高速道路を走るセリカXX
文=下野康史/撮影=荒川正幸

トヨタ・セリカXX(A60型・2代目)に試乗。直6エンジンが爽快、80年代スポーツ #18

自動車ライター・下野康史の旧車試乗記
下野康史

トヨタが1981年から1986年まで販売していたセリカXX(2代目)に試乗。スペシャルティカーであるセリカ リフトバックに6気筒のエンジンを搭載、同時期にデビューした初代「ソアラ」の姉妹車と位置付けられていました。
そんなセリカXXを自動車ライターの下野康史さんが借り受け、走りをレポートします。

目次

スポーツカー方向に舵(かじ)を切った2代目セリカXX。その走りは?

静岡市内のトヨタディーラーで2代目セリカXX・2000GTを借り受ける。“ヴィンテージクラブ by KINTO”が用意する旧車レンタカーである。ディーラー主催のイベントに展示するという“公務”の合間に首尾よく借りることができたので、急遽、静岡までやってきたのだ。
2代目セリカXXが登場したのは81年。XXはロングボディーに直列6気筒エンジンを搭載する、ちょっとハイソなセリカだったが、CMキャラクターにロータスのコーリン・チャップマンを起用した2代目はそのキャラをかなりスポーツカーの方向に振った。高級路線は同じ年にデビューした初代ソアラが代表することになったからだろう。2000GTは1G(ワンジー)と呼ばれていた新世代の直6を24バルブDOHC化したエンジンを積む、2代目XXのハイライト的なモデルである。試乗車は後期型にあたる85年初度登録の個体だった。

セリカXXのフロント7:3

「Vintage Club by KINTO」でお借りしたセリカXXは1985年式。後期型へ移行した際、ドアミラーが標準装備になった。スリーサイズは全長4660mm×全幅1685mm×全高1315mmで、車検証に記載された車両重量は1230kgだった。1981年にデビューした際の東京での車両価格は162万7000円~232万3000円。静岡でのレンタルは2024年9月で終了しており、11月からは兵庫県でのレンタルが始まるという。詳細はウェブサイト を参照のこと
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セリカXXのリア7:3

試乗車は後期型のため、前期型ではブラックに塗装されていたハッチゲートやリアバンパーが、ボディーと同色になっている
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“アラフォー”のスペシャルティカーだが、クラッチも軽く運転しやすい

乗り込むと、茶色い内装の室内は、スポーツカーというより“スペシャルティカー”の雰囲気だ。ステアリングホイールは直径40cm近くと大きめで、センターパッドのデザインはソアラに似ている。というか、エンブレムが入る中央部分を除くと、基本的に同じ部品のようである。
計器類はすべてアナログ式。ソアラのようなデジタルメーターはない。エアコンはこの頃、まだオプションだったが、試乗車には付いていて、操作盤に“AUTOMATIC AIR CONDITIONER”の英文字が誇らしげに並ぶ。オートエアコンは珍しかったのだ。
計器盤の右側にはダイヤルがある。“スピードアラーム”だ。この当時、国産車には高速道路での安全運転を促す速度警告チャイムが義務付けられていたが、それとは別に、30~65km/hの範囲で5km/h刻みに速度警告を設定することができた。使う人、いたのだろうか?
冷間始動といっても、この日は朝から暑かったので、エンジンは一発でかかり、安定したアイドリングに入る。変速機は5段MT。クラッチペダルは軽い。今のフツーのヤリスのMT車より軽いくらいだ。おかげで、40年前のスポーティーカーでも、気楽に運転できる。そういうところは、まさにトヨタ車である。

セリカXXのインパネ

初代セリカ リフトバックのようにメーターがずらりと並ぶことがなく、肩の力が抜けたような印象のインパネ。低いダッシュボードは圧迫感が少ない
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セリカXXのシート

ワインレッドの内装が80年代らしさを醸し出している。内装のシート、トリム、天井などはトヨタ紡織がレストアを担当。パッド復元や表皮イメージの再現により、当時の内装を取り戻している

キメ細やかに回り、粘りもある直列6気筒エンジン

街なかを抜けて、日本平パークウェイに入る。楽しいワインディングロードだが、舗装はよくない。そういう路面だと、ボディーの剛性感などには、“お疲れ”も隠せなかったが、曲がるたびに感じる“ノーズの軽さ”にスポーツカーの片鱗をみる。これでステアリングホイールがもっと小径で軽かったら、印象はさらによかったはずだ。
しかし、日本平パークウェイでいちばん感心したのは、やはりこのエンジンである。2リッターで160psの最高出力数値は今となってはなんてことない。実際、パワフルさで驚かせるエンジンではないが、そのかわり、いい直列6気筒ならではのよさがある。回転の目が詰んでいるというか、回転のキメが細かいというか、簡単にいえばスムーズで、今でも4000rpm以上の高回転を好む。一方、粘りもあり、3速1000rpmからでも上り坂のカーブをきれいに立ち上がってくれる。
2代目XXが現役の頃、自動車評論家の舘内端(たてうち・ただし)さんが2000GTに乗っていて、エンジンのよさを力説しておられた。その後、日本EVクラブを興した舘内さんは、いまやEV界の重鎮だが、レーシングカー設計者の時代から内燃機関に深くかかわってきた氏のお気に入りが1G‐GEUエンジンだったのだ。
この日の静岡は39.3℃を記録し、日本一暑い場所になった。日なたに出ているだけで、人間はグッタリしたが、40年モノのXXはオートエアコンを効かせて、最後までなんら不調を訴えなかった。旧人より、旧車のほうがエライ!
日本平の頂上では、後継モデルにあたる初代スープラに乗り換えた。豪華な旧車レンタカーリレーのリポートは次回に続きます。

セリカXXのエンジン

1983年のマイナーチェンジで設定された1G-GEU型・2リッター直列6気筒DOHCエンジンは最大出力160ps/6400rpm、最大トルク18.5kgm/5200rpmを発揮。直6エンジンらしく、スムーズかつ軽やかに回るエンジンだった
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セリカXXが走る姿

夏の日差しを浴びて駿河湾沿いの国道を走る。気温が40℃を超す、旧車にも人にも過酷なコンディションのなか、セリカXXは文句も言わず走り抜けてくれた

#18 セリカXXのフォトギャラリーは、こちらをクリック!

#17 三菱・GTOの試乗記はこちらから

#19 トヨタ・スープラ(A70型)の試乗記はこちらから

下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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