まさか自分が加害者に!? クルマを運転中に事故を起こしてしまったら、どうすればいいの!?
CASE10:事故を起こしてしまったときの対処法交通事故の件数は年々減少傾向にありますが、2024年も依然として2,663人の命が交通事故によって失われています(警察庁発表)。交通事故は誰にとっても突然の出来事で、いざ遭遇すると、どう対応すべきか戸惑うものです。今回は、運転中に事故を起こしてしまった場合、または巻き込まれてしまった場合、どのように対応したらいいのかを解説します。
3択クイズ!
クルマを運転中に事故を起こしてしまったとき、
優先的に行うべきことは?
適切な行動は次の3つのうちどれ?
(1)安全を確保し、負傷者の救護や二次被害を防ぐ行動をとる
(2)事故直後は動転しているため、保険会社に連絡して指示を仰ぐ
(3)軽い接触事故であれば、速やかに相手と示談の相談をする
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正解は(1)
安全を確保し、負傷者の救護や二次被害を防ぐ行動をとる
交通事故を起こした場合、運転者は安全な場所にクルマを停止し、負傷者の救護や二次被害を防ぐための対応を行わなくてはいけません。これは道路交通法第72条で定められています。
減少傾向にあった交通事故件数が近年は増えている!?
2023(令和5)年の交通事故発生件数は30万7930件で、前年より7,091件も増加しています。死者数は2,678人で前年より68人増、重傷者数も2万7636人と前年よりも1,609人増加。交通事故発生件数および負傷者数は、2004(平成16)年以来19年ぶりに増加し、死者数も2015(平成27)年以来8年ぶりに増加となっています。
その一因となっているのが、運転中の携帯電話の使用による事故です。2019(令和元)年12月に施行された改正道路交通法により携帯電話使用に関する罰則が強化され、2020(令和2)年は1,283件となり、2019年の2,645件に比べ大幅に減少しましたが、2021(令和3)年以降は、増加傾向にあります。特に、全死亡事故に占める携帯電話等使用中死亡事故の割合は、大きく増加しています。
グラフからもわかるとおり、運転中のながらスマホによる死亡・重傷事故は、近年増加傾向にある。「ちらっと画面を見るくらいなら大丈夫」と思っても、その一瞬の油断が悲惨な交通事故を招くので要注意(資料=警察庁)
クルマを運転中に交通事故を起こしてしまったら、どうする?
(1)安全な場所にクルマを止め、エンジンを切る
事故を起こしたら、すぐにクルマを止め、被害の状況を確認する必要があります。二次事故を防ぐため、まずは通行の妨げにならない安全な場所にクルマを移動させましょう。もしクルマを動かせない場合は、ハザードランプを点灯し、停止表示器材(三角表示板)や発炎筒を使って、クルマが停車していることを周囲に知らせることが大切です。
交通事故を起こした場合、運転者は法律で定められた措置を取る義務がある。そのため事故に関わった車両の運転者は、すぐにクルマを停止して、負傷者の救護や二次被害を防ぐための対応をしなくてはならない
(2)負傷者を確認し、必要な対応を行う
事故で負傷者がいる場合、ただちに救護し、必要に応じて救急車を手配するか、近くの病院へ搬送しなければなりません。救護措置を怠り、現場を立ち去るとひき逃げ(救護義務違反)とみなされ、道路交通法第117条により処罰されます。
また、運転者が負傷者の存在に気づかなかった場合や、「軽傷だから問題ない」と自己判断して救護せずに現場を離れた場合も、ひき逃げとして厳しく罰せられます。
負傷者がいる場合は、最優先で必要な救護措置を行う必要がある。救急車を呼び、到着までの間にできる限りの応急処置を試みよう
(3)警察に報告する
負傷者の救護や二次被害の防止措置が済んだら、運転者は人身事故・物損事故を問わず速やかに警察に事故を報告しなければなりません(110番通報)。現場に警察官がいる場合はその場で、いない場合は最寄りの警察署(交番・駐在所を含む)の警察官に、次の事項を届け出る必要があります。
●警察への報告内容
・事故発生の日時と場所
・死傷者の数と負傷者の負傷の程度
・損壊した物と損壊の程度
・その交通事故にかかわる車両などの積載物
・その事故についてとった措置
交通事故の当事者となったドライバーは、人身事故・物損事故を問わず警察に届け出る義務がある。また、事故による損害を自動車保険で補償してもらうには、警察に届け出た際に発行される「交通事故証明書」が必要になる
(4)事故状況の証拠の収集
交通事故は、当方の過失だけでなく、相手側の過失や双方の過失が重なったケース、さらには道路の欠陥が原因となることも少なくありません。こうした場合に備え、相手側の過失や道路環境の問題を立証できる証拠を集めることが重要です。事故現場の状況を記録するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
また、示談交渉に備えて、事故相手の情報も確実に記録することが大切です。さらに、スマートフォンで現場の写真や動画を撮影し、ドライブレコーダーを装着していればその映像を保存することも有効です。証拠をしっかり記録することで、その後の対応がスムーズになります。
【現場写真・動画の撮影】
道路状況、衝突地点、停車位置、破片の散乱状況、車両の損傷状態、スリップ痕などを記録
【図面作成】
スリップ痕などの位置・長さを測定し、事故の詳細を可視化
【目撃者の情報収集】
氏名・住所・連絡先を聞き、証言をメモや録音で保存
【相手方の情報】
氏名、住所、連絡先、クルマのナンバー
事故状況に加え以下の情報もスマホで撮影しておこう。相手の車両ナンバー、契約している自賠責保険・任意保険の保険証券、運転免許証など
(5)保険会社へ連絡をする
事故状況に関する収集が一通り終わったら、自身が加入する自動車保険の取扱代理店または保険会社に連絡を行います。その後、書面にて下記の内容を速やかに報告してください。この通知を怠ると、保険金が支払われない可能性があるため注意してください。特に人身事故の場合、事故発生から60日以内に書面で通知しなければ、原則として保険金は支払われません。
また、相手側にも過失がある場合は、損害賠償を請求することになるため、相手が加入している自動車保険の情報も記録しておくことが必要です。相手の住所・氏名・連絡先のほか、保険会社の名称や契約内容も確認し、必要な手続きを速やかに進めましょう。
●保険会社への通知内容
・契約内容
・事故の状況
・被害者の住所・氏名・連絡先
・事故の目撃者がいる場合、その住所・氏名・連絡先
・損害賠償の請求を受けた場合、その内容
軽微な事故だったり、もらい事故だったりしても、自身が加入する自動車保険会社に連絡。事故の連絡をしても「保険を使う」と決めない限り等級は下がらない
軽微な物損事故でも警察に連絡しないと「当て逃げ」に!?
他のクルマやガードレール、塀などに軽くぶつけた軽微な物損事故でも、警察への届け出は義務となっています。警察へ連絡せずに立ち去ると「当て逃げ」と見なされ、刑事責任を問われる可能性があるので注意しましょう。また、自動車保険を使用して修理をする場合には、警察が発行する「交通事故証明書」が必要です。警察に連絡した後は加入している自動車保険会社にも連絡しておきましょう。
クルマを公共物(ガードレールや電柱など)にぶつけた場合は、まず警察に連絡。次に保険会社に連絡し、その所有者を確認してもらおう
ドラレコやスマホの画像をしっかり保存!
ドライブレコーダーを搭載していても、事故直後は気が動転していてデータの保存を忘れがちです。事故の瞬間が上書きされないように、必要ならばすぐに記録を確保しましょう。ドライブレコーダーの記録期間は意外と短く、8GBの製品で約1時間半程度が一般的。事故時は「イベント記録」で保護されますが、万が一に備え速やかにSDカードを取り出しておくと安心です。
また、ドライブレコーダーを装着していない場合は、携帯電話やスマートフォンで車両の損傷状況や道路の状況、信号など周囲の環境をしっかり撮影しておきましょう。さらに、第三者の証言が重要な証拠になることがあるため、事故を目撃した人を探し連絡先を確認しておきましょう。
現場の写真や動画を撮らずに後で状況を説明しようとすると、記憶が曖昧になり不利な状況に陥る可能性もあるため、ドラレコやスマホの画像をしっかり保存しておこう
事故に遭った場合は、必ず医師の診断を受けよう!
もらい事故など思いがけず事故に遭遇してしまった場合は、どうすればいいのでしょうか? 安全確保や負傷者の救護をはじめ、事故状況の記録と警察や保険会社への連絡などは、事故を起こした側でも巻き込まれた側でも同様に行うべきことですが、事故に巻き込まれた場合は必ず速やかに医師の診断や検査を受けることが大切です。事故直後は軽傷に思えても、後から症状が現れることがあります。事故発生から時間がたってからの受診では、事故との因果関係が認められない場合がありますので注意が必要です。
高速道路で事故を起こしてしまった場合はどうする!?
高速道路の交通事故では、停車したクルマや路上に降り立った人に、後続車が衝突するという事故が後を絶ちません。万一、高速道路で事故を起こしてしまい、やむを得ず駐停車するときは、二次的な事故を起こさないようにすることが重要です。乗員は、全員すぐにガードレールの外など安全な場所に避難してください。
・ハザードランプを点灯させ、路肩に停車
・発炎筒、停止表示器材を後方に設置
・ガードレールの外側など安全な場所に避難
・発生した事故状況を警察に通報
後方から来る車両に停車していることを伝えるため、路肩に止めたらハザードランプを点灯し、停止表示器材をクルマの後方50m以上のところに設置。乗員は安全のためガードレールの外に避難すること
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