営業中の路線バスが発進しようとしているのに、道を譲らなかったら違反?
あなたの行動、ひょっとしたら違反かもバス停から発進しようとする営業中の路線バスの進行を妨げることは違反になるのでしょうか? それとも問題ないのでしょうか。運転歴が長くなると、違反かどうかを気にしないまま運転してしまいがち。そんな交通ルールをクイズで再確認しましょう。
片側1車線の道路を走行中、前方のバス停に停車中の路線バスが右ウインカーを出し、発進しようとしているところが見えました。バスはブレーキを踏んでいてまだ動き始めておらず、車線は幅に余裕があるので、たとえはみ出して側方通過したとしても対向車の通行を邪魔する心配はなさそうです。これから先もバス停のたびに停車するのも気になりますし、路線バスを追い越すなら今しかないと思いました。そこで、十分に安全確認をしたうえで速やかに路線バスの側方を通過しました。
この運転行為は、以下の選択肢のうち、どれに該当するでしょうか?
- 1.路線バスの後方で一時停止し、安全確認しなかったので違反
- 2.乗客が乗り降りしていたバス停から路線バスが発進しようとしているのに、道を譲らなかったから違反
- 3.進行中の車に優先権があるので、違反ではない
-
答え:2. 乗客が乗り降りしていたバス停から路線バスが発進しようとしているのに、道を譲らなかったから違反
道路交通法では、自分の車が進路を変更すると、変更した後の進路を後方から進行してくる車に急ブレーキや急ハンドルを取らせるおそれがある場合には、進路変更をしてはならないとされていますから(道路交通法第26条の2第2項)、原則として進路を変更しようとする車より、変更後の進路を進行してくる車の方が優先となりますが、バス停で乗客を乗降させている路線バスについては、特別の規定が置かれています。
バス停で乗客を乗降させるために停車していた路線バスが、発進するために進路を変更しようとしてウインカー等で合図をしているときには、変更後の進路を走行してくる車は、その車が急ブレーキや急ハンドルをしなければならない場合を除いて、合図をしている路線バスの進路変更を妨げてはならないとされているのです(道路交通法第31条の2)。
従って、正解は2の「乗客が乗り降りしていたバス停から路線バスが発進しようとしているのに、道を譲らなかったから違反」となります。
きちんと安全確認をして側方通過しようとしたつもりでも、万が一発進した路線バスと接触事故を起こしてしまったら、たくさんの乗客に迷惑をかけるだけでなく、車内で乗客が転倒してケガをしてしまう事態も考えられます。接触事故とまではいかなくても、路線バスが急ブレーキをかけただけでも乗客が転ぶ危険性があります。自分の追い越し行為が人身事故の原因になるかもしれないのです。乗合自動車=路線バスの発進の保護には、公共交通機関の円滑な運行を確保するというだけでなく、路線バスの乗客を守るという大きな意味もあるのです。
止まっている路線バスの側方を通過するのだから問題はないだろうと考えてしまうかもしれません。しかし、乗客の乗り降りが終わり、路線バスが発車合図のウインカーを出したら、急ブレーキを踏むような状況でない限り、先に行きたい気持ちを抑え、落ち着いて路線バスの発車を待つようにしましょう。
なお、バス停に停車中の路線バスの側方を通過して前に出る場合、一時停止までする義務はありませんが、バスを降りた乗客がバスの陰から道路を横断してくる可能性もあります。安全運転のために、「路線バスの死角には、歩行者がいるかもしれない」という意識を持って運転することが大切です。
道路交通法
(進路の変更の禁止)
第26条の2 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
(以下略)
(乗合自動車の発進の保護)
第31条の2 停留所において乗客の乗降のため停車していた乗合自動車が発進するため進路を変更しようとして手又は方向指示器により合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした乗合自動車の進路の変更を妨げてはならない。
バスの安全に関する話題に関しては、こちらもチェック!
PR
「JAFトレ」ことJAF交通安全トレーニングでは、交通安全教育の教材をeラーニング形式で提供します。
従業員の皆様の学習結果を蓄積・管理することで、企業・団体の安全運転管理をお手伝いいたします。
松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。