文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

認知機能に問題? “挙動不審車”に遭遇

シニア世代の思い込み運転を考える

高齢者の運転に詳しい専門家が、高齢ドライバーにありがちな思い込み運転やヒヤリハット体験を、同じ高齢者の立場からわかりやすく解説するこのコラム。今回は、交差点手前で反対車線に入って信号待ちをする車に遭遇した話。認知機能の衰えによる可能性もあるので、高齢ドライバーにとっては、決して他人事ではない。

反対車線に入って信号待ち!?

幹線道路に突き当たる丁字路交差点で信号待ち中の出来事。こちら側は変則3車線の市街地道路で、幹線道路に向かう道は1車線、反対車線は2車線だ。

赤信号が長く感じる。すると先頭で待っていた小型車が何やら動き始める。なんと、反対車線に入って行く。右側の車線が右折レーンと思ったのか、まったくのカン違いか、はたまた認知機能に……。白い実線のセンターラインを跨(また)ぎ、ゆっくりした動きで斜めになった車体を切り返してまで反対車線の第二通行帯内に収めた。

この間、幹線道路右方向からの左折車は「おっと! 何をしているの?」と、戸惑った風情で通過していく。やがて信号が変わり、幹線道路の左方向から右折車も来る。2車線のはずが1車線を占拠している“逆走車”があり、こちらも驚いた風情で、通過していく。

防ぎようのない“逆走”を身近に感じた瞬間でもあった。最近の新聞に、厚労省によると65歳以上で認知症の人は2020年で約602万人、高齢者の6人に一人が認知症の計算になるとあった。こうした背景ではあるが、2022年春から高齢者(75歳以上)の認知機能検査の判定が3分類(※)から「認知症のおそれあり」と「認知症のおそれなし」の2分類の判定になった。

我々、団塊世代の人口急増があり、事務処理の合理化でやむを得ない面はあるが、「おそれなし」であってもその実、限りなく「おそれあり」に近い点数の人(認知機能低下のおそれありの人)と、まったく問題ない人が混在することになってしまった。

テスト内容を思い出し、認知機能は本当に大丈夫だったと胸を張って言えるのか、自問しながらハンドルを握る謙虚さも、高齢ドライバーとして必要なことになりそうだ。

  • 3分類:認知症のおそれあり(第1分類)、認知機能低下のおそれあり(第2分類)、認知機能低下のおそれなし(第3分類)

指をさす男性

認知機能の衰えを自問しながら運転しよう。

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