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構成=ダズ/文=工藤貴宏

MR2、180SX、アルシオーネ、プレリュード、ロードスター、GTO…懐かしのリトラクタブルヘッドライト車15選

リトラクタブルヘッドライトの歴史も解説

1980年代から90年代まで、スポーツカーを中心に多くの車種で採用されていたリトラクタブルヘッドライト。普段は閉じているのに、ライトのスイッチをONにすると、パカッと起き上がり、ヘッドライトが出現するアレ。今どきの若い方々にはピンとこないかもしれないが、当時の若者たちにとっては、カッコいい車の象徴のひとつだった。カスタムのひとつとして、半開きのまま止めてやや眠そうな顔付きにするなんてことも流行した。今回の特集では、そんな懐かしのリトラクタブルヘッドライトを搭載した車を振り返ります。

国産車初のリトラクタブルヘッドライト車は、あの名車
え? そこがヘッドライトじゃなかったの!?

マツダ・ICONIC SP

マツダ・ICONIC SP。2023年10月から11月にかけて開催されたジャパンモビリティショー2023のマツダブースに展示された「アイコニックSP」。LEDヘッドライトを採用した細目のリトラクタブルヘッドライトは、リトラ全盛期を知る世代はもちろん、見慣れない世代も今後の市販化が気になる存在だ。

111万人もの来場者を集めて大盛況だった「ジャパンモビリティショー2023」。会場での人気トップを競う展示車両のうちの一台が「マツダ・アイコニックSP」でした。
アイコニックSPは将来のスポーツカーをイメージさせるコンセプトカーで市販予定はないのですが、その息をのむような美しさをひとめ見ようとマツダブースは黒山の人だかり。「このカッコいい車をぜひ市販に移してほしい!」と願った人も多いのではないでしょうか。

そんなアイコニックSPの特徴のひとつがヘッドライトでした。通常は閉じていて、ライトを点灯するときだけパカッと上に開く「リトラクタブルヘッドライト」を採用していたのです。かつて一世を風靡(ふうび)したリトラクタブルヘッドライトですが、気が付けば廃れてしまい、いま新車として買える国産車の装着例はひとつもありません。
今回のテーマは、そんなリトラクタブルヘッドライト。車好き少年だった筆者も、スポーツカーといえばリトラクタブルヘッドライトというイメージです。
 
リトラクタブルヘッドライトとは、ライト自体が可動式で必要なときだけ上にパカッと開くタイプのヘッドライトのこと。閉じたときは隠れるので車の先端を低くスタイリッシュに見せるほか、空気抵抗を減らすメリットもあります。また、かつてアメリカ・カリフォルニアには「ヘッドライトの位置は地上24インチ(約61cm)以上」という法規があり、低いノーズとその法規を両立するためにリトラクタブルヘッドライトが欠かせなかったという事情もあったりします。

1980年代後半に全盛期を迎えた憧れのヘッドライト形状

その歴史をひもとくと1930年代から40年代にかけてアメリカの高級車に採用されたこともありますが、メジャーになるのは1962年ロンドンショーで公開された「ロータス・エラン」などに採用され、その後1967年発売の「トヨタ・2000GT」に組み込まれたあたりからでしょう。
そして人気のきっかけとなったのが、1970年代のスーパーカーたち。1973年デビューの「フェラーリ・365GT4BB」、1974年デビューの「ランボルギーニ・カウンタック」、さらには1976年デビューの「ロータス・エスプリ」などが採用し、日本で起きた爆発的なスーパーカーブームに伴って「カッコいいライト」として当時の少年たちを魅了したのです。
 
当然、その勢いは国産車にも飛び火。1978年発売の「マツダ・RX-7」、1981年発売の「トヨタ・セリカXX」、1982年発売の「三菱・スタリオン」、「日産・パルサーエクサ」、そして1983年発売の「日産・シルビア」などスポーツカーやスポーティカーを中心にどんどん増えました。
さらには1985年発売の「ホンダ・アコード」や「ホンダ・クイントインテグラ」、1986年のトヨタ「カローラⅡ/ターセル/コルサ」などセダンやコンパクトカーにまで組み込まれるなど、どんどん一般化。リトラクタブルヘッドライト全盛期と言える1989年には、国産車だけでも20車種以上と多くの市販車がリトラクタブルヘッドライトを採用していました。
いまでは信じられませんが、70年代後半から80年代前半にかけてはリトラクタブルヘッドライトを搭載した自転車(おそらくスーパーカーブームの影響)まであって小学生たちの憧れだったんですよ。

ライトの小型・高性能化と法規制で2004年に姿を消した

しかし、盛者必衰。あれだけ勢力を増したリトラクタブルヘッドライトも、21世紀を迎える頃はすっかり希少な存在となってしまいました。最後となった国産車は、2002年8月に生産を終えた最終型(FD3S)の「マツダ・RX-7」。その前年の2001年12月には、「ホンダ・NSX」もマイナーチェンジでリトラクタブルから固定式にヘッドライトが変更されていました。
筆者が調べた限りでは、海外ブランド車としては2004年に生産を終えた5代目の「シボレー・コルベット」が量産車としては最後のリトラクタブルヘッドライト搭載モデルのようです。
リトラクタブルヘッドライトが消えてしまった理由はいくつかありますが、まず北米においてライトの規制が緩和(1984年以降、それまで禁止されていた丸や四角以外の異形ヘッドライトも使えるようになった)され、また地域や国によってはヘッドライト常時点灯が義務付けられたこと。つまりライトの設計の自由度とデザイン性が高まる一方でライトを閉じて走ることができない状況も生まれ、リトラクタブルヘッドライトの優位性が失われてしまったのです。

特に1990年代以降はハロゲンヘッドライトに代わってプロジェクターライトやHID、LEDなど小さくても十分に明るいライトが実用化されたことで、リトラクタブルヘッドライトがなくてもシャープなフロントデザインが可能になりました。
そのうえ、歩行者保護の観点から、開いた状態では突起物となるリトラクタブルヘッドライトは衝突安全上の理由で好ましくないアイテムとなってしまったのです。適用国間で車の輸出入をスムーズに行うため1998年に結ばれた「国連の車両等の世界技術規則協定」に車の外装の突起物に関する規則がありますが、これにリトラクタブルヘッドライトを適合させるのは難しいのが実情。これが決め手となり、リトラクタブルヘッドライトは消えてしまったのです。
 
ところで、そんな状況のなかで、マツダはなぜ2023年に発表したコンセプトカーにリトラクタブルヘッドライトを採用したのでしょうか。デザイナーに尋ねてみたところ「カッコいいからです」と清々しいまでに単純明快な理由でした。もちろん、筆者も納得です。
状況を鑑みれば、もしこのコンセプトカーが市販化されたとしてもリトラクタブルヘッドライトを採用するのは難しいでしょう。しかし「三つ子の魂百まで」ではないですが、スーパーカー大好き少年だった頃のリトラクタブルヘッドライトへの憧れは、いつまでも失われることはないのかもしれません。

国産初のリトラ採用車は国産車初のスーパーカー
トヨタ・2000GT(MF10/1967年登場)

トヨタ・2000GT(1967年)

トヨタ・2000GT(1967年)

トヨタ自動車工業(現トヨタ)とヤマハ発動機が共同開発し、1967年から1970年にかけて生み出したが、生産されたのはわずか330台ほど。トヨタのイメージリーダーとして、国際的に通用するスポーツカーを目指して企画開発されました。238万円という当時の販売価格は、クラウン約2台分。大卒初任給の100倍近くになる、まさに高嶺の花だったのです。
それにしても美しいフォルムですね。フロントにはヘッドライトではなく補助灯(ドライビングランプ)が組み込まれていますが、当初はこれをヘッドライトとする予定だったのだとか。しかし、当時あったアメリカ・カリフォルニア州の「ヘッドライトの位置は地上24インチ(約61cm)以上という」基準をクリアできず、リトラクタブルヘッドライトを採用することになったそうです。後期型ではこの丸形ドライビングランプがひとまわり小さくなって、よりスマートなデザインになりました。

トヨタ・2000GT(1967年)

トヨタ・2000GT(1967年)

リトラクタブルライトで兄弟車と差別化
トヨタ・スプリンタートレノ(AE86/1983年登場)

トヨタ・スプリンタートレノ(1983年)

トヨタ・スプリンタートレノ(1983年)

「スプリンタートレノ」という正式車名よりも「AE86」とか「ハチロク」といったほうがいまでは通りやすいかもしれないですね。発売から40年経っても人気は落ちるどころか、中古車価格は上がりっぱなしです。兄弟車の「カローラレビン」が固定式ヘッドライトなのに対し、トレノはリトラクタブルヘッドライトを採用し兄弟で顔つきはまったく異なるものでした。AE86はリトラクタブルヘッドライトの採用/非採用で兄弟車を作り分けた珍しいパターンといっていいでしょう。1990年代前半まではレビンのほうが人気がありましたが、主人公がトレノに乗るマンガ「頭文字D」が始まったのをきっかけにトレノのほうが人気になりましたね。

トヨタ・スプリンタートレノ(1983年)

トヨタ・スプリンタートレノ(1983年)

閉じたままでもちょっとだけライトが見える
日産・フェアレディZ(Z31型/1983年登場)

日産・フェアレディZ 300ZX 2シーター(1983年)

日産・フェアレディ 300ZX 2シーター(1983年)

日産を代表するスポーツカーの「フェアレディZ」にもリトラクタブルヘッドライトを採用した世代がありました。特徴的なのは閉じた状態でもヘッドライトの一部が見えていることで、これはライトを上げなくてもパッシングが行えるメリットがあります。ただし、その機能は輸出仕様には組み込まれたものの、日本の法律で認められていなかったので国内仕様ではパッシングの際は通常のリトラクタブルヘッドライトと同様にライトを上げて点灯する仕掛けとなっていました。北米をメインマーケットとするフェアレディZらしいエピソードですね。

とにかく低いボンネット
トヨタ・MR2(AW10/11 / 1984年登場)

トヨタ・MR2(1984年)

トヨタ・MR2(1984年)

全長4mを切る超コンパクトなスポーツカーの「MR2」。エンジンをキャビンの後ろに積むミッドシップレイアウトのおかげで低いボンネットを実現していますが、この低いボンネットで北米カリフォルニアの法律(ヘッドライトは地上から約61cm以上の高さが必要)をクリアするにはリトラクタブルヘッドライトが必須だったといえるでしょう。たとえその法律がなかったとしても、当時の技術ではリトラクタブルヘッドライトなしではこのボンネットの低さを実現できなかったでしょうね。もしリトラクタブルヘッドライトがなければ、いったいどんなデザインになっていたのでしょうか。

トヨタ・MR2(1984年)

トヨタ・MR2(1984年)

『私をスキーに連れてって』でおなじみ
トヨタ・セリカ(T160型/1985年登場)

トヨタ・セリカ(1985年)

トヨタ・セリカ(1985年)

フルモデルチェンジでそれまでの後輪駆動から前輪駆動へと駆動方式をスイッチした4代目「セリカ」。“流面形”と表現された滑らかな曲線が特徴で、その雰囲気を壊さないようにリトラクタブルヘッドライトを採用していました。オジサン世代の車好きとしては、この世代のセリカといえば世界ラリー選手権(WRC)での活躍とともに、映画『私をスキーに連れてって』の劇中車ですね。WRCや映画で大暴れしたのは、ターボエンジンに4WDを組み合わせた高性能バージョンの「セリカGT-FOUR」でした。

トヨタ・セリカ(1985年)

トヨタ・セリカ(1985年)

セダンやワゴンにもリトラクタブルヘッドライト
ホンダ・アコード(CA1〜4/1985年登場)

ホンダ・アコード2.0Si(1985年)

ホンダ・アコード2.0Si(1985年)

1980年代中盤のリトラクタブルヘッドライトブームは、セダンやワゴンにも飛び火。1985年にホンダから登場したセダンの「アコード」や、その派生モデルであるオシャレな3ドアワゴン「アコード エアロデッキ」には、セダンやワゴンでは極めて珍しいリトラクタブルヘッドライトが採用されたのです。当時のホンダ車はスタイリングを美しくするための手法としてボンネットの低さにこだわっていました。その低いボンネットを実現し、より低さを強調するにはリトラクタブルヘッドライトがうってつけだったというわけです。たしかに、スーパーカーに憧れた世代としてはこういうセダンやワゴンにグラッときちゃいますね。

ホンダ・アコード エアロデッキ(1985年)

ホンダ・アコード エアロデッキ(1985年)

スバル初のスペシャルティカー
スバル・アルシオーネ(E-AX4/7/9/1985年登場)

スバル・アルシオーネ(E-AX4/7/9/1985年)

スバル・アルシオーネ(1985年)

航空機産業をルーツに持つ富士重工業(現SUBARU)が1985年に発売した同社初のスペシャルティカー。まさに“クサビ形”といえる直線基調のシャープなフォルムが特徴的でしたが、そのフォルムを実現するにはリトラクタブルヘッドライトが欠かせなかったというわけです。当時小学生だった筆者も、このデザインには衝撃を受けました。この低いボンネットは、エンジン高が低いというボクサーエンジン(水平対向エンジン)のメリットを生かしたデザインでもあり、Cd値(空気抵抗係数)は0.29。日本車として初めて0.30を下回ったのもトピックでしたね。現時点で、そしておそらく今後もスバル唯一のリトラクタブルヘッドライト採用車です。

コンパクトカーにまでリトラ
トヨタ・カローラⅡ(EL3#/NL3#/1986年登場)

トヨタ・カローラⅡ(1986年)

トヨタ・カローラⅡ(1986年)

「ターセル」「コルサ」そして「カローラⅡ」の3兄弟は、1980年代中盤のリトラクタブルヘッドライトブームの凄さを象徴する車と言っていいでしょうね。なぜなら、全長4mを切るコンパクトサイズ(いまの「ヤリス」よりも小さい!)の実用コンパクトカーながら、一部グレードにリトラクタブルヘッドライトを採用していたからです。同車には通常の固定式ライト仕様とリトラクタブルヘッドライト仕様があったのですが、ライトの構造にかかわらずボンネットの高さは同じでした。つまり、「見た目」のためだけのリトラクタブルヘッドライトだったのです。当時の日本は、そこまでリトラクタブルヘッドライトがありがたがられる空気があり、この3兄弟はそれを象徴する車なのです。

お洒落なコンパクトカー
日産・エクサ(KN13/1986年登場)

日産・エクサ キャノピー タイプB(1986年)

日産・エクサ キャノピー タイプB(1986年)

2ボックスハッチバックのコンパクトカー「パルサー」の派生モデルとして登場したクーペモデル「エクサ」。同車は1982年デビューの初代も86年デビューの2代目もリトラクタブルヘッドライトを組み合わせていました。2代目はクーペタイプとシューティングブレークタイプの2タイプの車両後部(ハッチゲート)が選べるのも特徴でしたね。

日産・エクサ クーペ タイプA(1986年)

日産・エクサ クーペ タイプA(1986年)

まさにスポーツカースタイル
トヨタ・スープラ(A70/1986年登場)

トヨタ・スープラ(1986年)

トヨタ・スープラ(1986年)

「セリカXX」は1986年にフルモデルチェンジと同時に海外名称だった「スープラ」に改名されました。もちろん、リトラクタブルヘッドライトも継承。ボンネットの長い、いわゆる「ロングノーズ・ショートデッキ」の堂々としたスタイルはいかにもスポーツカーらしいものです。子供だった筆者も大層憧れました。スープラの主要マーケットはカリフォルニアだったので、まさにスタイリングと米国の法規をきちんと両立させるためにリトラクタブルヘッドライトは欠かせなかったというわけです。しかし、北米での法規の変更などもあり、スープラは次のA80型から固定式ライトとなりました。

低いボンネットを強調する存在として
ホンダ・プレリュード(BA4/5/7/1987年登場)

ホンダ・プレリュード(1987年)

ホンダ・プレリュード(1987年)

1980年代中盤のホンダは、とにかく低いボンネット高にこだわっていました。「プレリュード」は1982年に登場した2代目に続き、1987年に登場した3代目でもリトラクタブルヘッドライトを採用。デート世代となる20代のオーナーに人気が高いことから「デートカー」と呼ばれ大ヒットしたのが懐かしいですね。ただ、3代目の後期型となる1989年には「プレリュード インクス」と呼ぶ固定式ヘッドライトのモデルも追加。1991年デビューの4代目では全車とも固定式ヘッドライトとなり、リトラクタブルヘッドライトに別れを告げます。当時はとにかくオシャレでしたね。

北米向けに用意されたリトラ
日産・180SX(RS13/RPS13/1989年登場)

日産・180SX(1989年)

日産・180SX(1989年)

「180SX」は大ヒットしたS13型「シルビア」の兄弟車。シルビアが固定式ヘッドライトの3ボックスクーペなのに対し、180SXは車体の基本構造を共用しつつリトラクタブルヘッドライトを組み合わせたハッチバックとなっています。オシャレなシルビアに対して、よりスポーツカーらしいスタイリングという印象でしたね。実はリトラクタブルヘッドライトを組み合わせた顔つきは、北米向けに用意されたもの。北米ではシルビアのような固定式ヘッドライト仕様はありませんでしたが、シルビアと同じ3ボックスボディに180SXの顔を組み合わせたリトラクタブルヘッドライトのタイプも存在しました。いま見ても、ほんとうに美しいデザインですね。

人々を笑顔にするスポーツカー
マツダ・ロードスター(NA/1989年登場)

マツダ・ロードスター(1989年)

マツダ・ロードスター(1989年)

「世界で最も売れた2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネスブックに認定されている「マツダ・ロードスター」。1989年に登場しマツダではなく「ユーノス」というブランドで販売されていた初代は、リトラクタブルヘッドライトを採用していました。デザインは「カッコいい」というよりは「誰でも気取らず乗れる」といった雰囲気で、リトラクタブルヘッドライトを組み合わせつつも顔つきはシャープというより丸みを帯びた親しみやすい印象ですね。いまでも大切に乗っているオーナーがたくさんいる、長く愛される車となりました。その後、ロードスターは1998年デビューの2代目モデルで固定式ヘッドライトへスイッチ。リトラクタブルヘッドライトの採用は1世代だけでした。

三菱の誇る高性能マシーン
三菱・GTO(Z15A/16A/1990年登場)

三菱・GTO(1990年)

三菱・GTO(1990年)

大型セダン「ディアマンテ」と共通のプラットフォームを使いつつ、当時の国産車最高出力となる280psの6気筒ターボエンジン(自然吸気も設定)やフルタイム4WD、さらには4WS(4輪操舵)など当時の三菱自動車が持つ技術を惜しみなく投入したスーパーマシン。そんな「GTO」のスーパースポーツカー的スタイリングを作り上げるのに欠かせなかったのが、リトラクタブルヘッドライトというわけです。ただし、1993年のビッグマイナーチェンジではリトラクタブルヘッドライトに別れを告げて固定式ヘッドライトを採用。リトラクタブルヘッドライトを取り巻く環境の変化にあわせて、モデルライフ途中でヘッドライトの仕掛けが変化した数少ないモデルの一台といっていいでしょう。

世界を驚かせた和製スーパーカー
ホンダ・NSX(NA1/2/1990年登場)

ホンダ・NSX(1990年)

ホンダ・NSX(1990年)

初代「ユーノス・ロードスター」やR32型「スカイラインGT-R」が発売され、後に車好きの間で「日本車ビンテージイヤー」と呼ばれるようになる1989年。そんな1989年に発表され、1990年に発売されたのが初代「NSX」です。量産車としては世界で初めてアルミボディの採用、当時の国産車としては驚異的な800万円という車両価格、そして世界を驚かせる走行性能。たくさんのトピックがありましたが、最も世界が驚いたのは「普通のセダンと同じように気軽に運転できて、メンテナンスも楽。スーパーへ買い物に行けるスーパーカー」という扱いやすさ。それは、NSX以前のスーパーカーにはなかった性能であり、世界に衝撃を与えました。そんなNSXも2001年のマイナーチェンジでは固定式に変更。みなさんはどちらのヘッドライトが好きですか?

ホンダ・NSX(1990年)

ホンダ・NSX(1990年)

国産車最後のリトラクタブルヘッドライト
マツダ・RX-7(FD3S/1991年登場)

マツダ・RX-7(1991年)/ マツダ・サバンナRX-7(1985年)

マツダ・RX-7(1991年)/マツダ・サバンナRX-7(1985年)

何を隠そう、国産車として最後まで生き残ったリトラクタブルヘッドライト装着車がこの「RX-7」。車好きの間では型式から「FD3S」と呼ばれるモデルです。そもそも、RX-7は1978年に登場した初代SA22C型からリトラクタブルヘッドライトを採用。3世代のいずれもリトラクタブルヘッドライトという稀有なモデルです。初代RX-7は国産車としては1967年登場の「トヨタ・2000GT」に続くリトラクタブルヘッドライト装着車ですが、トヨタ・2000GTは約330台しか作られなかった少量生産車だったのに対し、初代RX-7は47万台も売れた純粋な量産車。そう考えると、日本のリトラクタブルヘッドライトの歴史はRX-7に始まりRX-7で終わったと言っていいのかもしれませんね。


こうしてリトラクタブルヘッドライト装着車を改めて見て感じるのは、やっぱりカッコいいなということ。たしかに採用の背景には技術や法規といった理由があるのですが、車としてデザインを見ると感性に訴えかけてくる何かがあるような気がします。もしかすると「動く」というギミックが“子供心”をくすぐるのかもしれませんね。

工藤貴宏

くどう・たかひろ 1976年長野県生まれ。小学生の頃から自動車雑誌を読み始め、学生時代に自動車雑誌編集部でアルバイトを始める。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWebに寄稿している。執筆で心掛けているのは「その車は誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ・CX-60、ホンダ・S660そしてスズキ・ソリオ。

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