高速道路を走行中に突然の大雪で立ち往生が発生! こんなときどうすればいい!?
CASE8:雪の高速道路で立ち往生した場合の対処法突然、予期せぬ大雪が降ると、高速道路でクルマが列になって立ち往生している映像がニュースで流れる。他人事として見ているニュースだが、いつ自分が遭遇するかわからない……。今回は、「高速道路を走行中に、降雪で立ち往生してしまった場合の対処法」について、具体的に紹介しよう。
3択クイズ!
高速道路で雪により立ち往生した際、
車内で安全に過ごすための正しい方法は?
適切な対応は次の3つのうちどれ?
(1)エンジンをかけている場合は、定期的にマフラー周辺の雪を除去
(2)防寒のため窓を閉めエンジンを切らずに暖房を常に入れておく
(3)速やかにクルマから離れて、最寄りのSAやPAに避難する
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答えは(1)
エンジンをかけている場合は、定期的にマフラー周辺の雪を除去
雪でクルマが埋まってしまった場合、マフラー(排気口)から排出される排気ガスが車内に侵入し、一酸化炭素中毒を起こす危険性があるため、原則としてエンジンは切っておく。暖を取るためエンジンをかける場合は、マフラー周辺の雪をこまめに除雪し、換気を十分に行いながら、断続的にエンジンをかけるようにしよう。長時間エンジンをかけっぱなしにすると、一酸化炭素中毒のリスクも高まるため注意が必要だ。
過去の立ち往生では、数日間車内で過ごすことも!
過去の大規模な立ち往生としては、2014年2月に関東甲信地方を中心に記録的な大雪が降り、東名高速道路では最長40kmの渋滞が発生。スタック車両が増えたことで、梯団走行による除雪作業が進められなくなり、高速道路は広範囲で通行止めとなった。この影響で、東名高速の上り線、清水IC〜大井松田IC間では最大45時間、中央道の下り線、大月IC〜八王子IC間でも最大73時間にもわたる立ち往生が発生した。
また、2020年12月には、関越道での記録的な大雪により、数千台規模の車両が長時間にわたって立ち往生する事態が発生。立ち往生した場所によっては数日間車内で過ごすことを強いられた人もいた。
近年、地球温暖化の影響により、夏だけでなく冬にも極端な気象現象が増加している。この冬はラニーニャ現象の影響で、日本海側を中心に厳しい寒さが予想されている。短時間で記録的な大雪が降る可能性もあるため、クルマで遠方へ出かける際には十分注意したい。
●2014年の大雪による通行止めの区間と降雪量
2014年2月は記録的な大雪となり大規模な立ち往生が発生。その救出に東名高速では約24時間、中央道は約27時間かかり、通行止めの解除は東名高速で約45時間後、中央道では約73時間後となった(資料=NEXCO中日本)
雪の高速道路で立ち往生してしまったら、すべきことは…!?
- 1. 状況を確認し落ち着いて行動
雪の影響でクルマが進まなくなってしまったら、ラジオ(AM/FM)やNEXCO公式アプリ、カーナビなどの交通情報を活用し、周辺の降雪状況や立ち往生の範囲を確認する。無理にクルマを動かさず、自力で脱出が可能か判断する。脱出が難しい場合は救助を要請する。
スマートフォンで見られるNEXCO東日本のアプリ「ドラぷら」では、高速道路の通行止めや渋滞状況をリアルタイムで把握できる。また、降雪状況や路面状況などの気象情報も確認することが可能。まずはリアルタイムの交通情報や気象情報を入手して状況を把握。
- 2. 救助を要請する方法を確認
体調不良など緊急の場合に救助を要請する方法を確認しておく。高速道路には1kmごとに非常電話が設置されているので、その場所を確認。連絡時に現在位置(キロポストの数字や目立つランドマーク)を伝えよう。携帯電話を使用して救援を要請する場合は、道路緊急ダイヤル「#9910」に連絡するか、110番に通報。
- 3. エンジンをかける際の注意点
燃料をなるべく節約するため、エンジンは適宜停止しながら暖をとるようにしよう。エンジンをかける場合は、マフラー周辺の積雪に注意。積雪により排気ガスが床下に充満し車内に入り込む危険性があるため、排気口が塞がれていないかを定期的に確認する。もし雪で塞がれていたら直ちに除雪を行う。また、クルマが完全に雪に埋まってしまったら、一酸化炭素中毒の危険性を避けるため、必ずエンジンは切るように。雪には断熱作用があるため、エンジンを切ってもそれほど車内の温度は下がらない。
- 4.車内にあるものを活用して防寒
毛布や予備の衣服をクルマに積んでいる場合は、重ね着をするなどして体温が下がらないように努める。毛布や衣服がない場合は、車内にあるもの(タオルやマスク、新聞紙など)を活用するとよい。また、車内に水や軽食があれば、こまめに水分を補給し、エネルギーを維持する。
- 5.こまめに体を動かし血行を改善
寒いと体が縮こまり、動きが悪くなりがち。長時間同じ姿勢でいると血栓ができエコノミークラス症候群になるおそれがあるため、こまめに体を動かしたり、足首を回したりするなどして、血行を良くしておくことが大切。クルマの中だと動きに制限があるが、足首や手首を回したり、かかとの上げ下げ、膝の曲げ伸ばしなど簡単なストレッチを行うだけでもかなり血行が改善する。
過去の立ち往生で、NEXCO中日本が実際に行った支援は?
過去に発生した大雪による立ち往生の際に、NEXCO中日本では食料や飲料をはじめ、簡易トイレなどの物資配布のほか、ガソリンなどの燃料提供など、さまざまなサポートを実施。極寒の中でも車内での安全を確保できるよう努めている。また、車両が雪で埋まって動けなくなった場合には、レッカー車やトラクターショベルのほか人力による除雪も行われた。
また、いつ立ち往生が解消してクルマが動き出すかわからないことに加え、雪の積もった本線上を歩くのは危険なため、運転者は車内に留まることが原則。そのため、勝手にクルマを残して徒歩で避難することはできないが、体調不良など緊急な事情がある場合は、巡回中のNEXCO職員に申し出るか、道路緊急ダイヤル「#9910」で連絡すれば、状況に応じた対応をしてくれるので、緊急の場合は迷わず連絡を。NEXCO中日本では、降雪が予測されている場合には、降雪エリアを避けた広域迂回や出発時間の変更、外出を控えるなどの対応が大切だと呼びかけている。
写真は2024年1月に発生した名神高速での立ち往生。NEXCO中日本では必要に応じて食料や飲料、カイロ、簡易トイレ、燃料などの配布を実施している
立ち往生に備えて準備しておきたい用品は?
高速道路での雪による立ち往生は、非常に危険な状況。出かける前に雪が降る予報だったら万が一に備えて、以下のものを車内に積んでおこう。防寒対策では毛布や予備の防寒着のほか、寝袋や使い捨てのカイロなどがあると重宝する。食料や水は出発前にコンビニなどで手軽に食べられるものを、少し多めの2~3食分ほど買っておくと安心。また、雪かき用のスコップのほか、情報収集や外部との連絡などで、携帯電話の使用が増えるため、携帯電話の充電器や車内充電用ケーブルなども積んでおきたい。
さらに、携帯トイレは必ず用意しておきたい用品だ。排泄は生理現象のため、我慢するのは難しい。用意する個数については、1人あたり1日分5個が目安(内閣府・防災担当)だが、立ち往生が24時間以上続く可能性もあるため、余裕を持って用意しておくと安心だ。保管場所は、コンソールボックスや助手席下など、すぐに手が届く場所に置いておくのが望ましい。また、車内で使用することを想定し、ブランケットやカーテンなどの目隠しも準備しておきたい。
【立ち往生に備えてクルマに積んでおきたい用品一例】
●防寒用品:厚手の毛布、防寒着、手袋、寝袋、カイロ
●食料・水:少し多めの食料、水(または温かい飲み物)
●その他:携帯トイレ、スコップ、懐中電灯、携帯電話の充電器
排泄は生理現象のため我慢するのは難しく、無理をすると深刻な体調不良になることもあるため、携帯トイレは常にクルマに積んでおきたい。1日分の目安は1人5個
情報収集などで携帯電話を使用する頻度が増え、充電がなくなることも考えられるため、携帯電話を充電するためのバッテリーやケーブルも用意しておくと安心
高速道路に設置されている情報を活用して状況確認
高速道路にはさまざまな情報提供ツールが設置されている。それらのリアルタイムな情報を収集して、早めの対策をとることが大切。行き先の積雪や道路状況から、早めに高速道路を降りるなどの選択もトラブルに巻き込まれないための有効な対策だ。
【情報板】
高速道路上に設置された情報板は、リアルタイムの交通情報を提供。
【ハイウェイラジオ】
AMラジオ放送(1620kHz)で、高速道路の交通情報を5分ごとに更新して放送。情報板よりも多くの情報を得られる。
【ハイウェイ情報ターミナル】
SA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)に設置されており、目的地までの交通情報や所要時間などを調べることができる。
【ライブカメラ】
高速道路周辺に設置されたライブカメラの映像を、SA・PAで確認可能。現地の天候や交通状況を視覚的に把握できる。
情報板は、インターチェンジやトンネル付近など、多くの場所に設置されている。ハイウェイラジオは、専用の標識がある場所で受信可能。情報ターミナルやライブカメラの映像は、SA・PAの大型モニターで確認することができる