池畑慎之介さんキービジュアル
取材・文=平辻哲也(ENCOUNT)/ 撮影=鈴木大喜

池畑慎之介が魅せる壮大な愛車遍歴!シトロエン・ベルランゴ ロング&フィアット・500 エレットリカで駆け抜けるクルマの旅

キャンピングカーもEVも乗りこなす! ハイエースでクルマ旅も

歌手・俳優として活躍する「ピーター」こと池畑慎之介さんは16歳の時に米ハワイで免許を取り、50台以上のクルマを乗り継いできました。乗り換えサイクルが早いため車検に通したことはほとんどないそうで、「恋人は替えられないけど、クルマだけはどんどん替えているのよ」と笑い飛ばします。そんな池畑さんが愛車遍歴、ドライブの楽しみ方、故・黒澤明監督との秘話まで語ってくれました。

目次

愛車遍歴はなんと50台以上!
「新しいクルマに乗りたくなっちゃう」

――池畑さんが今、乗っているクルマを教えてください。

シトロエンのキャンピングカー仕様の「ベルランゴ ロング」とフィアットの500(チンクエチェント)の電動モデル「エレットリカ」の2台持ちです。

――少し前のYouTubeチャンネルでは、タウンエースがベースのキャンピングカー「カレントキャンパー ピコ」、ヒョンデの電気自動車「IONIQ(アイオニック)5」を紹介されていましたが……。

もう手放しました。半年くらい前に「ベルランゴ ロング」を買って、IONIQからフィアットにしました。私、恋人は替えられないけど、クルマだけはどんどん替えているのよ(笑)。これまでに50台以上乗り継いできました。車検を通すより、新しいクルマに乗りたくなっちゃうんです。

――ベルランゴは以前にも乗っていましたよね。

以前はショートサイズでした。その時はキャンピングカー仕様ではなく、普通の乗用車として乗っていました。そのロング仕様が出たと聞いて、「あ、これならキャンピングカー仕様もできるじゃん!」と思って買いました。普段使いもできるし、大きすぎないし、ちょうどいいんですよね。

――今乗ってらっしゃるベルランゴも、一見キャンピングカーには見えないですね。

そう、普通のクルマに見えるでしょ? でも、ポップアップルーフを開ければ、上で寝ることもできるんです。ずっと寒いので、まだ開けたことはないんです。キャビンのシートも展開すると、ベッドになるんです。ベッド下にはキッチンが収納されていて、引き出すこともできる。すごいのよ。ディーゼル車で燃費もいいし、カタカタ走る感じがすごく好き。かわいいしね。

子供の頃からの憧れだったキャンピングカー
「やりたいことリストにずっと書いていました」

笑顔の池畑さん

――キャンピングカーには昔から興味があったんですか?

子供の頃からの夢だったんです。「やりたいことリスト」みたいなものがあって、その中に「キャンピングカーで旅をする」って、ずっと書いていました。キャンピングカーの魅力は自由。好きな時に好きな場所に行ける。普通の旅行だと、ホテルを予約したり、時間に縛られたりするじゃないですか。でも、キャンピングカーなら「今日はここに泊まろう」と自由に決められる。私は日本全国いろんなところに仕事で行きましたが、観光をする時間がなかったんです。だから、「じゃあ、自分のペースで旅をすればいいんじゃない?」と思って、キャンピングカーを持つことにしました。

――旅は一人で行かれるのですか。

一人旅が好きです。人がいると気を使うし、疲れちゃうので。一人旅なら、自分の好きなペースで自由に動けます。誰かと一緒だと、「どこで食べたい」とか「どこに泊まりたい」とかで意見が分かれて、絶対に喧嘩になるじゃないですか(笑)。

――旅先での過ごし方は?

私は観光地を巡るよりも、ただクルマを停めてぼーっとしたり、自然の音を聞いたりするのが好きなんです。「せっかくここまで来たんだから、○○を見なきゃ!」みたいなのは、あんまりないんですよ。写真もあまり撮らないです。「この景色を記録しておきたい!」っていうよりも、その場の空気を感じるのが好きなんですよね。

――最初に買ったキャンピングカーはハイエースでしたね。

スーパーロングのハイルーフで、完全なキャンピングカー仕様にしていました。ベッドもあって、収納もたくさんあって、本当に快適でした。旅に出るたびに「家ごと移動している」ような感覚でした。

――ハイエースの旅で、特に印象に残っていることは?

「桜前線を追いかけた旅」ですね。長野、新潟、仙台、山形とどんどん北上しながら、満開の桜を追いかけるように旅をしたんです。最後は千葉で遅咲きのしだれ桜を見ました。どの土地でも違う景色が見られて、本当に素晴らしい経験でした。静かな場所にクルマを停めて、のんびりするのが好きでした。自然の音を聞きながらコーヒーを飲んだり、ただ景色を眺めたりする時間が最高でした。

――その後に乗ったカレントキャンパー ピコでも旅をしましたか?

ハイエースは広くて快適だったんですけど、普段の生活ではちょっと大きすぎて取り回しが大変だったんです。その点、ピコはコンパクトで、街乗りもしやすくてちょうどよかった。一番の長旅は四国~九州です。フェリーで徳島に渡って、そこから四国を横切って松山へ行き、さらにフェリーで大分に渡って、九州をぐるっと回って、最後は小倉から横須賀までフェリーで帰ってきました。でも荷物が満載だったので、車中泊はせず、ビジネスホテルに泊まっていました。だったら、ピコで行かなくてもよかったじゃん、と思ったり……。笑い話です。

思い出の一台は69年式ベンツSL
「私のデビューの年と同じ年のクルマ」

風を受ける池畑さん

――ベルランゴでの旅の計画はありますか?

暖かくなったら、北海道に行きたいと思っています。できれば1か月くらいかけて、ゆっくり回りたいです。北海道は広いので、札幌と東の端では全然雰囲気が違うじゃないですか。だから、一気に駆け抜けるんじゃなくて、じっくり時間をかけて楽しみたいんです。行きは、仙台か、茨城の大洗から出ているフェリーに乗って、苫小牧に一気に渡っていくのがいいかな。最初に「北海道に行く!」と決めてしまえば、もう戻れないじゃないですか。帰りは仙台や福島で友達に会ったりしながら帰って来たいなと思っています。

――キャンプはしますか?

しませんね。虫が苦手で、特に蚊! もうね、一匹に刺されただけで、すごい損した気分になるの(笑)。キャンプでは「火を起こして、のんびりする」とかあるじゃない? でも私は「それ、家でできるじゃん?」って思っちゃう(笑)。キャンプって「わざわざ不便を楽しみに行く」みたいな感じがあるでしょ? でも、私はそうじゃなくて、移動できる快適な空間が欲しいんです。

――もう1台のフィアットについても教えてください。

フィアット(500 エレットリカ)の前に乗っていたIONIQはすごく気に入っていたんですよ。ホイールベースはエルグランドと同じ3mあるから、乗り心地がよく、安定感もありました。自宅のある横須賀から神戸まで500km走ったこともありました。途中で2回くらい充電しましたけど、全然問題なかったです。走行中もすごく静かで、エンジンのロスがないから加速がめちゃくちゃ速い。でも、かなりの距離を走って、飽きちゃったっていうのもあるし(笑)。新しいものに興味が湧いてきてしまって、フィアットに乗り替えました。でも、ちょっと後悔もしています。

――どうしてですか?

フィアットは近所を走るのはいいんですが、横須賀と東京の往復となると、バッテリーの減りが気になってしまって……。フル充電で250㎞くらいなんですよ。東京までは片道70㎞ちょっとだから、「帰りのバッテリーが減るの嫌だな」と思うと、なかなか使う機会がないんですよね。新型IONIQ5はフル充電で700㎞くらい走るらしいので、それなら充電なしで長距離も行けるし、すごくいいなって思います。

――話が戻りますが、免許を取られたのはいつですか?

16歳の時にハワイで取りました。でも、日本では外国の免許って1年間しか使えないって知らなくて、切れちゃったんですよ。それで、18歳になったときに、もう一度ちゃんと日本で取り直しました。

――昔からクルマがお好きだったんですね?

小さい頃からミニカーを集めて、ブーブー言いながら遊んでました(笑)。家の中でクルマを走らせていたら、父に「うるさい!」って怒られて、片付けられた記憶がありますね。

――これまで乗った中で、一番思い出深いクルマは?

30歳の時に買った69年式のベンツSLですね。私のデビューの年と同じ年のクルマだったので、それを探してもらって買いました。でも、冬にコートを着て、サングラスをして乗るのがカッコいいと思ってたんですけど……。実際にやってみたら、寒くて無理でした(笑)。

――YouTubeでも愛車を紹介されていますね。

でも、最近は全然あげてなくて……。週3回以上あげると、ちゃんと仕事にもなるんだけど、これを仕事にしようという気があまりないんです。めんどくさいんですよ(笑)。撮影しようと思っても、いざとなると、「あ、もういいや」ってなっちゃう。私は飽きっぽいんですよね(笑)。

――クルマの中ではどう過ごしていますか。

音楽はあまり聴かないです。ラジオをたまに流したりすることはありますけど、基本的には無音。風の音とか、クルマのタイヤの音とかを聞いているほうが好きなんです。ただ、仕事で歌う曲はクルマの中で覚えます。運転しながら、ずーっとエンドレスで流して覚えるんですよ。家だと、コーヒーを飲みたくなったり、ニュースが気になったりして集中できないの(笑)。でも、クルマの中だと余計なことを考えずに済むから、すごく覚えやすいんですよね。

故・黒澤明監督との思い出
もらった手紙は今も大切に保管
「役者として新しい道が開けた」

ソファーに座る池畑さん

――3月25日には「OZIBAライブⅧ」が東京・丸の内コットンクラブで開催されますね。どんなものになりますか?

コットンクラブでは年3回やっているので、いつも通りです。いつもの池畑慎之介の元気なところ、奇麗なところ、72歳でも頑張っているぞとお伝えしたい。お客さんから元気をもらうことが多いんですが、私から元気をあげるようにしたいなと思っています。「おなじみのナンバーをやってくれ」という声が多いのですが、私としては新曲は3、4曲入れていきたいんです。

――黒澤明監督の『乱』に出演された経験もお聞かせください。

私が出演した市川崑監督作(『獄門島』『火の鳥』『病院坂の首縊りの家』)を見てくださって、監督が興味を持ってくださったんです。黒澤監督はものすごく照れ屋な方でした。厳しい方という印象があるかもしれませんが、私や女性には直接ダメ出しをすることはほとんどなく、とても優しく接してくれました。その日の撮影が終わると、監督からお手紙が届くんです。「今日のこのシーンはこうだった」「明日はこういうふうに演じたほうがいい」といったアドバイスが、すごく丁寧に書かれていました。

――その手紙は、今もお持ちですか?

ええ、全部持っています。絶対に人には見せませんけどね。台本に挟んで、大事にとってあります。監督がおっしゃったことで一番印象的だったのは、「ピーターの顔はいらない」です。要するに、私が持っていた「ピーター」というアイドル的なイメージは必要ない、と。「メイクを落として、もっと素のままで演じてほしい」と言われました。

――その言葉を受けて、どう思われましたか?

すごくうれしかったですね。それまでの私は、どうしても「ピーター」というキャラクターの枠の中にいて、周りもそのイメージで私を見ていたと思うんです。でも、黒澤監督に「そのままでいい」と言われたことで、役者として新しい道が開けた気がしました。その後は「ピーター」という枠を超えて、いろんな役をやれるようになり、NHK大河ドラマ『北条時宗』(北条実時役)や老婆の役など、幅広い役柄を演じることができるようになりました。黒澤作品に出たことで、「役者」として見てもらえるようになった気がします。監督にすごく感謝しています。

――とてもいいエピソードですね。最後に、池畑さんにとって、クルマとはどんな空間ですか?

「自由になれる場所」ですね。どこにでも行けるし、自分だけの世界を作れる空間でもあります。家の中にいてもくつろげるけど、クルマの中だとまた違う開放感があるんです。クルマを運転していると、何も邪魔されないので、頭の中でいろんなことを整理できる。舞台のことを考えたり、歌のことを考えたり、あるいは、全然関係のないことをぼんやり思い浮かべたり……。運転しながら考えたことが、後でいいアイデアにつながることもありますね。

特に長距離を運転しているときは、無心になれるというか、リセットされる感覚があります。何かちょっと気分が乗らないときでも、クルマに乗って走り出すと、自然と気持ちが変わるんですよね。動くことで、心も動くというか……クルマって、単なる移動手段じゃなくて、「気持ちをリセットする場所」でもあると思います。

――JAFには加入されていますか?

もちろんです。ただ、幸いにもお世話になったことはありません。昔は「一気に目的地まで行こう!」と思っていましたけど、今は、「疲れたら休む」「眠くなったら仮眠する」というのを大事にして、安全運転を心がけています。

――これからもクルマに乗り続けたいと思いますか?

友達とは「いつ免許を返納する?」って話すのですが、私はギリギリまで免許を持っていたいです。たとえ、運転しなくても、「いざというときには車を動かせる」っていうのが大事だから。だから、返納は考えてないかな。ただ、75歳を超えると、認知機能テストもあるみたいですね。私は舞台や歌で覚えることをずっとやっているから、大丈夫だと思いたいですね(笑)。

こちらを見る池畑さん

池畑慎之介さんが自宅で聴きたい5曲

  • ヘレン・メリル『You'd Be So Nice To Come Home To』…1940年代の名曲で、ヘレン・メリルの代表的なジャズバラード。しっとりとした歌声とクールなアレンジが心地よく、夜のリラックスタイムにぴったり。
  • ジョージ・ベンソン『Nothing's Gonna Change My Love or You』…80年代を代表するロマンティックなバラード。温かみのある歌声とメロディが魅力的で、穏やかな気持ちになれるラブソング。
  • マーヴィン・ゲイ『What's Going On』…社会的メッセージを込めたソウルの名曲。優しくも切実な歌声と、洗練されたサウンドが特徴。心に深く響く一曲で、静かに考えさせられます。
  • ゲーリー・カー『カッチーニのアヴェ・マリア』…コントラバス奏者ゲーリー・カーによる、荘厳で静謐な楽曲。深く響く低音が印象的で、心を落ち着かせてくれます。
  • エディット・ピアフ『Non, je ne regrette rien』…フレンチシャンソンのレジェンド、エディット・ピアフの楽曲。情熱的な生き様と決意を象徴する名曲。過去にとらわれず未来へ進む強い意志が、時代を超えて多くの心に響きます。

(クリックすると、音楽配信サービスSpotifyで楽曲の一部を試聴できます。)

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  • オークションサイト、フリマアプリなどでの転売を禁止します。

池畑慎之介

いけはた・しんのすけ 1952年8月8日生まれ、大阪府出身。上方舞吉村流四世家元で人間国宝となった吉村雄輝の長男として生まれ、3歳で初舞台を踏む。その後、名取となる。1969年、映画『薔薇の葬列』で俳優デビュー。同年、歌手としても活動を開始し、「夜と朝のあいだに」が大ヒット。日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞する。以降、役者として、また歌手・ピーターとして、幅広いジャンルで活躍。1985年、黒澤明監督の映画『乱』に出演したことをきっかけに、俳優としての評価を高める。その後も映画、舞台、ドラマと多岐にわたり活動を続ける。2018年、「ピーター」名義を卒業。2019年には芸能生活50周年を迎え、一区切りとして休養期間を設ける。2020年4月、再び芸能活動を再開し、歌手・タレント業も本名の「池畑慎之介」に統一した。NHK連続テレビ小説『おむすび』では、スナックのママ・ひみこ役を演じた。

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