夕陽を背に受け、逆光の中で佇む俳優・磯村勇斗氏の印象的な写真
取材・文=平辻哲也(ENCOUNT)/ 撮影=藤岡雅樹/ ヘアメイク=関東沙織/ スタイリスト=笠井時夢

磯村勇斗のカーライフ 「洗車は自分で、音楽はランダムに」実力派俳優の素顔と憧れのクラシックカー

父の背中を見て育った、クルマへの憧れと原体験

話題作への出演が続き、シリアスな役からコミカルな役まで変幻自在に演じ分ける俳優・磯村勇斗さん。雪国での過酷すぎた教習体験から、少年時代のクルマへの憧れ、そして「もしも好きな車を3台持てるなら?」という夢のガレージ計画まで、磯村さんにカーライフについてじっくりと語っていただきました。

目次

高さ4メートルの雪の壁!
過酷すぎた教習所合宿体験

落ち着いた雰囲気のインタビュー場所で、リラックスして質問に応じる磯村勇斗の自然体なポートレート

夕暮れ時の柔らかな光に包まれ、少しアンニュイな表情を見せる磯村勇斗氏のカット

──磯村さんは、普段ご自身で運転されることはありますか?

運転は好きです。今は東京で運転することが多いですが、やはりクルマという空間は自分にとって、すごく落ち着ける場所の一つになっています。

──免許を取得されたのはいつ頃だったのでしょうか。

大学1年生の19歳くらいのときです。まとまった休みが取れたので、合宿免許で取りに行きました。場所は山形……いや、とにかく東北の雪深い場所でした。期間は2週間くらいで、ギュッと集中して取りました。

──東北の冬、しかも合宿となると、教習の環境も厳しそうですね。

そうなんです。ちょうど真冬の時期だったので、雪が降り積もっている中での教習でした。もう、道路の両脇に雪の壁ができているんですよ。高さが3m、4mあるような壁で。なので、交差点に差し掛かっても左右の見通しがまったく利かないんです(笑)。教習所の教科書だと「交差点では左右を目視して……」と習うのですが、雪の壁が高すぎて目視では人がいるのか、クルマが来ているのかすら確認できない。「これは、教科書通りにいかないぞ……」というのが、僕の運転の始まりでした。

──いきなり応用編からのスタートだったわけですね。

まさにそうです。路面も雪道でしたし、常にヒヤヒヤしながらハンドルを握っていました。ですが、そのおかげで鍛えられた部分は大きかったです。最初に一番過酷な環境で運転を覚えたので、東京に戻ってきてから運転したときに「なんて走りやすいんだ!」と感動しました(笑)。アスファルトが見えているだけでありがたいですし、視界も広い。「東京はすごく運転しやすいな」と思えたのは、あの雪国での経験があったからこそです。

──そもそも、クルマ自体には小さい頃から興味があったのでしょうか?

はい、父の影響が大きいです。父がすごくクルマ好きだったんです。子供の頃はよく父に連れられて、いろんなディーラーに遊びに行っていました。そこでクルマのカタログをもらってきては、家でながめるのが好きで。車種の名前を覚えたり、デザインを見比べたりして楽しんでいました。なので自然と「いつか自分も運転したいな」という憧れは、幼少期の頃から持っていましたね。クルマとの出会いは、まさに父との思い出と重なっています。

──お父さまとのドライブの思い出はありますか?

小さい頃、父はランドクルーザーのような大きいクルマに乗っていました。運転が大好きだったので、結構な長旅もしました。西は大阪くらいまで行きましたし、北は金沢や新潟、青森までもクルマで行った記憶があります。車中泊をしたりして、楽しかった思い出ですね。

──ご自身の愛車についてもお伺いします。最初のクルマはいつ頃手に入れられたのですか?

自分でクルマを持ったのは、5年くらい前です。それまではカーシェアが便利だったので、いろんなクルマに乗っていました。輸入車から日本車まで、セダンもSUVも、大きめのハイエースなども運転しました。いろいろ運転しながら、「自分はどういうクルマが好きなのか」を長い時間かけて選んでいた感じです。

──いろいろ乗ってみて、ご自身の好みは見つかりましたか?

運転だけを楽しむなら、やはりスポーツタイプのほうがハンドルさばきや、タイヤ周りの感覚が楽しいなと思いました。ですが、自分はゴルフもするので、荷物を載せたり友達を後ろに乗せて行くなら、やはりSUVぐらいの大きさはないと。それで5年前に、最初の一台を買いました。やはり父の影響はあると思います。ゴルフバッグも載るし、友達も乗せることができて、運転も楽しいクルマを選びました。

「すぐに雨に濡れるのか……」
几帳面さが顔を出した初ドライブ

インタビュー中に顎に添えた手元が写し出された磯村勇斗氏のクローズアップ写真

落ち着いた雰囲気のインタビュー場所で、磯村勇斗の自然体なポートレート

──愛車を手に入れて、最初のドライブはどこへ行かれましたか?

クルマを買い、そのまま埼玉へ行きました。当時サウナブームもあり、自分もサウナを開拓していたので、埼玉のほうのサウナへ。ですが、ちょうどその日が小雨で……。「あ、もうすぐに雨に濡れるのか」と(笑)。コーティングはしてもらっていたのですが、「ピカピカな状態ですぐに水滴が付くのか」と、少し几帳面な部分が出てしまって、そんなことを思いながら運転していた記憶があります。

──メンテナンスもご自身でされるのですか?

自分で洗車もしますし、タイヤ周りを磨いたりなど、車内の清掃もしたりします。これも父の影響だと思います。父が洗車するのを手伝っていたので、そのまままねしている感じです。やはりクルマも常に動かしてあげないと、エンジンがどんどん鈍っていってしまうので、なるべく毎日動かすようにはしています。

──ドラマではバイクに乗る役柄も演じていましたが、プライベートではバイクには乗られないんですか?

普通免許なので運転できるのは原付だけで、中型などは持っていないんです。バイク自体「かっこいいな」とは思うのですが、自分で乗りたいとまでは思わないです。やはり僕はクルマのほうが好きなんです。運転をするのが好きなので。渋滞中などにバイクが横を走っている姿を見ると「気持ち良さそうだな」とは思いますが(笑)、基本はクルマ派です。

──磯村さんにとって、愛車はどのような空間ですか?

「もう一つの部屋が増えた」ような感じです。移動式の部屋といいますか。やはり自分のプライベート空間ですし、運転している時間が仕事との切り替え、リラックスの時間にもなっています。本当に「相棒」みたいな存在です。

──車内でセリフを覚えたり、お芝居の練習をしたりすることはありますか?

そこは切り離しています。そちらに意識が行ってしまうと危険ですし、運転がおろそかになると、ちょっとした道路の変化にもついていけない気がして。僕はしないようにしています。本当にプライベートな空間として、ラジオやポッドキャストを聴いたり、走行中の景色を楽しんだりして過ごしています。

──音楽もよく聴かれますか?

はい。友達とワイワイ行くのも楽しいですが、一人で好きな音楽を聴きながら走るのも好きです。プレイリストを作るというよりは、スマートフォンに入っている曲の中からランダムに流れてくるのを聴くのが好きです。「あ、この曲懐かしいな」とか思いながら、その時の気分に任せてドライブを楽しんでいます。

──今後、乗ってみたいクルマや行ってみたい場所はありますか?

クルマで言うと、F1やGT系のような、スピードに特化したクルマをサーキットで一度運転してみたいですね。普段の運転とは違う、勝負の世界のクルマを体験してみたいです。あとはクラシックカーにも興味があります。今のクルマにはないデザインの美しさがあり、ファッションのような感覚で乗りたいなと。ですが、整備も大変ですし、いいクルマに出会うのが難しいと聞くので、「何でも買えばいい」ではなく、運命の出会いがあれば乗りたいです。

──ロングドライブするとしたら?

東京から大阪まで、一度運転してみたいです。7時間くらいかかると思いますが、名古屋で半日遊んで一泊し、次の日に大阪へ行くようなプランで。運転が好きなので、長距離も全然苦ではないです。旅行先でも必ずレンタカーを借りますし、ハワイやグアムなど海外でも運転します。海も山もある場所で育ったので、どちらのドライブも好きですね。

──ご出身の静岡県沼津市も、ドライブするには最高のロケーションですよね。

はい。海も山もあり、そして富士山も見える。本当にすべてがそろっている場所だなと思います。東京に来てから改めて思うのですが、食べ物もおいしいですし、土地の空気感も含めてすごく恵まれた場所で育ったんだなと。東京からもクルマで、早ければ1時間半くらいで帰ることができる距離感なんです。なので、ふらっとドライブして帰るにもちょうどいいですし、やはり故郷の道を走ると落ち着きます。

話題作に引っ張りだこ、俳優業との向き合い方は
「枠組み」の中でどれだけ自由に表現できるのか

取材時のスタイリッシュな衣装を着こなし、カメラに向けてクールな視線を送る磯村勇斗の半身ショット

「もし好きな車を3台持てるなら?」という質問に、視線を上に向けて楽しげに考え込む表情

俳優業における「表現の自由」と「運転」の共通点について、真剣な眼差しで熱く語るインタビューカット

──少し夢のある質問をさせてください。もし「好きなクルマを3台持てます」と言われたら、磯村さんはどんな3台をガレージに並べたいですか?

うわぁ、難しいですね(笑)。ブガッティ、アルファロメオ、フェラーリ……いや、それはちょっと持っていて怖いかもしれないです(笑)。ですが真面目に選ぶのであれば、まず1台は「フェラーリクラスの走りに特化したクルマ」が欲しいです。サーキットなどで思いっきり走れるような一台。2台目は、「ポルシェの旧型」。今のポルシェではなく、昔の空冷などのデザインで、少し遊びながら乗ることができるようなクルマがいいです。そして3台目は……「ヴィンテージのベンツ」か、アメ車の「フォード・サンダーバード」あたりです。

──すべて個性的なラインナップですね!

そうですね! 旧車のベンツもデザインが長くてかっこいいですし、アメ車のフォードもいい。色も「赤」「黒」「黄色」のようにバラバラにし、国も「ドイツ」「アメリカ」「イタリア」のように分けて並べたら最高にかっこいいと思います。今のクルマにはないデザインの美しさが昔のクルマにはあるので、ファッションのようにその日の気分で乗り替えることができたら理想です。

──磯村さんは30代に入られましたが、俳優として常に走り続けている印象があります。時には「立ち止まりたい」とか「向いてないかも」と思うような瞬間はなかったのでしょうか?

そういう時もありましたよ。「何のためにやっているんだろう」と考え込んでしまうような時も。ですが、「いつでも辞めていいや」と腹をくくると、逆に怖さがなくなるんです。辞めたところで自分の人生が終わるわけではないですし、何も変わらない。そう思うと、「じゃあ、とことん自由に表現してみよう」と思えるようになりました。組織や社会という「枠組み」の中にいながらも、その中でどれだけ自由に表現することができるのか、というような。

──ある意味、決められた交通ルールの中で最大限ドライビングを楽しむのと似ていますね。

まさにドライブと同じだと思います。制限速度というルールはありますが、その中でどうハンドリングを楽しむか、どこまで遠くへ行けるか。安全運転はしつつも、時にはアクセルを踏んで未知の場所へ行ってみる。僕にとって人生や俳優業は、そんなドライブのような感覚に近いのかもしれません。

──最後に、JAF Mate Onlineの読者へ一言お願いします。

僕の周りの同世代を見ても、クルマに興味を持っている人って意外と少なく、少し寂しく思うこともあります。ですが、今日お話ししたように、クルマはただの移動手段ではなく、自分の部屋のようにもなりますし、人生を豊かにしてくれる相棒だと思っています。僕もまだまだ乗りたい車がたくさんあるので、これからも安全運転で、長く楽しいカーライフを送っていきたいです。

窓から夕陽が差し込む屋内で撮影された、磯村勇斗のエモーショナルなポートレート写真

磯村勇斗さんがドライブで聴きたい5曲

  • エルトン・ジョン「Rocket Man」…一人で運転しているとふと孤独を感じることがあるのですが、この曲を聴いていると孤独ではないような、誰かと一緒に走っているような気持ちになれます。ドライブの相棒のような一曲です。
  • インク・スポッツ「I Don't Want To Set The World On Fire」…80年くらい前の古い曲で、昔プレイしていたゲームのBGMとしてよく流れていました。メロウで懐かしい雰囲気が好きで、運転中によく聴いています。
  • ナールズ・バークレイ「Crazy」…映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でも使われていた曲です。テンポがすごく良くて、流すと運転が楽しくなります。気分を上げたいときにぴったりです。
  • ニーナ・シモン「Feeling Good」…映画『PERFECT DAYS』のラストシーンで、役所広司さんが運転しながら聴いていた曲です。「うわ、これやばいな」と感動して。運転しながら役所さんの演じた主人公の余韻を感じて、「どうだったんだろう」と想像しながら聴いています。
  • ダニー・ハサウェイ「A Song For You」…これは夜の運転で欠かせない曲です。夜にかけて走ると、いつも見ている夜景がさらにきれいに見える気がします。夜のドライブをドラマチックにしてくれる一曲です。

(クリックすると、音楽配信サービスSpotifyで楽曲の一部を試聴できます。)

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サインを持つ磯村勇斗さん

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・プレゼント内容:磯村勇斗さん特製サイン色紙
・当選者数:3名(発表は発送をもって代えさせていただきます)
・応募締切:2026年2月18日

  • オークションサイト、フリマアプリなどでの転売を禁止します。

磯村勇斗

いそむら・はやと 1992年9月11日、静岡県出身。ドラマ『仮面ライダーゴースト』で注目を集め、その後、2017年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』で一躍脚光を浴びる。映画『ヤクザと家族TheFamily』、『劇場版きのう何食べた?』で22年に第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、『月』で第47回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。主な出演作には、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『PLAN 75』、『ビリーバーズ』、『波紋』、『正欲』、『若き見知らぬ者たち』など。ドラマ『不適切にもほどがある!』のムッチ先輩&秋津君の一人二役も話題となった。

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