曽我部恵一に「不意に流れてきたらさめざめ泣く」と言わしめる隠れた名曲〈豊田道倫 / 東京の恋人〉
バンド、サニーデイ・サービスの曽我部恵一が語るクルマと音楽の関係今月選曲を担当するのは曽我部恵一さん。バンド、サニーデイ・サービスでフロントマンを務める他、ソロプロジェクトでも活躍するミュージシャンです。最終回は、クルマの中から眺める人生のこと、東京という街のことを、あるフォークシンガーの、聴くとエモい気持ちになってしまう一曲とともにお送りします。
音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを4曲紹介します。
4. 豊田道倫 / 東京の恋人
5万円で買ったフォードのバンでいざツアーへ
東京の街をドライブしながら、ふとこの曲が聴こえてくると沁みちゃうんですよ。自分の人生が走馬灯のように流れてきて、輝き出すというか。いろいろなことがあったし、失敗もした。今うまくいってるかどうかわからないし、思い描いていた人生じゃないかもしれないけど、全部が愛おしく思えるような、そんな素晴らしい曲です。すごく人恋しくなって、誰かに会いに行きたくなりますね。
冬枯れた銀杏並木の中でこの曲が流れたらもう最高に幸せでしょうね。いろいろなことを肯定してくれる曲でもありますから。「がんばれ!」とか励ますんじゃなくて、スッと心に風を吹かせてくれるんです。だから、自分でかけたくないというか、ドライブ中に助手席の誰かが不意に流してほしい。そしたら僕はさめざめと泣くんじゃないか。
豊田(道倫)くんも僕と同じ時期に免許を取ってたんですよ。だから、豊田くんは免許がないときにこの曲を作ったし、僕も免許がないときに初めて聴いた。それが期せずして運転するようになって、いろんな街並みを車窓から眺めながら聴くようになったんだなと。
東京の道を走ってるといろんな人がいて、赤の他人だし自分とは遠い存在で関わり合いもないし、たぶんこの人たちとは二度とすれ違うこともないだろうと思うんですよね。田舎だとみんなが知り合いで、「あの人は〇〇さんのおばあちゃん」みたいになるけど。知らない人同士が暮らしてる東京なんだけど、この曲を聴くとみんなが家族というか、友達というか、同じような思いを抱えながら歩いてるんだろうなと思える。そうやっていろんな人を眺めながら音楽を聴けるのはドライブのいいところですよね。街を歩きながら聴くよりも、車の中にいる分ちょっと距離があるのもいいんですよ。駅のホームとかで聴いたらエモーショナルすぎるかもしれない(笑)。乗らなきゃいけない方向と逆の電車に乗っちゃうかも。
そういえば、JAFさんにお世話になったこともありました。昔、イギリスのマッドネスというバンドがCMをやってたホンダ・シティに憧れて買ったんですよ。1984年くらいの車なんですけど、旧車すぎて高円寺で止まっちゃったんです。真夜中だったんですけど、JAFさんにレッカーしてもらいました。
あと、ソロになって一番最初のツアーに出るとき、バックバンドをやってもらったユニットのダブルオー・テレサが持ってた機材車で行くことになったんです。フォードのバンで、「5万円で買った」って言ってたから心配してたんですけど、関西に行くのに福井の鯖江で早速故障したんです。これもレッカーしてもらいました。トラウマになってます(笑)。
JAF会員限定 曽我部恵一さんの直筆サインをプレゼント
曽我部恵一さん直筆の「わたしのドライブミュージック」特製サイン色紙を、抽選で3名様にプレゼントします。
- 応募締切:2025年2月6日(木)
- ※オークションサイト、フリマアプリなどでの転売を禁止します。
曽我部恵一さんのプレイリスト
曽我部恵一
そかべ・けいいち 1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト、ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。'70年代の日本のフォーク、ロックを'90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。2001年のクリスマスに、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント、DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス、ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。
http://www.sokabekeiichi.com