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セド・グロ、シティターボⅡ、スタリオン、チェイサー、ルーチェ…昭和~平成を彩るターボ搭載の名車たち12選

セダン、ワゴン、コンパクトカー、軽自動車も!? 熱狂パワーウォーズ時代はどんな車もターボ搭載!

2024.03.24

構成=ダズ / 文=高橋陽介

2024.03.24

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1979年、日産・セドリック&グロリアに、国産車で初めてターボチャージャーが搭載されました。これまでにはない新しい車の魅力となったターボは、スポーツカーや上級車のみならず、あらゆる車に広がったのです。そんな1980〜90年代のパワーウォーズ時代で印象に残る車をピックアップしました。

ターボが初めて車に搭載されたのは
今から半世紀以上前だった

1979年、日本車として初めてターボチャージャーが採用された日産・セドリック&グロリア用L20E・Tエンジン

1979年、日本車として初めてターボチャージャーが採用された日産・セドリック&グロリア用L20E・Tエンジン

掃除機やヘアドライヤーに「TURBO」モードが設定されていたり、出版社から原稿を催促されたときに「ターボ(超急ぎで)で仕上げます!」という会話が交わされたりと(これは原稿執筆が遅い筆者に限った話か?)、今やターボという言葉はその語感だけで『力強さ』や『猛烈な勢い』といったニュアンスを感じさせるほど広く知られる存在となっています。

ターボの正式な名称はターボチャージャー。その仕組みを簡単に説明すると、本体ユニット内のタービンホイールが排気の圧力で回転し、同軸で直結されたコンプレッサーホイールがシリンダー内にたくさんの空気を送り込むことで、燃焼効率(すなわち出力)を高めるというもの。

元々、航空機や船舶、鉄道用として普及が始まったターボチャージャーが自動車用として使われるようになったのは1960年代。量産車として初めて採用されたのは1962年発売のアメリカ、オールズモビルのF-85ジェットファイアと言われています。

その3年後にはリアエンジン・リアドライブの特徴的なパワートレーンを持つシボレー・コルベア500コルサシリーズも登場しますが、スーパーカーブームの影響をモロに受けた昭和世代がターボという魔法のようなメカニズムの存在を鮮烈に印象づけられたのは何と言っても1973年発売のBMW2002ターボと1975年発売のポルシェ911ターボ(930型)の2台。前者はフロントバンパーの「turbo」の鏡文字ステッカーが有名。これは前走車のバックミラーに映り込んだ際に「turbo」と読ませ、その存在感をアピールすることを狙ったもので、後年日本でもスカイラインターボ(GC210)に同様のステッカーが用いられていました。後者は力強く張り出したオーバーフェンダーや車体後部の大型ウイングが特徴で、ターボ過給がもたらすトルクバンドの広さからトランスミッションは4速が組み合わされていました(最終の89年型のみ5速)。

1970年代後半当時の国産車といえば、厳しい排ガス規制のため性能的に見るべきものはなかった。そこで脚光を浴びたのがターボ。1979年に日産が430型セドリック/グロリアで口火を切った後、小さな排気量でもひとクラス上のパワーを発揮するターボは環境と性能面を両立させる技術としてファミリーカーから軽自動車クラスまで一気に普及。「向こうが200馬力なら、ウチは220馬力だ!」と、ライバルに対する優位性をアピールすべく開発競争は年々激化。国産車は苛烈なパワーウォーズの時代へと突入していくこととなりました。

国産初のターボチャージャー搭載車

日産・グロリア(430型)/2L直列6気筒ターボ 145馬力

日産・グロリア(430型)。セドリックの縦線グリルに対し、グロリアは横線グリルを持つ。ターボエンジンは写真の4ドアハードトップの他、セダンにも採用された

日産・グロリア(430型)。セドリックの縦線グリルに対し、グロリアは横線グリルを持つ。ターボエンジンは写真の4ドアハードトップの他、セダンにも採用された

1979年11月の東京モーターショーでお披露目され、その翌月から発売が開始されたのがセドリック/グロリアターボ。ベースとなった自然吸気版の2L L20Eに対しターボを装着したL20E・Tは15馬力のパワーアップが図られ、フェアレディZが搭載する2.8Lの6気筒L28エンジンと同等の145馬力という最高出力を発揮した。豪華装備を満載した高級車ながら発売当時は5速マニュアルミッションのみという設定で、オートマチックが追加されたのは翌年4月のことだった。

5速マニュアル車の発売から4か月遅れて追加されたオートマチック車のインパネ。メーター類にNA車との違いは見られない。ステアリングセンターにはTURBOのロゴ入りプレートが備わる

5速マニュアル車の発売から4か月遅れて追加されたオートマチック車のインパネ。メーター類にNA車との違いは見られない。ステアリングセンターにはTURBOのロゴ入りプレートが備わる

ホンダが初めて市販化したターボモデル

ホンダ・シティターボⅡ(AA型)/1.2L直列4気筒ターボ 110馬力

ホンダ・シティターボⅡ(AA型)。ボンネットのビッグパワーバルジやワイドフェンダーを持つ精悍なフォルムは“ブルドッグ”の愛称で親しまれた

ホンダ・シティターボⅡ(AA型)。ボンネットのビッグパワーバルジやワイドフェンダーを持つ精悍なフォルムは『ブルドッグ』の愛称で親しまれた

トールボーイスタイルで当時大ヒットを飛ばしていたシティにターボが追加されたのは1982年のこと。1.2L 4気筒「コンバックス」エンジンに0.75kg/cm²という高過給設定のターボチャージャーを搭載。最高出力は100馬力を発生した。さらに翌年10月にはインタークーラーを採用し、出力を10馬力高めたシティターボIIを発売。スロットル全開時に過給圧を10秒間約10%アップさせる、刺激的なスクランブルブースト機能も備えられていた。

出力向上に伴い、トレッドも拡大。鈴鹿サーキットではシティターボワンメイクの「シティブルドッグレース」も行われた

出力向上に伴い、トレッドも拡大。鈴鹿サーキットではシティターボワンメイクの「シティブルドッグレース」も行われた

そもそもターボチャージャーって何!?

その外観上な特徴から、カタツムリという愛称で呼ばれることもあるターボチャージャー。ハウジング内部にはタービンホイールとコンプレッサーホイールと呼ばれる2つの風車が収められている

その外観上な特徴から、カタツムリという愛称で呼ばれることもあるターボチャージャー。ハウジング内部にはタービンホイールとコンプレッサーホイールと呼ばれる2つの風車が収められている

冒頭部分でもターボチャージャーの特性を簡単に説明しましたが、ここでもう少し補足を。ターボチャージャーと同様の効果を狙った過給システムとしてスーパーチャージャーが知られていますが、そもそもターボチャージャーはこのスーパーチャージャーから派生したもの。クランク軸から直接駆動力を取り出しコンプレッサーを回転させるスーパーチャージャーはアクセルの動作に対しレスポンスに優れる反面、過給機を駆動させるために生じる馬力損失(駆動ロス)というデメリットがありました。これに対し排気の力を利用して過給を行うターボはエンジン本体への馬力損失がなく、特に高回転での性能向上効果に優位性を持っています。かつては一定回転数を超えると突然パワーが立ち上がる『ドッカンターボ』などという言葉もはやりましたが、現在は技術の進化により、きめ細かい過給圧コントロールも可能となっています。

日本初の空冷式インタークーラーを搭載

三菱・スタリオン(A182/183型)/2L直列4気筒ターボ 200馬力

三菱・スタリオン(A182/183型)。空冷インタークーラー装着による175馬力へのパワーアップからわずか1年足らずで登場した200馬力のGSR-V。まさに当時の馬力競争の激しさを物語っていた

三菱・スタリオン(A182/183型)。空冷インタークーラー装着による175馬力へのパワーアップからわずか1年足らずで登場した200馬力のGSR-V。まさに当時の馬力競争の激しさを物語っていた

インタークーラーとはターボの力で過給され高温となった空気の温度を冷却することで、シリンダー内への充填効率を向上させるためのパーツ。国産車への導入に先鞭(せんべん)をつけたのは1983年2月のソアラ(水冷式)だが、空冷式を初めて採用したのがスタリオン。1983年6月のマイナーチェンジ時に追加されたアルミ製クロスフロータイプのインタークーラー本体はバンパー内部に水平にマウント。インタークーラーが装備されていなかった初期モデルに対し、実に30馬力もパワーアップして175馬力を実現した。

低回転時には2本の吸気バルブのうち1本を休止させることで低速トルクの向上を図った、三菱独自の3×2バルブ方式を採用したシリウスダッシュエンジン

低回転時には2本の吸気バルブのうち1本を休止させることで低速トルクの向上を図った、三菱独自の3×2バルブ方式を採用したシリウスダッシュエンジン

国産初のツインターボ

トヨタ・マークII、チェイサー、クレスタ(X70系)/2L直列6気筒ターボ 185馬力

トヨタ・チェイサー(X70系)。1984年のフルモデルチェンジ当初にもシングルターボのM-TEUエンジン搭載車が存在していたが、こちらはツインターボの登場により廃止となった。写真はNAモデル

トヨタ・チェイサー(X70系)。1984年のフルモデルチェンジ当初にもシングルターボのM-TEUエンジン搭載車が存在していたが、こちらはツインターボの登場により廃止となった。写真はNAモデル

1985年に行われた5代目マークII 3兄弟(マークII、チェイサー、クレスタ)のマイナーチェンジ時に投入されたツインターボ。その名の通り、2基のターボチャージャーを備えたもの。これは大径タービンの弱点とされていた排気流量が少ない低回転域におけるレスポンス不足を2基の小径タービンで補う狙いがあった。この発想はのちにさらに進化し、低回転時には片方のタービンを休止させるシーケンシャルツインターボ(ユーノス・コスモ等)やシングル式ながらタービンへの流路を2分割させたツインスクロールターボ(スバル・レガシィ等)など、さまざまな技術が登場している。

シングルターボのM-TEU搭載車は、電子制御ATのECT-Sのみの設定だったが、後継モデルの1G-GTEU搭載車はマニュアルミッションを選択することができた。写真はNAモデル

シングルターボのM-TEU搭載車は、電子制御ATのECT-Sのみの設定だったが、後継モデルの1G-GTEU搭載車はマニュアルミッションを選択することができた。写真はNAモデル

圧倒的な高性能を誇ったロータリー+ターボ

マツダ・ルーチェ(HB型)/573㏄×2ロータリーターボ 160馬力

マツダ・ルーチェ(HB型)。ルーチェ4ドアHTモデル。横長の異形ヘッドライトが特徴だった。兄弟車のコスモはこの部分が角形4灯のリトラクタブル式となっていた

マツダ・ルーチェ(HB型)。ルーチェ4ドアHTモデル。横長の異形ヘッドライトが特徴だった。兄弟車のコスモはこの部分が角形4灯のリトラクタブル式となっていた

世界で初めてロータリーターボを搭載した車両は1982年8月デビューのコスモ。同時に兄弟車のルーチェにも採用された。モーターのようにシャープなレスポンスを特徴としていたロータリーエンジンとターボとの相性は抜群で、当時のライバル勢の中でもトップクラスの性能を発揮。コスモとルーチェはロータリーエンジンの魅力を大いに主張するモデルとなった。デビュー当時の馬力は160馬力。1年後には165馬力へと進化している。

マツダ・ルーチェ(HB型)。ハードトップ車とはデザインの趣向が大きく異なるオーソドックスな4ドアセダン(メーカーでの呼称はサルーン)にもロータリーターボが設定されていた

マツダ・ルーチェ(HB型)。ハードトップ車とはデザインの趣向が大きく異なるオーソドックスな4ドアセダン(メーカーでの呼称はサルーン)にもロータリーターボが設定されていた

爆売れミニバンにはスーパーチャージャー搭載モデルがあった!!

トヨタ・エスティマ(TCR)/2.4L直列4気筒スーパーチャージャー 160馬力

トヨタ・エスティマ(TCR)。その斬新なフォルムから、当時の宣伝コピーには「天才タマゴ」という言葉が使われていた。残念ながらミッドシップ方式の採用はこれ一代限りだった。写真はスーパーチャージャー搭載以前のモデル

トヨタ・エスティマ(TCR)。その斬新なフォルムから、当時の宣伝コピーには「天才タマゴ」という言葉が使われていた。残念ながらミッドシップ方式の採用はこれ一代限りだった。写真はスーパーチャージャー搭載以前のモデル

車体中央部のエンジンは75度の角度を付けて搭載。さらに車内への張り出しを抑えるべくリアサスペンションはダブルウィッシュボーン式とすることで、凹凸のないフラットフロアを実現していた。写真はスーパーチャージャー搭載以前のモデル

車体中央部のエンジンは75度の角度を付けて搭載。さらに車内への張り出しを抑えるべくリアサスペンションはダブルウィッシュボーン式とすることで、凹凸のないフラットフロアを実現していた。写真はスーパーチャージャー搭載以前のモデル

高性能スポーツカーやレーシングカーに多く見られるミッドシップレイアウトを持つミニバンとして、当時話題を集めた初代エスティマ。車体前後の重量配分の適正化や低重心化といったミッドシップならではの特性をそのままに、ミニバンらしからぬハンドリング性能を備えていたが、1.7トンに迫る車重(2WD車)に対し135馬力のエンジンではアンダーパワー感が否めなかった。このウイークポイントを解消すべく、94年8月のマイナーチェンジ時に160馬力のスーパーチャージャー付きエンジンを投入。走行性能の大幅な強化が図られた。

過激な軽スポーツの立役者

スズキ・アルトワークス(CA71/72系)/550㏄直列3気筒ターボ 64馬力

スズキ・アルトワークス(CA71/72系) 大型バンパースポイラーやボンネットのエアスクープ、リアウインドーを取り囲むようなエアロパーツなど、迫力満点のスタイルを持つ

スズキ・アルトワークス(CA71/72系)。大型バンパースポイラーやボンネットのエアスクープ、リアウインドーを取り囲むようなエアロパーツなど、迫力満点のスタイルを持つ

普通車クラスを席巻したターボパワーの影響力は軽自動車クラスにも波及。その熾烈な開発競争の象徴とも言える一台が、1987年2月にスズキから発売されたアルトワークス。アグレッシブなデザインのエアロパーツで武装した車体の心臓部には64馬力のスペックを持つ3気筒DOHCターボを搭載。前輪駆動モデルの他、ビスカスカップリング式フルタイム4WDも設定されていた。「運転ではない。これは運動だ」という当時のTVコマーシャルのコピーもクルマ好きのワクワク感を大いに盛り上げた。

ツートンカラーのバケットタイプシートもワークス専用の装備。トランスミッションは5速マニュアルのみの設定だった

ツートンカラーのバケットタイプシートもワークス専用の装備。トランスミッションは5速マニュアルのみの設定だった

尻下がりが印象的だった爆発的加速

日産・シーマ(FPY31)/3L V型6気筒ターボ 255馬力

日産・シーマ(FPY31)。長く取られた前後のオーバーハングや上下の薄さが際立つキャビン部分が特徴。塗装は4層塗装、4層焼き付けの4コート4ベーク仕上げが採用されていた

日産・シーマ(FPY31)。長く取られた前後のオーバーハングや上下の薄さが際立つキャビン部分が特徴。塗装は4層塗装、4層焼き付けの4コート4ベーク仕上げが採用されていた

バブル景気全盛の1988年に、日産の最高級車(プレジデントを除く)であったセドリック/グロリアのさらにワンランク上を行く、『新しいビッグカー』として誕生したのがシーマ(正式名称はセドリックシーマ/グロリアシーマ)。上位グレードのタイプIIリミテッド、タイプII-Sには255馬力を発生するV型6気筒DOHC 24バルブターボ、VG30DETエンジンを搭載。エアサスペンション(タイプIIリミテッド、タイプII)の設定がソフト志向だったこともあり、発進時にテールを沈みこませながら加速して行く姿が街角のあちこちで見られた。

発売直後は3ナンバー市場において、ライバルのクラウンを上回る販売台数を記録。高級車や高級品が売れる「シーマ現象」という言葉を生み出した

発売直後は3ナンバー市場において、ライバルのクラウンを上回る販売台数を記録。高級車や高級品が売れる「シーマ現象」という言葉を生み出した

チューニングベースとしても人気だったお洒落セダン

日産・セフィーロ(A31)/2L直列6気筒ターボ 205馬

日産・セフィーロ(A31)。「くうねるあそぶ。」のキャッチコピーで1988年9月に登場したセフィーロ。メーカー広報資料によると、メインターゲットは「30代前半の美しさ・遊び心を大切にする知的なヤングアダルト」というものだった

日産・セフィーロ(A31)。「くうねるあそぶ。」のキャッチコピーで1988年9月に登場したセフィーロ。メーカー広報資料によると、メインターゲットは「30代前半の美しさ・遊び心を大切にする知的なヤングアダルト」というものだった

日産の高性能2L 6気筒ターボ、RB20DETを初めて搭載した車両は1985年の7代目スカイライン。その後、フェアレディZ 200ZR-1、ZR-IIなどを経た後、新型車セフィーロの「クルージング」と名が付くグレードにも設定された。エンジン本体の吸気ポートの改良や通気抵抗を低減させたメタル触媒の採用により最高出力は85年の初期型と比較して25馬力アップの205馬力を発生。新車として販売されていた時期は洗練された大人のセダンという位置付けだったが、生産終了後にはドリフト走行もこなせるリア駆動のスポーツセダンとして人気が再燃した。

205馬力のパワーと27.0kgmのトルクを発生したRB20DET直列6気筒ターボ。性能を大きく向上させるチューニングパーツも数え切れないほど存在する

205馬力のパワーと27.0kgmのトルクを発生したRB20DET直列6気筒ターボ。性能を大きく向上させるチューニングパーツも数え切れないほど存在する

ターボとスーパーチャージャーのダブル過給

日産・マーチ スーパーターボ(K10)/1L直列4気筒ターボ 110馬力

日産・マーチ スーパーターボ(K10)。ネーミングは言うまでもなくスーパーチャージャーとターボ付き、ということに由来。インタークーラー用の大型エアインテークやルーフエンドのスポイラーも専用装備だった

日産・マーチ スーパーターボ(K10)。ネーミングは言うまでもなくスーパーチャージャーとターボ付き、ということに由来。インタークーラー用の大型エアインテークやルーフエンドのスポイラーも専用装備だった

1988年にラリー競技向けベース車両として開発されたマーチRに搭載されていたのが、スーパーチャージャーとターボチャージャーの双方を備えたMA09ERTエンジン。これは低回転域のレスポンスに優れたスーパーチャージャーと、ターボチャージャーによる高回転域における伸びやかなパワー特性を狙ったもので、排気量はNAのベースモデルの987ccに対し930ccへとスケールダウンしながら、110馬力のパワー(NA車は52馬力)を発揮。翌年にはグリル埋め込み式のフォグランプや内装の装備面を充実させるなど、一般ユーザー向けにリファインが施され、マーチスーパーターボの名で発売された。

930ccという排気量は、当時の国内ラリーの車両規定が国際ルールに準じて変更されるという動きを見据えたもの。競技の場において過給機付き車両には性能調整の観点から規定の係数が課せられることが多いが、MA09ERTエンジンは、規定変更後の係数1.7を掛けても当時のラリーBクラスの1600cc以下(1581cc)に収まっていた

930ccという排気量は、当時の国内ラリーの車両規定が国際ルールに準じて変更されるという動きを見据えたもの。競技の場において過給機付き車両には性能調整の観点から規定の係数が課せられることが多いが、MA09ERTエンジンは、規定変更後の係数1.7を掛けても当時のラリーBクラスの1600cc以下(1581cc)に収まっていた

ハンパじゃなかった軽スポーツ

三菱・ミニカDANGAN(H21系)/550㏄ 直列3気筒ターボ 64馬力

三菱・ミニカDANGAN(H21系)。2輪の世界では1985年にヤマハがFZ750で世界初の5バルブヘッドの市販化を果たしたが、4輪はこのクルマが初。国産普通車クラスでは1991年にトヨタがAE101型カローラレビン/スプリンタートレノで5バルブの市販化を果たしている

三菱・ミニカDANGAN(H21系)。2輪の世界では1985年にヤマハがFZ750で世界初の5バルブヘッドの市販化を果たしたが、4輪はこのクルマが初。国産普通車クラスでは1991年にトヨタがAE101型カローラレビン/スプリンタートレノで5バルブの市販化を果たしている

80年代初頭、「フルラインターボ」化を目指し、全車へのターボチャージャー装着を目指していた三菱自動車。その流れに基づき、1983年3月には軽自動車初のターボモデルを発売(ミニカ・エコノターボ、アミLターボ)。DOHC 4バルブのターボ化はスズキが先手を打ったが、それを上回るインパクトをもたらしたのが1989年に登場したミニカDANGAN。普通車のスポーツモデルでも4バルブというなか、なんと5バルブ方式を採用(もちろん、ターボ付き)。他にもビスカス式よりフレキシブルな前後輪の駆動力コントロールを狙ったHCU式のフルタイム4WDシステムの導入など、最新技術が満載だった。

ドッカンターボのクロスオーバー

スバル・フォレスター(SF系)/2L水平対向4気筒ターボ 250馬力

スバル・フォレスター(SF系)。ターボエンジンとフルタイム4WDの駆動方式を全車に採用していたフォレスター。SUVとワゴンの特色を兼ね備えたスタイルは、時代を先取りしたものだった

スバル・フォレスター(SF系)。ターボエンジンとフルタイム4WDの駆動方式を全車に採用していたフォレスター。SUVとワゴンの特色を兼ね備えたスタイルは、時代を先取りしたものだった

全グレードにターボチャージャー付き水平対向4気筒エンジンを搭載し、1997年2月に発売されたフォレスター。メーカー広報資料には「3LクラスのNA車を超える動力性能と2Lクラスの燃費性能の両立を目指した」との記述があるが、同型式のEJ20ターボを搭載するインプレッサWRXワゴンに対しターボの過給ポイントを約800回転低めたことで、低速域から力強いパワーとトルクを発揮。乗り手の中にはこの独特の味付けをドッカン系のターボととらえた人もいたようだ。


「あっちが200馬力なら、ウチは220馬力だ!」という会話がメーカーの開発現場内で交わされていたかどうかは定かではありませんが、それほど80〜90年代当時のターボパワーによる性能争いは過激化を極めていました。なかには「そんな途方もないパワーをどこで使うの?」と冷めた意見も聞かれましたが、この激しい戦いがサスペンションやブレーキ、ボディ剛性、タイヤなど、国産車そのものの技術的な進化に大きな成果をもたらしたことだけは、疑いのない事実と言えるはずです。

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高橋陽介

たかはし・ようすけ 雑誌・Webを中心に執筆をしている自動車専門のフリーライター。子供の頃からの車好きが高じ、九州ローカルのカー雑誌出版社の編集を経て、フリーに。新車情報はもちろん、カスタムやチューニング、レース、旧車などあらゆるジャンルに興味を寄せる。自身の愛車遍歴はスポーツカーに偏りがち。現愛車は98年式の996型ポルシェ911カレラ。

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