長野―新宿が300円!? 高速バス遠征を極める達人の節約術
荷物はリュック一つ! 年間数十回のライブ遠征を支える「最小・最安」の極意
「推し」のライブのためなら全国どこへでも。そんな熱い遠征民にとって、最大の悩みは「移動費」と「荷物」ではないでしょうか 。連載第5回は、年間数十回も高速バスを利用するヘビーユーザーのはづさんにインタビュー 。長野―新宿間をわずか300円で移動する驚きの節約術や、車内で静かに過ごすための緻密なパッキング術など、明日からの遠征が劇的に快適になる「上級者の当たり前」をたっぷり伺いました 。
連載「推し活バス旅ガイド~良コスパ遠征のススメ~」一覧
第1回 推し活における「遠征」とは何か?
第2回 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テク
第3回 実はこんなに楽しいサッカー応援バスツアー(前編)
第4回 奈良クラブ応援バスツアー体験記(後編)。熱狂と一体感を生む「地域一体」の移動手段
第5回 長野―新宿が300円!? 高速バス遠征を極める達人の節約術
母親の影響で全国各地のライブに参加
今回お話を伺ったのは、長野県飯山市からJUN SKY WALKER(S)のツアーファイナル公演のために、いわゆる「昼バス」を利用して東京にいらしたという、はづさんです。
JUN SKY WALKER(S)は、80年代末のバンドブームを牽引し、1997年に一度は解散したけれど、2007年に復活。現在も精力的に活動しているロックバンドです。現在29歳のはづさんは、お母様の影響で小さい頃からJUN SKY WALKER(S)やUNICORN、LUNA SEAなどを聴いて育ったといいます。初めてJUN SKY WALKER(S)のライブを観たのは、2022年とわりと最近。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ライブにも声出しや人数の制限などさまざまな制約があった時期です。
「この先どうなるかわからないって空気の中で、JUN SKY WALKER(S)は不安を払拭してくれるような力強いライブをしてくれたんです。久々に“ライブって楽しい!”って思って、それでそのまま今に至るという」(はづさん)
いい話だ……。JUN SKY WALKER(S)の魅力を尋ねると、「とにかくかっこいい」と断言する、はづさん。
「とにかく“かっこいい”んです! 今はメディアなどで“伝説のロックバンド”みたいに紹介されることも多いじゃないですか。でも、昔じゃなくて最新の彼らが一番かっこいいと思っていて。私は彼らを昔から知っている世代じゃないけれど、今が一番かっこいいと思える、そのくらいライブが熱いんです!」(はづさん)
いい話だ……(2回目)。2025年は結成45周年記念イヤーということで、48本のライブを行うワンマンツアー、さらには並行してさまざまなバンドと共演する対バンツアーも敢行。「精力的」という文字通り、いや文字以上に活発なスケジュールで、これはファンの方も嬉しい&大変なのでは。はづさんのお母さんは、もともとライブに行くのが大好きな人で、はづさん自身の初バス遠征もお母さんと一緒でした。
「高校生の頃から高速バスで遠征していました。当時住んでいたのが静岡県の浜松なんですけど、横浜のライブでも(終演時間によっては)帰りの新幹線がなくなっちゃうんですよね。それで、母から“もう夜行バスに乗るしかない”と言われ、YCAT(※1)に連れて行かれたのが、初のバス遠征です」(はづさん)
(※1:横浜シティ・エア・ターミナル。横浜駅の近くにある空港連絡バスや高速バスが発着するバスターミナル)
はづさんのお母様はJUN SKY WALKER(S)のギタリスト・森純太さんの大ファンで、以前から彼の地元である大分県別府市でのライブにも足を運んでいたそうです。かねてより「一緒に行こう」と誘われていたこともあり、今年のツアーでついに母子揃っての別府遠征が実現しました。
「とにかく安く、軽装で」を突き詰めたバス利用法
遠方の場合、移動手段にバスではなく飛行機を選ぶ人も多い中、はづさんは九州や北海道でも「どうにかバスで行けないか」と一旦調べるほどバス移動を優先しています。その理由を尋ねてみたところ、意外な答えが返ってきました。
「バンドも好きなんですけど、実は神社仏閣巡りも趣味で、御朱印を集めているんです。高速バスで早朝に目的地に着いたら、そのまま参拝に行けるのがいいですよね。神社は朝早くから開いているので、時間を有効に使えるんです」(はづさん)
なるほど……。午前中に楽しめる趣味があると、メリットの多い選択肢になりますね。しかし体力がすごい。そして、やはり価格の安さも大きくて、昨今は宿泊費の高騰もあるため、できるだけ泊まらずに夜行バスを利用しているのだそうです。
「時間はかかるけれど、体力には自信があるので大丈夫。あとは利用するとポイントがたまるバス会社も結構あるので、なるべく同じ会社を使うようにすると、よりお得になりますね。私はWILLER EXPRESSをよく使っていて今日も乗ってきたんですが、セールとクーポン、さらにためていたポイントを併用して、300円で新宿ー長野間を移動したこともありますよ」(はづさん)
この日のはづさんの荷物はリュックのみ。日帰りだからかと思いきや、遠方の場合でも荷物はリュック一つに収まるサイズにまとめているのだそうです。
「着替えとタオルも圧縮袋に入れて、基本はリュック一つです。バスの中では寝るだけですから、体を締め付けないラクな服装かつ、休憩中にそのまま外に出られるユニクロのジャージのようなものを定番にしています。冬は長野県に入るとかなり冷え込むので、モンベルの温かいウェアも欠かせません。ただ、車内で動くときに(衣類がこすれて)シャカシャカと音が出るような素材は控えています」(はづさん)
静かな車内ではビニール袋のカサカサ音も意外と響くので、荷物はすべてジップロックにまとめているそうです。中身もメイク落としとオールインワンジェルなど、必要最低限のものを厳選。また、耳栓や充電器などの定番アイテムのほかに、絶対に欠かせないのが変換コネクタとのこと。
「最近の高速バスって、座席にUSBの差し込み口がついてることが増えましたよね。ただ、私のスマホはUSB Type-Cなので、変換コネクタを忘れると充電できなくなってしまいます。そうなると遠征先で買い足す羽目になってしまうので、本気で絶望します」(はづさん)
せっかくチケット代を数百円単位で節約しても、うっかりミスで1,000円近い出費になってしまうと、金額以上に悲しくなっちゃいますよね。
取材を終えたあとに、「私の話なんて、普通すぎて申し訳ないかも……」とおっしゃっていたはづさん。どのジャンルでも往々にして経験を重ねた上級者ほど、自分がしていることを「特別なことではない」、「ごく当たり前のこと」と捉えがちです。バス遠征においても、そうした感覚は共通しているのだと感じました。
はづさんはこの取材の翌週も電大(※2)のライブのために神奈川県へ行くそうで、移動はもちろん高速バスとのことです。
(※2:UNICORNの川西幸一さん、手島いさむさん、EBIさんによるスリーピースバンド。バンド名の由来は3人が広島電機大学出身だから)
蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール
蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen
藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。単著に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)など。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c
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第2回 夜行バス移動が快適になる! 推し活遠征民が愛用する神グッズ&神テク
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