駐車場にクルマがないっ!? クルマが盗まれたら、どうすればいいの?
CASE7:クルマが盗まれたときの対処と防犯対策クルマの盗難対策は、所有者にとって極めて重要な課題だ。特に高価な車両や人気車種は盗難のターゲットになりやすく、日常的な対策が欠かせない。解除できないセキュリティーは存在しないことを前提に、車両盗難について考えなくてはならない。今回は、クルマを盗まれてしまったときにすべき対処と、盗難被害に遭わないための対策を専門家に聞いてみた。
3択クイズ!
駐車場に停めておいたクルマがない!?
クルマが盗まれたら、まず初めにすべきことは?
適切な対応は次の3つのうちどれ?
(1)すぐに警察に連絡して盗難届を提出する
(2)SNSで拡散して、多くの人に情報を共有する
(3)保険会社に電話して、すぐに保険金の請求を開始する
-
答えは(1)
盗難に気づいた時点で速やかに警察へ通報する。最寄りの警察署や交番、または110番に電話し、車両の特徴や盗難場所、時間などを詳細に伝えよう。
盗難車が手元に戻ってくる確率は約19%!
車両盗難は依然として深刻な問題であり、特に高級車やSUV、ハイブリッド車が自宅の駐車場で狙われるケースが増えている。窃盗団による計画的な犯行が目立ち、最新の盗難手口はますます高度化。スマートキーの発する電波を利用した「リレーアタック」※1や、車両内部の通信システムを悪用する「CAN(キャン)インベーダー」※2といった新たな手口が急増。純正のセキュリティーシステムだけでは対応しきれないケースも多く、車両所有者の防犯意識が問われる時代となっている。
車両盗難件数は、一時のピーク期に比べて減少傾向にあるものの、依然として年間数千件が発生している。特に千葉県、愛知県、埼玉県、茨城県、大阪府などに被害が集中しており(警察庁生活安全企画課2024年3月調べ)、これらの地域では車両の所有台数が多いことに加え、交通の便が良い点や窃盗団の拠点が存在するなど、さまざまな理由からターゲットになりやすいとされている。
盗難車が発見される確率は約24%、実際に手元に戻ってくる確率は約19%と低く(日本損害保険協会調べ)、多くの被害者は愛車を取り戻すことができていない。盗難に遭うと、金銭的な損失だけでなく、愛車を失う精神的なダメージも大きい。さらに、保険金の請求や再購入の手続きなど、時間的・労力的な負担が加わるだけでなく、場合によっては盗難車が犯罪に利用されるリスクも考慮しなければならない。
- ※1 リレーアタック=スマートキーの電波を特殊な装置で増幅させ、遠隔でクルマの解錠やエンジン始動を可能にする手口
- ※2 CANインベーダー=車両の内部通信システム(CAN通信)をハッキングし、警報を無効化して車両を乗っ取る手口
クルマが盗まれたら、まずすべきことは?
クルマの盗難に遭った場合、以下の手順に従って対処しよう。迅速に対処することで、発見の確率を上げることができる。
- 1. 盗難が発生したら即座に警察に連絡
盗難に気づいた時点で速やかに警察へ通報する。最寄りの警察署や交番、または110番に電話し、車両の特徴や盗難場所、時間などを詳細に伝えよう。警察は盗難の届け出を受けた車両の情報をもとに、全国に情報を発信し発見に努める。時間が経過すればするほど発見できる可能性が低くなるため、盗難が発生したら即連絡すること。
- 2. 自動車の登録番号と車台番号の把握
盗難届を出す際、自動車の登録番号(ナンバープレートの番号)や車台番号が必要となる。盗難時には、これらの情報を警察に伝えると発見の手がかりとなる。これらは車検証や保険証券などに記載されているが、車検証はクルマにしまってあるケースが多い。車両盗難に遭うと車検証もなくなってしまう場合があるため、コピーしておくかスマホなどで写真を撮っておくようにしよう。
- 3 .加入している保険会社に連絡
車両保険に加入している場合、早めに保険会社に連絡し、盗難届の受理番号などを報告しよう。多くの場合、警察への盗難届の受理番号が必要になるため、提出できるように準備しておこう。車両保険により、条件に応じた補償を受けられる可能性がある。
- 4. GPS追跡サービスがある場合は確認を依頼
車両にGPS追跡装置が搭載されている場合、追跡サービス会社に連絡し、位置情報の確認を依頼するのも有効。早期発見に役立つ場合がある。自動車メーカーや車種によって多少機能は異なるが、車両の位置追跡だけでなく、アプリなどを使って遠隔操作で車両のロックやエンジン停止が可能なモデルや、オペレーターが盗難車両の追跡を行うサービスもあるので、自車に備わっている機能やサービスを把握しておこう。
- 5. クレジットカードやETCカードの確認
もし車内にクレジットカードやETCカードが残されている場合、盗難後の悪用を防ぐため、速やかにカード会社に連絡し、使用停止の手続きを行おう。盗難後もしばらくの間は、カードの利用明細や銀行口座の動きを定期的に確認したい。
- 6. 運輸支局で一時抹消登録の手続きを忘れずに
盗難被害に遭っても、車両が登録されたままの状態だと自動車税や重量税、自賠責保険料の支払い義務が発生してしまう。そのため、その後の支払いが免除されるように、一時抹消登録を行う必要がある。一時抹消登録証明書の発行には、350円の印紙代(普通車)がかかる。
一時抹消登録の手続きは、警察署に盗難届を提出して受理番号を取得後、管轄の運輸支局に必要書類を提出する。また、盗難車両が発見された場合は、再度登録手続きが必要になる。再登録の際には車検の受け直しや新たなナンバープレートの取得が必要だ。
- 7. ソーシャルメディアでの呼びかけも検討
近年ではSNSを利用して情報を拡散し、目撃情報を募ることも一般的になっている。近隣のコミュニティーやフォロワーに協力を呼びかけることで、発見の可能性が高まることもある。ただし、自分の状況も知られることになるので注意も必要だ。SNSで呼びかける場合は、車種、色、ナンバープレートの番号、特徴的な傷など、できるだけ具体的な情報を記載しよう。写真があれば、よりわかりやすく情報を伝えることができる。
自動車保険でどこまで盗難被害をカバーできる?
クルマの盗難には保険が適用されることが一般的。ただし、利用できるかどうかは保険の種類や契約内容に依拠する。盗難に対する補償を受けるためには、基本的に「車両保険」に加入している必要がある。車両保険には「一般型」と「エコノミー型」があるが、通常どちらのタイプでも補償される。また一部の保険には、GPS装置を装着し早期に車両が発見された場合でも、クルマに損傷がある場合は修理費用が補償されるオプションもあるため、契約内容を確認しておこう。
●ローンの残債がある場合も保険で補償される?
車両保険には盗難に対する補償が含まれていることが多く、盗難に遭った際には車両の時価相当額が保険金として支払われる。ただし、保険金はあくまでクルマの時価に基づくため、ローンの残債を全額カバーできない場合もある。
車両盗難のリスクを減らす防犯対策とは?
解除できないセキュリティーは存在しないのが現実。しかし、セキュリティー対策の目的は、それを破られるのは不可避だとしても、窃盗犯にとって「時間がかかる、手間が増える、リスクが高まる」状況を作り出すことにある。これは、車両盗難を防ぐ上で非常に効果的だ。
複数の対策を組み合わせることが重要
窃盗団は短時間で目標のクルマを奪おうとするため、セキュリティー解除に時間がかかるクルマを敬遠する傾向があるので、物理的なハンドルロックやタイヤロックを追加しておくのも効果的。物理的なロックに加え、イモビライザーや盗難防止アラームなど電子的な対策を組み合わせることで、解除に手間と時間がかかるようにしておくことが重要だ。
物理的なハンドルロックやタイヤロックなどを活用することで、ロック解除に時間がかかり盗難が困難になるような対策をとることが重要
外出先では駐車環境に注意
監視カメラのある場所や照明がしっかりした駐車場に停めると、窃盗のハードルが上がる。窃盗団は暗い場所や人目につきにくい場所での犯行を好むため、外出先で長時間クルマを停める場合などは、できるだけ安全な場所を選ぶことで犯罪の抑止効果が期待できる。また、クルマを離れる際は、車内に財布やスマートフォンなど貴重品を置かないことも忘れずに。
外出先でクルマを駐車する場合は、なるべく監視カメラや照明、人通りが多いところを探そう
「リレーアタック」から守る手段は?
窃盗団の多くは、「リレーアタック」など特定の手法に頼る傾向があるため、これらの攻撃を想定した対策を取ることが効果的となる。たとえば、リレーアタック阻止のためにスマートキーを電波を遮断する収納ケースに入れるだけでも、犯行が難しくなる。
一戸建て住宅で玄関近くにスマートキーを置く場合は、金属缶の中に入れておくとある程度効果がある。また、スマートキーに「節電モード」がある場合は設定しておこう
電波を遮断する専用ケースにスマートキーを入れることで、外部からの電波受信(リレーアタック)を防ぐことができる