セリカ・コンバーチブルの画像
文=下野康史/撮影=荒川正幸

トヨタ・セリカ コンバーチブル(ST202型)。4人でオープンが楽しめる、陽気なコンバーチブル#25

自動車ライター・下野康史の旧車試乗記
下野康史

トヨタが1994年に発売した、セリカ コンバーチブルのレンタカーに茨城県高萩市で試乗。セリカといえば世界ラリー選手権(WRC)に参加するGT-FOURでも知られていますが、3世代にわたって4人乗りのコンバーチブルをラインナップしてきました。そんなセリカ コンバーチブルを自動車ライターの下野康史さんが借り受け、走りをレポートします。

目次

希少なオープンカーも旧車レンタカーで

「リアシートを備えるオープンカー」は希少なクルマである。オープンカーといえば、ふたり乗りのスポーツカーがほとんどだからだ。4座オープンカーはオープン2シーターまでは冒険できない人の、実用的なスポーツカーになり得たのだが、今は少ない。現行の日本車だと、レクサスLC500コンバーチブルだけ。ちなみに、お値段はオーバー1500万円である。

旧車レンタカーで4人乗りオープンカーを揃えている店を見つけた。茨城県高萩市にある“レンタカーズSEiWA”。6時間9020円というお手頃料金で96年式の6代目セリカ コンバーチブルが体験できる。

2024年11月に開業したこの店は「楽しい車に乗りたいなら」を謳い文句に掲げる新世代レンタカーサービスである。樹齢800年の椎の木が目印の広い敷地に40台のクルマが用意され、そのうち13台がスポーツカー。なかでも、マツダ・ロードスターは初代から現行の4代目まで、タイプ違いを合わせて9台が並ぶ。ここへ来ると、オリジナルのユーノス・ロードスターから始まって、新旧マツダ・ロードスターの乗り比べができるわけだ。

そのなかで、4座オープンのセリカ コンバーチブルは異色だが、オープンドライブをみんなで味わいたい家族連れにウケているそうだ。新世代のレンタカーとは、手段ではなく、目的として借りてもらえるレンタカーのことである。山あり海ありの高萩にはアップダウンに富んだ気持ちのいいカントリーロードが多い。

セリカ・コンバーチブルのフロント7:3

茨城県高萩市の「レンタカーズSEiWA」でお借りしたセリカ コンバーチブルは1996年式。車検証に記載された車両重量は1330kgだった
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セリカ・コンバーチブルのリア7:3

セリカのコンバーチブルとしては3代目にあたる。このモデルを最後に、セリカ コンバーチブルは絶版となった
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90年代セリカにコンバーチブルあり

90年代のセリカといえば、四駆モデルのGT-FOURをベースにしたラリーカーの活躍が有名だが、FFのコンバーチブルも欠かせない品揃えだった。日本ではマイナーだったが、オープンカー好きのアメリカで人気があったのだ。

6代目セリカ(ST202)のコンバーチブルは、セリカ コンバーチブルとしては3代目にあたり、上屋のないボディーを日本からアメリカへ送り、現地専門メーカーのソフトトップを架装するという手間暇をかけてつくられた。

ガラスのリア窓を持つソフトトップは電動式。2か所のロックは手動だが、あとはセンターパネルのスイッチひとつで開閉できる。ただ、今の電動オープンと違って、ウインドウの動きはソフトトップとは連動していない。屋根を閉じると、同時に窓ガラスも閉めてくれるような親切はまだない。後席のパワーウインドウスイッチはソフトトップの開閉スイッチと並んでいる。車齢30年近いということもあって、ソフトトップ作動時のジジジジというメカノイズが大きいのはご愛嬌だ。

積算計の数字は7万8000km台。年式を考えると、驚くほど走っていない。実際、内外装の程度は新車のレンタカー並みだ。パワーステアリングの操舵力が重めなのは、時代を感じさせるところだが、それを除くと、ドライブフィールにも気むずかしさはない。
エンジンは170PSの2リッター4気筒。以前レンタルした255PSのGT-FOURのようなパワーはないが、4速ATとの組み合わせでも過不足なく走る。

セリカ・コンバーチブルのインパネ

インパネはハッチバックのセリカと共通。センタークラスターはわずかにドライバー向きに角度が付けられている
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セリカ・コンバーチブルのシート

フロントシートには、サイドが張り出したバケットシートを採用。ただし、タイトさはそれほどではなく、快適さを重視したという印象だ
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ノーオープンカー、ノーライフ

セリカ・コンバーチブルのエンジン

3S-GE型・2リッター直列4気筒エンジンを搭載。1330kgの車両重量に対し、必要十分なパワーとトルクを発揮してくれる
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この日はときどき冷たい小雨が降る神経質な天気で、トップを開けたり閉めたりした。信号待ちのあいだにも気軽に開閉できるのは電動式のいいところである。

あらためて見ると、この世代のセリカ コンバーチブルは幌を被せたスタイリングがカッコイイ。猛暑と湿気でなかなか上を開ける気分になりにくい日本だと、これは高ポイントである。

だが、オープンカーはやはり上を開けてこそ、である。マツダ・ロードスターのようなオープン2シーターは、狭いキャビンのすぐ後方に隔壁が迫るが、4座オープンは後ろにまだ客席がある。当然、ソフトトップの開閉量は大きく、開けた空がデッカイ。“オープンにし甲斐”があるのだ。青天井にすれば、その途端、眉間のシワが消え、憂さを忘れる。ハンドルの重さなんてちっちゃいことは気にならなくなる。

新車のとき、セリカ コンバーチブルのリアシートを試した記憶はないが、編集部Nさんにハンドルを譲って、今回は座ってみた。背もたれが立っているので、大人向きのシートとは言えないが、景色が違って見えるようなオープンエアドライブの楽しさは後席でも味わえる。いつもミニバンに詰め込まれている子どもを乗せたら、彼や彼女の“自動車観”を変えるかもしれませんゾ。

走り去るセリカ・コンバーチブル

ターボで武装したGT-FOURのような突出した加速力はないが、トップを下ろして海岸沿いをドライブしても、クーペにしてワインディングを走っても心地よい。アメリカン・コンバーチブルのような印象を受けるオープンカーだった

セリカ・コンバーチブルのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4505×1750×1325mm
ホイールベース:2535mm
エンジン3S-GE型 水冷式直列4気筒 1998cc
トランスミッション:4速AT
エンジン最高出力:125kW(170PS)/6600rpm ※MT車は132kW(180PS)
エンジン最大トルク:191N・m(19.5kg・m)/4800rpm
サスペンション形式(前/後):ストラット/ストラット
タイヤ:205/55R15(試乗車は215/45R17を装着)

歴代セリカや派生モデル、ネオクラ4人乗りオープンカーの解説などは、リンク先の記事をチェック!

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#24 日産スカイラインGTSクーペの試乗記はこちらから

下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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