奈良監獄ミュージアム建物前でポーズを決める蟹めんま氏と藤谷氏
漫画=蟹めんま / 文=藤谷千明 / 撮影=佐々木実佳

奈良監獄ミュージアムby 星野リゾートとは? 漫画と実録で体験した“美しき監獄”の違和感

旧奈良監獄を活用した新スポットを取材。展示や建築の見どころと体験をレポート
漫画=蟹めんま

奈良といえば大仏や鹿——そんなイメージをくつがえす、新しい観光スポットが誕生しました。旧奈良監獄を活用した「奈良監獄ミュージアムby 星野リゾート」です。
“美しき監獄”と呼ばれる歴史的建築の中で、展示や体験を通じて見えてくるものとは。
戸惑いと違和感を抱えながら歩いた現地の様子をレポートします。

目次

わたしの地元の旧奈良監獄がミュージアムになるというので奈良監獄ミュージアム by 星野リゾートNARA PRISON MUSEUMライブ仲間の藤谷さんと遊びに行ってきました!!ふだんはライブ仲間奈良県在住 漫画家 蟹めんま元自衛官 ライター 藤谷 以前から奈良監獄が重要文化財になっていることは知ってはいたものの美しすぎる監獄わりと最近まで矯正展が開催されていたこともあり地元のお祭りで刑務作業の製品をよく買っていました奈良少年刑務所産だいこん湯のみ何度か湯のみを買いました 堀の前まで行くことはあって中を見る機会は全然ないので近所なので前をよく通る

地元民なのに異世界に来た様な感覚である監獄というより洋館やぁミュージアムのコンセプトは美しき監獄からの問いかけ奈良監獄ミュージアムはざっくり4つのゾーンで構成されていて保存棟当時の状態を残しているエリア展示エリア【A棟】 日本の行刑・監獄の歴史を紹介するエリア【B棟】受刑者の日々の暮らしを紹介するエリア【C棟】監獄や自由を題材にしたアートの展示エリア最初の保存棟ではかつて受刑者を収容していた第三寮に入ることができるココ!!

独居房は分厚いドアや監視穴がまがましいとはいえ天井も高く自然光が入りなんだか教会のような神々しさまで感じてしまうのだがこの明るさの中ほぼ丸見えの状態で用を足すと考えるとかなりシュールなのでは…地下には受刑者用のお風呂があり奈良市民としては地下ってだけでテンション上がるね〜※掘ると遺跡が出てしまうので奈良には地下施設がほとんどありません

展示スペースのA棟は主になぜ明治の日本はこんな美しい監獄を作る必要があったのか?これがわかるエリア江戸時代までの日本は苦痛で罪人を罰してきたのだが日本人野蛮すぎる先進国じゃない諸外国から対等に見てもらえないのでという方針に変えていくためだったという 「仁愛」の理念のもと受刑者を更生へと導き再犯を防止するそれで各地に監獄をつくったんですねぇ最初の鍋坂刑務所は500人キャパか〜ライブ民族、収容人数はライブ会場で例えがち500人っていうとライブハウスだと渋谷WWWくらいか奈良監獄は923人収容だからだいたい恵比寿リキッドルームだ! 福岡刑務所は1473人だからようやくZepp新宿か〜 ※全部ライブハウスの名前です

B棟は受刑者の暮らしぶりがテーマの棟毎日の食事お手紙持ちもの袋1日のルーティーン売店の本棚も見られるよ!朝6時45分に音楽とともに起きてほどよく運動し栄養士さんが管理した食事を3食…労働時間は8時間で21時に就寝……締め切りに追われる弱小漫画家の私より…だいぶ健康的では…?※前日27時就寝こんなことが頭をよぎってしまう刑務所ルーティーンをどう感じるかで 絶対に自分は入りたくない!!むしろいまよりいい暮らしなのでは…??今の自分の暮らしに納得しているかどうかがあぶり出されるようだ

確かに美しい監獄から…問いかけられてる気がする…皆さんはどう感じたでしょうか?その後も私は展示を見てもしや私の暮らしは健康で文化的な最低限度の生活ではないのでは……?つい自問自答してしまうのだが食器が自衛隊と似てるなぁ〜※藤谷さんは元自衛官 人によって見るポイントが全然違うのもおもしろいちなみに限られたものの中からであるが服役中も日用品を買うことができるらしく電卓タオル類筆記具うるおい系ティッシュ歯ブラシセット写真たて※自弁品といいますわりかし自分と同じものが使われていて親近感がわいてしまうシャンプーとハンドクリームがおそろやん…めんまはメリットヘビーユーザーです

その後も刑務所の正月料理めちゃくちゃおいしそうやん…おせちこう思ってしまいつつも全受刑者が入所と同時にもらうという刑務所ルールブックを見るとすべての漢字にふりがなあり新生活の手引第1 はじめにあなたたちは、今後おおむね奈良少年刑務所で生活することになり…(※本文は一部のみ視認可能)…字が読めるようになる環境で育たなかった人も多いんでしょうね この現代の日本でも…刑務所に入って初めて気が休まる暮らしができた人もいるんだろうなぁ受刑者の生い立ちを想像すると胸が痛む

C棟は受刑者やアーティストの作品展示ゾーン大好きな花輪和一先生の生原稿も見られました刑務所まんがの金字塔!! 花輪和一先生の「刑務所の中」刑務所で過ごす人や展示のアーティストにメッセージを残すことができるコーナーもあるのだが※考えすぎてこの日は何も書けず※ちゃんと書く藤谷みなさまもぜひ「美しき監獄ミュージアム」で己の人生を見つめ直しに奈良に来てくださ〜い見つめなおしすぎた人はこのあと大仏様に会いに行くとよいよ!!

奈良に“監獄”を見に行く理由

ハヴィランドシステム写真 写真提供/奈良監獄ミュージアム

中央看守所から放射状に収容棟が伸びる「ハヴィランド・システム」を採り入れた建築(写真提供=奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート)

奈良出身や奈良在住の人が自虐的に口にする「奈良は鹿と大仏しかない」。not奈良県民のわたし・藤谷(from山口県)はそんな言葉に曖昧に微笑み返すことしかできません。なぜならマジで知らないから。

最後に奈良に行ったのはいつだったか。最後に泊まったのは中学の修学旅行、というかそれが最初で最後です。東大寺には行った記憶がありますし、鹿にまみれた記憶もあります。30年前のことですが、元気すぎる鹿たちのことは昨日のことのように思い出せます。やっぱりそれ以外知らないんじゃないか。

そんなわたしですが、JAF Mate Onlineのご厚意によって取材旅行で奈良へ行くことになりました。しかも泊まりで。JAF Mate Online・編集T氏はこう力説します。

「インバウンド観光客で盛り上がる京都だけでなく、奈良にも注目が集まっています。新しいホテルや観光施設もオープンしますし」

なるほど理解しました。で、今回の取材はどこなのでしょう。お寺でも鹿でもない場所とは? と編集T氏にたずねると、笑顔でこう返ってきました。

「監獄です!」
「ええんか?」

と、いうわけで「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」の取材を行うことになりました。このミュージアムのテーマは「美しき監獄からの問いかけ」だそうです。むしろ問いかけたいのはこっちですよ。

「ええんか?」

明治の近代建築「旧奈良監獄」とは

旧奈良監獄 表門 写真提供/奈良監獄ミュージアム

旧奈良監獄の表門。アーチ型の入り口とサイドに円塔を備えた建築美(写真提供=奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート)

奈良監獄ミュージアム外観 写真提供/奈良監獄ミュージアム

1908(明治41)年、明治五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の一つとして、山下啓次郎氏の設計によって建てられた(写真提供=奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート)

奈良監獄ミュージアム外観

ミュージアムの入り口には、アートディレクター佐藤卓氏が手がけた鍵がモチーフのシンボルマークがあしらわれている

奈良監獄ミュージアム外観

ミュージアムゲートから保存棟「第三寮」へと歩く。塀の中の広い敷地は、かつて受刑者の運動場としても使われていた

旧奈良監獄の表門。アーチ型の入り口とサイドに円塔を備えた建築美(写真提供=奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート)

1908(明治41)年、明治五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の一つとして、山下啓次郎氏の設計によって建てられた(写真提供=奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート)

ミュージアムの入り口には、アートディレクター佐藤卓氏が手がけた鍵がモチーフのシンボルマークがあしらわれている

ミュージアムゲートから保存棟「第三寮」へと歩く。塀の中の広い敷地は、かつて受刑者の運動場としても使われていた

旧奈良監獄は、いわゆる「明治五大監獄」のなかで唯一全貌が残されている重要文化財でもあります。役目を終えた今でも、どことなく張り詰めた空気が漂っているように感じました。建物の手前にある運動場に目をやると、奥のほうに藤棚が。おそらくは奈良少年刑務所時代から存在しているものなのでしょう。高い塀に閉ざされた場所だからこそ、季節を感じてもらうために設置されたのかな、など、さまざまな想像が膨らみます。

旧監獄の内部へ。保存棟で独居房を見学

保存棟の第三寮を見学する人

保存棟の第三寮を見学。天窓から自然光が差し込み、思いのほか建物内は明るい

独居房を見学する女性

独居房に入る。窓には鉄格子と金網が二重に取り付けられている

展示エリアを観賞する藤谷氏

展示エリアへ

旧奈良監獄の建築模型

旧奈良監獄の建築模型

受刑者の日常生活を紹介する映像を観賞

受刑者の日常生活を紹介する映像を観賞

保存棟の第三寮を見学。天窓から自然光が差し込み、思いのほか建物内は明るい

独居房に入る。窓には鉄格子と金網が二重に取り付けられている

展示エリアへ

旧奈良監獄の建築模型

受刑者の日常生活を紹介する映像を観賞

奈良監獄ミュージアムは、保存棟の「第三寮」とA棟、B棟、C棟の展示エリア、カフェやショップのあるD棟に分けられています。

まずは、保存棟へ。かつて受刑者を収容していた第三寮。フィクションでしか知ることのできなかった監獄の第一印象は「思ったよりずっと明るい」でした。廊下や独居房には窓が設けられており、自然光が入ってきます。

われわれ取材班一行を案内してくださったスタッフの方いわく、できるだけ当時のままの姿を残すため、改変は最低限に留めているとのこと。つまり明治時代からここで過ごした人たちも、同じようにこの光を感じていたのかも……と思いを馳せました。

展示で知る“塀の中”の暮らしと更生

布団の畳み方や受刑者が使う日用品を展示する部屋

布団の畳み方や受刑者が使う日用品を展示する部屋

全国の刑務所で使われている食器のラインアップがわかる展示

全国の刑務所で使われている食器のラインアップがわかる展示

塀の向こう側を眺めている受刑者を模した像が佇む

塀の向こう側を眺めている受刑者を模した像が佇む

雑居房の日常をイメージしたジオラマ展示

雑居房の日常をイメージしたジオラマ展示

自らの獄中体験を作品化した漫画家の花輪和一氏ファンの蟹めんま氏

自らの獄中体験を作品化した漫画家の花輪和一氏ファンの蟹めんまさん。原画の展示にテンションが上がる

展示の最後にある「むすびの部屋」

展示の最後にある、刑務所で過ごす人やアーティスト、身近な人などへのメッセージを書き、ポストに託す「むすびの部屋」

布団の畳み方や受刑者が使う日用品を展示する部屋

全国の刑務所で使われている食器のラインアップがわかる展示

塀の向こう側を眺めている受刑者を模した像が佇む

雑居房の日常をイメージしたジオラマ展示

自らの獄中体験を作品化した漫画家の花輪和一氏ファンの蟹めんまさん。原画の展示にテンションが上がる

展示の最後にある、刑務所で過ごす人やアーティスト、身近な人などへのメッセージを書き、ポストに託す「むすびの部屋」

展示エリアのA棟は日本の行刑制度と旧奈良監獄の歩みを紹介する8つの展示室が設けられていました。旧奈良監獄は「美しき監獄」と呼ばれていますが、この「美しさ」には明治の人たちの切実な思いが込められていたのです。

旧奈良監獄が竣工したのは1908年(明治41年)のこと。当時の明治政府は、諸外国と結んでいた不平等条約を改正し、対等な関係を築くことを悲願とし、日本が近代的な法治国家であると国際社会に認めてもらうために、当時の欧米の水準に合わせた「人権を重んじる監獄」の建設を目指したのです。

そして、終戦翌年の1946年に改称し2017年まで稼働していた「奈良少年刑務所」は日本初の総合訓練施設として、社会に出てから困らないように、実践的なカリキュラムを組んで更生をサポートしていたのだとか。なお、ここでは受刑者を「生徒」と呼んでいたとのこと。その話を聞くと、運動場にあったあの藤棚にも、なんらかの罪を犯してここに来てしまった人たちを、ひとりの「生徒」として見守ろうとする意志によるものだったのかもしれませんね。

B棟展示は現在の刑務所の暮らしを「規律」「食事」「衛生」「作業」「更生」「お金」「自由」の7つのテーマに分けて解説。普段はなかなか覗くことのできないいわゆる「塀の中」の生活を知ることができます。

C棟は、元は医務所だった建物をギャラリーとして活用。監獄や自由をテーマにしたアートや、受刑者による絵画や俳句、手紙などを展示する「刑務所アート」の作品が展示されていました。なお、受刑者の作品を額装して美術として飾ることは珍しい試みなのだそうです。

ほかにも、実際に服役経験のある漫画家・花輪和一先生の『刑務所の中』の原画も展示されており、「私、エッセイマンガを書き始めたきっかけはさくらももこ先生と花輪和一先生なんです!」と高まっているめんまさんは、単行本片手に(あまりにも準備が良すぎる)記念撮影。監獄の中でも推し活に余念がない、さすがである。

カフェとショップへ。“旧監獄”を持ち帰る体験

ミュージアムカフェで販売されているパンなど

ミュージアムカフェでは、赤レンガをモチーフにした「レンガカレーパン」(600円)や「チーズケーキ1908」(600円)、奈良の柿を使ったご当地ソーダ「富有柿サイダー」(600円)などを販売する

監獄ミュージアムのお土産コーナー

ミュージアムショップでは、佐藤卓氏デザイン監修によるオリジナルグッズ、お菓子のほか、刑務作業で作られた文房具や日用品を買うことができる

巾着、ステッカー、ポストカード、お菓子など販売しているお土産

巾着、ステッカー、ポストカード、お菓子など、お土産にちょうどいいグッズが豊富

ミュージアムカフェでは、赤レンガをモチーフにした「レンガカレーパン」(600円)や「チーズケーキ1908」(600円)、奈良の柿を使ったご当地ソーダ「富有柿サイダー」(600円)などを販売する

ミュージアムショップでは、佐藤卓氏デザイン監修によるオリジナルグッズ、お菓子のほか、刑務作業で作られた文房具や日用品を買うことができる

巾着、ステッカー、ポストカード、お菓子など、お土産にちょうどいいグッズが豊富

最後に案内していただいたD棟にあるミュージアムショップには、旧奈良監獄をモチーフにしたデザイン性の高いアイテムが並んでいました。ヴィジュアル系ファン的には、真っ黒な生地に格子窓がついている傘に心惹かれました。そして、その一角、「Made in Prison」とクレジットされた棚には、木工製品や文房具、バッグなど、いわゆる「刑務作業製品」がずらり。

「ええんか?」の正体を考える

「Made in Prison……間違ってないけど、なんかかっこよく言っている!」と思わずツッコミを入れたくなったのですが、ここでふと気が付きました。ツッコミを入れたくなるということは、つまり自分の中に何かしらの『違和感』があるということなのだと。しかし、それこそが、わたし自身の先入観なのかもと、刑務所とは自分と関係のない世界であると、無意識の線引きをしていたのではないでしょうか。そんな問いが自分のなかで生まれたのです。

取材の冒頭で「ええんか?」と口走ったわたしですが、なぜ戸惑うのか。そして、なぜ「かっこよく言っている」と思うのか。その感覚の奥にあるものを見つめてみることが大事なのかもしれません。

奈良監獄ミュージアムby 星野リゾート /奈良県奈良市般若寺町18/入場料2,500円(日本在住者・大人)、1,500円(大学生・高校生)、700円(小学生・中学生)/ウェブサイトより事前予約推奨/見学時間の目安は約90〜120分
アクセス/JR奈良駅(西口11番)、近鉄奈良駅(2番)から直通バスで「奈良監獄ミュージアム前」 下車

蟹めんまさんと藤谷千明さんのプロフィール

蟹めんま自画像

蟹めんま
かに・めんま 漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学卒。奈良県出身・在住。小学生の頃ヴィジュアル系バンドに目覚め、バンギャル歴は約28年。著書に『バンギャルちゃんの日常(全4巻)』(KADOKAWA)、『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)、共著に『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。
X:@kanimen

藤谷千明自画像

藤谷千明
ふじたに・ちあき 1981年生。フリーライター 。ヴィジュアル系やオタク・サブカルチャーについての記事を執筆。著書に、アラフォーオタク4人で都内の一軒家を借りて暮らす実体験をつづったエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)がある。同タイトルでコミカライズ全2刊も刊行(作画:泥川恵/幻冬舎コミックス)。そのほかの著書に、対談集『推し問答!』(東京ニュース通信社)、共著に『バンギャルちゃんの老後』(ホーム社)、『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)、3月24日に単著『人恋しくて女性用風俗に行ったあとで考えたお金とケアと欲望のこと』(中央公論新社)を発売。TBS『マツコの知らない世界』V系回出演。
X:@fjtn_c

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