曽我部恵一がドライブのたびに思う、古びない東京のマジック〈ピチカート・ファイヴ / 東京は夜の7時〉
バンド、サニーデイ・サービスの曽我部恵一が語るクルマと音楽の関係今月選曲を担当するのは曽我部恵一さん。バンド、サニーデイ・サービスでフロントマンを務める他、ソロプロジェクトでも活躍するミュージシャンです。3回目となる今回は、ドライブ時のシチュエーションと音楽が生み出す「奇跡的な瞬間」にまつわるエピソードについて、東京を歌ったあの名曲とともに披露してくれました。
音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを4曲紹介します。
3. ピチカート・ファイヴ / 東京は夜の7時
何年経っても色あせることのない東京の輝き
渋谷や新宿、下北沢、吉祥寺とかはよく行くんですけど、大門とか東京タワーがあるあたりにはあんまり用事がなくて、ドライブでしか行くことがないんです。でも、あの辺りに対する憧れがすごくあるんですよ。田舎から出て来てるのもあって今だに知らない街だし、フランスとかに観光で来てるみたいな気持ちになるんです。そこに、この曲はすごくハマるんですね。
「東京はかっこいいね」ということだけじゃなく経済のことまで触れていたり、東京で暮らす素敵さと大変さを全部一緒に歌ってくれているというか。東京に何年住んでるんだよって話ですけど、首都高を走ってて「東京タワーってこんなに近くに見えるんだ!」と今でも思うし。そういう気分になるのが楽しいんですよ。いつまでも新鮮な気持ちでいられるのはこういう曲があるからじゃないかな。
この曲がリリースされたのは1993年で、僕が上京してすぐだったんですけど、ここで描かれてる東京像は全然古くなってないんですよね。実際の街並みは変わったところがたくさんあるのに。景気がいいときに聴いても、景気が悪いときに聴いても、東京のキラキラした雰囲気を感じられる。作曲した小西康陽さんも北海道出身だから、地方出身者にしか見えない東京の輝きをうまく捉えてるんじゃないかな。
この曲くらいスタンダードになると、家で改めて聴くこともあんまりないんです。もう死ぬほど聴いたし。でも、ドライブのときに不意に流れてくるとやっぱりハッとしますね。何十回、何百回と聴いた曲でも、ある風景の中でめちゃくちゃハマる瞬間はあるんです。たとえば高速の上で、この空の色で、この人が隣に乗っててみたいな、偶然が重なったシチュエーションで聴くからこそ訪れる“人生で一度きりの最高の瞬間”みたいな。その曲を別の場所で再生しても、いいなとは思うけど、それほどの感動はないという。
ドライブミュージックにはそういうピンポイントで奇跡的にハマるタイミングがあるから、なるべく車内では音楽を垂れ流しにしないようにしてるんです。この辺でこの曲を聴いたら最高だろうなというときに、道の脇に車を停めて、曲を探して流すんです。ずっと音楽が流れてると耳が飽きちゃうから。ある意味でDJ的な感性を張り巡らせてるかもしれない。エンジン音とか風の音とかも重要になってきますからね。
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※2025年2月6日に応募を締め切りました
- ※オークションサイト、フリマアプリなどでの転売を禁止します。

曽我部恵一
そかべ・けいいち 1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト、ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。'70年代の日本のフォーク、ロックを'90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。2001年のクリスマスに、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント、DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス、ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。
http://www.sokabekeiichi.com
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