こんなとき、アナタはどうする? CASE3:高速道路の落下物
構成=グランマガジン社/解説=国土交通省、NEXCO東日本/資料=気象庁、トヨタ自動車、本田技研工業

クルマを運転中に突然の集中豪雨で前も見えない! こんなとき、どうする?

CASE4:豪雨による道路の冠水

クルマの運転中に遭遇するさまざまなトラブル。万が一そんなトラブルに遭遇した場合、「どう対処すればいいのか?」をわかりやすく解説。今回は台風や突然のゲリラ豪雨に遭遇した際や、冠水路でクルマが水没してしまった場合の対処法について、専門家に聞いてみた。

目次

3択クイズ!

街中を走行中に突然の豪雨で前方の道路が冠水!?
こんなとき、アナタならどうしますか?

適切な対応は次の3つのうちどれ?
(1)前が見えなくなるような豪雨の場合は、安全な場所にクルマを止めて様子を見る
(2)最近のクルマは浸水に強い作りなので、急な操作だけは避け普段通りに走行する
(3)前のクルマが水をかき分けて走るのを利用するため、なるべく車間を詰めて走行する

答えは(1)
前が見えなくなるような豪雨の場合は、
安全な場所にクルマを止めて様子を見る

ワイパーのスピードを最大にしないと間に合わないほどの非常に激しい雨(1時間に50㎜以上)が降る場合は、視界が悪く走行はとても危険。そんな時は安全な場所にクルマを止めて雨が弱まるまで待つようにしよう。危険だと思ったら早めに行動しよう。

雨天時にワイパーを作動して運転しているイメージ

1時間に50㎜を超える非常に激しい雨の場合は、ワイパーのスピードを最大にしても前が見えなくなるほど。危険を感じたら安全な場所にクルマを止め様子を見よう

クルマを運転中にゲリラ豪雨に遭遇したらどうする?

ゲリラ豪雨は、突発的に降り始めるため、大きな危険が伴う。運転中に遭遇した場合は、以下の点に十分注意し安全運転を心がけよう。

【減速と車間距離の確保】
雨の影響で視界が悪くなり、路面が滑りやすくなるため、前のクルマとの車間距離を十分にとり、急ブレーキや急ハンドルを避ける。また、横風が強くなったり、突風が吹いたりすることがあるので、ハンドルをしっかり握って運転する。

【ワイパーの作動とライトの点灯】
視界を確保するため、ワイパーのスピードを適切に調整し、視界が確保できない場合は、安全な場所にクルマを止めて、雨が収まるのを待つ。昼間でもライトを点灯し、周囲のクルマに自分の存在を知らせることで衝突や追突されるリスクを防ぐ。

【路面の確認】
アンダーパスや高架下、地下駐車場などは、冠水の危険性があるため、可能な限り走行しないように。また、大雨の時は河川や崖付近を通過するのは危険を伴うので避けたい。

雨天時の走行イメージ

前が見にくくなるような豪雨に遭遇したら、まずは減速して前方のクルマとの車間距離を十分に確保。またライトを点灯し周囲のクルマに自分の存在を知らせよう

冠水したアンダーパスと冠水の注意標識と表示

アンダーパスは全国に約3,700か所存在する(2022年3月末時点)。アンダーパスは地形的に低くなっていることが多く冠水しやすい。冠水している場合は、水深も路面状況もわからないので絶対に進入しないこと

1時間に50㎜以上の大雨は年々増加傾向にある?

全国の1時間降水量50㎜以上の大雨の年間発生回数は年々増加傾向にある。2014~2023年までの10年間の平均年間発生回数は約330回で、統計を開始した最初の10年間(1976~1985年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1.5倍に増加している。

1時間降水量50㎜以上の年間発生回数グラフ

大雨の年間発生回数は増加しており、より激しい雨ほど増加率が高くなっている。1時間降水量80㎜以上、3時間降水量150㎜以上、日降水量300㎜以上など強度の強い雨は、1980年頃と比較して、おおむね2倍程度に頻度が増加している(資料=気象庁)
※棒グラフ(緑)は各年の年間発生回数、折れ線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示している

国土交通省では豪雨対策として事前通行規制を行っている

大雨や台風による土砂崩れや落石等のおそれがある箇所については、過去の記録などを基にそれぞれ規制の基準等を定め、災害が発生する前に「通行止め」などの規制を実施し、道路を利用するドライバーの安全を確保している。

【道路情報提供システム】

道路情報提供システムの「事前通行規制区間」画面

異常気象時に被害が発生するおそれのある地域については、事前に定めた規制基準(雨量等)を基に通行規制を行うことが決まっている箇所の情報が確認できる

道路情報提供システム「通行止めの箇所」画面

国土交通省の道路情報提供システム では、通行規制情報だけでなく、時間雨量や連続雨量といったリアルタイムの気象情報が提供されている。さらに、レーダ雨量や冬季に役立つ積雪深、路温、気温などの情報も確認することができる(資料=国土交通省)

冠水した道路を走行した場合、どんなリスクがある?

冠水部に水流があると車両が流される可能性があり大変危険。タイヤが完全に水没してしまうと車体が浮き、移動が困難になってしまうこともある。また、水深がドアの下端に達すると、水圧で内側からドアを開けにくくなり、ドアの高さの半分を超えると、ほぼ開けられなくなってしまう。

また、浸水や水没してしまったクルマは、エンジン故障や電気系統のショートなどによる車両火災を防止するため、水が引いてもエンジンをかけないこと。ハイブリッド車や電気自動車(水素自動車含む)の場合は、高電圧のバッテリーを搭載しているのでむやみに触らないように。どちらの場合も速やかにロードサービスや販売店に電話しよう。

【床面を超える水深】
車内が浸水すると、電気装置が故障するおそれや、マフラーから水が入ってエンジンが損傷するリスクが発生。その結果、自動スライドドアやパワーウインドーが作動しなくなったり、エンジンやモーターが停止し、再始動できなくなることもある。

【床面以下の水深】
水没していなくても、速度が高くなると車体が巻き上げる水が、吸気口からエンジン内に浸入してしまうことがある。これによりエンジンが停止し、車両が走行不能になることも。また、電気自動車やハイブリッド車は、駆動用バッテリーが浸水によりショートしたり損傷が発生し、走行不能となるおそれがある。

冠水した道路を走るとことで発生するリスク説明図

浸水によるダメージは、クルマの形状などによって変わってくるが、床面まで水が達してしまうと水の影響を受けやすくなるので注意が必要。大雨のときは、早めに安全な場所に避難することが先決(資料=国土交通省)

豪雨の際はライトを点灯することで安全性が向上!

1時間に80㎜の豪雨時に時速40kmで走行していることを想定した JAFユーザーテスト では、前方の停止車両の状態により、停止車両を発見してからブレーキを踏み停止できる位置に大きな差があることがわかった。

テスト結果では、前方の停止車両が「テールランプ点灯」「リアフォグランプ点灯」「ブレーキランプ点灯」の場合は、昼夜問わず、50m以上手前で止まれたのに対し、前方の停止車両が「無灯火」の夜間(自車のヘッドライトが下向き)の場合は約24mまで接近し、その見えにくさが際立った。昼間でも豪雨の中を走行する際には、無灯火で走行するよりもヘッドライト(テールランプ)を点灯したほうが周囲から見えやすくなる。また、停止中はブレーキを踏んでブレーキランプを点灯させておくことも重要である。

豪雨時の走行を想定したJAFユーザーテスト

昼間でも視界が著しく悪化する豪雨時では、無灯火で走行するよりもライトを点灯させた方が、後続車からも発見されやすく、安全性が向上することが実験で確認された。豪雨での運転の際は昼間でもライト点灯を推奨する

予想以上に深い冠水路で車内に閉じ込められたら?

冠水した道路でクルマが水に浸かり動けなくなったら、慌てずに落ち着くことが大切。まずはシートベルトを外し、水位が低いうちにドアを開けて脱出を試みる。 JAFユーザーテスト では、水深60cmでも大人が「何とかドアを開けられる」くらいの圧力がかかっていることがわかった。水深が浅いからと油断して車内にとどまっていると、脱出できなくなる可能性もあるので要注意。

水圧などでドアが開かない場合は、窓を開けたり、緊急脱出用ハンマーで窓ガラスを割って脱出する。ガラスが割れない場合は、車内の水位が上がり外との圧力差が小さくなるのを待ってからドアを開けるという方法もある。ただし、水中に長時間いると危険度が増すため、一刻も早く脱出することが最優先。脱出したら、すぐに安全な場所へ移動し助けを求めよう。 JAFユーザーテスト では、「水没時に何を使えば窓が割れるのか?」や「水没車両からの脱出」を紹介しているので、事前に確認してほしい。

脱出用ハンマーで運転席の窓ガラスを割っている様子

脱出用ハンマーをクルマに常備しておけば、窓が開かなくなってもガラスを割って車外に脱出することができる。フロントガラスは合わせガラスで割れにくいため、サイドガラスを割るようにしよう

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水害でクルマが水没したら自動車保険は使えるの?

車両保険のイメージ写真

台風による大雨やゲリラ豪雨などによってクルマが水没した損害に対しては、自動車保険の「車両保険」に加入していれば、基本的に補償を受けることが可能。車両保険とは、クルマの修理代などを補償する保険。ただし、状況などに応じて個別に判断される場合があるので、加入の際に確認しておきたい。

なお、車両保険には、「一般型」と、保険料が安くなる代わりに補償範囲が限定的な「エコノミー型」の2種類があるが、いずれも水没被害は補償が受けられる。保険でクルマを修理したら等級がダウンして翌年は保険料が上がるので詳細を確認しておこう。

高速道路を走行中に豪雨に遭遇したらどうすればいい?

天候や路面状況が悪いときは、速度が規制されることがあるので、速度標識に注意して道路状況にあった安全速度で走行する。また路面が雨に濡れている場合、路面が乾燥しているときの約1.5倍の停止距離となるため、前のクルマとの車間距離を十分に取ることを忘れずに(解説=NEXCO東日本)。

【SAやPAへの避難】
視界が悪くなるほどの大雨の場合は、雨が落ち着くまでSAやPAに駐車して雨が弱まるのを待つ。事前に大雨が予報されている際は、無理して先を急がず、ゆとりのある計画を立てることも必要。

【速度制限について】
雨や雪などの気象状況や路面状況、交通状況に応じて、最高速度が規制される場合がある。本線上に設置された速度規制標識をこまめに確認しながら安全に走行しよう。

【どれくらいの雨量で通行止めになる?】
路線ごとに異常気象等による通行止め基準があらかじめ設定されている。連続雨量、時間雨量の状況を確認しながら交通管理者である警察の判断により実施している。

【ラジオや道路情報表示板の活用】
天候の状況については本線情報板や広域情報板等で情報を表示するほか、ハイウェイラジオやドラとらなどで最新の情報を発信。ただし、道路交通法により運転中の携帯電話等の使用は禁止されているため、「ウェブのご利用は出発前や休憩施設での駐車時、もしくは同乗者の方による操作をお願いいたします」(NEXCO東日本)とのこと。

豪雨の高速道路を走行している様子

高速道路では、前のクルマが巻き上げる水しぶきや対向車線から飛んでくる水の塊によって視界が妨げられることがあるので、運転に危険を感じたらSAやPAに避難して雨が弱まるのを待とう

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