高齢ドライバーのヒヤリハット

バス運転手に学ぶ、プロの後方確認

シニア世代の思い込み運転を考える
2022.05.30

文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

2022.05.30

文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

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高齢者の運転に詳しい専門家が、高齢ドライバーにありがちな思い込み運転やヒヤリハット体験を、同じ高齢者の立場からわかりやすく解説するこのコラム。今回は、バスの運転手による安全確認の徹底ぶりを目の当たりにした話。事故防止に対するプロドライバーの意識の高さは、以前より安全確認がおろそかになってきた高齢ドライバーにとって学ぶことが多い。

大小7つのミラーで安全確認!?

バス運転手の運転方法を観察するのも参考になる。とくに後ろへの注意が散漫になりがちな高齢ドライバーにとっては。後方確認のプロ仕様とはどのようなものか。

驚かされるのは、運転席を囲むように設置されたミラーの多さだ。左右のバックミラーはもちろんだが、車内用にも死角がないようにいくつか設置されていて、私が利用する路線バスには大小7つもあった。いつもすべてを見て運転しているわけではないが、左折や停止時には、見る順番を決めて確認する運転は乗っていて安心できるし、安定もしている。

停留所に止まるたびに左後方をミラー越しに見て、すり抜けて行く自転車や二輪車等の確認を忘れず、停留所で乗ってきた高齢者や子供が席に着くまでミラー越しに辛抱強く見守る。むろん、すべてのバス運転手に当てはまるわけではないが、頭が下がる。

さらに発進時には必ず、「右よし、左よし」と言葉を添えながら指差し確認を入れ、左右のミラーの確認を続けるプロもいる。これなど高齢者が取り入れたい、バックミラーを見ることを忘れてしまうことを防ぐ良い方法に思える。ついでに「ウィンカーよし」も必要かもしれない。

我が身の運転を振り返れば、良きバス運転手ほど後方に気を配っているのか、自信がない。左折時に後ろから自転車や二輪車が急に現れて、ヒヤッとする。その時、自分のことを棚に上げ、懸命に相手の落ち度を探し「自分は悪くない」とミラーの確認を忘れた自分を無理矢理納得させる。年齢を重ねるごとにこの回数が増えていないか、胸に手を当て、正直に自身に問う必要がある。

  • 『JAFMate2020年6月号』掲載の記事を加筆したものです。

指をさす男性

プロドライバーから学び、自分の運転に生かす。

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