ノビル、コゴミ、ゼンマイ、ワサビなど多種の山菜
文=編集部 / 写真=佐々木実佳

22種の山菜に渓流釣り、東京一標高の高い露天温泉! 東京の奥座敷、檜原村を一家で満喫してみた

森のおもちゃ美術館に直売所も。檜原村、実はすごかったんです!

ゴールデンウィークを目前に控え、春アウトドアの絶好機! 山菜に渓流の魚と春の味覚を堪能するべく、家族連れでの弾丸旅行を計画。その気になれば日帰りできて、自然がいっぱいで、子供が楽しめて、もちろん大人も楽しくて、人が多すぎず……そんなワガママな条件を兼ね備えた超穴場スポットが、東京都内にあったんです! 人口約2,000人、島嶼(とうしょ)部をのぞく東京唯一の村、檜原村の旅は、想像を超えた大冒険でした。

目次

都心から2時間で渓流釣りの名所へ
小学生も名人気分!?

檜原村神戸国際マス釣り場

都心からわずか2時間。小学生の息子2人を連れて西へ車を走らせているうちに、なんだか外気導入している車内の空気がひんやりと澄んできたので周囲を見渡すと「檜原村」の看板が。

ゲームセンターの釣りゲーム「釣りスピリッツ」にはまっている小学生の息子に、ホンモノの釣りを体験してほしい! と、まずは「檜原村神戸(かのと)国際マス釣り場」へ。クルマを止めると、渓流のせせらぎと鳥の声が聞こえ、木々の根元にはフキノトウや花もちらほら。うーん、これぞ春のお山。神戸川を区切ってマスを放流しているため、より自然に近い釣り場ながら、小学生に難度は高め? と心配になり、受付の方に「釣りが初めての子でも大丈夫ですか……?」とヒソヒソ声で尋ねると、「お教えしますから、大丈夫ですよ」とほほ笑んでくれた。

案内の方に教えていただくがままにウキを調整し、恐る恐る針を沈めると……ものの数分もせず、竹竿がしなる! 親の心配をよそに、素直に針にかかってくれるマスたちに「またきた!」「ほら! また釣れたよ!」と息子も大興奮。自然に囲まれた渓流で、名人気分を味わう子供たちのホクホク顔を見ることができて、親も一安心。大満足の釣り体験となった。

渓流釣りの様子

午前中、水の冷たいうちが狙い目なのだとか。1日遊漁券は3,600円で竿1本貸与、10匹まで釣ることが可能

渓流の様子

天然記念物にしてパワースポットの「神戸岩」を撫でて流れる神戸川の清流。きれいな水で育った魚の味は言わずもがな

魚を見せる子供

1時間もしないうちにこの釣果!

午前中、水の冷たいうちが狙い目なのだとか。1日遊漁券は3,600円で竿1本貸与、10匹まで釣ることが可能

天然記念物にしてパワースポットの「神戸岩」を撫でて流れる神戸川の清流。きれいな水で育った魚の味は言わずもがな

1時間もしないうちにこの釣果!

●檜原村神戸国際マス釣場/檜原村神戸3387 Tel.042- 598 -0132
【JAF優待】

釣った魚は、さっそくその場で塩焼きにしてもらった。雑味のないマスの白身は、塩の味付けだけで滋味深く、ほろりと柔らかい。自分で釣った魚に豪快にかぶりつく経験を経て、子供たちも少しだけ精悍な顔立ちになった気がした。

塩焼きのマス

1匹200円で塩焼きにしてくれる。デイキャンプ気分でバーベキューを楽しみながら、釣りをすることも可能

塩焼きのマス

釣りたて、焼きたてのマスを食べる贅沢な時間を楽しんだ

渓流の見える山のテラスで
地元素材の山ピザに、絶品スフレパンケーキを堪能

(手前・ヒノハラ山ピザ 1,200円 奥・照り焼きチキン 1,300円)

「檜原村神戸国際マス釣り場」から目と鼻の先にあるのが、檜原村の山ごはんカフェ「ヒノハラテラス」。この日は店名に従い、北欧調の上品な店内を進んだ先にあるテラス席へ。春の檜原村を感じられるメニューとして、「山ピザ」を注文。こぼれ落ちそうなほど山盛りに乗った季節の食材の中でも、ひときわ個性を放ったのが、地元の名物という「檜原きのこセンター」の舞茸! さっくりとした食感と芳醇な香りがあり、自家製パンツェッタの熟成した味わいと合わさると、うまみの相乗効果を醸しだす。
「ここの舞茸を食べた方は、みんな驚いてわざわざ遠くまで買いに行く人も多いですよ」と微笑むのは、店主の嶋崎さん。檜原村産の野菜をはじめ、家族が育てた野菜や旅先で出会った果物などを使用しているからこそ、食材を大切に調理しているといい「ここは、ほんとうに自然の力を感じる場所ですよ。自然とともに生きるかつての暮らしが残っている。東京で、こんな景色が見られる場所は他にないですよ」と檜原村の魅力を語ってくれた。

スフレパンケーキ

新雪のような食感のスフレパンケーキには、季節ごとに自家製のジャムが添えられる。この日は甘酸っぱいキウイジャム。地元の養蜂場のハチミツをたっぷりかけていただく(贅沢果実のふわふわスフレパンケーキ 1,600円)

ヒノハラテラスの定食

1日10食限定という、地元素材をたくさん使った「山ごはん定食」は、寝かせ玄米のもっちりした触感が楽しい。プチデザート付き(2,000円)

ヒノハラテラス・テラスの様子

この日はまだ春浅かったが、ゴールデンウィークには新緑が映えるため、多くのファンが訪れるそう

ヒノハラテラス・無人販売所

「観光客と地元の方をつなぐ場所に」との思いが込められており、店外には名産品や日用品を販売する「村の小さな無人販売所」も

新雪のような食感のスフレパンケーキには、季節ごとに自家製のジャムが添えられる。この日は甘酸っぱいキウイジャム。地元の養蜂場のハチミツをたっぷりかけていただく(贅沢果実のふわふわスフレパンケーキ 1,600円)

1日10食限定という、地元素材をたくさん使った「山ごはん定食」は、寝かせ玄米のもっちりした触感が楽しい。プチデザート付き(2,000円)

この日はまだ春浅かったが、ゴールデンウィークには新緑が映えるため、多くのファンが訪れるそう

「観光客と地元の方をつなぐ場所に」との思いが込められており、店外には名産品や日用品を販売する「村の小さな無人販売所」も

●山ごはんカフェ ヒノハラテラス/檜原村神戸3395 Tel.042-588-4828
https://www.hinoharaterrace.jp/

木のおもちゃ満載の美術館は
子供も、大人も楽しい空間

桧原森のおもちゃ美術館の中

ランチの後にクルマを走らせた先は、「檜原 森のおもちゃ美術館」。かつて小学校だった地に設立された約1,000㎡の広さの美術館には、建物や内装、そしておもちゃにも檜原村で育ったスギやヒノキといった木材を多く使用。ミュージアムカフェ「さとやま食堂」も同施設内にあり、幅広い年齢の方が楽しめる空間という。扉を開くと、心地よい木の香りが! 春休み期間だったこともあって、多くの家族連れが訪れていた。低年齢から楽しめそうなヒノキで作られたたまご型の玉が入ったボールプールをはじめ、アスレチックやすべり台など体を動かす遊具、けん玉やコマ、積み木など集中して楽しめるおもちゃの数々……。その一つひとつが木を素材として巧みに作られており、 全力で楽しむ子供に気を払いつつも、大人は美術館としてじっくりと目と心を楽しませていただいた。

桧原森のおもちゃミュージアム玩具

けん玉やコマなど、コツがいる遊びは「おもちゃ学芸員」の方がコツを教えてくれる

桧原森のおもちゃ美術館展示

美術館として、年に1回入れ替わる各国のおもちゃの企画展示も。この日は木で作られた乗り物の数々が展示されていた

森のおもちゃ美術館・遊具

木の質感を楽しめるおもちゃが潤沢にある贅沢さ! 大人のそんな感情をよそに、子供は全力で楽しんでいた

桧原森のおもちゃ美術館・ミュージアムショップ

地元産の木を使用したおもちゃも数多く販売されている

けん玉やコマなど、コツがいる遊びは「おもちゃ学芸員」の方がコツを教えてくれる

美術館として、年に1回入れ替わる各国のおもちゃの企画展示も。この日は木で作られた乗り物の数々が展示されていた

木の質感を楽しめるおもちゃが潤沢にある贅沢さ! 大人のそんな感情をよそに、子供は全力で楽しんでいた

地元産の木を使用したおもちゃも数多く販売されている

●檜原 森のおもちゃ美術館/檜原村小沢3783 Tel.042-588-4044
(大人(中学生以上)1,000円、子供(6カ月から小学生)700円)
https://www.hinohara-toymuseum.com/

まさに「ご馳走」!
22種類の山菜に、ヤマメにイワナ…
檜原の山の恵みを堪能する

三頭山荘の山菜22種

圧巻とはこのこと……! きょうの宿は、「檜原 森のおもちゃ美術館」からさらに村の奥へクルマを進めた先にある。三頭山(みとうさん)の麓に位置し、「山菜好きの聖地」とひそかに心の中で呼んでいた民宿、その名も「三頭山荘」だ。ここの名物は、近隣の山の恵みを楽しめる「元祖山菜22品」。目にも楽しい20の小皿に乗った山菜はすべて近隣の山の恵みで、さらに添えられている山荘の手作りこんにゃく、手作りわさび漬けを加えて22品にもなるという。この日はノビル、ウド、マタタビの実、イタドリ、コゴミにズイキにノカンゾウにワラビにツクシ……といった品ぞろえで、季節ごとに旬のものと入れ替えられるのだそう。山荘ご主人の岡部さんによると「きょうはまだ早かったけど、これから5月になればトトキやコシアブラ、タラの芽をお出ししますよ」とのこと。それぞれに、爽やかな香りや鮮烈な苦み、鮮やかな食感などが一口ごとに楽しく「山の恵み」という言葉が実感を伴って身体に染み渡った。

三頭山荘のヤマメ、イワナ

村の清流で育った澄んだ味のイワナの刺身には、もちろんこちらも地元産のワサビを合わせると最高! 塩焼きのヤマメも美味……

三頭山荘・山菜の天ぷらと手作りこんにゃく

天ぷらは山の恵み、ワサビの葉にヨモギの葉、フキノトウ。山荘手作りのこんにゃくは、まったくクセがない涼しい味わいで、普段口にしているこんにゃくとは別の食べ物のよう!

三頭山荘・山菜アップ

目にも美しい山菜たち。その貴重さ、一つひとつをしつらえた手間を思うと「ご馳走」という言葉の本質を思いだす

村の清流で育った澄んだ味のイワナの刺身には、もちろんこちらも地元産のワサビを合わせると最高! 塩焼きのヤマメも美味……

天ぷらは山の恵み、ワサビの葉にヨモギの葉、フキノトウ。山荘手作りのこんにゃくは、まったくクセがない涼しい味わいで、普段口にしているこんにゃくとは別の食べ物のよう!

目にも美しい山菜たち。その貴重さ、一つひとつをしつらえた手間を思うと「ご馳走」という言葉の本質を思いだす

スカイツリーのてっぺんより高い露天風呂!
標高約750m、東京一高い温泉に浸かる

三頭温泉・露天風呂


翌朝、三頭山荘のもう一つの名物、「東京一高い露天温泉」へ。岡部さんによると、こちらの山荘は山麓と言えど標高750mに位置しており「スカイツリーのてっぺんよりも高いですからね。東京で一番高い場所にある露天風呂ですよ」とのこと。まばゆい朝日の中、澄みに澄んだ空気と鳥の声に包まれた天空の露天露天に浸かっていると……なんだか解脱しそうな感覚に。そろそろ通勤ラッシュが始まっているであろう「東京」のことがちらりとよぎったが、木々の香りに身を任せて考えるのをやめることにした。

三頭山荘内風呂

朝日がたっぷりと差し込む内風呂。柔らかく澄んだ泉質が心地よい

三頭山荘・外観

三頭山荘は記録があるだけでも創業400年以上、ご主人の岡部さんは18代目とのこと。秋篠宮ご一家もたびたびお泊まりになったという

三頭山荘・食事室

朝は食事会場に柔らかい春陽が届き、水車を眺めながら食事を楽しめる

朝日がたっぷりと差し込む内風呂。柔らかく澄んだ泉質が心地よい

三頭山荘は記録があるだけでも創業400年以上、ご主人の岡部さんは18代目とのこと。秋篠宮ご一家もたびたびお泊まりになったという

朝は食事会場に柔らかい春陽が届き、水車を眺めながら食事を楽しめる

●観光旅館 三頭山荘/檜原村数馬2603 Tel.042-598-6138
http://www.mitousan.jp/about.html

山のお宝をたっぷり買い込みたい!
村民に愛される特産物直売所「やまぶき屋」へ

やまぶき屋商品・山菜

三頭山荘ですっかり檜原村産の食材に魅せられたため、地元名産の食材を買うため、特産物直売所の「やまぶき屋」に立ち寄った。採れたてのフキノトウにのらぼう菜、きれいな水を使っているからこそ雑味がないことを学習済みの手作りこんにゃくをかごに入れてレジへ向かうと、朗らかな店員さんが「いらっしゃい! これね、あちら側の農家さんがさっき持ってきてくれたばかりなの!」とほがらかな笑顔を見せてくれた。「 手作りのこんにゃくは本当につるつるしてやわらかくて、全然別物でしょ? 黒みつをかけてね、わらび餅みたいに食べてもおいしいから。フキノトウで今私が凝ってるのは醤油漬け。さっとゆでて絞って、醤油とみりんをちょっと入れて瓶詰めしたら保存もきくから」と、ご当地ならではのレシピを惜しげもなくご教授くださり、帰ってからの楽しみがまた一つ追加された。

檜原村産はちみつ

同村は養蜂もさかんで、花によって味がまったく違うそう。希望すれば試食もできるのだとか

桧原村直売所やまぶき屋外観

地元の方も多く訪れるため、季節の山菜などは午前中に売り切れてしまうそう。狙い目は開店直後!

やまぶき屋・店内

檜原村の特産品は各種山菜やこんにゃく、じゃがいも、舞茸などのほかにも、柚子ワイン、紅茶、日本酒と幅広い

同村は養蜂もさかんで、花によって味がまったく違うそう。希望すれば試食もできるのだとか

地元の方も多く訪れるため、季節の山菜などは午前中に売り切れてしまうそう。狙い目は開店直後!

檜原村の特産品は各種山菜やこんにゃく、じゃがいも、舞茸などのほかにも、柚子ワイン、紅茶、日本酒と幅広い

●特産物直売所 やまぶき屋/檜原村柏木野847 Tel. 042-598-0429
https://yamabukiya.net/

帰り際、やまぶき屋の店員さんに檜原村の魅力尋ねてみた。「私も移住組でね。ここはとにかく、水と空気が最高。クルマで走っていても、村に入った瞬間、さっと空気が変わるんです。体調にもずいぶん変化がありました。高尾山や奥多摩みたいにメジャーな観光地がないから、ちょっとマイナーな印象かもしれないけど、ここがすごく気に入っています」の言葉に大きく頷きながら、たったの1泊2日で心の底から共感できるようになっていたことに驚いた。家族のレジャー先として訪れたものの、実は大人こそが楽しかった檜原村。「ちょっと行こうよ。都内だからさ!」と、また季節が変わったら家族を誘い出してみようと思う。

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