MR-S、S2000、マーチ…懐かしの国産ソフトトップオープンカー5選【後編】
リーズナブルな4人乗りからピュアスポーツまで、昭和・平成の名車を振り返るかつて日本には、多彩なソフトトップのオープンカーが存在していました。手頃な価格のコンパクトモデルから、本格スポーツカーまで、選択肢は実に豊富。前編に続き、今回はトヨタ・サイノス、日産マーチ カブリオレ、ホンダ・S2000など、1990年代〜2000年代の名車たちを振り返ります。今では貴重なソフトトップ車の魅力を再発見してみませんか?
4人乗りオープンが約160万円で買えた
トヨタ・サイノス コンバーチブル
1995年にフルモデルチェンジをした2代目サイノスに1996年8月に追加となったのが、手動開閉式のソフトトップを備えたサイノスコンバーチブルだ
ソフトトップ車は、アメリカのASC社へ車両を送り、改装した後に日本へ送り返す方法で生産していた
コンパクトな4人乗り2ドアクーペとして人気だったサイノス。その2代目モデルに追加されたのがサイノス コンバーチブルだ。サイノスは、若い女性をターゲットにして開発されており、スポーツカーのエントリーグレード的な位置づけで、カローラレビンやスプリンタートレノよりも価格が安かった(約102万円〜/コンバーチブル約160万円〜)。
ソフトトップは手動開閉式で、リアウインドーは熱線入りガラス製を採用。風の巻き込みを防ぐ三角窓なども備えていた。ソフトトップの架装に長けていたアメリカのASC社へ車両を送り、ソフトトップへ改造したあとに日本に戻す、という手間をかけた手法が採られていた。
モーターショーでの反響を受け発売された人気モノ
日産マーチ カブリオレ
1997年8月に登場したマーチ カブリオレ。スモールカーの使い勝手とカブリオレの楽しさを両立したモデルとして人気車となった
オープンボディー化に伴う安全対策として、キャビン周りの補強や専用ロールバーを装着。またAピラーの強化や三角窓も採用した
1995年10月の東京モーターショーに参考出品されたマーチ カブリオレ。K11型マーチをベースにオープンタイプへ改装したマーチ カブリオレは、ショーモデルでありながらその完成度の高さから発売を期待する声が多く集まり、日産は市販化を決定。1年10か月をかけて市販車を開発した。ソフトトップは電動開閉機構を採用しており、運転席付近にあるスイッチで開閉ができたが、万が一の故障時には手動操作でも開閉できるよう、自動/手動の切り替えスイッチも内蔵されていた。リアウインドーはビニール製ではなく、熱線入りのガラスを採用していた。
クラシカルな雰囲気を安心の国産車で
ミツオカ・ビュート コンバーチブル
日産マーチ カブリオレをベースにした、ミツオカのビュート コンバーチブル。ロールバーや三角窓はベース車と同じパーツを使用している
市販車をベースにオリジナル車両の製造・販売を行っている光岡自動車が、前述の日産マーチ カブリオレをベースに、クラシックデザインに改装したのがビュート コンバーチブルだ。電動開閉機構など基幹パーツは流用しているが、エクステリアやインテリアは大きく改装。なかでも木目調インパネやレザー調シートなどを採用したインテリアは、ベースモデルよりもはるかに高級感にあふれていた。他にもメッキサイドモールやロゴエンブレムなど、専用アイテムも用意されていた。
ミッドシップのオープンスポーツ
トヨタ・MR-S
1999年10月に登場した2シーターのMR-S。軽量で機敏に走り、操る楽しさが実感できる、ミッドシップエンジンのライトウエイトオープンスポーツだ
オープン走行時に、後方視界を確保しながら、後方からの風の巻き込みを低減する透明樹脂製のエアディフレクターも備えていた
前型のMR2が1999年10月に販売終了、その後継モデルとして誕生したのがMR-Sだ。ロングホイールベース、ショートオーバーハング、軽量かつ高剛性のオープン専用ボディーに、エンジンをミッドシップに搭載し、後輪で駆動する2シーターオープンスポーツであるMR-Sは、軽量なソフトトップを採用し、ガラス製リアウインドーを備えていた。FRP製ディタッチャブルハードトップもディーラーオプションで用意されていた。
10年間モデルチェンジをしなかった
人気の2シーターオープンスポーツ
ホンダ・S2000
1999年4月から2009年9月まで販売されたホンダ・S2000。スイッチひとつで素早く(約6秒)開閉する、軽量な電動ソフトトップを採用していた
S2000のクローズ時の斜め後方ショット。ソフトトップは徹底的にシンプルな構造としつつ、風切り音を低減するシルエットも追求されていた
ホンダとしてはS800以来となるフロントエンジン、リアドライブの2シーターオープンスポーツカーとして誕生したS2000。登場時のモデルは2.0L直列4気筒自然吸気エンジンながら、最高出力は250PS、最大回転数は9000rpmという高性能と、クリーンな排ガス性能を両立させていた。オープントップには、スイッチ操作ひとつで、素早く(約6秒)開閉する電動ソフトトップを採用。構造を徹底的にシンプルにしたことで、クラストップレベルの軽量化を実現した。また、オープン走行時の快適性を高めるため、腰下全体を暖めるオープンモードをエアコンに設定していた。
今新車で買える国産ソフトトップ車は
マツダ・ロードスターとレクサス・LC500コンバーチブル
2015年5月にデビューした4代目ロードスター。軽量化と高い強度を両立したガラス製リアウインドー付きのソフトトップを採用
クローズ走行時に発生する、ソフトトップのバタつきによる風切り音を抑えるため、アルミ製ヘッダーパネルなどのパーツが追加されている
1989年の初代登場以来、「人馬一体」をコンセプトにロードスターを作り続けているマツダ。4代目の現行モデルにはソフトトップとハードトップの2種類が用意されているが、オープンスポーツの開放感を味わうにはソフトトップのほうが優れている。ガラス製リアウインドー付きソフトトップが採用されており、中央のロックを解除して、車両後方へソフトトップを畳むシンプルな操作で格納が可能となっており、ソフトトップを開けるときの手順のひとつであるサイドウインドーを下げる操作も自動化されている。
また、2020年に追加設定されたレクサス・LC500コンバーチブルもソフトトップを採用した現行型オープンカー。約15秒で開閉可能な電動ソフトトップは、トノカバー付フォールディング機構を採用し、ルーフオープン時はソフトトップが完全に格納され、美しいシルエットを実現する。
1500万円超えと超高価なラグジュアリースポーツ。ソフトトップの材質や質感を吟味し、骨格と素材の張り具合を徹底検証することで、クローズ時にクーペのような美しいルーフラインとなるようこだわっている
中古車市場では、名作と呼ばれてきたソフトトップ車が多く出回っていますが、年式が古い中古車はソフトトップ自体やその周辺部品の劣化が起こりがちです。楽しいオープンカーライフを過ごせるよう、交換部品は残っているのか、販売店でメンテナンスをしてくれるのかなど、購入する場合にはしっかりと見極めることも大切です。
吉川賢一
よしかわ・けんいち 日産自動車で操縦安定性・乗り心地の性能開発を専門に、スカイラインなどの開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリー、つくり手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味はカーメンテナンス、模型収集、タミヤRCカーグランプリ参戦。最近はゴルフとサウナにもハマり中。
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