シティ、フェアレディZ、セリカ、シルビア…昭和・平成の懐かしいソフトトップオープンカー5選【前編】
国産の新車では希少な存在となったソフトトップのオープンカー。昭和・平成に輝いた名車を振り返る近年のオープンカーは、メタルトップと呼ばれる金属製のルーフを採用する例が多く、ルーフを閉めたときは普通のクルマに見える。それに比べて、昭和・平成初期に多かった、布やビニール製の幌(ほろ)を使ったソフトトップは、幌を閉めたときにイメージが変わって、なんだかかわいらしくも見えます。そんな、おしゃれで愛くるしいソフトトップのオープンカーをピックアップします。
昔はなぜソフトトップが多かった?
日本を代表するソフトトップ車といえばマツダのロードスター。初代モデルから現行4代目までソフトトップを継続している
幌を開ければ空が近くに見え、周囲を流れる風をダイレクトに感じられるオープンカーは、いつの時代もクルマ好きを虜(とりこ)にしてきました。そのオープンカーの中でも、軽量かつ、いかにもオープンカーらしいシルエットを持つソフトトップのスペシャルティカーは、昔は国内外の自動車メーカーが多く販売していました。
1960年代から1990年代に、日本国内でオープンカーが流行していたのには、アメリカの影響があったものと考えられています。カリフォルニアのように、年間を通して気候が温暖で、たまにしか雨が降らない地域では、昔からオープンカーが大人気。映画でもしばしばオープンカーが登場するなど、文化のように根付いていましたが、昨今はアメリカでもオープンカーは数を減らしているそう。ただ、いまも西海岸のビーチ付近などでは根強い人気があり、よく見かけるといいます。
本格的な走りのクーペとは異なり、ソフトトップのオープンカーには、優雅にドライブをするデートカーとしての需要も高かった
一般的に、ソフトトップの寿命は10年程度といわれます。ひと昔前のソフトトップは、雨漏りやリアウインドーの剥がれ落ちといったトラブルも多くありました。しかし、現代のソフトトップ(=幌)は、耐久性が高い布やビニールを何層も重ねて作られた丈夫な幌ですので、ソフトトップを浸透して雨が滲(にじ)んでくるということはほぼありません。ただ、紫外線や雨、風などの刺激に強いとはいえず、幌の生地を傷めぬよう、汚れが付着したらすぐに洗い流す、濡れた幌はよく乾かすなど、メンテナンス頻度は高め。ソフトトップ車専用のカーシャンプーや撥水(はっすい)加工剤を上手に取り入れる工夫も必要です。
手で開閉するソフトトップに対し、電動格納式の金属製ルーフをメタルトップといいます。メタルトップは、ルーフを閉めれば剛性が上がり、普通の屋根あり乗用車と同じ乗り味になりますし、クローズ時のルーフラインが流麗になり、風切り音も低減されます。また幌の劣化も気にしなくて済みます。このメリットが重要視され、2000年代から2010年代にかけては、ソフトトップよりもメタルトップのほうが、需要が高くなっていました。
しかしながら、メタルトップ車はソフトトップ車に比べてルーフ部の重量が重く、その重量物が高い位置にくることで重心が高くなり、走行性能のポテンシャルが格段に落ちる、というデメリットがあります。大きな面積の電動メタルトップの場合はメタルトップ部分だけで100kg近くになる車種もあり、軽さが命のスポーツカーにとって、この差は非常に大きいもの。
それだけでなく、メタルトップは故障時に高額の修理費がかかりますし、オープン時にトランクルームのスペースがなくなるなどデメリットも多く、最新のメルセデスベンツ・AMG SLやBMW・Z4など、電動メタルトップからソフトトップへ回帰したオープンカーも少なくないのです。軽さが命のスポーツカーにとって、ソフトトップは非常に相性のよい組み合わせなのです。
2025年現在、新車で購入できる国産ソフトトップ車は、レクサス・LC500コンバーチブル、マツダ・ロードスターと、そのロードスターをベースとしたミツオカ・HIMIKOやロックスターだけとなってしまいましたが、オープンエアの走りの楽しさはいつの時代も変わらず、多くのファンに愛され続けています。
人気のコンパクトカーに追加されたかわいいフルオープンカー
ホンダ・シティカブリオレ
1984年7月にシティシリーズに追加されたのが、ソフトトップと力強いオーバーヘッドバーを装備したシティカブリオレ
リアクォーターウインドーは上下に開閉が可能。車体色は専用色を含めて12色が設定されていた
1984年、個性的でユニークなシティに追加されたのが、ソフトトップのシティカブリオレだ。幌の開閉はスムーズで、フルオープンにすればオープンエアが楽しめ、閉じれば通常のシティと変わらない走行が可能。リアに収納したソフトトップを、汚れやゴミから守り、走行風によるバタつきを抑えるソフトトップカバーも標準装備していた。リアウインドーはガラス製を採用。ファッショナブルなフルオープンカーとして、ホンダファンの間で大人気となった一台だ。当時の価格は138万円~。
電動ソフトトップを備えたバブリーなデートカー
日産シルビア コンバーチブル
1988年7月に追加販売された、ソフトトップのシルビア コンバーチブル。製作を指揮したのは日産車のカスタムを行うオーテックジャパンだ
エンジンは1.8Lの直列4気筒ターボだが、デートカーとしての使い道を優先したのかMTはなく、4速ATのみだった
1988年5月にS13系へフルモデルチェンジしたシルビア。その最高級グレードK'sをベースに4座のスペシャルティオープンとして製造されたのが、シルビア コンバーチブルだ。スイッチ操作で自動開閉するソフトトップが与えられており、幌は後部座席の後ろにあるハードカバー内に格納されるので、違和感のないスタイリッシュなデザインが特徴だった。クローズ操作時にはリアサイドウインドーが電動でせり上がり、フルクローズ状態まで自動で行われるというハイテクマシンだった。
世界に誇る国産オープンカーといえばコレ
マツダ・ロードスター
1989年に発売となったマツダ・ユーノスロードスター。消滅しかけていたライトウェイトスポーツカー市場の復活のきっかけとなった
ソフトトップは手動式。オープン時には畳んだ幌が見えないよう、幌の収納部分を覆うソフトトップブーツが標準装備されている
初代ロードスターの源流は、1960年代に欧州で流行したライトウェイトスポーツカーにあるという。人馬一体をキーワードに、操る楽しさやオープンスポーツならではの爽快感が追求されており、発売当時の車両価格は約170万円〜という異次元のコストパフォーマンス。これが功を奏し、ロードスターは世界中で大人気となった。ソフトトップは軽量かつシンプルな構造で、クルマのなかに座ったまま片手で開閉することができた。リアウインドーは塩化ビニール製でファスナーの操作で開閉することも可能。
初代モデルは1998年まで販売が続き、2000年時点で生産累計56万5779台に到達(2000年6月末時点)。「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネス世界記録に認定されている。
オープン機構の架装は北米だった
トヨタ・セリカ コンバーチブル
1990年8月に追加された、5代目セリカをベースとした電動油圧式ソフトトップを装備したセリカ コンバーチブル(2代目)
スイッチ操作ひとつで簡単にオープンとクローズができる電動油圧ソフトトップを採用、リフトバックタイプのセリカとは異なり、トランクルームを持つ専用ボディーだった
1989年9月に誕生した5代目セリカ(ST180系)をベースに、電動油圧式のソフトトップを装備したのがセリカ コンバーチブルだ。パワートレインは最高出力165PSの2.0L直列4気筒エンジンに5速MTもしくは4速ATを組み合わせ、駆動はFFのみ。クローズ時に流麗なシルエットとなるソフトトップは、アメリカのASC(アメリカン サンルーフ コーポレーション)社が架装を担当した。耐久性と耐水性に優れた幌を採用しており、トヨタ初の4輪操舵システムであるデュアルモード4WSを採用するなど、走りの良さも備えた一台であった。
安全性にもこだわったエレガントなオープンカー
日産フェアレディZ コンバーチブル
2シーターのZ32フェアレディZをベースとして、1992年に派生車種として登場したフェアレディZコンバーチブル。幌は手動式だった
クローズ時のソフトトップは車両後方へすっぽりと畳み込むことができるが、太いロールオーバー・バーは残るデザインとなっている
1989年に登場したZ32フェアレディZ。1992年のマイナーチェンジで追加されたのが、ソフトトップを備えたフェアレディZ コンバーチブルだ。モノコックボディーをコンバーチブル化したため、サイドシルの板厚を2倍以上にするなど、車体のあらゆる部分に補強が施されているが、Tバールーフ車に対して40kgの重量増に抑えることができていた。なお畳んだ幌はトランクリッドの前側にあるストレージリッドの中へ格納される。
気軽にオープンエアが楽しめた
キャンバストップってどんなクルマ!?
日産のパイクカーシリーズ第2弾であるパオに設定されていたキャンバストップ仕様。ファニーなキャラクターにとてもマッチしていた
キャンバストップとは、開閉可能な帆布(キャンバス)のルーフを意味する。どちらかというとオープンカーというよりもサンルーフに近いが、ルーフ部分を後方へスライドさせて折り畳むので、一般的なサンルーフと比べると開くスペースが広く、よりオープンエアを感じられるクルマが多い。1987年から日産のパイクカーシリーズとして登場したBe-1やパオ、フィガロなどが有名。
1989年に登場した日産パオはK10型マーチをベースにレトロな内外装が与えられ、フランス車のようなおしゃれな雰囲気を持ち合わせていた。3か月で5万台もの受注を獲得
2000年1月に誕生したトヨタのコンパクトカーWiLL Vi。ノーマルルーフ車と屋根が開くキャンバストップ車の2つが用意されていた
2003年2月、スズキ・アルト ラパン(初代)に追加されたキャンバストップ。真っ赤なシート地はソファをイメージ。ルーフはダークグレイメタリックに塗装し、黒いキャンバストップと色調を合わせていた
2002年8月に登場した2代目マツダ・デミオ。Cozy(コージー)にはルーフ全体が開くキャンバストップ仕様が設定されていた
吉川賢一
よしかわ・けんいち 日産自動車で操縦安定性・乗り心地の性能開発を専門に、スカイラインなどの開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリー、つくり手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味はカーメンテナンス、模型収集、タミヤRCカーグランプリ参戦。最近はゴルフとサウナにもハマり中。
特集の記事一覧

懐かしの国産ソフトトップオープンカー5選【後編】
2025.03.06
新車から乗り続けて60年! 今なお現役絶好調「プリンス・スカイライン1500デラックス」
2025.03.04
JAF会員なら自動車保険料の節約ができる!? 「おとなの自動車保険」のJAF会員優遇サービスでより手厚いサポートも
2025.02.28
花粉症で悩むドライバー必見の花粉ブロック術&厳選グッズ
2025.02.28
車検や毎年の自動車税、住所変更など、クルマを所有しているときに必要な手続きと費用とは?
2025.02.27
タイプR、ランエボ、R34GT-R… ド派手なリアウイングを装備した名車たち【後編】
2025.02.18
スカイラインGT-R、インプレッサ、GTO… ド派手なリアウイングを装備した名車たち【前編】
2025.02.18