あおり運転を受けたら、どうすればいいの!? |こんなときどうする?
構成=グランマガジン社/資料=警察庁、NEXCO各社

街中や高速道路であおり運転を受けたら、どうすればいいの!?

CASE6:あおり運転の対処法

クルマの運転中に遭遇するさまざまなトラブル。万が一そんなトラブルに遭遇した場合、「どう対処すればいいのか?」をわかりやすく解説。今回は「走行中にあおり運転を受けた場合の対処法」です。あおり運転は非常に危険な行為であり、遭遇した場合には冷静な判断と適切な対応が求められます。危険を回避するには、対処法を事前に知っておくことが大切です。

目次

3択クイズ!

運転中にあおり運転を受けた!?
こんなとき、アナタならどうしますか?

適切な対応は次の3つのうちどれ?
(1)駐車場など安全な場所に避難して、車外に出ることなく110番通報する
(2)運転に自信があれば、脇道に入って相手が付いてこれないように逃げる
(3)パッシングやクラクションを鳴らして周囲にあおられていることを知らせる

答えは(1)
駐車場など安全な場所に避難して、車外に出ることなく110番通報する。その際、窓閉めとドアロックを忘れずに。

過去1年間におけるあおり運転被害はどのくらい?

クルマの運転中に、次のような経験はありませんか? 「車間距離を詰められて、もっと速く走れとプレッシャーをかけられた」、「車体を近付けられ幅寄せされた」、「執拗(しつよう)にハイビームでパッシングされた」、「クラクションを鳴らされ続けた」、「追い越された後、急に前で止められて進路を妨害された」……。いずれも、いわゆる「あおり運転」と言われる行為。

警察庁の「あおり運転に関するアンケート」によれば、回答者の35%、つまり約3人に1人が過去1年間にあおり運転の被害を経験しているとのこと。場所は一般道路が約77%、高速道路が約23%。被害者の80%以上が「後方からの著しい接近」を経験している。日常的に起こり得る危険な行為であり、私たち一人ひとりが意識を高め、対策を講じる必要がある。

●過去1年間にあおられた回数

過去1年間にあおられた回数の円グラフ

2019年に警察庁が2,681名を対象に「あおり運転に関するアンケート」を実施したところ、回答者の35%もの運転者が、過去1年間にあおり運転の被害を受けていることが判明した(出典=政府広報オンライン)

●あおり運転の内容

あおり運転を受けた内容の棒グラフ

警察庁が行ったあおり運転に関するアンケート(939名・複数回答可)によると、あおり運転を受けたと回答した人全体の80%以上が「後方からの著しい接近」の被害を受けている。これは車間距離不保持と呼ばれ、他車両に不必要に接近して相手にプレッシャーを与え、恐怖や不安を感じさせる典型的なあおり運転だ(出典=政府広報オンライン)

一般道を運転中にあおり運転を受けたときの対処法は?

後ろから速いクルマが迫ってきているイメージ写真

あおり運転をされても、対抗せず冷静に対応することが大切。スピードを上げて逃げたりせず、落ち着いて車線を譲るようにしよう

相手が異常に接近してあおってきた場合、まずは無理をせず、安全に速度を落とし、道を譲りましょう。追い越させることで、あおり運転者から距離が取れ、危険を回避することができます。2車線以上あれば車線を変更して相手を先に行かせること。感情的にならず、冷静に対処することが大切。コンビニ(お店)などの駐車場にいったん退避してもよい。

ドライブレコーダーを装着したイメージ写真

ドライブレコーダーは、妨害運転等の悪質・危険な運転行為の抑止に有効。警察に通報する際には重要な証拠になる

ドライブレコーダーを搭載している場合は録画を確認し、ナンバープレートや車種、状況を記録しておくこと。ドライブレコーダーがない場合は、車両のナンバーや特徴、あおり運転が発生した時間や場所をメモしておくとよい。また、同乗者がいればスマートフォンなどで撮影してもらうのもよい。

車内で携帯電話を操作しているイメージ写真

あおられても無理に逃げようとせず、110番通報をして警察が到着するまで安全な場所で待機するようにしよう

状況に応じて、最寄りの警察署や交番に助けを求めよう。また、巡回しているパトカーや白バイを見つけたら速やかに助けを求めることも有効。危険を感じた場合は窓を閉め、ドアをロックして警察に110番通報。次の情報を伝えると迅速に対応してもらえる。

1.現在の位置情報
2.相手車両の特徴(ナンバープレートの番号、車種、色)
3.あおり運転の状況


証拠(ドライブレコーダーの映像やスマホ画像)を基に、警察へ被害届を出すことが可能。あおり運転は重大な交通違反であり、ドライバーの安全を脅かす行為。万が一、被害に遭ってしまった場合は適切に対処するようにしよう。

あおり運転は3年以下の懲役または50万円以下の罰金!

交通の危険のおそれのある妨害運転(あおり運転)には、 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 が科せられる。違反点数は酒気帯びと同じ25点で免許取消し(欠格期間2年)となる。また、高速道路上で相手車両を停車させるなど、著しい危険を生じさせた場合は、 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 が科せられる。違反点数は35点で、酒酔い運転と同じ。事故を起こさなくても免許を取り消されることとなる(欠格期間3年)。

あおり運転をした場合の罰則

あおり運転は道路交通法により厳しく規定されており、違反が確認されれば免許取消し、懲役刑、罰金といった重い罰則が科される。また、危険が生じた場合にはさらに厳しい刑罰が適用される(資料=警察庁)

こんな行為が「あおり運転」の対象になる!

前述のアンケート結果にもあるように、車間距離を極端に詰められるケースが多いが、以下に挙げた10の行為があおり運転の対象となる。自分があおり運転を受けているかを判断するだけではなく、自分があおり運転の加害者にならないためにも知っておくことが重要だ。あおられたからといって、急ブレーキを踏んだり、クラクションを鳴らすと、自分も同様に罪に問われる可能性があるので気を付けたい。

●あおり運転の対象となる違反の内容

1.通行区分違反(対向車線にはみ出す)
2.急ブレーキ禁止違反(不要な急ブレーキをかける)
3.車間距離不保持(車間距離を極端に詰める)
4.進路変更禁止違反(急な進路変更)
5.追い越し違反(左からの追い越しなど)
6.減光等義務違反(執拗なパッシング、ハイビーム)
7.警音器使用制限違反(不必要なクラクションの反復)
8.安全運転義務違反(幅寄せ、急な加減速、蛇行)
9.高速自動車国道での最低速度違反(高速自動車国道の本線車道での低速走行)
10.高速自動車国道等駐停車違反(高速自動車国道や自動車専用道路での駐停車)

あおり運転の対象となる10類型の違反

2020年の道路交通法改正により、あおり運転(妨害運転)が明確に定義され、取り締まりが強化された。あおり運転として対象となる違反行為は、10類型に分類されている。これらの行為は、安全な交通を妨害する意図で行われるものとみなされ、違反が確認されると「妨害運転罪」が適用される(資料=警察庁)

高速道路を運転中にあおり運転を受けたらどうする?

基本的な運転の方法は一般道と同様だが、高速道路ならではの注意点を解説しよう。特に、高速道路であおり運転に遭った場合は、非常に危険な状況に陥る可能性があるため、冷静かつ迅速に対応することが求められる。

スピードメーターの写真

急な動きは危険を伴うため、速度を一定に保ち、安全な運転を続けることが大切。法定速度を守りつつ、周囲の状況に応じてできる限りスムーズに走行

高速道路では急なブレーキや急加速は非常に危険なため、あおられたからといって急ブレーキをかけると、後ろの車両との衝突リスクが高まってしまうため、スピードを一定に保ち、相手を刺激しないようにすることが重要。

クルマが後ろから追い越していくイメージ写真

可能であれば、相手が追い越せるように進路を譲ろう。追越車線にいる場合は、走行車線に移動して相手を先に行かせることで、あおり運転を避けることができる。ただし、無理に移動するのではなく、安全なタイミングを見極めよう(写真はイメージ)

あおり運転者が接近してきたら、無理にスピードを上げず、車線を変更して相手を先に行かせること。高速道路を走行するクルマはスピードが速く、無理な運転は事故に直結してしまう。安全なタイミングで車線変更を行い、相手に進路を譲ろう。

トンネル内での走行イメージ写真

トンネルによっては、追越車線や非常駐車帯など一部広い区間がある場合があるので、可能であれば、安全に相手を先に行かせてトラブルを回避しよう。ただし、無理に路肩に寄ったり、危険な場所で譲る行為は避けるように(写真はイメージ)

トンネル内や橋の上は路肩がなくスペースが限られているため、無理に車線変更することは危険。このような場所では、走行車線でスピードを一定に保ち、あおり運転者が通り過ぎるのを待つ。狭い場所での急な動きは避けよう。

高速道路のパーキングエリア入口

PAはおおよそ15km間隔にひとつ、SAは50km間隔にひとつを目安に設置されているので、相手のあおりが続く場合は、こちらに一時避難しよう。場合によっては110番通報を行う

相手があなたのクルマを追い続ける場合は、無理に逃げようとせず、警察やパトロールカーが到着するまでパーキングエリアやサービスエリアに避難することを検討しよう。無理に速度を上げて逃げると、さらに危険な状況に発展してしまうこともある。

高速道路のキロポスト表示

警察に連絡する際は、自車位置の情報を正確に伝えられるように、高速道路名だけでなく道路左側に掲示されているキロポスト番号を確認しておくとよい

一般道と同様に危険なレベルであおり運転が続いている場合は、ただちに警察に通報することをおすすめする。ただし、運転者が携帯電話を使用するのは道路交通法違反のため、同乗者に通報してもらうように。一人の場合はSA・PAなど安全な場所に止めてから通報しよう。その際、以下の情報を伝えると警察が迅速に対応できるので覚えておこう。

・位置情報(高速道路名、キロポスト番号、最寄りのインターチェンジ名など)
・相手車両の特徴(ナンバープレートの番号、車種、色)
・あおり運転の状況(接近、追い越し、急な車線変更などの行為)

自動車保険の「ドラレコ特約」とは?

「ドラレコ特約」とは、自動車保険に付加されるオプションで、保険会社指定のドライブレコーダーを活用して、事故発生時の状況を記録・証拠として提供するサービス。この特約を利用することで、事故発生時にドライブレコーダーが自動で映像を保険会社に送信したり、事故の状況を正確に確認してもらえる点が大きなメリット。
一部の保険会社では、ドラレコ特約を利用することで、事故リスクの低減が見込まれるとして保険料が割引されることがある。

ドライブレコーダーをセットしている写真

あおり運転の被害を受けないためにはどうする?

ここまであおり運転を受けた場合の対処法を紹介してきたが、できるならあおり運転を受けないことが望ましい。最後にあおり運転を受けないための、運転の心構えや注意点を紹介しておこう。必ず回避できるとは限らないが、被害に遭う確率を下げることはできる。

車内から見た高速道路の走行風景

一般道でも高速道路でも制限速度を守り、急加速や急ブレーキなどをしないこと。周囲の流れに合わせた運転を心がけよう

制限速度を守り、周囲の車両と同調するスピードで走行することがあおり運転を防ぐひとつの手段だ。極端に遅い速度の運転や、速度を急に落とすことは、後続車をイライラさせる原因となるため注意しよう。混雑時や、遅いクルマが前にいる場合でも無理な追い越しをせず、周囲の流れに合わせた運転を心がけよう。

車間距離のイメージ写真

後ろから速いクルマが接近してきたら、早めに進路を譲ろう。追越車線を走行しているときは特に注意

他の車両が異常に接近してくる場合、速やかに進路を譲ることが重要だ。後続車が速い速度で接近してくるときは早めに走行車線に移動しよう。速やかに道を譲ることで、相手のフラストレーションを軽減できる。また、追い越しをする際は、できるだけ速やかに走行車線に戻ることが推奨される。追越車線に長く居座ると、後続車の苛立ちを引き起こす可能性があるだけでなく、通行帯違反(高速道路)となるので要注意。

クラクションを鳴らしているイメージ写真

クラクションを鳴らされたことであおり運転に発展するケースもある。また、手の動きや表情で挑発するのも避けよう

クラクションは、標識等で指定されている場合以外では危険回避のためやむをえないときにしか使用できない。急に割り込まれたからといってクラクションを鳴らすのは、道交法違反に当たる可能性があるだけでなく、あおり運転を誘発しかねないので注意しよう。また、あおってくる相手に対して、手の動きや表情で挑発することも避けよう。相手の行動をさらにエスカレートさせてしまうおそれがある。

ウインカーを点けて交差点を左折している写真

ウインカーを出すのが遅れたりすることで、後続車に危険を感じさせ、トラブルを招いてしまうこともあるので注意しよう

車線変更や右左折をする際は、道交法に従った正しい方法で対応し、トラブルを避けよう。ウインカーの点灯タイミングは、車線変更のときには変更する3秒前から、右左折の場合は曲がる30m手前から合図を出すことで、後続車や対向車にしっかりと意思表示をすることができる。

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