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ベテランアナが初体験? 安東弘樹さんがWRCの実況にチャレンジ!

ラリージャパン2024がデビュー戦
安東弘樹

アナウンサー歴34年の安東弘樹さんですが、スポーツの実況はこれまで経験がなかったとのこと。そんなベテランアナウンサーの安東さんが、2024年の世界ラリ-選手権で実況を担当することに。果たしてその結果は!?

目次

アナウンサー歴34年の安東さんが「初のスポーツ実況」を担当

2024年11月21日~24日、FIA 世界ラリ-選手権(以下WRC)の最終戦となる、フォーラムエイト・ラリージャパン(以下ラリージャパン)が愛知県と岐阜県で行われました。

全13戦で競われるWRCの最終戦まで、競技車両の製造メーカー(マニュファクチャラー)、ドライバーともに年間チャンピオンは未確定でした。ですので、すべてがこの最終戦で決まる、という状況のため、世界中のラリーファンが注目する戦いとなりました。

私は今シーズンの途中から、NHK-BSのWRCハイライトの実況ナレーションを担当しており、この最終戦ラリ-ジャパンの最終日24日(日)は、東京のスタジオからのリモートにはなりますが、初めて生の実況も担当することになりました。

実は私、アナウンサー歴34年の中で、「生放送される」スポーツ実況は初めてなのです。20代の頃には、練習用の実況の収録や、新しい記録や珍しいプレーが誕生した瞬間だけを放送するための「裏実況」などの経験、バラエティー番組の中でのスポーツ競技の実況などは経験ありますが、王道? のスポーツ実況経験はこれまでありませんでした。

それだけに今回は貴重な経験になりましたが、一応、正確にお伝えすると、今回も競技中の模様すべてを生で実況したわけではありません。ラリ-は全21あるスペシャルステージ(以下SS)と呼ばれるコースを時間差で走行するため、完全に生で実況することは難しいのです。ですのでNHKでは、先に収録したWRC公式の国際映像をすばやく整理してから、その映像を私と解説者に見せて、それに実況、解説を当てる、という方法での放送となりました。

しかし、われわれがが実況する映像を事前に確認することはできませんし、次から次へとSSが控えているので、やり直しは基本的にできません。そういう意味では完全生放送とほぼ同じ状況での実況なのです。

ちなみに、前日に行われたSS13(全21あるSSの内の13番目のSS)は、競技があった当日に録画された映像をもとに収録したのですが、その際も臨場感を演出するために撮り直しはせず、間違ったことを口に出してしまっても、その場で言い直して、そのまま最終日の放送に使いました。

しかも放送の後半部分は、2024年シーズンのWRC最終戦でもありますので、WRCの年間総合結果や表彰式、ハイライトの紹介、豊田スタジアムからの中継などを交えた放送になります。この部分は完全生放送でしたので、スタッフも含めて、最初から最後までさらなる緊張感に包まれた放送となりました。

WRC最終戦は波乱の展開! 安東さんの実況現場も修羅場の様相!?

NHKのスタジオで実況する安東弘樹さん

NHKのスタジオで実況する安東弘樹さん

しかも、今回のラリージャパンは本当に最後の最後まで結果がわからない状況でしたので、結果を想定したスーパー(字幕)や映像も作っておけませんでした。

結果、最後までTOYOTAとマニュファクチャラーの年間優勝を争っていたヒョンデの、オィット・タナック選手が最終日、最初のSS17でクラッシュし、リタイア。ノーポイントとなったことで、同日最後のSSで奇跡の大逆転でTOYOTAのマニュファクチャラーの年間優勝が決まりました。このリタイアによって、ドライバーの年間優勝者はヒョンデのティエリー・ヌービル選手がこれまでの首位を守り切りました。

すべてが最終日にならないとわからない状況。それだけにスタッフもわれわれ放送席も大変です(笑)。TOYOTAが年間優勝に輝くという、うれしい結果ではありますが、放送の内容を構成し、どのVTRをどの順番で流し、中継をどのタイミングで入れるかなど、実況現場はまさに修羅場のような様相となりました。しかし、皆が同じ方向で準備や努力をしてきた成果が見事に発揮され、混乱は起きず、無事に? 放送が終わったのです。

「無事に?」と書いたのは、スタッフの皆さんや解説の今井清和さん、中継の千葉真由佳さんは無事に、と言える見事なお仕事をされていましたが、私個人としては反省ばかりですので、そう書きました……。

WRCを好きになって30年、これまでの観戦によって得られた知識や記憶などは、少し放送内容に反映できたものの、肝心の実況に関しては、とにかく夢中で喋っただけでした。たとえば私はこれまで、ヒョンデのドライバーをずっと「オット・タナック」と言っていたのですが、NHKでは「オイット・タナック」と表現していて、ナレーションの時は問題なく「オイット」と言ってきたのに、実況で思わず「オット」と言ってしまい、それを言い直したりと反省する以外ないのです……。ただ、解説の今井さんが「安東さんの実況のおかげで、話しやすかったです」と言ってくださったのが、何よりの救いになりました。

WRC2025のカレンダーにラリ-ジャパンの開催予定があります。ただ、私にとって「来年」のWRC実況の予定があるかどうかはわかりません。もし、同じ機会をいただけるのだとしたら、なお一層努力して、ラリ-ジャパンの実況に臨みたいと思います。

それにしても今年のラリージャパンは熱かったですね!

安東弘樹

あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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