カミナリ・たくみがメロン農家の父のクルマで聴いた大人なラブソング〈松山千春 / 恋〉

僕の地元は実家も含めてメロン農家が多くて、みんなこれみよがしにいいクルマを買うんすよ。近所のおじさんがハマーのH3に乗っていたり、うちの親父は日産グロリアに乗ってたんです。相方のまなぶの父ちゃんなんて、めちゃくちゃ渋いクラウン マジェスタに乗ってるんです。みんなクルマへのこだわりがすごいんですよね。そういった環境で育ったんで、「でかくていいクルマにいつか乗りてえな」って気持ちがずっとあって。それで去年新型のフォード・ブロンコに出会って「これだ！」と思って買いました。

一方うちの親父も、僕に子供ができておじいちゃんになったタイミングで、グロリアをやめてみんなで乗れるファミリーカーに乗り替えていたんですよ。実はそれがちょっとショックで。「あー、俺は見栄を張ってた親父が好きだったんだな」って思ったんです。でも、これが年を重ねることだし、孫たちと一緒にどこか行けるのが幸せなんだよな、とか思ってたら、最近メロンが調子いいらしくてベンツ買ってました（笑）。これはうれしかったですね。まだ親父も小さくまとまってなかったなって。

子供の頃、親父のクルマでは松山千春さんがずっと流れてました。たくさん名曲がありますけど、小学生のときから「恋」が好きなんです。歌詞は小学生が聴くようなものではないんですが、物寂しいメロディーが好きなんですよね。ヒップホップを聴くにしてもノスタルジックな曲調が好きなのは、その頃から変わらないんだなと。今でもカラオケで歌ったりします。

上京する前はずっと親父のクルマを借りて運転してて、東京ではカーシェアもあるし、自分のクルマはもってなかったんです。でも子供も大きくなってきて、やっぱりあったほうが便利かなと買ってみたら正解でしたね。

特に子供を乗せてスキー場に行ったときは感慨深かったですね。よく親父に軽井沢のスキー場に連れてってもらってたから、スキー場って「親に連れてってもらう場所」ってイメージがあったんですよ。そこに自分で買ったクルマに奥さんと子供を乗せて行ったときに「うわ、おれ、父ちゃんになったんだな」と思いました。もちろんスタッドレスを履いて安全運転でね（笑）。子供が生まれたときと、スキー場に行くとき。父親になったことを一番自覚した瞬間です。

石田たくみ

いしだ・たくみ お笑いコンビカミナリのツッコミ担当。1988年生まれ。茨城県鉾田市出身。カミナリとして2016年、2017年とM-1グランプリの決勝に進出。ヒップホップやスニーカー、ゲームなどのカルチャーに造詣が深い。相方のまなぶとは地元の幼なじみ。