として頑張っている」というモチベーションが得られるところにテンションが上がります。入れ込みすぎると疲れるけど。
蟹めんまさんが今回参加したのは、地元サッカーチーム「奈良クラブ」の応援バスツアーです。サッカーの試合には比喩ではなく明確な「勝敗」があるじゃないですか。なにを当たり前の話をしてるんだと思われるかもしれませんが、これはわたしがスポーツチームを応援したことがないので想像でしかありませんが、それって、かなり緊張感があるのではないでしょうか……。野球の話になるんですけども、阪神タイガース優勝の際にファンが大阪・道頓堀川に飛び込む風景は風物詩とされており、今年9月にも29人が飛び込んだそうです。過去に事故も起きている危険行為ですが、勢い余って川に飛び込むテンションに至るのも今となってはわかるような……?
さて、今回蟹めんまさんが観戦した試合結果は引き分けで終わったそうですけども、負けたときのダメージは相当大きいとのことで、そういう場合の帰りのバス車内は、無言で気まずい空気が漂うこともあるんだとか……。想像するだけでちょっと緊張します。反対に勝った日は、そのままバスの中で酒盛りが始まるほど盛り上がるそうで、それは想像するだけで楽しそうです。公共交通機関を利用する場合、人目を気にして大人数で騒げませんし、これはバスツアーだからこそできる宴(うたげ)かもしれませんね。団体戦の喜びと苦しさがここまでハッキリと分かれる光景は、これまでわたしが経験してきたジャンルではあまり見かけない現象なので、なんだかとても新鮮に感じました。
バス車体そのものでも伝わる応援の圧倒感
また、蟹めんまさんはツアーバスで相手チームのホームに行くこと自体が、地域一体となって応援していることが目に見えるため、チームの一体感につながっているのではと話してくれました。
「地元戦だと地元企業の協賛もあり、チームの応援のためにさまざまな施策が行われます。遠征試合の場合は、そういった部分がどうしても手薄になります(目に見えないかたちのサポートはたくさんあるんだと思いますけど)。でも、バスは移動ができるので帯同できる応援ツール(?)としてわかりやすいように思います」
今回の遠征試合とは反対に、蟹めんまさんの地元である奈良に、J3最多の観客動員数を誇るチーム、松本山雅FC(長野県)が遠征してきたときのこと。奈良のホームスタジアムに大きなツアーバスが何台も入ってきて、その地域一体で応援している感に圧倒されたのだそうです。そこで蟹めんまさんは「Jリーグはチームとチームの対戦だけじゃなく、“おらが村の戦い”なんだ」と実感したのだとか。松本山雅FCのように、サッカーの盛んな地域では、遠征試合ごとにバスツアーが組まれることも珍しくないのだそうです。
「奈良クラブはまだツアーバスも1台ですが、今回のツアーに参加したことで“アウェーの試合も地域一体で後押しするんだ”という気持ちが生まれました。その日だけでなく『あのバスに私も乗ってたよ〜』という人に会って盛り上がることもあります。私はぜんぜん体育会系と親和性のある性格ではないのですが、『同じ釜の飯を食う』じゃないですけど、みんなで一緒に行くという体験はやっぱり結束力を生むな、と思うようになりつつあります」
蟹めんまさんのお話を聞いて、ツアーバスの中は、ただの移動手段を超えた「ファンの一体感」をまるごと乗せて運ぶ場所なのだと感じました。これもまた、ひとつのバス遠征の醍醐味なのかもしれません。
蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール
蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen
藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c
連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧
第1回 推し活における「遠征」とは何か?
第2回 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テク
第3回 実はこんなに楽しいサッカー応援バスツアー(前編)
第4回 奈良クラブ応援バスツアー体験記(後編)。熱狂と一体感を生む「地域一体」の移動手段
第5回 長野―新宿が300円!? 高速バス遠征を極める達人の節約術
第6回 推し活遠征ならウィラー! ファンの声を形にした快適バス旅の秘密
第7回 11席のプラチナチケットを争奪! 『疲労ゼロ』の極上遠征に挑む
特集の記事一覧
道の駅で車中泊するならココ! “目的地”になる道の駅併設RVパーク5選
2026.06.15
小池徹平、休日は子供たちと海や山へドライブ 「家族でどこへ行こうかな」
2026.06.14
【2026年夏まとめ】真夏でも快適な、関東甲信越のRVパーク5選
2026.05.28
ご当地スーパー ・サミットをPB深堀り! プロが自宅にストックする名品6選
2026.05.26
ソロ車中泊でひとり時間を楽しむ!関東近郊RVパーク5選
2026.05.25
修学旅行で終わってた奈良が変わった。漫画と実録で巡る“泊まりたい奈良”グルメ旅
2026.05.22
山梨の“神コスパ”RVパーク3選。2,000円台でも充実設備で温泉や観光も満喫
2026.05.19