JAF Mate Online 安東弘樹さんエッセーのKV

安東弘樹さんが多くの「授業料」を支払った人生最初の愛車「ホンダ・シティ ターボⅡ」

クルマ選びの教訓は「他人を頼らず妥協せず」
安東弘樹

クルマ選びは他人に頼らず、正規販売店で新車を購入するという、クルマ大好きアナウンサーの安東弘樹さん。ですが安東さんの人生最初の愛車は「断る選択肢がなくなり」「なかば強引に納得し」決めたといいます。今回のエッセーでは、そんな安東さんの愛車が起こしたトラブルの数々と、そこから安東さんが学んだことについて綴ります。

目次

安東さんの最初のクルマ選びは「運命」と「一目惚れ」?

今回は私の初めての愛車にまつわる思い出話にお付き合いいただければと思います。

人生最初の愛車はホンダ・シティ ターボⅡ(以下ターボⅡ)。5年落ちの中古車でした。48万円のターボⅡを48回ローンで購入したのを覚えています。当時、大学1年生でしたが、同級生でもある友人の父親が中古車ショップを営んでおり、私の「小さくてMTで少し速いクルマ」というリクエストに応えて、このターボⅡを紹介してくれたのです。

まずはクルマを見せてくれる、ということで、ある駐車場で待ち合わせをしていたら、ターボⅡに乗った友人と、その父親であるショップの経営者の方がやって来ました。ターボⅡの迫力のあるブリスターフェンダーに象徴される、ちょっとヤンチャな、でも下品ではないエクステリアには一目惚れです。しかしホイールはチューニングメーカー「無限」製で、排気音も迫力のある音がしています。若干カスタムされているようでしたので、「ノーマル派」の私としては不安がよぎりました。

その場では決めず、一通りこのターボⅡを見て、他のクルマも見てみようと思い、お礼を申し上げてお別れの挨拶をしました。しかし、経営者の父親は「今回はこのクルマを安東さんが購入する、と言われて来たのですが……」という反応。驚いて同級生の友達を見ると、困ったような微妙な表情をしています……。おそらくさまざまな誤解や伝達の齟齬(そご)があったようで、私に断る選択肢はなくなりました(笑)。

エクステリアには一目惚れしたことだし、これは運命だ! となかば強引に納得し、その場で契約しました。回転が上がって、ターボのブーストがかかると、飛ぶのではないかというほどの加速感で、すっかり私は魅了されたのですが……。

ただ、「今後は、お互いのためにも知人にクルマのことを頼むのはやめよう」と心に誓ったのでした……(笑)。

不具合続きの愛車ターボⅡに翻弄される安東さん、ついに悲劇が…

予想通り? このクルマには苦労させられました……。最初の1か月は社外品のオーディオもカセットテープを普通に再生でき、割といい音を奏でていましたが、すぐにデッキが壊れ、しかもラジオはなぜか最初から付いていなかったのです。当時はギリギリでローンを払っていましたので、新しいオーディオを買う余裕はありません。音楽なしになりましたが、クルマは走ればいい! と開き直って毎日のように運転していました。

しかし、その年の部活(弓道部)の夏合宿で悲劇は起こりました。

当時、合宿所での「買い出し」のために1年生が一人クルマを出す、という慣習になっていました。私は迷いなく立候補し、晴れて愛車で夏合宿に向かうことができたのです。往路は快調。買い出しの任務もこなし、合宿も終わって後は帰路を楽しむだけでした。

しかし、帰りの道のりでエンジンが、急にバラバラバラ……という音に変わり、パワーがみるみるうちになくなっていきます。止まるわけではないのですが、アクセルを踏んでもせいぜい時速70km程度までしか速度が出ません。結論からいうと、何らかの原因により4気筒のうちひとつが機能せず、3気筒で走っていたのです。

ターボⅡのエンジンルーム

ターボⅡのエンジンルーム(写真は安東さんのクルマではありません)

今なら音を聞いてすぐに、原因を理解できると思うのですが、当時の私の知識では、それもわからず、たまたま近くにあった自動車工場に飛び込みました。

急に現れたアポなしの客に対して親切に応対してくださった工場の方ですが、マフラーを見て、「これ穴が開いてるよ」と指摘をいただき、「とりあえず溶接してふさぐよ」とのことですぐに作業をしてくださったのです。

エンジンを掛けてみたところ、音が正常に戻ったような気がしました。費用をお支払いしようと思ったら「こんなんでお金なんてもらえないよ!」とまったく受け取ってくださらなかったので、急遽、少し離れた所にある老舗のお店に行ってお菓子を買って引き返し、お渡しした際も「わざわざ律儀にごめんね!」などと言っていただき、本当に涙が出たのを覚えています。

感動の出来事ではあったのですが、実は不具合の原因はマフラーの小さな穴ではなかったのです。一瞬直ったと思ったものの、音もパワーもそのまま元には戻らず……仕方ないので高速道路には乗らず、ゆっくり一般道で帰宅しました。

その後、たびたび1気筒だけ止まるものの、プラグを換えると直り、を繰り返すクルマになりました。原因は当時装備され始めた、燃料供給用の電子制御インジェクターの不具合だったのですが、根本的な修理をするとそれなりのお金がかかるので、その後は予備のプラグを常備し、不具合の都度換えながら走っていました。

本当に苦い思い出です。そのとき、「これからクルマを買うときは、無理をしてでも、必ず新車にしよう」と私の中での方向性が決まりました。それ以来、私は「知人」にクルマのことは頼まず、「新車」を「正規の販売店」で購入することにしています。

痛い授業料にはなりましたが、最初の愛車がこのターボⅡで良かったと、今でも思っている次第です。皆さんも最初の愛車の思い出、ありますよね?

安東弘樹

あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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